木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

博多駅前の今昔

2007-04-23 22:30:53 | Weblog
今日は福岡に出張し、博多駅前のビルの調査を行った。久し振りの博多駅前であるが、現在博多駅ビルが建設中でかなり周りは混雑している。博多駅の正面に赤茶色のインド砂岩を貼った西日本シティ銀行本店(写真)が聳えている。

この建物は旧福岡相互銀行本店で建築家磯崎新氏の作品である。1972年の建物であるからかなり時間が経過して砂岩の表面に汚染などが顕著である。
当時私は黒川さんの事務所に在籍中で、福岡銀行本店の計画に没頭していた。
最初のミーティングで、この赤茶砂岩の建物を意識していた黒川さんは、これとまったく反対のことをやりたいと言って、福岡銀行のスケッチを始めたのを覚えている。
当時磯崎氏は丹下さんの下で行ったスコピエ計画(ユーゴスラビア)で展開した曲線や斜線を多用したデザインで注目を集め、この福岡相互銀行本店ビルでも色んな形態や細かなディテールを外観に使用していた。

当時たまたま福岡に出張した時、この建物は工事中で竣工直前であったが私はかまわず建物の中に入って行ったら、磯崎氏がいて挨拶をしたら建物の中を見せてくれた。各室のインテリアまで見てみたが様々な材料や、細かいディテールが多用してあり、ちょっと懲りすぎかとも思った記憶がある。磯崎さんもとにかく一人で全部設計したから大変だったと其の時言っていた。

ただ今再び見てみると、当時の流行のデザインではあるがなんとなく色褪せて見えるのはやむをえない。コルテン鋼のカーブしたデザインと砂岩の取り合いもちぐはぐな印象を受ける。 ただ赤茶色のインド砂岩の外壁だけが奇妙な存在感を持って建っている。

黒川事務所の福岡銀行本店が完成し、しばらくして福岡県庁舎の設計の話しが興り私は今度は福岡に常駐して計画を詰めたことがあった。其の頃事務所の宿舎が博多駅に近いマンションの一室にあり、駅前のこのあたりを良く行き来したものだ。今はもう建て変わって事務所になっているのだろう。

主要都市の駅前の中でも、博多駅前は広さと言い、建物群のスケールといい有数のものである。新しい駅ビルの主要商業施設は阪急百貨店に決まったと言う。博多鹿児島間の新幹線の開通も間近と聞く。
九州全体の駅前にふさわしい姿で出来上がるのが楽しみである。