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ダークナイト ノベライズ 翻訳 THIRTEEN Latter half

2009-01-04 17:07:04 | ダークナイト・翻訳




それは忍び笑いから始まり、含み笑いになった。それからジョーカーが隣りの部屋から踏み出してきた頃には、悲鳴のような笑い声になっていた。
彼は笑うのを止め、「俺が思うに、出来の悪いジョークだな」と言った。
「俺の坊やにここにいていけない理由を教えてやろう」―ギャンボルは彼のボディガードに指で合図をした―「奴の頭を引っこ抜いてやれ」
ジョーカーは彼のしりポケットから新たに削られたばかりの鉛筆を取り出して、消しゴムが下にある状態でテーブルに置いた。「手品はいかがかな?」彼は明るく尋ねた。「この鉛筆を消してみせましょう」
マローニの部下は突進しようとした。ジョーカーは横に避けると、暴漢の頭の後ろをつかみ、鉛筆にたたきつけた。暴漢はくたくたになって、その体は床の方に倒れた。
鉛筆はなくなっていた。



「マジック!」ジョーカーは断言した。
「ところで、スーツは安くないんだ。 知っておくべきだと思ってね。これを買わせてくれたのはあんたらだからな」
「座れよ」とチェチェン人はジョーカーに言った。「取引を聞こうじゃないか」



「1年前、この街の警察と検事たちは皆、あんたらに逆らう勇気など無かったはずだ」とジョーカーが言った。「何が起こったんだ?タマでも落とされちまったのか?想像してくれ。あの男だ、俺のような―」
「異常者」とマローニが言った。
ジョーカーは彼を無視して、続けた。「俺のような…俺はあんたらがどうして真っ昼間からかわいそうなグループセラピーを開いているのか分かってる。なぜ夜に出かけるのを怖がってるのかについても。バットマンだ。奴がゴッサムにあんたらの本性を見せちまった。それにな、デントはただの始まりに過ぎないぞ」彼は、テレビを指さした。「それと、そいつのいわゆる計画についてだが―バットマンには管轄なんてものは全く無い。奴はそいつを見つけて、密告させるだろうな」
彼はスクリーン上のラウに向かって微笑みかけた。「俺はいつも裏切り者を見つけることができるのさ」
「俺たちは何をするべきだと思う?」チェチェン人は尋ねた。



「簡単なことさ。バットマンを殺せばいい」
「簡単なことなら、なぜすぐにやらない?」マローニは不平を言った。
「昔、おふくろがよく言ってたんだ。得意なことは、絶対無料ではやるなってさ」
「いくら欲しいんだ?」チェチェン人は尋ねた。
「半分」
テーブルの周りの男達が笑った。
ジョーカーは肩をすくめた。「今、あんたらがこれに対処しないと、すぐにそこのギャンボル坊やは、ばあちゃんにやる5セント硬貨すら手に入らなくなっちまうぜ―」
ギャンボルは立ち上がり、飛び出した。「もう沢山だ、道化野郎!」



彼はテーブルの隅の近くまで来て、立ち止まった。ジョーカーはコートの前を開き、胸に結びつけた爆薬を明らかにした。
「全体の割合からこれを爆破するのはやめておこう」とジョーカーは言った。
ギャンボルは一歩だけ近づいた。「俺たちから金を盗んで、逃げられると思ってるのか?こう宣言しよう―この道化を殺したら50万。生け捕りなら100万ドルだ。殺す前に俺がマナーを教えてやるとしよう」
「気が変わったら俺に教えてくれ」とジョーカーは言って、部屋から出て行った。



「金を動かせるのはいつ頃だ?」マローニはラウに尋ねた。
「既に終えました。明白な理由により、あなたの許可を待つことができませんでしたが、ご安心ください、あなたのお金は安全です」



サル・マローニは、彼が何も知らなかった狂人が、どこにも所属せずに彼の鼻を突いてくるのが気に食わなかったので、彼は決めた。
彼は、この私立探偵―元警官で、能力不足からではなく収賄をしていたために権力から蹴り落とされていた―を知っていた。彼は、彼らと同じくらいに能力が優れていた。名はハムリン。彼は時折、サルのために仕事をしていた。請求額は高いが、彼は常に確かな情報を届けてきていた。サルはハムリンを呼び、言った。「このジョーカーという男について全てを知りたい。靴のサイズまで」
すると、ハムリンが言った。「2週間だけ時間を下さい。私は接触しているでしょう」
2週間が経過し、ハムリンから連絡があった。「まだ何も見つけられてないが、もう少しだけ時間を下さい」と。サルは、彼にもう少しだけ時間を与えた。
1週間後、ハムリンは昼下がりにクラブに現れた。プラスチックのカップからコーヒーを飲んでいるその姿は、まるで地獄から帰ってきたかのようだった。まず、彼にはひげそりと散髪が必要だった。それに彼はひどく痩せていた。彼のスーツはしわになって、彼に掛けられているだけだった。ネクタイには大きなグレイビー・ソースのしみが付いていた。そして、両眼の下には浅黒い隈まであった…
「私は次にどこに行くべきかわかりません。私が3週間、このジョーカーとやらを調査していて、何が分かったと思いますか?何もありません。私は気違いになりそうだ。あなたは彼が本物の人間だと確信していますか?あなたの想像上の人物では?奴はまるで、虚空か何かから突然現れたみたいだ」
サルはそれを聞いているのが嫌なので、言った。「君は私に干渉したくないのだね?君ならこのジョーカーにたどり着くことができるだろうと思っていたんだが」そして彼を黙らせるために何かをそっと渡した。
そして、ハムリンは言った。「あなたはそれが私でないということを知っていますね、サル。そして、あなたと私は地獄に戻るんですね」それからハムリンは笑い始め、笑い声がよりやかましくなっていった。そして、すぐにハムリンは空気を求めて喘ぎ始めたので、それほど笑っているとは言えなくなった。ハムリンは窒息しかけていて、目はふくらみ、顔が真っ赤になっていた。
サルは1杯の水を手に入れるために給仕に向かって叫んだが、それと共に給仕が来た頃には、ハムリンは死んでいた。
サルは彼自身の個人的な医者に検死をさせた。だが、彼は金を節約しなければならなかった。ハムリンの飲んでいたコーヒーに毒を入れられていたと判断するのに医者は必要なかった。誰かがそれを見ていたかもしれなかった。そして、残りに関しては…
オーケー、その毒は中国やチベット、韓国など、それらのうちのどれかだけで手に入れることができるものだった。誰がそれを気にかける?





ハービー・デントは、警察本部の屋根の上のサーチライトの横で立ち続けていた。彼が一人ではないことを突然理解したときには、空にその光が照らされてから20分間が経過していた。
「君に連絡をするのは難しいようだな」と彼はバットマンに話した。
それから、ゴードンが手に銃を持って、階段へと続くドアを蹴破って現れた。彼はデントとバットマンのいる方を見ると、武器をホルスターに入れ、バットマンを無視して、デントに近づいた。



「私の許可も無く、勝手に信号を点けないでくれ!」とゴードンが言った。
「それなら、あなたも私に伝えもせずにマフィアの話を進めないでくれ」とデントは返した。「今ごろ、ラウは香港へと行く途中だろう」彼は続けた。「君が要請してくれれば、私は奴のパスポートを押さえることが出来た。だから私を仲間に入れてくれろと言ったのに」
「へえ、そうかな?金庫室に残されていたのは、印をつけた紙幣だけだった。彼らは、私たちが来ることを知ってたんだ。そして、君のオフィスが関与した途端に、情報が漏れた」
「私のオフィス?君はここでワーツやラミレスのようなクズ達と一緒に働いているってのに…ああ、そうだった。ゴードン。私は君のところの新人をゆすりの現行犯で捕まえる寸前だったんだぞ」
「マローニのスパイが、明らかに君のオフィスにいるという事実をゴマかそうとしないでくれ。デント」
デントはバットマンの方に振り向いた。「我々はラウを連れ戻す必要がある。だが、中国人はどんな状況においても自国民を引き渡そうとはしない」
「もし、私が奴を連れ戻せば」バットマンが尋ねた。「君は奴を自白させることが出来るか?」
「私が、彼に口を割らせてみせる」
「私たちはマフィアの資金を追いかけている」ゴードンは言った。「物騒な事態になるぞ」
「私がこの職務に就いたときから、危険は承知の上だよ、警部。あなたと同じようにね」デントは振り返った。「どうやって、彼を連れ戻すんだい?」
しかし、バットマンはそこにいなかった。
「彼はそれをやってくれる」ゴードンは言った。



翌朝、ルーシャス・フォックスは7時前にオフィスに着くと、彼の上司が待っていたのを見つけた。フォックスはブルース・ウェインに向かってうなずき、彼の机の後ろに座った。
「私たちの中国人の友人は、私が取引中止を伝える前に街を出発しました」と彼は言った。
「あなたは常に香港に行きたがっていたと僕は確信しているんだが」とブルースは言った。
「電話では何か問題がありますか?」
「ラウさんが個人的な流儀に値すると思ってね」とブルースが言った。「よし、僕の衣装の問題については…」
「私について来て下さい」
彼らは、プライベート・エレベーターに入って地下2階―そこには会社の応用科学部が収容されていた―まで下った。その途中でブルースは、ルーシャスにもう一つの仕事について教えていた。応用科学はフォックスがよく知っていた領域であり、つい最近までは彼の専門分野だった。彼はブルースを作業台、ファイリングキャビネットや開かれていないカートンなどで散らかされたスペースへと導いた。
「…高高度のジャンプ」とフォックスは言っていた。「酸素と安定装置が必要です。言っておきますが、いつものあなたのリクエストと比較すると、飛行機から飛び降りるのはかなり簡単です」
彼はキャビネットで立ち止まり、引き出しを開けて、酸素タンクと肋骨状のゴムホースを引っ張りだした。



