積木くずし 最終章 ~第1夜~

2012-11-24 00:03:44 | ドラマ/映画/ドキュメンタリー
 俳優・声優としても活躍してきた穂積隆信氏が、かつて日本を揺るがせるほどヒットさせた「積木くずし」(アートン 完全復刻版)という本を書いた。
 その彼が、あの主人公の娘となった子どもは自分の子ではなかったと言い出したのは、この春のことだ。
 「積木くずし」刊行から30年が経っていた。

 そして同時にそのいきさつを書いた「積木くずし 最終章」( 駒草出版)を出した。妻の残した真実と言われるものを同時に載せていた。

 他人にはなが真実か推し量ることはできない。

 まして娘を産んだ母、娘自身もすでにこの世の人でない今、誰も何も言えない。穂積氏の話があるだけだ。



 基本の話は、娘(ドラマ化された劇中・役名:灯)が非行に走る所から始まる。
 どうしていいか警視庁少年係、佐竹氏に相談し、親として揺らぐな、娘に見透かされると舐められるとアドバイスを受ける。

 灯は父の心を見抜いていた。自分のために、世間体のために言っている。自分のためじゃない。そのことに気づき、安住はその通りにして必死に灯のために灯を立ち直らせようとした。

 そして灯は1度は立ち直る。

 しかし、再び、本が出たことが原因で世間の注目を浴び灯の転落が始まる。



 父親はロケ先で母親と出会い、一目ぼれと同情で結婚をした。

 母の家は九州にあり、戦後女には仕事がなかったため親の代から愛人を生業としていた。
 母となる(役名:美希子)もそうだった。父(役名:安住)はろくに彼女と付き合うこともなく守りたいがため、東京に呼び寄せ結婚する。

 そして妊娠が発覚する。
 妻、美希子はその子どもを自分自らと共に殺そうとする。
 何故かと問う夫に自分は身体が弱いから生まれてくるこの子も身体が弱くなると告げる。
 安住は妻と娘をなんとしても守ろうと決意し出産にする。

 しかし暗い美希子に疲れ、居酒屋の女と情を交わす。美希子と別れて結婚まで考える。しかし、その矢先、居酒屋の女が姿を消した。
 安住は家に帰り、平穏な日々が戻ったかに見えた。

 しかし灯は内臓疾患を持っていて何度も大きな手術をした。その薬の副作用で髪が赤くなり、

 俳優の子だらかって意気がってるんじゃない

 と13歳の頃、先輩たちにリンチを受け顔を剃刀で切られる。それどころか、灯はそれを父にも母にも話さなかったが男子生徒からレイプを受けている。

 灯の転落はここから始まった。

 立ち直った灯だが、本が出て親は再び講演で全国を飛び回る。灯は置いてけぼりを食らったように再び転落を始め、今まではシンナーやたばこだったが、今度は覚せい剤に手を出す。

 少年院から灯が戻り、今度こそと思っている矢先、美希子と灯が、あなたに詫びても許されない過ちを冒したと姿を消す。

 このときになり安住の持っていた土地、本の印税、光熱費など全て払われておらず、美希子が会計士と言っていた男が実は金貸して美希子は多額の借金をしていたことを知る。安住が払う金額は億に上っていた。

 安住を助けてくれていた祥子と再婚した。

 積木の家というスナックでママをしている美希子、ホステスをしている灯を訪ねる。
 そこには会計士と名乗っていた黒沼がいた。

 責める黒沼を灯が連れ出す。

 灯は肝臓がどうしようもなく弱っておりあとは移植しかないと言われる。しかし父である安住は60歳を過ぎていたことから断れる。その変わりを買って出たのが、母の美希子だった。

 しかしその後、灯が助かったことを見届けるように自ら首を切り、自死する。そのあと始末をしたのは灯1人だった。
 
 お父さんは来ないで、私1人でできるから。お父さんが来るとまたマスコミが来るから。

 3日後、安住と祥子と一緒に暮らすようになっていた2人の家に灯が戻ってくる。
 灯は手に大きな包帯を巻いていた。どうしたと問うと、熱いうちに母の骨を握ったという。しかしこれがこのあとの話を引っ張る真実を秘めていた。

 大阪公演の最中、灯は祥子に公演を見てくるように勧め、自分1人が家に残った。そしてその間に1人寂しく世を去った。この時35歳だった。あまりにも早すぎる死だった。

 そして安住は灯の思い出整理をしていて1冊のノートを見つける。
 少し焼けていた。
 灯が母の骨を掴んでやけどをしたと言ったのは、このノートを母の言いつけ通り、自分が読んだら父に見せずに燃やそうとして火を消したために負ったやけどだった。



 穂積氏が本を書いたのは、純粋に同じ悩みを持つ親のための手引きになればと思っていたのかもしれない。
 しかし、結果は思いがけない方向へ流れていく。それが一家を不幸に引きづり込む。

 切なく、人生とは思いがけない方向へ流されて行くものだと思う。 

 穂積氏は何故本を書いたのだろうとずっと悩んでいたという。
 書かなければ、今でも美希子も灯も生き、幸せに暮らしていたかもしれない。

 穂積氏は業が深いのではないかと思う。
 俳優としての業。それは才能であり、頂点に登らせるものだ。
 しかし対価を要求する。現実の生活を壊し、それを栄養にして業(才能)を開花させる。
 そのためには同じように業の深い人間がそばに寄ってくることになる。それでなければ彼の中にある才能が生きることができない。

 調べてみると彼の父は歌人であり、教育家としても有名だったらしい。本を作るという意味でも彼は業が深かったのかもしれない。

 しかし30年前にヒットした作品が、今になって実は自分の子じゃなかったと言われてもね…。
 じゃ、あの話は何だったんだろうと思う。

 穂積氏が1番困惑している事態かもしれないが、こちらも彼の人生、彼を取り巻く家族の人生を考えてしまう。


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