ナナは不思議な娘だ。小学校の時から、絶対に友達と喧嘩しない。人の悪口を
言ったことがない。クラスで もめ事があったり、部活で仲間が落ち込んでいたりする時、意外な発想で、みなの気持ちを変える。ムードメーカーだ。
先日、自転車を買いに行った時のこと。母親が「黄色はなになにでダメ、白は・・・だからダメ。赤も褪色するからダメ」と、否定形で選んでいると、「私が欲しいと思わない物まで、どうのこうの云う必要はありません」と云う。
「ママ。赤や黄色、白でも “いい”と思って買う人がいるのだから、それを否定してはいけません。お店の人は、良いと思って売っているのだから、店の人の気分を害するようなことを云わないで」と云うのだ。
結局、銀とピンクのツートンのを選んだのだが、「私が欲しいと思った物の良いと思ったところだけを云ってくれればよろしい」と。
また、母親は夫に対してついキツイ口調で言ってしまうことがある。すると「お父さんに言いたいことがあったら、まず私に言って。私からお父さんに言ってあげるから」と。
同じことを要求するのでも、ナナが言うと、父親もスンナリ言うことを訊くのだ。
こういう能力は、親から教わったものでも、本で学んだ知識でもない。生まれながら備わった天性のもののようだ。
産まれたとき、足のふくらはぎに大きな黒いアザがあって、学校でいじめられるのではないかと心配したが、小中高校と人から からかわれても、本人は一向に意に介さず、気にしないから、すぐに、誰も何も言わなくなるという。そのアザの
おかげで、“悪”や“不幸”というものが近づかないようだ。
そうした性格だから、周囲の者もついついお小遣いをあげたくなる。そして欲しい物は、自分の小遣いで買わなくとも、なんらかの方法で手に入ってくる。
みなから慕われる徳のある人には、“収入は自然とついてくる”という、いい“型見本”だ。
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