「飛行機に戻るにはどうすればいいかな?」ブルースは尋ねた。
「私がいい旅行代理店を勧めましょう」
「着陸なしで」
「そうこなくては、ウェインさん」
フォックスは引き出しを閉じて、顎を撫でた。「私はここに何も持っていませんが、CIAは60年代に紛争地域から工作員が脱出するための移動法である『スカイフック』を研究していました。それを調べてみましょう」
彼は別の引き出しを開いた。その中にはバットマン・コスチュームの部品があった。ブルースは波形の刃がついた袖を持ち上げた。
「ケブラーのプレートで強化し、チタン繊維でコーティングして柔軟性を加えました」とフォックスは言った。彼の声には誇りが込められていた。
「あなたはより速く、より軽く、より機敏な動きが出来るようになるでしょう」
ブルースが篭手を調べると、突然その刃が袖から放たれて、部屋の向こう側を横切って壁に埋まった。
フォックスはくすくすと笑った。「おそらく、最初に説明書を読むべきですね」
「そうした方がよさそうだ」
フォックスはコスチュームの胸部分を持ち上げ、それを曲げたり、ねじったりして、その柔軟性を示した。「しかしながら、トレードオフがあります…プレートを分けたことが、砲撃とナイフにより弱くなったという弱点をあなたに与えました」
「物事が簡単になり過ぎていると思って欲しくないんだろうね。それで、犬に対しての効果は上がったのかな?」
「あなたが仰られているのはチワワですか?それともロットワイラー?そうですね、猫に対してはバッチリ働いてくれると言えるでしょうね」



その後、街でランボルギーニを運転していたブルースはアルフレッドに電話をしていた。
「アリゾナに海軍の貨物輸送機を見つけました」とアルフレッドは言った。「非常にふさわしいと言えるでしょう。その紳士は飛行までに1週間かかると言っています。 そして、彼は現金を受け取る。乗務員はどういたしましょうか?」
「韓国の密輸業者がいいね。彼らはピョンヤンまでレーダーの下を通って飛んでくれるだろう。アリバイについても考えてくれたかい?」
「ええ、もちろん」



レイチェルとハービーの刺激的な夜は、バレエを見る代わりに、喫茶店で1杯のコーヒーを飲んで、早めに家に帰るものとなった。彼らが着いた頃には、劇場は閉まっていた。誰かがチケット売り場の窓にタブロイド紙の一面をテープで貼りつけていた。見出しの下にはくちばし状のキャップをかぶり、半袖の白いシャツを着て微笑んでいるブルース・ウェインの写真があった―

愛の船―億万長者の逃走
モスクワ・バレエ団全員とご一緒に


ダークナイト ノベライズ 翻訳 TEN

2008-12-05 21:13:08 | ダークナイト・翻訳
                 

その月曜日の朝、ゴッサム・シティの天気は素晴らしかった。冬が過ぎ、そして春が到来していた。9時30分頃、地方検事のハービー・デントは裁判所の階段を駈け上がっていた。そして9時31分、彼は部屋の一つに飛びこんだ。法廷は弁護士や見物人、制服警官と、そしてその日裁判にかけられることになっているサルヴァトール・マローニで満たされていた。
「遅れてすまない」と言って彼がレイチェル・ドーズの隣の検察官テーブルについたので、皆デントに何も言わなかった。
「あなたはどこにいたの?」レイチェルはささやいた。
「君が担当しなければならないと心配してたのかい?」デントは笑顔を見せ、アタッシェ・ケースを開けた。
「僕は概要をすっかり知り尽くしているよ」デントの笑顔が広がり、そして彼はドル銀貨をポケットから出した。「それじゃあ、公平に決めよう。表なら、僕が担当。裏なら、彼の全ては君のものだ」
デントは空中でコインを弾くと、それを捕えて手首の上でぴしゃりと叩き、それから覆っていた手をよけてレイチェルに見せた。
「表だ」とデントが言った。「君の負けだな」
「あなたは誰がリードするかをコインで決めているの?」
「僕の父親の幸運のコインだ。そういえば、これが君との初デートを僕に届けてくれた」
「私は真剣よ、ハービー。このようなことを運に任せてはだめ」
「僕はしない」デントはウィンクした。「僕は僕自身で運をもたらすのさ」

                 

通路の向こう側の被告用テーブルから、マローニは言った。「DAの仕事とは市長とのゴルフとか、そんなものをすることだと私は思っていたが」
「ゴルフの開始時刻は1時30分だ。君の人生の残りを施設に入れて過ごさせるための時間は十分にあるさ、サリー」
執行官がその場にいる全員に向かって立ち上がるように言った。そして法廷が開廷した。裁判官は彼のベンチへと入ると彼の小槌をドンと打って、デントに最初の証人を喚問するように言った。
「私は証人としてウィルマー・ロッシを呼んでいます」とデントは言った。
制服を着た警備員二人が粗末なスーツを着ているやせた男を連れて来た。その男の名はウィルマー・ロッシ。彼は証人台に座って宣誓し、近づいてきた地方検事を見つめた。
デントはロッシに向かって体を傾かせた。「カーマイン・ファルコーネが獄中にいるのならば、誰かがいわゆる『ファミリー』を動かすために出世したはずですよね?」
ロッシはうなずいた。
「今日、その人物は法廷にいますか?」
再び、ロッシはうなずいた。
デントはマローニを凝視するために頭を回した。彼は微笑んでいた。「では、私達のために彼を特定してくれますか?」
「検事さんよ、あんたは俺を見つけたんだ」ロッシは言った。「その人物は俺だ」
デントはロッシの方へ戻った。その顔はもはや微笑んでいなかった。「私はあなたから、この男性、サルヴァトール・マローニが、ファルコーネ・クライム・ファミリーの新しいボスであるとの宣誓陳述書を得たはずです」
「マローニ?、奴は身代わり。組織のブレインは俺だ」
ギャラリーの方から、短い笑いが起きた。
デントは裁判官を見上げた。「彼を敵意のある証人として扱う許可を下さい」
「敵意!」ロッシが叫んだ。「俺が敵意というものを見せてやる!」
ロッシは彼の側から手を上げ、どうしたものか、銃を持っていた。彼は4フィート離れたところであからさまに、デントの顔に狙いをつけ、引き金を引いた。銃のハンマーが撃針に倒れカチッという音がしたが、全く弾が発砲されなかった。デントは一歩前進すると、左手で銃をつかみ、右の拳を握ってロッシの口を殴った。ロッシは証人用の椅子に沈み込み、血を吐いた。
デントはロッシの武器から弾倉を取り外すと床へそれを落とし、そしてマローニが座っていた場所の方へと行った。彼はマローニのテーブルの上に空の銃を落とすと、さりげなく言った。「セラミック素材の28口径。それが金属探知機に反応しなかった理由だ。それと中国製であると私は記憶している」
証人席に戻ると、彼は言った。「ミスター・ロッシ、私はアメリカ製の銃を買うように勧めます」
デントはネクタイを直して、執行官が証人席からやっとの思いでロッシを運んでいるのを見た。
「閣下」デントは裁判官に言った。「私はまだこの証人への質問を終えていません…」


1時間後、デントはレイチェルと共に裁判所のロビーを通って大股で歩いていた。彼女は彼についていくのに苦労していたのでわずかに喘いで言っていた。
「君がとても喜んでいるのが嬉しいよ、レイチェル」とデントは言った。「おお、ちなみに僕は元気だ」
レイチェルはデントが立ち止まるまで、彼の袖を引っ張った。「ハービー、あなたはゴッサムのDAよ。もしも撃たれていたなら、あなたは仕事をしていない。もちろん、あなたが動揺したと言うのなら、私達は一日の残りの時間に休みをとることができるのよ…」
「無理だよ。僕は重犯部の代表とここで会うことになっているんだ」
「ジム・ゴードン?彼は友人よ。感じよくするようにね」
デントとレイチェルはさようならのキスをした。そして彼は再び歩き始めた。デントは短い廊下を曲り下って、彼のオフィスに入った。ジェームズ・ゴードンは既にそこにいた。彼は立って、デントと握手した。
「まず言いたいことは、君はとんでもない右クロス(a right cross)を持っているということだ」とゴードンが言った。「サルの奴、面目丸つぶれで歩いているだろうな」
「そうだな、マフィアに関して良い点は、彼らがあなたにセカンド・チャンスを与え続けるということだな」
デントは机に行くと、引き出しから札束を取り出した。
「軽く照射を受けた紙幣だ」とゴードンが言った。
「市警には高価な代物だな」とデントは言った。「誰かの援助を?」
「我々は様々な機関と連絡を取っていて―」
「それを保存してくれ、ゴードン。私は彼に会いたい」
「我々の公式方針はバットマンと呼ばれている自警団員を直ちに逮捕することだ」
「では、本部の上の照明は?」
「君のまわりで懸念があるなら…故障している設備については…メンテナンス係かカウンセラーの前でそれらを取り上げてくれ」
デントは苛立ちを見せつけながら、彼の机の上に札束を投げた。「私はゴッサムで名の知られているマネーロンダリングの工作人の全てを投獄してきた。だが、マフィア達はまだ金を回収している。私はあなたとあなたの『友人』がこの街における最後の獲物を町で見つけ、大胆にも、彼らの傷口と財布の摘発を試みているのだと思ったが、あなたは私を仲間に入れることを考慮しているのかな?」
「この街で活動していくには、限られた人員だけで情報をやり取りした方が安全なんだ」
「ゴードン、私はあなたの特別捜査班も、そこが私の内務調査部時代に調査した汚職警官でいっぱいであることも気に入らないんだ」
「私は、君がIAで有名になっていた頃に調査した警官達と働けなかったら、単独で動かなくてはならないんだ。私は理想主義者ではないから、政治上の要点は分からない。だから私は私ができる範囲で最善を尽くすしかないんだ」
「いいかい、ゴードン。あなたは誰が我々の背後にいるかを私に話すことなく私に5つの銀行の捜索・押収の令状を出してくれと言っているのかい?」
「私は君に銀行の名前を教えることができる」
「なるほど、それがスタートだな。私はあなたに令状を届けるつもりだ。だが、私はあなたの信頼が欲しい」
「私に君を売る必要はないよ、デント。私達は皆、君がゴッサムの光の騎士であることを知っている」
デントはにやっと笑った。「彼らはMCUで私に異なる呼び名を付けていたと聞いているがね」


