放射能除去と骨炭 一筋の光

私たちの想いを全国に

国民は政府の対応に不信感

2012年05月29日 | 福島原発事故

全面撤退と解釈 東電対応に強い不信感  国会事故調で海江田氏

 
 

東京電力福島第1原発の事故調査委員会に参考人として出席し、発言する海江田元経産相=17日午後、参院議員会館
東京電力福島第1原発事故の対応に当たった海江田万里元経済産業相が17日、国会が設置した事故調査委員会に参考人として出席し、東電が原発から全面的に撤退する意向だと解釈したことなど、事故直後の東電の対応に政府側が強い不信感を抱いていたことをあらためて明らかにした。

 また首相官邸内と東電、経産省原子力安全・保安院との情報共有に大きな問題があったことを認めた。

 同委が公開の場で国会議員を聴取するのは初めて。事故対応に国会議員がどのような関与をしたのか調べる方針で、27日には当時官房長官だった枝野幸男経産相の聴取も予定している。

 東電の清水正孝(しみず・まさたか)社長(当時)が昨年3月15日未明、原発からの撤退を申し出たことについて海江田氏は「社長が私に電話をしてきた意味を考えると、重い決断だったのだろうと思う」と述べ、全面撤退ととらえたことを明らかにした。東電はこれまで「全面撤退の意向を伝えたことはない」としている。

 1号機の格納容器から蒸気を排出するベントが遅れたことについて「東電がこの期に及んで事故を小さく見せようとしているのかと思った」と指摘。1号機への海水注入がなかなか始まらなかったことにも「東電が廃炉をためらっているからだと感じた」と述べた。

 官邸が東電などと事故関連の情報をうまく共有できず「伝言ゲームをやっているような状況で、このままではいけないと思った」と当時の心境を語った。

 事故当初、官邸の地下に詰めていた海江田氏は、5階にいた菅直人前首相と情報共有ができなかったことを「大きなマイナスだと思っていた」と振り返った。

 事故当日、原子力緊急事態宣言を出すのに時間がかかった理由を問われると「総理の理解を得るのに時間がかかった」と説明した。(佐分利幸恵)

事故調やりとり詳報

 東京電力福島第1原発事故調査委員会(国会事故調)が17日、海江田万里(かいえだ・ばんり) 元経済産業相を参考人聴取した主なやりとりは以下の通り。

 【事故の初期対応】

 桜井正史(さくらい・まさふみ)委員 東電が昨年3月11日、原子力災害対策特別措置法15条に基づく緊急事態を通報した後の対応は。

 海江田氏 官邸に行って菅直人(かん・なおと)首相(当時)に状況を話した。

 桜井委員 原子力緊急事態宣言を出すためか。

 海江田氏 はい。菅首相から「炉の状況は」と聞かれ、経産省原子力安全・保安院の院長と次長が話をした。いろんなやりとりがあり「とにかく原子力災害対策本部を」と言うと「どこに(法律上の)根拠があるのか」と聞かれ、省令にあるらしいのだが持っておらず、内閣官房副長官らも入ってきて「どこだ、どこだ」と。その後、党首会談もあって時間が経過した。

 桜井委員 原子力緊急事態宣言について菅首相は。

 海江田氏 「チェルノブイリみたいになる」と2回ぐらい言っていた。

 桜井委員 宣言までに時間がかかった理由は。

 海江田氏 菅首相の理解を得るのに時間がかかった。

 【ベント、海水注入】

 桜井委員 東電からベントの話は。

 海江田氏 東電から爆発を防ぐために圧力を逃す、それがベントだと聞いた。大気中に放射性物質が飛散し、厳しい選択だが「やってください」とお願いした。

 桜井委員 なぜベント実施命令を出したのか。

 海江田氏 昨年3月12日午前3時にベントをすると発表した。すぐ始まると思ったが進まない。この期に及んでも東電は事故を小さく見せるためにためらっているのかな、と思った。命令は東電経営者を後押しする意味もあった。

