新政権が発足して約1ヶ月がたち、新聞はじめジャーナリズムの各大臣に対する論評が姦しくなってきた。
前原国交相の、数々の発言が注目を集めている。
就任早々の八ッ場ダムの中止発言をはじめ、JALの再建問題、沖縄基地問題と続き、最近では羽田空港のハブ空港化についての議論が物議を醸しだしている。
一連の発言を聞いていて、前原国交省の発言には一つの筋が通っているように思う。
情けないのは新聞、テレビに代表される大手マスコミの対応で、羽田のハブ化など日本の空港の問題点は数年前からわかっていたにも係わらず、航空行政に対して正面からの批判を避けてきたように思う。
前原国交相は、元々安全保障の専門家として知られ、困難な課題の解決のためには先手をとって進めていく事が大切な事を承知しているだろうし、有名な宮本武蔵の五輪書も読んでいるだろうと想像する。
最近ある人から”五輪書”の素晴らしさを教えられ改めて目を通してみた。
その人曰く、武蔵の強さの根本は”観見”にあるという。
勝負と言うは敵に勝つ事にあり。
勝つためには、観と見の両方で敵の動きを判断する事が大事だと言う。
見は近くの目で、剣の動きを見ることをいい、観は敵の心と全体の動きを目ではなく、我が心で見ると言う。
敵の心がわからない時は、”陰を動かす”即ち自分からまず強く動いてみろと言う。
これがわざと先手を仕掛けること。
もう一つ”影をおさゆる”敵から掛かって来た時は、その勢いを押さえるような強い調子を見せる事、敵が驚き、戦法を変える。
その瞬間こちらも戦法を変え又先手を取る事を説いている。
このように常に先手を取る事で優位に立つことを繰り返し述べ、そのことが敵を客観的に見る、即ち敵の心を読むことに繋がると言っている。
五輪書最後の”風の巻”であれほど先手を重要視する武蔵が、剣さばきについて”剣さばきが速い事を尊ぶのは正しい道ではない”と言っているのは大変興味深い。
早く進めば転ぶ事もある、道には荒地や沼地もあるだろう。
上手のすることはゆっくり見えてしかも間がぬけていないことだと。
兵法において早いと言う事は良くない事だと断言している。
先手先手と発言している前原国交相の前にはどんなことが待ち受けているか、焦らず慌てず物事を進めて欲しいと思う。
よく考えてみると、自らの身近な仕事に思いを馳せても、当てはまる部分が随分多い教えだと思う。