1マイルほど離れた地区で、ルーシャス・フォックスはウェイン・エンタープライズの重役会を統轄していた。非の打ちどころがないスーツと、きちんとした散髪にもかかわらず、フォックスはそこにあまり似つかわしいとは言えなかった。だが、彼がウェイン・エンタープライズの最高経営責任者であることは事実だった。金持ちになったことは、彼の態度や外観について何も変化をもたらしていなかった。むしろ、彼は元々彼が実際にそうであった、lQを持っている、偶然チャートから離れている発明者ように見えた。彼のボスであるブルース・ウェインが7年間どこかへと行っていて戻るまで、ルーシャスとって彼は想像の産物で、全く快適だった。彼はトーマス・ウェイン(ブルースの父)のお気に入りであることが知られていた。そして、ウェイン夫妻の死後、徐々に会社を統制していった経営陣の新任の幹部達は、ルーシャスをウェイン夫妻が信じていたようには信用しなかった。彼らは、彼を完全には解雇しなかった―彼は理由について知らなかったし、気にかけもしなかった。その代わり、彼らは四半期分ごとにだんだんとビジネスの取り扱い度が少ない部門へと追放した。迅速な利益の取り引きよりも研究に専念した部門へと。それから、彼らはその部門を地下二階へ再配置して、その予算を大幅削減し、彼らがすぐに解雇させたスタッフをルーシャスに担当させて、彼に彼の新しい努力での運が最上ならばよいと思っていた。ルーシャスにとっては申し分なかった。それ以上だった。それは木の下でのクリスマスの朝のような気分だった。彼が遊ぶためのおもちゃはすべて揃っていた―他の者はそれらを「研究プロジェクト」と呼んでいた―そして、それらで遊ぶ時間はたっぷりとあった。彼は地階私室で一人きりだった。彼は、彼自身の時間、本、意見の管理をしていた。
金銭に関して―ウィリアム・アールという名の大きいオフィスの新しい占有者は、彼自身をとてもスマートで、詳細を指向し、組織を完全に管理しているキャプテンであると思っていた。フォックスは、彼が能なしだと思っていた。ルーシャスにとって、まもなくコンピューターが彼の父の時代にレジが必要とされていたのと同じくらい不可欠なツールになるということは明瞭であったので、デジタル知識がアメリカのビジネスで記録を残すという望みを持った者達のための必修科目になる前に、彼はコンピューターについて独学していた。
ルーシャス・フォックスにとってブルース・ウェインは、もしかするとゴッサム・シティで唯一、アールより愚かであるかもしれないと思った人物だった。それから、予想外にも、若いウェインは彼自身をフォックスの人生に差し込んだ。彼はフォックスがしていたことに本当に興味を持っていて、すぐにそれを理解できるほど聡明だった。だがフォックスはブルースに好奇心以上の何かがあると気付いた。彼は何かを必要としていた。複数の何かを作っていた―必ずしも浪費家のおもちゃであるとはいえない何かを―例えばハイパワーな乗り物、ボディアーマー、登山用具、および武器などのような。
ブルースは自分のことについて、決してフォックスに説明しなかったが、ブルースが夜に行っていたことがフォックスの理解を疑わなかったということは明らかだった。フォックスが幸運にもブルース=バットマンという繋がりを知らなかったという見せかけは、彼らの間のお約束の冗談になっていた。
ブルースはフォックスの人生を変えた。完全に。彼とブルースがアールの退出に関して一緒に働いた後、フォックスはウェイン・エンタープライズウェインの代表になり、最終的にトーマス・ウェインのビジョンを実行するために彼の腕前と知恵を使うことで活気づいていた。フォックスは、彼が監督した帝国について個人的に東海岸の「アンチ・エンロン」と記述していた。そのすべてが良いことであったが、フォックスのブルースへの本当の貢献はそれらの出来事二つの間で起こったことで、決して承認されないことだった―それはブルースの夜の活動におけるフォックスの共犯だった。まあ、フォックスはハロウィン・コスチュームを着て犯罪と戦うことについては馬鹿げた考えであると思っていた。それがどれくらいの効果を挙げているかを見るまでは。それから彼は、バットマンの道具製作者という、彼自身の秘密のアイデンティティを楽しみ始めた。彼とブルース、それから何人か(ゴードンとその仲間、そして地方検事のデントのような)は都市を救っているように思われた。それは行う価値があるものだった。そのうえ、彼は楽しんでいた。彼はこの時点での人生を、一般に退屈し挫折して、公園に行ったり、スポーツを見たりすることで多くの空き時間を費やしているような、年を取って丸くなった人物になっていただろうと想像した。その代わりに、彼には使命があった。それだけではなく、彼は使命を持つことが好きだった。彼の経験、手腕やエネルギーを集中させるその挑戦が好きだった。唯一の、そして非常にふさわしい人格の才能と知性の持ち主―バットマンの発明者。まさにその通りだった。


そのとき彼は、会議用テーブルでくつろいで座っていた。少し前に乗り出し、フォックスが所有しているものより高価なスーツ姿の荘厳なアジア人男性の言うことを熱心に聞いていた。彼はルーシャス・フォックスがラウ氏と呼んでいた人物(L.S.I.ホールディングスという企業体の社長)だった。7人の他の人物(フォックスのスタッフのメンバー)はテーブルのまわりに座った。そして、彼ら全員がラップトップコンピュータにメモをしていた。ブルース・ウェインは大きい窓の正面の、テーブルの上座に座っていた。
ラウが話していた―「中国では、L.S.I.ホールディングスがダイナミックな新しい成長を遂げております。中国でのウェイン・エンタープライゼスとの共同ベンチャー事業は強力な企業をもたらすでしょう」フォックスは慎重な声で返答した。

                 

「では、ミスター・ラウ。私達の興奮を他の役員やウェイン会長の分まで代弁して、述べさせていただきます」ラウはテーブルの上座を見た。 ブルース・ウェインの頭が下げられ、明らかに眠った状態の彼の顎が胸のところで曲げられた。
全員が起きて、静かに部屋を出た。フォックスはエレベーターまでラウをエスコートした。そしてドアが開いたとき「OKです。ミスター・フォックス。皆、誰が本当にウェイン・エンタープライズを動かしているか分かっていますよ」とラウが言った。
「我々の仲間が業務を終えたらすぐに、連絡をします」とフォックスが言った。
ラウはうなずいて、エレベーターに入った。フォックスはドアが閉まるのを見ると、コールマン・リースという名の弁護士が待っていた方へと向きなおった。
「サー、ミスター・ウェインはどのように彼の信託財産が補充されているかについて興味を持っていないと私は分かっています」とリースは言った。「しかし、率直に言うと、それは恥ずべきことだ」
二人は廊下を歩き始めた。
「君は業務の心配をしてくれ、リース君」とフォックスが言った。「ブルース・ウェインについては私が心配する」
「もうやっています。数は固いでしょう」
「もう一度やってくれ。信託財産が尽きたら困るはずだ、そうだろう?」
フォックスが会議室に再び入った時、ブルース・ウェインはそこに立っていて、窓から外を見つめていた。
「またもう一つの長い夜を過ごされたんですか?」フォックスは尋ねた。
ウェインは振り返り、うなずき、そして微笑んだ。
「この合弁事業はあなたの考えでしたが、コンサルタントは気に入っているようです」とフォックスが言った。「しかし、私は確信できません。L.S.I.社は毎年8パーセントの成長をしています。まるでぜんまい仕掛けのように。彼らには、帳簿から収入の流れがあるに違いありません。恐らく不法でしょう」
「分かった」とブルースは言った。「取引は中止にしよう」
「既にご存じでしたか?」
「帳簿の詳細を知る必要があったんだ」
「他に何か私に頼みたいことはありますか?」
「そうだな…新しいスーツが必要だ」
フォックスは彼のボスを精査した。「確かに3つ穴ボタンは少々90年代(古い)スタイルのように思えますね」
「フォックスさん、僕はファッションの話をしたいんじゃないよ。機能の問題だ」
ウェインはアタッシェ・ケースから数枚の大きな青い紙を取り出すと、テーブルの上でそれらを広げた。数分間、フォックスはそれらの図を調べた。それから、彼が言った。「あなたは、頭を回せるようにしたいようですね」
「車道でのバックが確実に楽になる」とブルースは言い、微笑んだ。
「私は自分で何ができるかを理解しています。今夜、あなたが新しい道具を必要としないと信じますよ」
「ああ、フォックスさん。今夜はバレリーナと会う約束があるんだ」

ダークナイト ノベライズ 翻訳 NINE

2008-12-05 21:01:49 | ダークナイト・翻訳
ジム・ゴードンは誰か(おそらくバットマン)が警察の周波数を使ってパトカーと救急車を要求しているのを彼の覆面パトカーで聞いていた。彼がラミレスに言ったこと―バットマンは忙しい―というのは正しかった。いいぞ。しかしゴードンの心は既に他の事件(その日の早くに起こった銀行強盗)へと向けられていた。
彼はバットマンからその事件に対する見識を得ることを望んでいた。そういうわけで、彼はサーチライトの隣に立っていて1時間を無駄にしていた。


                 
しかしバットマンは現れなかった。また、それをゴードンの仕事の妨げにするべきではなかったので、そうはしなかった。
彼はパトカーの列の近くに駐車した。レポーターや見物人達からの叫び声を無視して、彼は銀行のロビーに入った。
彼はしばらくの間、鑑識課のチームが仕事をするのを見ていた。それから彼はマクファーランドという名の刑事に呼びかけ、尋ねた。「何か監視カメラから分かったことは?」
マクファーランドは粒状写真の束をゴードンに手渡した。「奴は、我々の前に顔を出すことに抵抗はないみたいです」
ゴードンは写真を見た―口に傷跡のある道化が横目で監視カメラの方を見ていた。それから彼は、目を上げて出納係の檻の近くに影の動きをちらっと見た。
彼はマクファーランドに「すぐに戻る」と話すと、立ち去った。
彼は暗闇の中でバットマンに加わった。「やったな」
バットマンはうなずいて、写真を凝視した。「また奴か。他の者は?」
「三流のちんぴら集団のようだ」
ゴードンは、GRUMPY(不機嫌)の体の横の、床にいくつかの20ドルの紙幣が散らばったままの場所へ行き、一握りをすくい上げた。そしてバットマンに持っていくと、彼はベルトから取った装置でそれらをスキャンした。するとその装置が鳴った。
「私がきみに与えた(印のついた)紙幣だな」とバットマンが言った。
「私の部下達はそれで数週間彼らから薬を買った」とゴードンは言った。「この銀行はマフィアの銀行の一つだ。それらの銀行は5つある―我々は、それらの汚れた金の大部分を見つけた」
「変革の時が来たな」
ゴードンは写真を振った。「ジョーカーの奴はどうする?」
「マフィア全員より一人の男を優先するのか?ジョーカーについては待たなければならないだろう」
「我々は全ての銀行を同時に摘発しなければならない―そのためにはSWATチームのバックアップを…」ゴードンは一握りの紙幣をつかんだ。「新任のDA(地方検事)がこの噂を耳にしたら、彼は参加したがるだろうな」
「彼は信用できるのか?」

