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ブルーバレンタイン

2011-01-25 14:58:36 | レビュー

今日も雪。
ニューヨーク市が今年の雪対策費を使い切ったというニュースが伝えられていた。
何度目の雪かきだろう。
12月に1回。
1月に入ってから5日に1度のペースで除雪しているので今年は5回目か。

火曜日は休みなので雪をどけたら映画。
「ブルー・バレンタイン」 (Blue Valentine)
この映画はクロスカットを巧みに使って、熱いラブストリーとその終焉を見事に描いている。




登場する二人の俳優、ミッシェル・ウィリアムスとライアン・ゴズリング(ノートブック)の演技を味わうだけでも十分見る価値のある映画だ。
そういえばミッシェル・ウィリアムスの元恋人ヒース・レジャーが亡くなって丸3年 (2008.1.22) が経つ。

********** Spoiler Alert **********

ライアン・ゴズリング演じるディーンは恵まれない環境で育てられ、「家族」に対する思い入れが強い。
幸せな家庭を築くことが人生最高の目的であり、そのためには仕事を必要最低限として子供と過ごす時間を増やしたいという考えを持っている。
愛犬や娘に対する強い愛情が映画の冒頭からひしひしと伝わってくる。
ミッシェル・ウィリアムス演じるシンディーに対しても終始ロマンティックに振る舞っている。
ただ、その愛情表現は少し変わっている。
例えば、ウクレレを弾きながら歌うとか、テーブルの上にレーズンを置いて手を使わずに食べるとかが彼なりの気持ちの表現となっている。
仕事で立ち寄った老人施設でのエピソードにもその人格が鮮明に描出されている。

一方、ミッシェル・ウィリアムス演じるシンディーは男女関係について少しさめているが、向上心に溢れ、医師となるべく努力している。
彼女は崩壊した家庭で育てられており、人を愛することが下手だ。
男性経験こそ15歳から大学生になるまでに25人を数えるという活躍ぶりだが、真の愛情を知らない。
大学での彼氏は見るからにやんちゃでトラブルを起こしそうな雰囲気で一杯。
彼女が妊娠したと分かった時にいち早く彼女を支えるために立ち上がったのがディーンだった。
二人は結婚し、一見幸せそうな家庭を築くが...

シンディーとライアン、シンディーの娘フランキーの一日から映画が始まる。
どこにでもあるアメリカの家庭だ。
ただ、二人の間にすきま風が吹いているのが分かる。
人物描写が見事で、この場面だけで主話の基礎が数分間で固められる。
もう一つの筋書きは二人の出会い。
激しく燃える恋が丁寧に映像化されている。

この二つのストーリーが交互に登場して絶妙のコントラストを見せている。
両話を通じてディーンは勤勉でロマンティックな若者して描かれ、シンディーは上を目指して必死で奮闘している女性として描かれる。
そして、誰が悪いわけでもなく、二人のすれ違いが拡大し破局へと局面が展開していく。
ハリウッド映画には珍しく、善悪の区別を付けていない。
実生活でもありがちな、ボタンの掛け違いが埋めようのない大きな溝となっていく様子がリアルに描かれている。
話の展開がきわめて自然で理にかなっているにもかかわらず、諸悪の根源を特定できないところにこの映画の凄さがある。

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この映画は当初成人映画指定(NC-17)だった。
今でこそR指定だが、納得できない。
言葉が汚いと言っても、喧嘩する際のFワード程度だし、セックスシーンもリアルだが決してエロティックではない。
むしろ、とてつもなく哀しい。
二人は情熱に溢れる激しい濡れ場と気持ちの通じない寂しいセックスシーンの両方をうまく演じている。
特にシンディーがモーテルで下着を脱いで足を開く場面は寒気を覚えるほどだ。
ディーンすらその冷たさに震えてしまう。
これらの場面が理由でNC-17になったわけだからMPAA(映画のレーティングを決める人々)は機能していないのではないか。

脚本、監督、俳優ともに素晴らしく、ミッシェル・ウィリアムスがアカデミー賞の候補になったのも当然だ。

★★★★☆

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