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第18王朝

2010-02-17 11:59:08 | 日記


JAMAで面白い論文を見つけた。これまでの色々な論争にケリをつけ新しい知見を提供している。整理しておこう。Supreme Council of Antiquities (SCA) もよようやく論文を発表したという感じである。

ツタンカーメン (Tutankhamun) に関する過去の仮説。

(1)種々の病気を持っていた。マルファン症候群、女性化乳房、頭蓋骨縫合早期癒合症、Fröhlich 症候群、Wilson-Turner 症候群、Klinefelter (XXY) 症候群、等々。
これらの仮説は否定された。確定診断はケーラー病( Köhler II )だけである。更にはマラリア原虫 (Plasmodium falciparum) に特異的なDNA (STEVOR, AMA1, MSP1) が検出されている。王族全員で熱帯性マラリアに苦しんでいたらしい。

(2)死因は暗殺
これはテレビ番組にもなっており一般の人からかなり支持されている。話としては面白い。
SCA は熱帯性マラリアが死因であると推定している。こちらの方は半分本当ですかという気持ちで読んだ。というのも、棺の副葬品の杖、大腿骨骨折という事実、記述から推定された狩での受傷、を併せて考えると、大腿骨骨折の後遺症でなくなったと考えてもおかしくないからだ。

(3)父親はアメンヘテプ3世 (Amunhotep III) かアクエナテン王 (Akhenaten) か
この論争には決着がついた。
まず、これまでアメンヘテプ3世だとされていたミイラは彼で間違いないだろうと断定された。さらに、ツタンカーメンの父親はKV55の頭蓋骨と判定された。KV55は保存状態が悪いもののアクエナテン王の墓だと考えられている。今回の鑑定結果はアクエナテン王が父親の可能性が非常に高いと示している。

(4)母親はキヤ (Kiya) アクエナテン王の第2妃だ!
この仮説は否定された。 KV35YL(KV35の Younger Lady という意味)が母親だという。ではKV35YLは誰なのか?
彼女はKV55とともにアメンヘテプ王と正妻ティ (Tiye) の子供と断定された。つまりこの時点で可能性は Sitamen, Isis, Nebetah, Baketaten である。Nefertiti に関しては full sibling ではないとする説がある。ちなみに、キヤはKV35ELであると判明した。

(5)ツタンカーメンの家族はどこに埋蔵されたか?
まず王妃 Ankesenamun はKV21の女性ミイラで間違いないだろう。KV62から発見された2体の胎児(死産と考えられる)がツタンカーメンの子供でKV21の女性が母親だと鑑定されたからだ。

これらの知見は多くの論争にピリオドを打ち、歴史の記述を書き換える重大なものである。

それにしても、古代エジプトでは一般人の近親結婚(いとこ同士)を禁止しておきながら王族間ではいとこ同士や兄弟姉妹間の結婚が稀ではなかった。交配による動植物の品種改良も行っており、遺伝という概念を持っていた考えられる。王族は神と考えられており、その血を濃くしたかったのか?