「彼を仲間に入れないようにするのは困難だ」とゴードンは言った。「彼はきみと同じくらい頑固だと聞いている」
その最後の言葉を聞いていたのは空気だけだった。ゴードンは肩をすくめると、再び部下達のところへと戻った。


アルフレッド・ペニーワースは、古いミュージックホールの小曲を口笛で吹きながら、ウェイン・ペントハウスを通って動いた。そしてブラインドを開け、色合いを上げて、窓のどれかから本当に素晴らしい眺めを賞賛するために時折止まった。彼は台所に入ると、オートミールとカップ一杯のコーヒーのボウルをトレイに置いて、それをベッドルームへと運んだ。そして彼は開いていた部屋で立ち止まって、まだ用意されたままのベッドに眉をひそめた。
それから彼は台所に戻ると、銀の魔法瓶をコーヒーで満たして建物のガレージへと続くエレベーターに乗った。
7分後、彼は鉄道駅構内の隅にウェイン家のリムジンを駐車して出ると、魔法瓶をさびた貨物輸送容器のハッチへ運んで、それから中へと入った。
シュー。 床が下ろされた。アルフレッドは長い間降下して天井の低いコンクリートの部屋へと行った。普段はウェインのアパートに通じているトンネルから入っていた。しかし今日は、エレベーターの入口が使用可能かどうか試した方が賢明であると考えて、それが正しかったことを知って彼は喜んだ。100年前、ハイラム・ウェインは蒸気による地下鉄汽車の実験をするためにこの部屋を建設させた。汽車のアイディアは失敗であったことが判明したが、ウェイン家はハイラムが彼の実験のために使った土地の所有権を保持した。皆がこの部屋の存在を忘れていた。ブルースはおじからそこについての話を聞いていたが、その一部が最近の発掘によって見つかるまではその存在を疑っていた。ブルースはいつかそこが役に立つかもしれないと感じて、アルフレッドとルーシャス・フォックスのかけがえのない援助を受けながら、水を汲み出し、壁を補強するなど、そこで住むために必要なこと全てをした。
バットマンの大きな乗り物は部屋の中心に置き、コンピューターの一群の近くにはプリンター、作業台に電動ツール、そしてマイクロウェーブ機があった。



ブルースはそれらが散乱している所に座って、GCTV(地元のオールニュースステーション)にチャンネルを合わせてテレビを見た。



「ウェイン・メイナーが再建されたら、きっと今の状況よりも良くなるでしょうな。あなたは大邸宅かペントハウスのどちらで眠らずに過ごすか決めることができます」アルフレッドは言うと、魔法びんのキャップにコーヒーを注いだ。
アルフレッドはブルースにキャップを手渡して、彼のマスターの作業の手助けに加わるために近くの椅子に座った。ニュースレポートが終了すると、ブルースは明らかにその放送が始まるまで彼が行っていた作業(チェチェン人の犬のうちの1匹が彼を噛んだところからその上までの深い傷を縫い合わせる作業)に戻った。
アルフレッドは彼から針を受け取ると言った。「あなたがご自身で傷を縫合なさると、血まみれ状態になりますね」



「だけど、僕は自分のミスから学んでいるよ」
「それならあなたは今ごろかなり博識であるべきです」アルフレッドは治療で忙しかった。
「今回の問題は僕のアーマーなんだ」ブルースは言った。
「重過ぎてね。もっと速く動けるようにする必要があるんだ」
「私はフォックスさんにお願いできると確信していますが」アルフレッドはさらに傷をじっと見た。「あなたは虎にでも襲われたんですか?」
「犬だよ。大きい犬」
しばらく、どちらも話さなかった。最終的にブルースは言った。「アルフレッド、昨夜は今までよりも多くの僕の模倣者がいたんだ。銃をもってね」
「恐らく、あなたが彼らの何人かを雇えば週末に休むことができましたよ」
「僕は人々を奮い立たせたいとは言ったけど、こんなことを望んでいた訳じゃないよ。僕は銃や殺しには決して頼りたくない。でもアルフレッド、これらのギャング団の奴らがそれを危険にしているんだ。罪のない人が奴らの気まぐれな行動で死んでいたかもしれないんだ。それに僕は奴らの分まで非難されたくない!」
「分かっております、ブルース様。しかし事態は良い方向へと向かっています。例えば、新任の地方検事を見てください」
「僕は見てるさ。密接にね。彼が信用できるかどうかを知っておく必要がある」
「あなたが興味をもっているのは彼の人柄か…それとも彼の社交界についてでしょうか?」
「レイチェルが誰と時間を過ごそうと、それは彼女の自由だ」
「なるほど、あなたが私の休日について来ないと信じます」
アルフレッドはサイドテーブルで見た多くの監視写真を持ち上げた。レイチェル・ドーズはハービー・デントと一緒に行動していた。そしてその期間は明らかに過去数週間、あるいは何カ月にも渡っていた。



「あなたはそれを確信できますか?」
「君の受け取りかたによるけど、そうしたかもね」とブルースは答えた。
「限界を知ってください、ウェイン様」
「バットマンに限界などないよ」
「おや、あなたにはあります」
「僕にはそれを知る余裕はないよ」
「では、あなたがそれを見つけた日にはどんなことが起こるでしょうか?」
「君はこう言うに違いないさ、『だから言ったのに』とね」
「ブルース様、私ですらその日にはそうしたいと思わないでしょう」「おそらくね」

ダークナイト ノベライズ 翻訳 ONE 

2008-11-10 23:46:41 | ダークナイト・翻訳
それは記憶と悪夢の両方だった…
バットマンは先頭車輌に達し、一瞬揺さぶられながらどういう選択肢があるか考え、そして作戦を練る時間は無いと判断を下した。
彼は瞬時に行動しなければならず、直感に従うことにした。
もう何秒も残っていないかもしれなかった。
彼は車両の縁に座り、後ろ向きに足を振った。ブーツが飛散防止ガラスに当たり、窓のフレームから蹴りはずした。ガラスの一部が座席に落ちたときには既にバットマンは空の窓枠を通り抜け身体をひねり、車内に降りたっていた。彼は四つん這いになって列車の前部に面した。床の影が後ろから引き付けられていたことを警告していたので、時間をかけずにターンし、後方に向かって肘打ちをした。ラーズ・アル・グールの部下の一人の顔に当たり、相手は後ろのドアの方へ倒れた。
マイクロ波放射機が通路を塞ぎ、ハム音を発してわずかに振動していた。 その後ろにはラーズ・アル・グールが立っていた。
「まだ死んでいなかったのか」とラーズが言った。
「見ての通りだ。ラーズ、もう終わりにしないか。これ以上血を流す必要はないだろう」
「いやいや、ブルース、それは間違いだ。大いにあるとも」
「私がおまえを止めてみせる」
「いや、止められないさ。なぜなら止めるには私を殺さなければならないが、おまえはそうしないからな」
「本当にそう思うのか?」
「ああ。おまえはもう一人の父親が死ぬのを見るのは耐えられまい」 ラーズは機械をまわりこんで前に出ると、仕込み杖を抜いた。「だが、私は今までに何人も子供が死ぬのを見てきた。もう一人くらいどうということはない」
ラーズは進み出た。片手に剣を構え、もう一方には鞘を手にしながら。 彼は剣でフェイントをかけておいて、杖をバットマンの頭をめがけて振った。バットマンはそれを籠手の飾りで受け、ひねり、杖は肩越しにまわりながら飛んでいった。ラーズはバットマンの胸を剣の先端で突いた。 バットマンは身体をまわし、剣は胸をかすめてコスチュームを傷つけた。ラーズは蹴りを入れた。バットマンがサイドステップでよけると、ラーズはさらに蹴って腰にキックを当てた。バットマンがよろめき、立ち直ろうとしたとき、ラーズはバットマンの脳天に剣をふりおろした。だがバットマンは頭上で手首を交差させ受け止めると、剣を両手の籠手の飾りでつかまえた。
「またそれか」とラーズは言った。「おまえには新しい技はないのか?」
「これはどうだ?」バットマンが両腕を別方向に引くと、剣はまっぷたつに折れた。それからラーズ・アル・グールの胸に右手の掌底を当て、ラーズが後ろによろめくと、ジャンプして座席に乗り、運転席へと走った。
正面の窓を見ると、ウェイン・タワーが高くそびえ立っていた。彼はブレーキ・レバーをつかんだが、レバーを引く前にラーズが杖を詰め込んだ。バットマンはそれを抜こうとしたが、ラーズに頭を殴られ、ウインドシールドに飛びこんだ。ラーズは再び殴り、バットマンが倒れて仰向けに転がると、ラーズは馬乗りになって両手でバットマンの首を絞め、親指を合わせて喉を押さえた。

                 

