ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

英雄(チャン・イーモウ)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;7国が入り混じる春秋時代の中国。なかでも趙国の三人の刺客を倒したものには高額な賞金がかけられていた‥
出演;ジェット・リー,トニー・レオン,マギー・チャン
コメント;あとチャン・ツィイーの4通りの演技力もなかなかのもの。ジェット・リーは「リーサル・ウェポン4」で無口な殺し屋を演じていたのをみたが、演技力はあれから増している。秦の弓矢の殺傷能力を描写するシーンがすばらしい。またワダ・エミの衣装は、中国の広大な自然と相乗効果で、映画の意図を見事にはぐくんでいる。赤・青・緑・白を基調とした衣装があらすじ以上の視覚効果だ。「ザ・セル」でも同じことを考えたのだが、ワダの衣装があるのとないのとでは映画そのものの印象がぜんぜん違ってくる。また書道と剣、音楽と剣の奥義が同じとして、奥義をきわめようとする主人公が最後にいきついた「天下」という広大な概念が、恋人と故郷で二人で暮らすことであったりする。中国であればそうした奥義にいくつく人が春秋時代にいてもおかしくはないと思わせる映画。エキストラの人数も桁外れで、中国映画はここまできたのかと感じさせる見事なつくり。特に、中国の女性像がたくましくなっており、10年前とはさまざまな意味で変貌をとげているのがわかる。公式サイトもなかなかのできばえでファン層の厚さを感じる。トニー・レオンは「恋する惑星」でさえない警官の役をやったのが印象に残っているが、この映画では「小人」としての赤の演技、「大人」としての白の演技、「凡人」としての「青」の演技、そして「気づき」のころの「緑」の演技が楽しめる。娯楽映画の王道をいくアジアの大作。

死ぬまでにしたい10のこと(イザベラ・コヘット)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;アンは不治の病におかされていることを知り10の死ぬまでにしたいことをリストアップする‥
出演;サラ・ポーリー,スコット・スピードマン,マーク・ラファロ
コメント;主役のサラ・ポーリーは「ドーン オブ ザ デッド」での演技をすでにみていた。彼女はホラー映画でもある種不幸な主婦といった影があったが、この映画ではニルバーナの最後のコンサートにいったばかりに「しょうもないトレーラー暮らしでその日ぐらしの男」と17歳で結婚し、妊娠するという人生を迎える。夜勤仕事の帰りにホテルで働いている母親を送り迎えしているが、死期を悟ってからやや「インテリ」ぽいマーク・ラファロと一時の恋愛を楽しむ‥。スペインとカナダの合作のようだが、これだけ冷静に死を迎えることができればそれは言うことはないが、対応の医師も含めて不可解な事象がかなり目に付く。ただしストーリーについてはもはやともかく、映像はカナダの自然や風や雨などに頼りっぱなし。脇役にはアマンダ・プラマーが控え、問題はないのだが、映像がカメラがぶれ気味で非常に気味が悪い。学生映画の出来損ないを金を払って見せられているような落ち着きの無さを感じる。ただし子役の二人の演技はかなり自然で、ここ数年の中でもっとも輝く役者ではないか。料理を手でもてあそぶシーンなどはかなりほほえましく、不自然なカメラの演技は子役の演技を引き出すにはむしろよかったのかもしれない。魔女の扮装で、カナダの芝生の上を遊ぶ二人のいじらしさは、すばらしい。
 実存主義的な映画の見方でいくとかなりそれなりの見方ができるのかもしれない。ラストで、ダイエット中毒のアマンダ・プラマーが呆然と甘物を口にくわえているのが印象的。「パルプ・フィクション」でも「フィッシャー・キング」でもアマンダ・プラマーは「食卓」「食べる」という場所では異様な魅力を発揮する女優だ。まさしく「生きることへの熱情」を体現した脇役が見ものの映画かもしれない。

