ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

一命(三池崇史監督)

2012-05-14 | Weblog
キャスト:市川海老蔵、役所広司、瑛太、満島ひかり、竹中直人、笹野高史、中村梅雀、新井浩文
評価:☆☆☆☆☆☆☆
ストーリー:近江国彦根藩主家の井伊家には、2ヶ月をへて再び「庭先で切腹させてほしい」と依頼する浪人・津雲半四郎があらわれた。2か月前にも千々岩求女という同じ広島・福島家の家臣の家族が切腹を依頼し、自害していたため、参勤交代で井伊直孝は近江に帰国していた。江戸の留守を預かる斎藤勘解由は難色を示し、2か月前の出来事を語りだす…
コメント:海外の映画ファンは武家諸法度やら参勤交代やらをどう理解していたのか興味深い。移封された福島正則についてもおそらく知らないはずだが、賤ヶ岳の七本槍とか小牧長久手の戦いなどのエピソードから敷衍してみると、この福島家家臣のいきどころのないやるせなさがより伝わる。
 で、この映画、いきなり冒頭から「牛」の絵が映し出される。三池監督のもう一つの傑作「ゼブラーマン」では銭湯のなかをいきなり本物の牛が横切るシーンがあったが、これおおそらく意図的な演出だろう。牛の絵の視点はどこが焦点なのか定まらない。が映画の中では常にリフレインして出てくる屏風で、これは2か月前と「現在」を対比させる効果がある。また「猫」も斎藤勘解由の真っ白な猫と千々岩求女の野良猫との対比がある。小津安二郎の「鳥かご」が時間の経過をあらわすのに一つの演出装置になっていたが、この映画では人間以外の牛の屏風や猫が演技をしているのが興味深い。日本映画では昨今「雪」の演出がなんだかあざといところがあったが、この映画では雨がふりつつそれが次第に雪にかわり、振るべきときに雪がふるという演出が心憎い。それが最後井伊家(井伊直政)の「赤備え」にまで至るのだから最初から最後まで見事にきっちり演出がはまっている。広告宣伝では「正義」という言葉がでていたが、監督の意図は「正義」がどちらにあるのかなどには興味がないようだ。
 で、この映画、やはり主役の市川海老蔵が存在感を発揮。役者のなかでは悪役の役所広司の怜悧さと「善役」の市川海老蔵のなんともいえない色気が画面上で拮抗。市川海老蔵の色気を際立たせるために色気ゼロの満島ひかりが起用されたのか…とまで思いたくなるほど、あんまし魅力的な女性が出てこないのも演出のうちか。いろいろトラブルも起こした市川海老蔵だが、これだけの演技と存在感があればやはりちょっとやそっとのスキャンダルでは芸能生命は終わりそうもない。

127時間(ダニー・ボイル監督)

2012-05-14 | Weblog
キャスト:ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ、アンバー・タンブリン、クレマンス・ポエジー、トリート・ウィリアムズ
ストーリー:誰にも行き先をつげずに出かけたアーロンは自分の第二の故郷キャニオンランズ公園へまっしぐら。途中車ですれちがったサイクリングのメンバーに手をふることもせず自分のことだけ考えて走り出す。そして2人のキャニオニングを楽しみにきた女性2人を案内したあと、洞窟で右手を岩にはさまれ動けなくなる。手持ちの水は150ミリリットルとなり事態は絶望的になっていた…
コメント:2003年4月25日、ユタ州キャニオンランズ国立公園にでかけたアーロン・ラルストンの実話を描く。ダニー・ボイルは「スラムドッグ&ミリオネア」でアカデミー賞を受賞しているが、そんなことはまるで気にしていないかのような低予算映画。キャストはほとんどジェームズ・フランコ一人だが、この難しい役をジェームズ・フランコが飄々と演じているのが好ましい。これがロバート・デニーロ風の重苦しい演技だったら1時間半は観客は責め苦を受けているような気持ちになっただろう。岩に右手をはさまれたラリーは精神が錯乱してくると同時に過去の悲しい失恋の様子なども想起していくが、野球場で一人うつむいているジェームズ・フランコの斜めから観た顔がなかなか。「バレエ・カンパニー」(ロバート・アルトマン監督)でも恋人のために料理を作って一人で帰宅するときの背中がなかなか良かったのだが、「猿の惑星」とかで無理にハイテンションな演技をするよりもダニー・ボイルや亡くなったロバート・アルトマンといった監督の作品のほうが本人も演技しやすいのではなかろうか。サム・ライミの「スパイダーマン」シリーズにも出演していたが、こういうビッグな監督に見出される才能の根源は「寂しげな顔と背中」にあるのではないか、というのが私見である。
 映画のなかではトラブルにまきこまれた主人公が「think,think」といいながら、まず自分の手持ちの道具を一覧にして確認するとともに時計で計測を始めたのが印象的。結果的に命が助かるのだが、この冷静な判断力と状況確認が凡百の映画とは一線を画している。