「恐れるな、ブルース…おまえは私と同じくらいこの街を憎んでいるが、ケープをまとっているだけの普通の人間だ。だからおまえはこの街の不正と戦うことができず、この列車を止めることもできない」
「誰が列車を止めると言った?」
列車が揺れ、ラーズ・アル・グールの手がわずかに緩んだ。彼はウインドシールドから線路が ねじ曲がって煙をあげているのを見た。
「おまえはいつまでたっても戦いの状況に気を配らないな」とバットマンは言った。
「敵に気をとられすぎだ」
彼はラーズ・アル・グールの顔を右の籠手で殴った。ラーズは横に倒れ、バットマンは素早く立ち上がった。彼は左手でラーズの髪をつかみ、右手でバッタランをマントの下から出した。彼は武器を高く振り上げた。そのまま振り下ろせばラーズ・アル・グールの頭蓋骨に突き刺さる。
ラーズは微笑んだ。「ついにおまえも必要なことをできるようになったのか」
バットマンは武器をウインドシールドに投げつけた。ガラスにひびが入り、そして壊れた。「私はおまえを殺さない…」
バットマンはベルトから小型爆弾を出し、車輌の後ろのドアに投げた。爆発し、ドアが消えた。
「だが、おまえを助ける必要もないだろう」
バットマンはマイクロ波放射機の裏側へ走り、ケープのポケットに両手を突っ込んだ。ケープは硬くなり、翼に変化した。
バットマンは上昇気流をつかまえてそのまま二百フィート程高く舞い上がった。彼は下界を見下ろした。タワーの壁をなめる炎が見え、その中にモノレールの車輌がシルエットになって浮かんでいた。南には消防車の赤い警告灯が点滅し、遠くサイレンの慟哭が風の音に混じって聞こえていた…
ブルース・ウェインは目を開くとすぐさま、悪夢の記憶を消し去って、ベッドに座り再びシルクのシートの心地良い感触を肌で感じた。彼は脚を床の上で揺らしながら立つと、窓に向かって歩きだした。彼は東の空の輝きの中で見ることができた。下の通りにはウェイン・タワーに通じるモノレールの大きな焼け跡―目に見えるものでは唯一のラーズ・アル・グールと彼の戦いの証が残存していた。
彼にとって、それは長い旅の終わりだった。
彼にはその旅の本当の始まりが"いつ"であったのかわからなかった。その"時"とは、幼少時代にレイチェル・ドーズと一緒に庭で遊んでいて井戸に落ち、その洞窟に生息していた何千匹もの蝙蝠の群れに囲まれたときのことなのだろうか?
苦しい体験は長くは続かなかった。数分の間に、トーマス・ウェインがロープをつたって降り、力強い腕で息子を抱きかかえ、日の光の当たる所まで彼を戻した。しかしその短い間に、寒い暗闇の中で恐ろしい、奇怪なものが彼のまわりを羽ばたいていたという経験はどんな子供の記憶にも傷跡として残っただろう。
だが彼にとっての最悪の出来事が起きるのはまだ後のことだった。それはオペラ公演の観劇後にブルースと彼の父母が横町を歩いていた夜のことだった。追剥がブルースの両親を殺害したのだ。
銃の引き金が2回引かれた―バン、バン―そして母の真珠がこぼれ落ちて彼女の血で染まり、父は母の横で崩れ落ちた。ブルースは舗道で追剥の足音を聞きながら、彼の人生がその日から永久に変化してしまったということを思い知った。

                 

これが本当の始まりであろうか? きっとそうなのだろう。彼の両親が亡くなった瞬間、ブルース・ウェイン―彼であったもの、彼がなるかもしれなかったもの―の何もかもが失われてしまった。
しかし他の瞬間に、ウェイン夫妻の死から始まった変化のプロセスを加速させたことが幾つかあった。
ゴッサム・シティを出るという彼の衝動的な決心: カーマイン・ファルコーネとの遭遇で打ちのめされ出血したあと、彼は顔に冷たい霧がかかり、鼻孔に魚を腐食させたにおいがする状況でドックの腐りかけの板を偶然見つけ、飛び出して錆付いている貨物船の後から垂れ下がったチェーンをつかんで乗り込んだ。そして文明の下部の深くへ彼を連れて行くことになった冒険の旅を開始した。彼は、怒りや狂気に満ちた存在、誰が彼らの仲間を食い物にしたのか、泥棒やサディスト、そして殺人鬼などの存在に会い、彼らの仲間に加わった。そして彼らを理解しようとして、結局彼らの内の一人となっていた… ラーズ・アル・グールとの出会い: それは刑務所の独房の中でのことだった。

                 

ブルースは食堂で数人の他の囚人をひどく負傷させたあとに、懲罰房に引き渡された。背が高く、厳粛な雰囲気の男はブルースを釈放させるだけではなく、償還も提供した。ブルースはそれを受け入れ、すぐに地球で最も危険な男の従者になったのであった…
修道院での数年間: ラーズは彼の主人であり、そして彼の救世主であった。そして、世界には知られていない、ヒマラヤ山脈のふもとの修道院で、ブルースは戦闘において彼をほとんど無敵にした精神的な規律と身体的技術を学んだ。 トレーニングは厳しく、情け容赦のないものだった。ミスは許されず、通常それは死をもたらした。しかし生き残った者達はまるでシャイなスーパーマンだった。

                 

そしてブルースは彼ら全員の中でも最高だった。彼はラーズ・アル・グールが数千万人を虐殺することによって人類を救うつもりであるということを知るまで、ラーズの部下として生きることを何度か想像していた。そして最初の虐殺の標的はゴッサムシティの市民であった…
彼には、他の人々からの助けがあった―幼なじみの恋人であり、穏やかな理想主義で彼を奮起させたレイチェル・ドーズや彼に必要な道具と技術を提供してくれるルーシャス・フォックス、そして彼の最も親しい友人であり忠実なアドバイザーのアルフレッド、そしてさらに、彼の先祖のウェイン王朝さえもが彼の活動に必要な莫大な財産を融資してくれた。
そのお金は、若いブルースが自らに非常に良い教育を受けさせることを可能にした。彼は12歳になるまで地域で最高の私立学校に通っており、それから校長が「これ以上我々が導き与えられるものは何もない」とアルフレッドに話したとき、彼は一連の家庭教師と勉強した。科学において、彼は常に素晴らしかった。言語においてもまた優れていた。歴史はまずまずで、社会科学は中くらいの成績だった。そして教養学科は平凡だった。演劇を除いては;彼は脚本を読むのが好きだった。そして彼はかつてアルフレッドが英国の子役であったことを知り、彼は多くの(特に役者が効果的に演じるための方法などについて)質問をした。
ブルースが14歳になったころまでに、アルフレッドは大邸宅の大きい窓の一つから、若いブルースが敷地を走り回っていたり、木にぶら下がって登ったり、時々ただ激しく、遠くまで岩を放り投げているのを注意して見ることに慣れていた。ブルースは若い人々のために最近つくられた地元のサッカーリーグの話について耳にした。そして彼は地元の学校のいずれにも所属しいなかったが、なんとかチームのうちの一つに加わることができた。しかし彼は二度目の練習後にやめた。「僕はロッカールーム・タイプの人間ではないと分かってくれよ」と彼はアルフレッドに話した。そして二度とその話題について言及しなかった。しかし彼はそのチームを捨てたわけではなかった。
彼は16歳のとき、彼らとスキーに行くことができるかどうかをアルフレッドに尋ねた。アルフレッドは今までスキー場の近くに一度も行ったことはなかったのだが、彼はその準備のためにいくつかの電話をかけて、バーモントの高価ではあるが素晴らしいリゾートを見つけ、そこの予約のために電話をして、スキー道具の買い物に行った。
彼らはそこに車で行くと決めた。しかしそれは間違った選択だった。 ひどいブリザードが突然襲い、運転は遅くて危険なものになった。彼らは10時過ぎになってから何とかチェックインした。デスクのところにいるかなり若い女性が、スキーリフトは夜の間は閉じられていて6時までは開かないけれども、ラウンジなら開いていると言った。そこには、燃えさかる炎と感じのよさそうな人達がいた。アルフレッドは、それらを良く思ったが、ブルースは疲れたのでごめんを被った。アルフレッドはおやすみと彼に告げて、ラウンジに入り、とても楽しい時間を過ごした。彼はホットサイダーを飲みながら、引退し趣味でベゴニアを栽培している学校教師と話していた。アルフレッドは就寝する前にブルースの所に寄ることに決めた。そして彼はブルースの部屋が空で、ベッドに誰も寝ていないと分かった。
「承知しておくべきでした。」彼はぶつぶつ言った。「本当に疲れます!」
ブルースは駐車場で車に荷物を詰め込んでいた男性から一組のかんじきを買った。彼はそれをつけ、スキーをかつぐと、熟練者コースの斜面への長旅を開始した。それは遅くて、長ったらしい旅だった。スリップをいっぱいして、スライディング、および腰までの高さでスノードリフトをした。真夜中の少し過ぎたころ、ブルースはついに山の頂上に立っていた。空は雲がなく、月の光が雪の上で照り映えていた: まるでクリスマスカードのようにあっといわせる程の美しい夜だった。ブルースは単に通過しただけだった。彼には任務があった。 彼はかんじきを脱ぎかえて、スキーをつけ道の先端でバランスをとった状態で立った。誰かが彼にむかって叫んだ―おそらく夜間警備員だった。ブルースはその叫びがあった方向に頭を回して、二本の指をささげて押し、会釈した。
氷の小片が彼の頬を刺し、そしてコースが彼に会うために上に急いだので、彼のスキーは粉の上にしゅっと音をたてた。そして世界がひっくりかえるまで、彼は楽しんでいた…
警備員は警察を呼び、警察はレスキュー・パトロールを呼んだ。そしてレスキュー・パトロール(二人の医療従事者)は浅い谷間のふもとで意識不明のブルースの額全体に血の深い傷を見つけた。彼のスキーの一つが真っ二つに近い状態で横たわっていて、もう片方が不自然な角度で彼の脚の方に傾いていた。
一時間後、アルフレッドはロッジの医務室に入って、ブルースがベッドに支えられているのを発見した。そして彼の左下肢がキャストに入っていて、彼の額には白い包帯が巻かれていた。
「私はあなたが本当に休んでいると思っていたのに」と、アルフレッドが言うと、ブルースは「僕は戻ってこれないんじゃないかと思ったよ」と言った。「頭を少し打っただけさ。ではまたの機会にお願いできるかな?」
アルフレッドは医者(近くの町から呼び出された)と相談し、そして彼は11針縫うことになった彼の目の上の切り傷など、軽傷ではあるがたくさんの挫傷を負っていた。しかし医師は、アルフレッドがブルースをゴッサムに連れて行く事を望むなら、問題が全く無いと保証できる適切な輸送を用意すべきであると結論を下した。
「適切な輸送機関」は大きく、二つのローターのあるシコルスキー・ヘリコプターだった。そしてそのヘリコプターはウェイン・メイナーの横の土地に着陸した。ブルースはその夜、彼自身のベッドで眠った。
包帯とキャストが外れ、挫傷が癒えると、ウェイン家の主治医はブルースが無傷であると言った。
ブルースは二度とレクリエーションとしてはスキーをしなかったが、彼はラーズ・アル・グールの修道院にいたときに一度、雪でおおわれていている山の向こう側に眠らずに3日間かけて行って、クロスカントリースキーをした。また別の日、ラーズはほとんど垂直な一枚岩の氷の下側でスキーをするように彼に命じた。
結局ブルースの関心は、他の運動へと変わった。彼はオリンピック級の体操ギアの完全なセットを注文して、インストラクターからそれの使い方を学んで、夏の大部分を過ごした。また彼は、庭の後ろにオリンピックのサイズプールを掘らせ、朝食の前にプールを何往復か泳いだ。彼は重りを持ち上げながら走ったりもした。しかし彼の(運動の)サイクルの全てが上手くいくとは限らなかった。彼が放った矢は決して目的の場所に当たらず、また決して平凡なスケーターより上手にできたというわけではなかった。
レイチェルは泳ぎに来たり、トランポリンの上で飛び回ったり、ただぶらぶらするために時々邸宅へと来た。ブルースはこれらの訪問を喜んでいるようだったが、17歳のときに突然、電話もせずに彼は去った。
そのような行動や出来事はブルースが彼の両親を殺害した男を殺そうとして失敗し、レイチェルと言い争いをした後にひどく錆びついた船に飛び乗ってゴッサム港を去るまで続いた。彼は長い間去っていた。そして彼が再び現れたとき、彼は以前と異なる人間となっていた。しかしアルフレッドとレイチェルだけは、彼の何が変わったかについて知っていた…