グリーンデスティニー(アン・リー)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;名剣グリーンデスティニィをめぐる武術と愛の物語‥
出演;チョウ・ユンファ ,チャン・ツイィ,ミッシェル・ヨー
コメント;「武術」「愛」「社会抑圧と愛」という古典的なテーマに武術をからめる。ワイヤー・アクションのすさまじさがあり、それだけでも十分楽しめる。スタントマンも相当使っているフシがあるが、俳優自身もかなりアクションをこなしている。水の上や竹林の上をフワフワ飛んだり、壁や屋根を飛び歩くシーンが一人の俳優に対して5~6人がワイヤーで操作したらしい。清朝の北京近郊という設定だが西域のモンゴル人も恋愛模様にからむ。出演者は基本的に満州人という設定。ミッシェル・ヨーは007にも出演していたがもともとはマレーシア人。チョウ・ユンファは香港出身だ。同じ中国とはいっても広大な地域をはらんでいることに気づく。とかく理屈はともかくアクションだけでも十分楽しめる。ただし一つのシーンが異様に長くもっと短くしたほうがかえってすっきりした娯楽作品になったのではないか。音楽にはヨー・ヨー・マも参加。当時新人のチャン・ツイィがすばらしい。目の鋭さがやはりすでに只者ではない。けっして美人ではないが小柄ながらも鋭い動きをみせる。ただこの映画を映画館で見た人はつらかったろうと想像する。清時代を反映して一応男性は辮髪での演技というのも珍しいが‥。ま、この手の映画で難しく考える必要はなく、今後の中国映画はわずか4年間で大きく世界にファンを増やしたことには違いないだろう。

恋は邪魔者(ペイトン・リード)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー ; いきなりドリス・デイばりばり全盛時代のパロディ。さらに原爆反対デモやらイエローキャブの旧式が路上を走っていたりする。エレベーターの中でも喫煙というのはその当時マンハッタンでもあったのかも。さて、メイン州からやってきた女流小説家は、出版社ではあまり相手にされなかったもののエド・サリバンショーで取り上げられてから全世界的なベストセラー。かたやテレビでいきなり罵倒されたジャーナリストは、アルゼンチンにひそむナチの残党がアメリカに来ていることも探知するほどの凄腕。名誉回復と女権を訴える小説家の暴露記事を書こうとして‥
出演;レニー・ゼルウィガー,ユアン・マクレガー,デビッド・ハイド・ピアー
コメント;レニー・ゼルウィガーの変貌ぶりが楽しめる映画。「シカゴ」でミュージカルを演じた。アカデミー助演女優賞や主演女優賞には何回がノミネートされていたが、「コールドマウンテン」で受賞。あまりの多忙さに1年間の休暇をとるらしい。それはさておき、「ブリジット・ジョーンズの日記」では出版社の社員としてヒュー・グラントやコリン・ファースなどの英国俳優人と競演し、その演技力を高く評価された。顔があまりアメリカのハリウッドぽくない(というよりもテキサス出身だ)が、発音は完璧。しかも本当かどうか知らないが「ブリジッド‥」に出演するために「わざわざ太った」などとオーディションの時には言っていたらしい。この「恋は邪魔者」では、レニーがきわどい姿で登場するシーンがいくつかあるが、確かに「そんなに太ってはいない」ようだ‥。脚もそれなりにきれいなのだが、太ももは相当に太い‥。意地が悪いが、こうしたところも含めて映画を鑑賞できる。ちなみに「ベティ・サイズモア」では、「やせた女」という設定だった。演技力はとにかく抜群だし、踊りもなかなか。ただレニー・ゼルウィガーの本当の魅力がふくよかな顔と、にじみ出る性格の良さだろう。褐色の髪をブロンドに染めたという設定はまるで必要なく、独特の突き抜けた笑い声は、これまでの過去の映画に共通する点だ。ユアン・マクレガーもプレイボーイもなかなか見せるが、やはり端正な顔立ちとコミックな演技が演技の基礎・基本を感じさせる。ラストでは二人のデュエットが楽しめる構成だ。1時間40分で1960年代の紐育の雰囲気とラブストーリーが楽しめて、ちょっとだけエッチというラブコメの正しいあり方。タイトルロールやファッションも楽しめる。ストーリーはややごちゃごちゃしすぎている面もあるが、かなり長い台詞回しをレニー・背ゼルウィガーがこなす一方で、それを上品にユアン・マクレガーが受ける場面もあり。途中ワンカットだが前衛を気取る1960年代に日本人とおぼしき女優が画面を左から右に移動するシーンがあるが、やっぱり紐育に日本人は似合わんな。出版社の社長が「グーテンベルグの伝統を受け継ぎ出版本来の目的‥利益!!」と演説するシーンには笑った。この映画でドリス・デイやフランク・シナトラの人気がまた再燃するといいな。「スペース・カウボーイ」(クリント・イーストウッド監督)でも使用された歌声がこの映画でも使用されており、1960年から現在にいたる40年間を通じてながれている紐育の音楽も楽しめる。

