なすがままに

あくせく生きるのはもう沢山、何があってもゆっくり時の流れに身をまかせ、なすがままに生きよう。

おいちゃんになった日

2006-02-01 13:19:52 | 昭和
僕が「おいちゃん」と初めて呼ばれた日の事を今でもはっきり覚えている。ぼくが30歳の誕生日(8月25日)の翌日の事だ。その日僕はガソリンスタンドで車を洗っていた時だ少し離れた所で車を洗っている20才位の女の子が「おいちゃん!」と大きな声で呼んでいるのだ、僕はその声には無関心で車にセッセとワックスをかけていた。すると、その子は僕の所にやってきて「おいちゃん!さっきから呼びようのに聞こえんやったと?おいちゃん」「エッ!おいちゃんて俺の事?」僕はケゲンな顔をしてその子の顔を見た。「そうよ、おいちゃんしかここにはおらんやん、その洗車ブラシもう使わんのやったら貸してよ」「ああ、いいよ」僕は視点の定まらない目で返事した。「おいちゃん」と初めて言われたのだ、それまでは「兄ちゃん」か「あんちゃん」で通用していた。何で「おいちゃん」なのか、僕は落ち込んで家に帰った。そして、嫁さんにさっきの話をしたら嫁さんは「そうよ、あんた立派なおいさんよ、あんたもう30よ、兄ちゃんで通じる訳なかろうもん」と追い討ちをかけた嫁さんの言葉に僕は再び傷ついた。30才になった翌日に他人からも嫁さんからも「おいさん」のレッテルを貼られたのである。その夜いつもより多く酒を飲んで夜更かししていると嫁さんが部屋を覗き「おいさん!酒飲みすぎよ早よ寝らんね、おいさん!」。そして、その日をきっかけに僕は「おいさん」の称号を受け入れる事にした、今から27年前の事である。それにしてもあの時スタンドで「おいちゃん」と僕を呼んだあの娘は今47歳位だろう、もう「りっぱなおばさん」になっているに違いない、「なあ、おばさん、そうだろう?」