                 

ダークナイト ノベライズ 翻訳 EIGHT

2008-10-20 23:14:45 | ダークナイト・翻訳


その夜、大都市ゴッサムでバットマンとして活動している人物はブルース・ウェインだけではなかった―そしてその数は二、三人ではなかった。
ブライアン・ダグラスにその風変わりな奴からの電話が来たとき、彼はまだトレーニングウェアを着ていて、ちょうどシャワーを浴びようとシートを打っていたところだった。アントンだか何だったか、それを組織化した奴…ブライアンはそれが何だったか、よく判らなかった。彼はそれを「バットマン・クラブ」と見なした。二、三人の男達、孤独な男や怒った男達(彼ら全員が正当な理由があって怒り、苦しんでいた)―は何らかの方法でゴッサム・シティの無法状態を正そうと連絡をとり続けて、自警行為を行うために時々会合した。アントンの話によると、彼には製造地区の近くの駐車場で働いていたはとこがいた。そしてある時、そのはとこは偶然二人の男たちが話しているのを耳にした。男の一人はひどいロシア訛りで話していた―少なくとも、ジミーのいとこはそれがスペイン人ではなくロシア人だと確信していた―彼は今夜遅くに行われる麻薬取引についてもう一人に話していた。それはおよそ1時間後で、本当の話だった。
彼は電話を切って、クローゼットから彼の間に合わせのバットマンスーツを引っ張りだしてそれをつけ、その後こんな夜遅くにゴッサムの通りでマスクをつけることはあまり賢くないことであると考えた。尖っている耳のマスクはコートのポケットに入れ、次に彼はショットガンの方に手を伸ばした。それがロードされていることを確認すると、彼はそれを大きなコートに押し込んで外に向かった。
彼は彼のオートバイ(日本製、ショールームに25年間あったもの)に乗って、上に蹴ると5回目のトライでエンジンが動いた。誰かが窓からそれを止めさせるために怒鳴りつけた。しかしゴッサムでは、人々は常に何かに対して不平を言っていた。
彼はアントンが電話で話してくれた駐車場に近づいたので、バットスーツを着た他の二人が共通の目的地の方へ歩いて行くのを見つけることができた。
彼は歩道にバイクを置いた―この時間にそれを気にかける者はいなかった―そして彼はバットメンの仲間に加わった。


チェチェン人と彼のボディガードは黒いSUVに乗り込んだ。男のうちの一人は都市の忙しい中心地を通って工業地域の中まで運転していたが、その間にチェチェン人と他の従業員は話していた。誰かがバットマンについて言及すると、チェチェン人は鼻を鳴らした。
「少女のためのおとぎ話だ!」
―――――

バットマンは着色されたフロントガラスを通して見つめ、待っていた。
彼のタンブラーは狭い路地の向こう側の屋根の上にある床板が多重に張られた駐車場に駐められていた。日中は、近くにある貯蔵施設の労働者達の自動車や小型トラックでいっぱいだが、現在、日が暮れてからは、そこは空だった。その周りを囲んでいる通りと同じように。チェチェン人と彼が行商したドラッグの未知の供給業者は、ビジネスのために車庫の屋根の上で会うことになっていた。チェチェン人は、彼の旅程を隠すためにかなりの苦労をしていた。そして一か月間、彼は成功していた。しかし結局、忍耐や固執、そしてかなりの額の金が、バットマンが求めていた情報を彼に与えてくれた。それが彼をここへと導いていた。
彼は、ガレージの屋上での車の移動を見た。
2台の黒いSUVが上に向かうランプからそれていた。彼らはぼろぼろの白いバンで、フロア内で唯一の他の車両の近くに立ち止まった。数人の男達、彼らは皆ぴったりしていないスーツを着てSUVから出てきた。彼らの中でで最も大きな男が屋根を見渡して、夜間警備員が建物にいるかもしれないことを示唆した。
チェチェン人は肩をすくめて、ロシア語で言った。「そういうわけで、俺達は犬を連れて来たのさ」
彼が最も近いSUVの後ろのドアを開くと、三匹の巨大なロットワイラーが外に飛び出してきた。そして、その爪がコンクリートの床音をたてた。チェチェン人が跪くと、犬は彼の顔をなめた。彼は再びロシア語で話し始めた:「俺のリトルプリンス達…」彼は、他の者を見上げた。「バットマンはあんた方みたいな馬鹿には見えないらしいが、俺のリトルプリンス達は別だ…この子達は人間の肉を完全な暗闇でも発見することができる」
彼は犬を残して、2台目のSUVの方へと行った。彼は後ろのドアを開いて、ボロを着ている不潔な男を引きずり出した。
「やめろ!」彼は悲鳴をあげた。「やめてくれ、彼らを私から取り去ってくれ!私から!」
チェチェン人は彼の囚人を白いバンまで引きずった。 バンの潜り戸が戸外へと滑らせられた。そして、作業着を着ていた二人の新顔が現れ、銃を背中に結びつけて金属樽を運んでいった。
チェチェン人は訛りのきつい英語で言った。 「見ろよ!お前のドラッグが俺の顧客にしたことをな」
バンの中から:「買い手に気をつけましょう」



背の高い、しわくちゃの青いスーツと麻布のマスクをつけているやせた男が、バンから出てきた。「私は私のブツがどこかへ連れて行ってくれるとは言いましたが、行き先が彼らの望み通りになるとは決して言ってませんよ…」
「俺の仕事は客をリピーターにすることだ」とチェチェン人は言った。
「私が提供するものが嫌なら、他の誰かから買ってください」とスケアクロウは言った。「僭越ですが、皆がバットマンのおかげで逃げ去ってしまったと思いますがね」
両方の犬が一斉に吠え始めた。
吠える声が、よりやかましくなった。
周囲をじっと見つめると、チェチェン人が「誰でもいい、来いよビッチの息子め」と叫んだ。「俺の犬達が空腹なんだ」
突然、上昇しているバットマンのシルエットが角を曲がった所から現れた。ショットガンの轟音がして、ぼろぼろの丸い穴がSUV(チェチェン人から数インチの場所)の中に現れた。
より多くの銃がうなりをあげた。
「犬を放て!」とチェチェン人は大声で叫んだ。
すぐに従う者がいなかったので、チェチェン人はロットワイラーのそばに跪き、彼らの首から鎖を解いた。犬達は暗闇の方へと疾走した。エレベーターに通じるアルコーブから現れた、マスクとケープを着けた人物は下のランプの方でつまずいた。犬の一匹が彼に飛びつき、バットマンの首の上でその歯と顎を閉じた。


スケアクロウはペレットがあばたになっているバンの運転席に登って、止まった; ショットガンの銃身が彼の頭の後ろに向けられていた。先の鋭い耳のマスクがバックミラーから見えた。スケアクロウは席の間で手探りし、エアゾール缶を持ち上げた。彼がボタンに指を触れると、スプレーの雲がバンを満たした。覆面をした男はショットガンを落として、よろよろと歩いた。そして彼はドアから叫ぶと、チェチェン人の足の下で泣きながら、横たわった。
スケアクロウは頭をつき出し、チェチェン人に言った。「本物のバットマンではないでしょう」
「どうして分かるんだ?」
「私たちは友達なんですよ。バットマンと私はね」
「じゃあもう片方も本物じゃないな。俺は賭けてもいいぜ」とボディガードが言った。
チェチェン人は床ですすり泣いている男を蹴飛ばし、再び蹴るために彼の足を引き戻して立ち止まったとき、四個の大きいホイールがコンクリートを打ち壊し、ほこりや床の飛沫をいたる所にでぶちまけながら発している大きくてすさまじい音に驚いた。
「そうこなくっちゃ!」とスケアクロウは言った。


バットマンは彼が迅速かつ効果的に行動して、誰もひどく傷つけないようにしなければならないということを知っていた。それがコスチュームを着けた愚か者であろうとなかろうとも。
それらの愚か者のうちの一人は近くに立っていて、彼のショットガンを逃げているボディガードにまっすぐ向けた。



偽者のバットマンが赤い取引の様相を調べたので、バットマンは武器のバレルをつかんで上向きにそれを曲げた。バットマンが彼の掌に隠された空気のつや出し機を現すために手を広げたので、彼は後方につまずいた。
彼はもう一人の衣装を着た愚か者に傷を負わせている2匹のロットワイラーの方に迫った。バットマンは腕を持ち上げ、グラップリング・ガンを抜いた。モノフィラメントが飛び出て偽のバットマンの足首の回りに巻きつくと、バットマンは彼を犬から引き離した。
次は動物達だ。
ロットワイラーは既に近づいてきていて、バットマンの喉に飛びついた。バットマンがその腹を蹴ると、犬は泣きながら落ちた 2番目の犬はバットマンの長手袋の上で顎を閉じたが、ケブラーのアーマを突き通すことはできないと分かった。バットマンが彼の頭の上で動物を揺らすと、それはコンクリートに落ちました。そして、泣き始めた。

―――――

バットマンがロットワイラーや詐称者バットメンへの対処で忙しい間に、スケアクロウがバンに乗り込んでいるのを彼は見た。バンが彼に向かって疾走してきたので、彼は跳びのいた。それからそれが通ったときに、彼は運転席の窓に拳を通した。 彼の装甲された拳骨がスケアクロウのマスクに軽く触れた。驚いて、スケアクロウがホイールをねじると、車が遠くで傾いた。彼は擁壁に激突するのを避けるためにちょうど間に合うようにそれを直した。そして、バンは出口ランプの上へ横すべりして、下り始めた。