スパイ・ゾルゲ(篠田正浩)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;昭和16年尾崎秀実の自宅を取り巻く特高警察の姿が‥。昭和6年頃から昭和19年の日本を中心に描く歴史物。満州事変当時の上海、2・26事件、ナチスドイツのパリ侵攻、スターリンの粛清、スターリングラードの攻防、真珠湾攻撃‥いささか盛り込みすぎともいえる日本史映画。
出演;本木雅弘,イアン・グレン,上川隆也
コメント;ナチスドイツの党員でもありながら、その実は国際共産主義者としてモスクワの指示を受けて、ナチスドイツのソビエト連邦侵攻や大日本帝国軍の南進政策まですべてコミンテルンに情報が流れていた‥。もっとも尾崎氏はどうみても当時「共産主義」のかけらもみえなかったというのが史実で、当時の首相から西園寺氏の直系までかなり幅広い交友関係をほこっていた。人望が厚い人だったといわれているし、リヒャルト・ゾルゲ氏も相当に魅力的な人物だったようだ。ただし、第一次世界大戦時にドイツの軍人だった彼が、その後、いかにして国際共産主義者となり、そして現在はあたかも国際「平和」を希求していたかのように扱われているのかは全く理由が不明。むしろ省察すべきだったのは、内閣嘱託や南満州鉄道株式会社調査部で活動していた尾崎氏の方かもしれない。映画‥というかなんというかは約3時間に及び佐藤慶、竹中直人といった面々がたまに顔をみせる。音楽はやたらにクラシックやインターナショナル、そして最後は「イマジン」が流れるというサービスぶりだが‥。映画だけで判断すると、アメリカの石油禁輸政策により南進した‥という単純な議論に展開されるが‥かなり苦しい映画だ‥。もっとも俳優は個々にいい味をみせており、特に本木雅弘が、「ファンシィダンス」「シコ踏んじゃった」などでみせた演技とは違う落ち着いたそぶりをみせる。それがまあみてよかった点か。でもなぜか途中で無性に笑いたくなるシーンが多かったのだが‥。イアン・グレンがゾルゲそっくりで不気味なほど。俳優の頑張りぶりはとにかくすごい。

MUSA~武士~(キム・ソンス)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;高麗の使者団は外交のため明の首都南京に入るが、文官以外に護衛の武官もいたため誤解され流刑と身分となる。北元と明とが抗争中の中、砂漠の中で帰途をめざすが‥
出演;チャン・ツィイー ,アン・ソンギ,チョン・ウソン
コメント;ドラマ作りの時代設定が面白い。現代でいうと韓国の陸軍部隊が中国人民民主共和国の幹部の娘を守る‥という感じなのだろうか。この現代でこうしたドラマがつくられること自体が、ロシアや中国と地続きの国の運命を思う。とはいえこの映画、韓国の時代劇としてみれば、それほど違和感はない。「駅馬車」のパロディもあれば、「七人の侍」を思わせるシーンもいくつかある。籠城攻めのシーンは確かに「ロードオブザリング」に比べればチャチではあるが、それもまたこうした映画の面白みの一つ。仲間の死体を弔いながら海から「煙」をみるというのはある種の「定番」なのだが、その「定番」をきっちりこなしてくれるのだから、それを楽しむことが出来るかどうかは、もうエンターテイメントの許容度の幅の広さと等しい。大陸なのに林の中でモンゴルの精鋭騎馬舞台と斬りあったり、海のそばなのに元軍が井戸水を掘り出したり‥といった「モザイク」的な怪しい面白さ、というのはつまり「いかがわしい」のと同じなのだろう。この時代高麗は仏教系統が主流だが現代の韓国を繁栄してか人間平等論的なことをいう「奴隷」やら朱子学みたいな倫理観が強くでてきたりとか‥それなりに面白い‥
 ただし劇場公開で見た人の中には怒った人もいるかもしれないが、それはそれで無理もない、とだけはいえる‥そうそう戦いが終了後の「わびしさ」とかは「ワイルドバンチ」のラストに結構雰囲気が似てるかも‥

