「HOT6」の最終戦、サンフレッチェ広島は東京ヴェルディ1969を3-0で敗りました。
実はその試合に、TSS「ひろしま満点ママ!!」木曜日でおなじみのサンフレッチェスタジアムDJ石橋竜史さんと一緒に、ある14歳の男の子をビッグアーチにご招待しました。
名前はせいやくんといいます。
せいやくんは生まれながら「
筋ジストロフィー症」を患っています。筋肉が徐々に萎縮し衰えていく難病で、効果的な治療法はありません。特にせいやくんが罹っているのは重度のもので、長くても30年程度しか生きることができません。また車椅子での生活を強いられ、日常のコミュニケーションもままなりません。でもせいやくんは短い命を一生懸命生きています。またせいやくんのお母さんも、普通の人たちが一生をかけて体験することを、せいやくんの短い命の火が燃える限り体験させてあげようと頑張っています。
2~3週間ほど前、せいやくんの自宅から見えるマリーナホップの観覧車に乗る夢をかなえました。TSSテレビ新広島でその様子をご紹介したところ、直後に石橋さんから私に電話が入りました。
「せいやくんをぜひサンフレッチェの試合にご招待したいが、連絡をとってもらえないでしょうか?」
すぐ担当ディレクターを通じてせいやくんのお母さんに連絡をとりました。そして石橋さんと私で相談した結果、「思い立ったら吉日! せっかくなら早いほうがいい」ということでヴェルディ戦にご招待することにしました。
かなりの確率で勝ち試合をお見せすることができると思いましたしね…
お母様とスケジュールを詰めていくにあたって、いろいろなことがわかりました。特に考えさせられたのは、「ビッグアーチなど大勢の人がいるところに外出するのはあきらめていた」ということです。
せっかくだったら、「普段できないことをビッグアーチでたくさん体験してもらおう」 私は当日ビッグアーチであるイベントをすべてご紹介しました。スタジアムの内外でのイベントや屋台村の様子、選手のサイン会、激夏の人文字、試合の見どころ… 暑さが心配でしたが、お母さんはぜひできるだけのイベントを体験してみたいと話されました。
当日、せいやくんは石橋さんがプレゼントしたレプリカユニフォームを身にまとい、応援グッズを持ってビッグアーチにやってきました。運営ボランティアスタッフの案内の元、ビッグアーチの周りの施設見学や、にぎわいを体験。バックスタンドの屋台村の食べ物の香ばしいにおいも感じていました。また試合前のサイン会にも参加。いつも愛用している車椅子に着ける机に吉弘選手と高柳選手のサインをもらっていました。また私がお手伝いした「激夏の人文字」も見ていただきました。
また試合では、しっかりボールの動きを追っていました。途中からはサンフレッチェがシュートをはずしたりすると「あ~あ」と声をあげたり、佐藤寿人選手がゴールを決めるとニコニコ微笑んだりしていました。また大型ビジョンと電光掲示板が気に入った様子で、表示が変わるためにキョロキョロしていました。
ハーフタイムでは短い時間を縫って石橋さんとせいやくんが対面を果たしました。
また、高柳選手がせいやくんを直接激励してくれました。実はそこでちょっとした“奇跡”が起こりました。せいやくんは手を自由に操ることができません。しかし、高柳選手がせいやくんに「がんばってね」と手を差し出したところ、その手をしっかりと握り返したのです!
当日は人文字のあと、私もせいやくんのそばでお手伝いをさせていただきました。時々せいやくんに見どころを説明したり、一緒にサンフレのゴールを喜んだりしました。取材も入っていたのであらためてVTRで見たのですが、
ビッグアーチを散策したり試合を見ていたせいやくんの笑顔は本当に輝いていました。(基本的にせいやくんの後ろにいたので、くわしい表情まではなかなか見られなかったんです)
ビッグアーチ内外の喧騒や試合の様子、プレイは、日々の中での「ごく普通のワンシーン」なのかもしれません。しかし私たちもそうですが、その「ごく普通のワンシーン」は、時にある人々にとっては生きる喜びや希望、そして時には力になる時もあるのです。当日サンフレッチェサポーターは、監督や選手たちたちから喜びを与えてもらいました。それ以上に、あの日のせいやくんは監督や選手たちからはもちろん、そして当日ビッグアーチに集ったたくさんの人たちから力をもらっていたと思うのです。
試合後、せいやくんはさすがに疲れていたようですが、ビッグアーチを立ち去るのを嫌がっていました。でも無事に「初めてのサンフレッチェ観戦」を楽しむことができました。
ビッグアーチをはじめ、広島市民球場などでも車椅子で試合を見られるスペースがあるなど、広島でも誰隔てなくスポーツ観戦が楽しめる環境が整ってきました。
ただ、デパートやスーパーで障害を持つ人など弱者のための駐車場に平気で車を止める健常者が未だにいるなど、心が痛むときがあります。
何ごともそうなのかもしれませんが、お互いが譲り合いの気持ちを出して、少しだけ心の余裕を分け合うだけで、よりたくさんの人たちがハッピーになると思うのです。「『人』という時は、支え合ってできているのよ…」なんて、よく言いますよね。
石橋さんがキックオフ直前にいつもこう語ります。「目の前でサッカーの試合が行われる… 日常生活でこんな素晴らしい時間が他にあるでしょうか!!」
私は少しでもたくさんの方に、その「素晴らしい時間」を体験してもらいたい。そのためにこれからも頑張っていきたいと思っています。
この度の広島ビッグアーチでの出来事が、すべての物事のモデルケースであり続けることを心から祈っています。
この度は何ごとにも代えることができない本当に素晴らしい体験をすることができました。
今回の出会いのきっかけを作ってくれた石橋竜史さん。そしてせいやくんを快く受け入れて多大なるご協力くださったサンフレッチェ広島の皆様、ご案内を手伝ってくださった運営ボランティアスタッフや警備スタッフの皆様、せいやくんを助けてくれた介護ボランティアの方、そしてなによりもせいやくんを暖かく見守ってくださったあの日ビッグアーチに集まった12,000人あまりのサンフレッチェサポーターのみなさんに、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。
私はみなさんのような素晴らしい仲間たちの一員であることを、
心から誇りに思っています!
(またせいやくんのためにサインを書いてくださった森崎和幸選手・浩司選手、吉弘選手、ありがとうございました!)