                 
バットマンは、斜面の縁に飛びついて待つと、らせん形の斜面を見つめた。もし彼がスケアクロウを追いかければ、他の犯罪者には逃げる時間があるかもしれない。そして彼がそうしなければ、間違いなくスケアクロウは暗い通りの方へと行方をくらましてしまうだろう。六人か一人か、もう片方の半ダースか…
しかし、スケアクロウはよく知られている悪者だった。バットマンは決断した。
彼は跳んだ。
彼の体が地面を打つ一秒前、ケープがグライダー翼へと拡大し、落下を遅らせた。スケアクロウのバンは出口のランプからそれ、バットマンはその上に着地した。バンはさらにそれて、タクシーを押しつぶして壁にぶつかった。



バットマンはぼうっとしているスケアクロウを車から引き離して、彼を肩に掛けた。
一分後、彼はチェチェン人の負傷した共犯者と偽のバットマン・コスチュームを着ている男達二人の横にスケアクロウを投げ捨てた。チェチェン人自身は、姿を消していた。
「俺たちはあんたを助けようとしているだけだ」詐称者が言い出した。
「私は助けなどいらない」とバットマンは言いながら、彼はチェチェン人の部下達をプラスチックひもで縛った。
「私の診断は違う」とスケアクロウは言った。
バットマンは、スケアクロウの手首と足首の上にプラスチックのひもをつけて結ぶと彼を見つめて、クレインのマスクを急いで脱がせた。 次に彼は詐称者の方を振り向いた。「二度と私にここで見つけさせるな」
「あんたには俺達が必要だ!一つだけ理由がある。それはここの戦争だ」
バットマンは、押収した腕一杯の武器を運びながら車に向かって歩いて、警察のためにそれらを落として山積みにした。
詐称者は「あんたに何の権利があるんだ?」と泣き叫んだ。「あんたと俺の違いは何だ?」
「私はホッケーパッドなど着けない」とバットマンは返答した。
バットマンがそこから疾走し始めたとき、詐称者は彼のばかな服装一式を見下ろしていた。
                 



土壇場になると、ブライアン・ダグラスは駐車場でその他二人のバットメンに加わらないことに決めた。結局、彼は彼らのうちの一人ではなくただの観察者だった。どんな種類の騒動でも中で聞いたならば、それから彼は多分それをチェックするだろう。しかしそうでなければ…、どうして多くのアホ達と共にうろつくというのか?
それでブライアンは壁に対してしっかり立って、待った。そして射撃の音を聞いた時、彼はまだ待っていた。
多分誰かがこっちに来るだろう、そして俺は彼らに尋ねることができる。俺のケツを射つ意味はあるのか?…それは愚かなことだ…
それが、バットマンがスケアクロウを捕らえて、バンの上で躊躇も一瞬休止することもなく、特徴的なシルエットが急襲し見て、破損している乗り物に達して、スケアクロウを引っ張り出して、振り向きざまに犯罪者を投げつけ、大股で歩いて戻るのをブライアンが見ることが出来た理由だった。 全部でどれくらいかかったのだろうか?、数秒?
ブライアン・ダグラスはその場で顕現を開いていた。 突然、彼は信じていた。 彼は何か(誰か)を見て疑った。 彼は本物だった。そして、彼は素晴らしかった!そしてブライアンにはもっと彼を知る必要があった!


チェチェン人は怒り狂っていた。彼は他の者と同じくらいにスケアクロウのような馬鹿とかかわり合いになるのを許した彼自身に腹を立てていた。一体どこで、ギャング、暴漢、貪欲な殺人者―彼が理解していた種類の犯罪者、それとも彼は自分のような種類の犯罪者? しかし彼は現在、報復のために長居することができなかった。全てが駄目になった。そして、気が確かな男性がするように、逃げるしかなかった。 チェチェン人は、彼のSUVのホイールの後ろに下がって、遠くでうなった。


警官は駅舎に戻る前にジョナサン・クレインの手首からプラスチックの結びを切って、彼の麻布のマスクを没収するまで待った。
「さて、さて」マスクを振りながら警官は言った。「俺たちは有名人を捕まえたみたいだな」
「俺は顔にカバーをしたままの方がいいと思うぜ」ともう一人の警官は言った。



ダークナイト ノベライズ 翻訳 FOUR 

2008-10-19 21:48:44 | ダークナイト・翻訳
                 

昼下がりの金曜日の、ゴッサム・シティの中心部、 金融街の端の北ジュリアス通り。 雑音と混乱のなかで。
日光が何千もの窓ガラスの上で輝いているところで、ホーンが鳴らされ、エンジンの音がしていた。排気ガスの細くて青いもやが宙に浮いていた。
それらすべてより上の方では、クラウン(道化)マスクを着けた二人の男が武器とツールを装備して、10フィートの高い窓に面している屋根裏に立っていた。最初の男は上に狙いをつけて消音のオートマチック拳銃をガラスに向けて発射し、その破片が床に落ちるのを見た。その男のコードネームはDOPEY(ぼんやりした奴)だった。HAPPY(幸せな奴)というコードネームを付けられた2番目の男は、空になった窓枠を踏んで、肩に担いだスピアガンの狙いを定め、引き金を絞ると、鉤のついた長いケーブルが通りの向こう側にしゅっと音をたてて向かっていき、別の建物の壁に埋まった。DOPEYは彼のケーブルの端をむきだしのI型鋼に固定して、彼のパートナーにうなずいた。HAPPYはバッグをケーブルに引っかけて、空のままそれを向こう側に送った。一瞬後、HAPPYとDOPEYはバッグに続いて、線の上に合う運ばれた装置の先からぶら下がった。もし誰かが上を見上げて、彼らのことを見たならば…
やあ、こちらはゴッサムシティ、暴力的仕事の中心地です。 普通の狂人たちが何か狂った事件を起こして、それが面白いならば、多分それは11時のニュースで放送されるでしょう…
その下の3ブロック離れたところでは、暗い着色ガラスのウィンドウと違法なナンバープレートを付けた黒いSUVが2台のスクールバスの間を疾走して、交差点で止まるためにぐいと動いた。助手席側のドアが開くと、作業着を着た背の高い男が戸口から駆け、車に乗り込んだ。その中では、彼がクラウンマスクをポケットから出して被り、もう一人のクラウンと向き合うために彼の席を回した。BOZO(アホ)というコードネームの男が運転席に着いた。「3人揃った。仕事を始めようぜ」と男が言った。その男のコードネームはGRUMPY(不機嫌)だった。
後部座席に座っているCHUCKLES(含み笑い)というコードネームの男が、コンパクトサブマシンガンに装填しながら見上げて言った。「これだけか?3人だな?」
GRUMPYが言った。「屋根の上に2人いる。全員、分け前は特別だ。分け前は全部で5人分だ」
「6人」とCHUCKLESは言った。「この仕事を計画した奴を忘れるなよ」
「そうかい?」とGRUMPYは言った。「自分はただ待っていて、金を掠め取る。奴がジョーカーと呼ばれる理由はそれだな」


屋上、DOPEYとHAPPYはアクセスパネルをこじ開けました。 HAPPYは作業を中断しDOPEYの方を見つめた。「どうして奴は皆にジョーカーと呼ばれてるんだ?」
「俺は奴のしている化粧が原因と聞いたぜ」とCHUCKLESは言い、青の厚いCAT5ケーブルの束を引き抜いた。
「人々をこわがらせるためだ。出陣化粧みたいなもんだろう」


通りの後ろでは、BOZOが銀行の前のメーターで測られた駐車場所にSUVを動かした。彼はエンジンを切り、メーターを気にすることなく銀行に入った。GRUMPYとBOZO、そしてCHUCKLESはアサルトライフルと数個の空のダッフルバッグを運んだ。内部では、GRUMPYがいったん天井へ発砲し、CHUCKLESは彼の武器の床尾で警備員の頭を打ちつけた。そしてBOZOはドアを閉め、ブラインドを降ろした。
GRUMPYはさらに発砲して、「今すぐ全員床にふせろ!」と大声で叫んだ。 そして顧客と従業員は同様に、手とひざを腹に落とした。その時上級金銭出納係のうちのひとりが何とか通報ベルのボタンを押した。彼女のいる場所の15階上の屋根の上では、DOPEYがプラムサイズの電子装置を見つめてかすかな音を聞いた。
「それは何だ?」HAPPYは尋ねた。
「俺たちの計算どおりだと通報ベルはここに来るようになっている」とDOPEYは言った。「そしてここに行く」
「変だな…、警察に通報してないぞ。プライベート・ナンバーのようだ」
彼の後ろでは、HAPPYが彼の銃を上げ、DOPEYの頭の後に消音のオートマチック拳銃を発射した。DOPEYが死んで屋根に落ちたとき、HAPPYは彼のバッグを拾った。 それから彼は古風なバールを取って、屋根のアクセスドアをあける仕事にとりかかり始めた。1分もしないうちに、彼はそれをこじあけて、赤い球だけが点灯している急勾配の階段を駆け下りていた。 最下部に達したとき、彼はEXITと記されているドアを開け、光っている鋼の金庫室の前に立っていた。




銀行では、BOZOとGRUMPYが顧客と金銭出納係のいる列のところを下っていた。かれらは1枚の壁に沿って立っていた。 BOZOはそれぞれに手榴弾を手渡すとGRUMPYがあとに続き、そしてピンを引いた。人質は手榴弾が爆発するのを防ぐために先端を維持し、両手で手榴弾をつかんだ。
「我々は君たちが貴い生命のために両手をそのままの状態にしておく以外のことは望まない」とGRUMPYは人質に話した。
それから大きい爆発音がして、3人目の強盗(CHUCKLES)は後ろに倒れた。そして、彼のマスクとジャケットの前部がずたずたになり、死んでいた。
申し分のない洋服屋仕立ての茶色のスーツを着た銀行の支店長がショットガンを持ってオフィスから踏み出してくると、再び発砲した。