高麗とは「こうらい」とか「コリョ」などと読んだりする。埼玉県の高麗郡などにもその国名の由来がある(しかし実際には唐に滅ぼされた高句麗の時代からの名称という説もあるようだ)。モンゴル人による元が衰え始めたのは紅巾の乱からだ。高麗自体は918年に王健が独裁政権の後、建国され935年に新羅、 936年に百済を滅ぼして朝鮮半島を統一。993年以後契丹の侵略などを防衛し、契丹(遼)と宋との間で巧みな外交を演じる。やがて契丹が金によって滅ぼされると今度は女真族との戦いが始まる。軍人による独裁政権が始まるが元に従属したのは1259年から。元とともに元寇の乱などで日本にも軍を派遣したことがある。その後、元と漢民族による明とが抗争しはじめると元は中国北部に移動し、北元となる。高麗内部では親明派と親元派とに別れるが最後には明とともにする。李成桂が1392年に李氏朝鮮を建国し、高麗という名前は消える。朱元鐘は明の太祖。晩年はかなり残虐な行為もしたらしい。首都は南京。娘が実際にいたかどうかは定かではない。
 契丹もモンゴル系統の遊牧民族だが、この映画では元と契丹との区別はほとんどついていない。ややイスラム系統の民族らしき人間もいるが元はある意味国際国家だったのでこれは歴史考証としても入れざるをえなかったのかもしれない。

すべては愛のために(マーティン・キャンベル)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー ;イングランドでは飢餓地帯に長年援助を続けてきた老人をいたわるパーティが開催されていた。それを外から見守る背の高い白人と飢えた黒人。そして二人はその会合の中へ‥。
出演;アンジョリーナ・ジョリー ,クライブ・オーウェン ,シャーロット・ジョーダン
コメント ;UNCHRとは、国際連合難民高等弁務事務所のこと。「ツゥームレーダー」でトレジャー・ハンターとして世界をかけめぐったアンジョリーナ・ジョリーが今度はイングランドの貴族階級の家に嫁入りしたところから場面が始まる。
 正直言って、ストーリー自体はとてつもなく「くだらない」のであるが、この映画のすごいところはなんといっても「画面」である。特撮効果も使用しているのだろうけれども、とにかくエキストラの人数がすごい。またエチオピア、カンボジア、チェチェンと難民多発地帯の映像は、ニュースでみよるよりも切実さが伝わる。特にチェチェンの爆撃シーンは「最前線物語」なみに低い角度から爆撃をとらええており、ワイド画面でみるともっと迫力が増すだろう。監督のマーティン・キャンベルの「マスク オブ ゾロ」もなかなか面白い映画だったが(ストーリーはやはりくだらなかったけれども)、独特の映像作りの才能は賞賛に値すると思う。やや最後のメッセージなどでこれがニュース性を帯びてしまうのが残念ではある。
 エチオピアは、1974年に海岸沿いのエリトリア地域を併合。その後ソマリアとの抗争や軍事政権、共産主義政権という苦難の道を歩む。国名だけは、エチオピア人民共和国とかエチオピア人民革命民主主義戦線(EPRDF)のように「りっぱ」であるが、実際のところ、ソマリアとの抗争の時には75万人の難民を発生させた。ただし1995年以後は普通選挙がおこなわれ、農業生産力も上昇しつつある。
 カンボジアのクメール・ルージュのインテリ上がりの集団は同じ国の民族の知識階層を皆殺しにしたのは有名。仏教系統の国だがそうした背後関係もカメラや衣装はしっかり認識して画面作りをしてくれている。
 チェチェンは現在進行中の紛争地帯。カフカス地域はもともとイスラム教徒が多い地域であるうえにこの地帯は帝政ロシアの南下政策以後かなり搾取されてきた地帯。スターリン時代にも大規模な虐殺や民族の中央アジア移動などがなされている。2002年のモスクワ劇場爆破事件では人質128人、犯人41人が死亡。また9月1日に発生したロシアの北オセチア地方の学校占拠事件なども背後にチェチェン問題があるといわれている。5月に爆破テロで前大統領が死亡したのち現在ロシアに近いといわれているアルハノフ新共和国大統領が誕生。アルカイダとも提携する過激派やマスハドフを中心とする穏健派が混在しており今後の展開はまったく予想できない。ロシアは強硬姿勢でアメリカもそれを追認する方向。あるアンケートではチェチェンでは294人の誘拐事件が発生(そのうち市民が100人程度)、20人が殺害されて128人が行方不明とされている。こうしたエピソードも映画の下敷きになっているがこれは別に映画を楽しむ上でのチップスにすぎない。