 桜井委員 海水注入についてどう思ったか。

 海江田氏 炉に塩を入れると廃炉なので、ためらっていると思った。

 桜井委員 原子炉への海水注入をめぐり、政府内で意思疎通ができていなかったのでは。

 海江田氏 意思疎通ができない、情報共有ができないのは大きなマイナスだった。私ども、東電本店、第1原発の免震重要棟の三つが伝言ゲームをやっているような状況で、このままではいけないと思った。

 【撤退】

 桜井委員 東電の撤退問題について。どこから話があったのか。

 海江田氏 清水正孝(しみず・まさたか)社長(当時)からの電話。官房長官の部屋の外で電話をうけたが、しっかり覚えているのは、第1原発から第2原発への撤退ではなく「退避」という言葉。「一部を残す」という話は一切なかった。

 桜井委員 その場にいた官邸幹部の結論は。

 海江田氏 大変なことになる。東日本が失われると。現場の方に申し訳ないが、がんばっていただかなければならない。ところが清水社長に来てもらうと「撤退しない」と。

 桜井委員 社長の発言をどう感じたか。

 海江田氏 若干、気が抜けた。現場に残れば急性被ばくの可能性もあるので重い決断。それを考えるとどうなのかなと。電話で受け取った話と違ったので。

 桜井委員 東電は全員退避を考えたことも、連絡したこともないと言っているが。

 海江田氏 清水社長が私に電話してきた意味を考えると、重い決断だったのだろうと思う。

 【首相が東電本店に】

 野村修也(のむら・しゅうや)委員 (これまでの東電社員の証言には)菅首相から厳しく〓(口ヘンに七)責(しっせき)され、違和感があったというものもある。

 海江田氏 初めて菅首相の演説を聞く方は違和感を覚えて当然だと思う。もう少し別な表現があるだろうと。私は菅さんとは古い仲でありまして。

 【浜岡原発の停止】

 野村委員 浜岡原発を止める法的根拠は。

 海江田氏 ない。

 石橋克彦(いしばし・かつひこ)委員 昨年5月5日に浜岡原発を視察した時の感想は。

 海江田氏 砂丘が防波堤の役割を果たすと聞いていたが、実際に行くと防風林の丈は短く、津波が来たら遡上(そじょう)すると。

 石橋委員 現在は。

 海江田氏 そのままの状態が続いている。

 【再稼働について】

 野村委員 今夏は大変だ。相当の節電をしないといけない。先を見通して(再稼働の理解が得られやすい)厳しい基準を考えなかったのか。

 海江田氏 やってしまったことなので弁解はしない。ご批判は受ける。

 【天災か人災か】

 野村委員 東電は天災だと言い続けている。天災と人災の割合は。

 海江田氏 難しい質問だが、ゼロではないだろう。津波の高さ、地震の強さの新たな予測が出ていて(人災と考える余地は)ある程度あった。

 黒川清(くろかわ・きよし)委員長 ベントの時に東電がためらっていると思った、と言っていたが、具体的には。

 海江田氏 ベントの時か後だったか、第1原発事故で5、6号機も無傷じゃなかった。全部廃炉だなと思っていたが、東電が5、6号機を廃炉と言い出さなかったので。

 【保安院の役割】

 桜井委員 保安院の記者会見で炉心溶融の可能性が取り上げられたことは知っているか。

 海江田氏 その方(昨年3月12日、保安院の記者会見で炉心溶融の可能性に言及した中村幸一郎(なかむら・こういちろう)審議官)が代わったことは知っている。代えろ、と言ったことはない。

 桜井委員 会見を記憶しているか。

 海江田氏 官邸にいて全く見ていない。

 桜井委員 炉心溶融という言葉を使わなくなったことで保安院の発表に不信感を抱かれるようになったが。

 海江田氏 東電の技術者を呼んで言葉の整理をした。いろんな事象がはっきりせず「確実に言えることは何か」と聞くと「燃料ペレットの溶融」と言う。じゃあ、その言葉を使いなさい、と。

 桜井委員 保安院は役割を果たせたか。

 海江田氏 彼らは彼らなりに一生懸命やったが、国民の期待する役割は果たせなかった。

 (2012年5月17日、共同通信原子力報道室)

 


最新の画像もっと見る