人質は手榴弾をしっかりつかんで、掩護を求めて床に沿って急いだ。GRUMPYとBOZOは共に机の後ろに潜り、ショットガンで支店長のいる方向にやみくもに撃ちまくった。
「奴の銃の弾は何発だ、5発か?」GRUMPYは尋ねた。
BOZOはうなずいた。
「残っているのは3発だな?」BOZOは指を2つ上げた。
彼は机の隅で銃を押し進めて、一発撃った。銀行の支店長は、二回発砲した。GRUMPYがBOZOを見ると、彼はうなずいた。
GRUMPYは立ち上がり、デスクトップの上で銃の狙いを定めた。
銀行の支店長が再び発砲し、鹿弾の雨がGRUMPYの肩を打った。彼は机に倒れ、そして支店長は彼のポケットから新しいシェルを出しながら前進した。BOZOは机の後ろから立って、支店長の胸を撃った。
GRUMPYは鹿弾が当たった場所の上のシャツとジャケットのたれ下がった箇所をわきに引いて、自分の傷を凝視した。 彼はしっかりと彼の手のひらで血液をこすり落としてさらに傷を見た。 傷は浅かった。
机に寄り掛かって立つと、彼はBOZOの方を向いた。
「一体どこでお前は、数え方を学んだんだ?」
BOZOは彼を無視して、新しいシェルをショットガンにセットし始めた。
「お前らは誰の金を盗んでいるのかわかっているのか?」銀行の支店長はささやいた。「お前と仲間たちは、死んだも同然だ」


HAPPYはドリルを金庫室に固定して、ボタンを押した。機会が高い音を立て、ドリル刃が金属に食いこんだ。そして―
気がつくと彼は床にいた。ぼうっとさせられ、震えていた。彼は電流、それも多量の電流によって打たれていたと理解するまでに少しの間を要した。奴らは金庫室に配線したのだろうか?
彼はスニーカーを脱ぐと手にそれをつけ、壁の前で気を引き締めて、もう一度金庫室に入るための作業に取りかかった。 何回もいじくり回したり位置を変えたりして、彼は何とかドリルを操作することができた。スニーカーが高電圧から彼を保護してくれた。
GRUMPYは横の入り口から部屋に入った。HAPPYは彼をちらっと見て言った。「奴らはここに電気を流したらしい。おそらく五千ボルトだ。一体どんな銀行がそんなことするんだ?」
「マフィアの銀行だ」とGRUMPYは言った。「全く、奴らの言う通りジョーカーの野郎は狂ってるな」HAPPYは肩をすくめた。ドリルのノイズがきしるような音に変わった。「もうほとんど終わりだ」とHAPPYは言った。
彼は大きいホイールをつかんで回転させた。
「ところで、アラーム・ガイはどこだ?」GRUMPYは尋ねた。
ホイールの回転が止まった。HAPPYがそれを引っ張ると、金庫室が開いた。「ボスが仕事が終わった奴は殺せって俺に言ったんだ。分け前が1つ減る」
「面白い」GRUMPYは言った。「俺も奴に同じことを言われたぜ」 
HAPPYは腰のベルトにあるピストルをつかみGRUMPYに立ち向かうために急いで振り向いたが、彼は遅過ぎた。GRUMPYは彼のアサルトライフルを発砲させた。しばらくするとHAPPYの体の上を通って、金庫室に踏み出した。
彼は立ち止まり、少なくとも8フィートの高さの現金の山を見つめた。
10分後、彼はいくつかのふくらんだダッフルバッグを背負って銀行に現れた。彼はBOZOの足元にそれらを落とし、笑った。
「来いよ」彼は言った。 「荷物は沢山だぞ」
強盗が金庫室の方に姿を消すのを、人質は手榴弾をしっかりつかんで見ていた。何人かは緊張しながら隣の人をちらっと見た。また特に何もしない者や、目がぎゅっと閉めた状態で唇を音もなく動かしている者もいた。
GRUMPYとBOZOが再び現れ、各々いくつかの金が詰められたダッフルバッグを背負い込んでいた。GRUMPYは最初のひと束の横に次のバッグを床に落として、「奴が賢かったなら、俺たちにもっと大きい車を持って来させただろうな」と言った。
それから彼はピストルをBOZOの背中に押しつけて、武器をとり上げた。



「現金を積み込んだらすぐに俺を殺すようにジョーカーが言ったと賭けてもいいぜ」
BOZOは頭を横に振った。「いや、俺が殺すのはバスの運転手さ」
「バスの運転手?どのバス―」
BOZOは最も近い窓をちらっと見て、後ろへ跳んだ。
黄色いスクールバスの後部が窓を突破し、ガラスのシャワーを部屋に降らせ、出納係の檻にGRUMPYをぶつけた。BOZOは落ちた武器を取り上げ、バスに向かうためにターンした。もう一人のクラウンがバスの後部ドアを開いたが、BOZOは彼を射殺した。
サイレンが遠くで悲しげな音をたて始めた。
BOZOは、ダッフルバッグをバスに積み込み始めた。
銀行の支店長は彼が倒された場所にまだ横たわっていて、彼の右手が彼の傷のところで広げられた。そして彼はBOZOを見つめるために頭を上げた。
「それで自分が賢いつもりか、えっ?」彼は息を切らしながら言った。
「きっとお前を雇った奴に同じようにされるぞ。ああ、奴らはそうするさ。以前はこの町の犯罪者も信じてた」
BOZOは男が横たわって、かがんでいるところまで踏み出した。
男はBOZOを見つめた。 「名誉。敬意。お前は何を信―」
BOZOはピンに紫色の糸が結びつけてある手榴弾で男の口をふさいだ。
「俺の信念はこうだ」とBOZOが言った。「死ぬような目に遭った奴は―
BOZOは自分のマスクを取り外した。マネージャーの目が大きく見開かれた。彼はもう一つの道化の顔(どんなマスクよりもはるかに人の心を乱す顔)を見ていた― 真っ白な皮膚、緑色の髪、口には赤い化粧のほどこされた恐ろしい傷跡があった。



―イカれる」とジョーカーは締めくくった。
傷跡を残した道化は起きあがるとバスの方へ歩きだした。そして彼のジャケットからほどけている紫の糸を手榴弾に付けた。彼はバスに乗り込み、後ろのドアを閉めた。そして紫の糸で罠を仕掛けた。
一瞬後、バスのエンジンが不平を言いだし、そしてバスは歩道を越えて通りへと動きだした。
紫色の糸が銀行の支店長の口の手榴弾からピンを引っ張った。
人質は叫び声をあげた。
手榴弾はしゅっと音をたて、赤い煙を噴出させたが、爆発しなかった。
1ブロック離れたところでは、一連のスクールバスがファーガソン中学校の正面の縁石を発って、交通の流れの中に斜めに進みだした。最後のバスが銀行の方角から来た。やってきた5台のパトカーのサイレンが甲高い音をたて、通りの反対側で彼らを過ぎて速度を上げていった…

                 

ダークナイト ノベライズ 翻訳 EPILOGUE

2008-09-21 10:44:08 | ダークナイト・翻訳
                 

Blood formed a wet film beneath his clothing, and the red fog he'd feared was exploding behind his eyes. But he might be able to reach somewhere he could rest, allow himself a few moments peace before his long nightmare began. He had failed to save Rachel. But perhaps he could still put himself on the side of the angels by allowing the world to believe him to be the ugliest of devils.
Why, the child had asked. Why did Batman run away?
And as Batman crossed the rooftops of the sleeping city, not sure where he was going, knowing only that his wounds were deep and would never heal, James Gordon tried to answer his son's question: He's the hero Gotham deserves, but not the one it needs right now. So we'll hunt him because he can take it. Because he's not our hero, he's a silent guardian, a watchful protector… a dark knight.

彼の衣服には血のしみが出来ていて、彼の目の後ろでは彼が恐れていた爆発の赤い霧が形成されていた。しかし彼はいつか休息の地に達することができるかもしれない。彼の長い悪夢が始まる前に少しの間の平和を自分に許容すれば。彼はレイチェルを救えなかった。だが恐らく世界に、彼が最も醜い悪魔であると信じ込ませることによって、彼はまだ自分の天使の側面を載せることができるだろう。

どうして? ゴードンの息子は尋ねた。どうしてバットマンは逃げるの?

そしてバットマンが静かになった街の屋根を越えていくとき、彼がこの先どこを目指していくのかを確信できず、また彼の傷が深く決して消すことの出来ないものと知った。

ジェームズ・ゴードンは息子の質問に答えようとした: 彼はゴッサムにとって必要な人だ、だけど今は"時"が違う

だから追う

だが彼は強い

彼はヒーローじゃない

沈黙の守護者

我々を見守る監視者…

暗黒の騎士(ダークナイト)だ


ダークナイト ノベライズ 翻訳 PROLOGUE

2008-09-04 20:31:17 | ダークナイト・翻訳
                   
ついに本日アマゾンで注文していたダークナイトのノベライズ(原書版)が届きました!

次回から翻訳していく予定ですが英語力はないので基本は翻訳サイトを使い、明らかに誤訳と思われる所などを少しずつ修正していくという形でやっていきます。あと出来るだけ劇場版や予告の字幕など公式の訳も使うなどして正確な訳に近づけるつもりです。

しかし慣用句など分からない面もたくさん出てくると思うので、もし見て下さった方で誤字・脱字や変な訳に気づいた方、また訳についてのアドバイスなどある方はコメント欄で指摘して頂けるとすぐに修正・加筆するので是非指摘等お願いします。

また途中で挫折するかもしれませんが少なくとも銀行のシーンまでは何とか終えますつもりです。

今日はとりあえず本の後ろに書いているあらすじだけ翻訳します。

あらすじ
光がゴッサムを照らしている、その光は蝙蝠のシンボルを映し出す。
市民は喜んで彼らの守護者としてマスクをした改革運動家を認め、同時に犯罪者と不正は暗黒の騎士(ダークナイト)の犠牲となることを避け始めた。
バットマンは、新たに選任された地方検事ハービー・デントのような人々を奮い立たせ都市で望みを喚起させるため、犯罪に対する戦いを行い続けていた。
都市の復活の中心となり、光の騎士(ホワイトナイト)と呼ばれるデントにはバットマンの戦いを支える準備ができている。しかしバットマンは引退する前に、彼はゴッサムの全ての組織犯罪の解体を行う事に狙いを定めた。彼の信じられる味方のアルフレッド、ルーシャスフォックス、そしてジム・ゴードン警部補の助けでバットマンは暴徒を追い詰め、彼らの皆を断罪する機会をデントに与える。しかし暴徒の航跡では新しいクラスの犯罪者が台頭中であった。笑わざるを得ない彼はゴッサムを運転するのに選出された救世主としてを狂気と力の刃を英雄と自警市民の間の微妙な線を交差する暗黒の騎士(ダークナイト)の交差点により近いです。

見よ、ジョーカーを。

後半がかなり意味不明なのでその内直します。(ちなみにこれだけで結構時間がかかりました…)