3月は卒業式のシーズンである。卒業式に参列して思うことなのであるが、式辞や祝辞の中で「人をいとおしいと思う心」「人の痛みを感じられる柔らかな感性」「手を差し伸べる勇気のある人」など「豊かな心を持った人間となること」を願う言葉が多くなった。
しかし、その言葉の意味を本当に理解してくれるのは僅かなのではないかと思う。健康の有り難さは、病気をして始めてわかるのであり、家族や親族、友人など愛する人を失って始めてその悲しみの深さが理解できるのだと思うからである。
人は言葉が理解できても、体験しなければ本当の意味がわからないという特性を持っていると思う。経験の少ない卒業生を前にして、他人を思いやる人間性豊かな人になって欲しいという願いは、どのようにして伝えたらよいのか悩むところである。