パンチ・ドランク・ラブ(ポール・トーマス・アンダーソン)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;トイレ詰まりの吸引機の会社を立ち上げた男は青い壁の部屋の中でバーコードのマイレージについて菓子メーカーに問い合わせをしている‥
出演 ;アダム・サンドラー ,エミリー・ワトソン ,フィリップ・シーモア・ホフマン
 21世紀型ラブストーリー。境界線上の正確にあるとおぼしき主人公は、やや複雑な家庭環境。だがトイレ吸引機の会社を設立し、事業の拡大ももくろんでいる。怪しげなテレフォンサービスに電話したり、お金を貸してくれといわれたり最初はややストーリーの展開に戸惑う向きもあるが、とにかく素敵なラブストーリー。相手役は「レッドドラゴン」で印象的な役を演じたエミリー・ワトソン。年齢は多分相当いっている人なんだろうけれども、自然体の演技でとっても可愛く美しい。女性の美しさは年齢やら体つきやらではないことを知らしめてくれる。赤のドレスや白いドレスを風にまとわせ、映画全体に彩りを添えてくれている。意表をつく画面展開が「ウリ」なのであまり詳細に書くのはルール違反かもしれないが、ハワイのシェラトンホテルで、アダム・サンドラーとエミリー・ワトソンが戸惑いながら手を握るシーンが感動的。

タイムライン(リチャード・ドナー)

2007-12-02 | Weblog
ストーリー;砂漠の真ん中で中世フランスの服装をして倒れていた人物が病院に運ばれた。彼の身体の血管はすべて「ずれて」いた‥。そのころフランスの考古発掘所カステラガールでは中世英国城の発掘が進んでいたが‥
出演 ;ポール・ウォーカー ,ジェラード・バトラー ,フランシス・オコナー
コメント;マイケル・クライトン原作で原作をあらかじめ読んでいたこともあるがどうしてハリウッドは優れた小説をこうも駄作に変えてしまうのだろうか。一番これまででひどかったのは「ロスト・ワールド」で粗筋や結末自体がもう別物だったが「ツイスター」にしろ「ジェラシック・パーク」にしろ原作の方が映画よりも100倍は面白いのだが。百年戦争の時代ということで粗筋はかなり荒っぽく「フランス対イングランド」という構図になっている。川の流れが見事で戦闘シーンでも「夜矢」やカタパルトなどのシーンは楽しめる。百年戦争といえばジャンヌ・ダルクだがこちらはフランス側の視点でとらえたものに同名の映画があるが原作にあって映画にはなかった当時の風習の参考となる映画として「ロック・ユー」がある。中世の城の「陥落」というのはそう楽な話ではなく、また戦闘シーンで扉が「内開き」になっていたのは時代考証として非常に気になる。城を攻める‥ということでは「ロード オブ ザ リング」シリーズが圧巻だが小説としては「墨攻」が中国の城砦を守り抜く資料として面白い。また矢が飛び交うシーンでは映画「英雄」がかなり派手な春秋時代の戦闘を描いている。
 映画としてはそれなりのできなのかもしれないが、原作を読めばもっと楽しめる‥というより順番として映画をみてから原作を読むというのが正しいのかもしれない(多少小説は時代や地理関係がややこしい)。時代考証がやや甘いとは思うものの‥まあこんなものなのかなあ‥

 なおこの映画の中で「秘密兵器」として用いられているのが「ギリシアの火」とよばれるもの。これは創作ではなくてちゃんと歴史に使用した事例が実はある。ただし時代はさらにさかのぼって673年ごろの東ローマ帝国=ビザンツ帝国で、イスラムにキプロス島、ロードス島といったところを攻め落とされ、コンスタンチノープルが危機に陥ったとき。4年間にわたりイスラムに包囲されたが、このビザンツ帝国を守り抜いたのがこの「ギリシアの火」。揮発油に硫黄と松脂を調合して濃い煙と大きな音をたてて燃えて、水をかけるとさらに燃え広がるというもの。これをイスラム側に投石するなどして、戦う。717年ごろにもイスラムに包囲されるがそのときもこの「ギリシアの火」でコンスタンチノープルを守り抜く。だいたいユスティニアヌス帝のころで、オリエント方面にはササン朝ペルシアなどがいた時代だ。10世紀ごろにはサラセン、カイロ・カリフ、またフランスのすぐヨコには西カリフ帝国なんていうものもあったから、この「ギリシアの火」がなければヨーロッパの歴史も違ったものになっていただろう。この「ギリシアの火」もこの映画に登場するが時代はすでに13~14世紀。この間数百年がたっているが、どうもその製造方法まではイングランドには伝わっていなかったようだ。これは歴史的事実なのかもしれない‥。