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セイヨウタンポポ

2010-04-17 16:18:20 | 店長の日記

【北海道新聞 4月17日 朝刊】

 在来種との競合少なく

 

【セイヨウタンポポ】 (キク科)

和名が「西洋」で始まる植物は数多く、例えば大場秀章書「植物分類表」には、合わせて90も「セイヨウ○○」が収録されています。 

欧米から持ち込まれ、日本在来種と似ているけど、よく見ると違っている草木を、手っ取り早くこんな風に命名したようです。 

セイヨウタンポポが日本に初めて確認されたのが1904年(明治37年)の札幌でした。報告した植物学者の牧野富太郎がやがて全国に分布を広げるだろうと予言しています。1世紀を経て、さて現実は―。

予言は半分だけ当たりました。

 今、公園や校庭、河川敷、道路脇、家屋の周囲などで見かけるタンポポのほとんどは、日本の在来種ではありません。 

だったら予言は完ぺきだったのでは―と思われるかもしれません。ところが在来種ではないタンポポのうち、「セイヨウ」が占める割合は実はごく低いのです。農業環境技術研究所(茨城県つくば市)の分析によると、わずか15%に過ぎません。 

では、残りは―。 

遺伝子を調べた結果、多数派は在来種と外来種が交配して生まれた雑種タンポポでした。 

花の付け根の緑色の部分が垂れ下がっていたらセイヨウ、と覚えている人は、雑種も同じような形なので要注意。外見では見分けがつきません。 

これらは在来種にとって脅威なのでしょうか。 

道内ではエゾタンポポなど5種類の在来種が見られます。星の降る里百年記念館(芦別市)の長谷山隆博学芸員は、葉の形などが異なるタンポポが雑種ではないかと、遺伝子を調べてみました。

結果は、すべて生粋のエゾタンポポ。葉型などの違いは固体差でした。 

「父親のいない植物」と異名を取るタンポポ類は、本州産などの一部の種類を除いて、花粉の助けなしで実を結ぶ性質があります。つまり他の株の花粉が飛んできても容易には交配しません。 

在来タンポポに比べて、セイヨウや雑種は、より開けた環境を好みます。ひんぱんに草刈される都市部の緑地や牧草畑などは格好の生育地。そこで一気に数を増やしてので、まるで在来種を圧倒しているように見えたのですが、直接的な競合はありません。

 「在来タンポポを守るには、やみくもにセイヨウや雑種を退治するより、在来種の生育地をきちんと保全するほうが効果的」と、長谷川学芸員は話しています。

(平田剛士・フリーランス記者)  



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