槍と銃剣

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カール12世を打ち抜いたとされる真鍮釦の同位体調査結果

2009年12月13日 12時23分16秒 | 大北方戦争+軍事史
Varbergs博物館にあるカール12世を打ち抜いたとされる真鍮釦の同位体調査結果の要約(1992年)

1718年、ノルウェーのフレデリックスハルトでスウェーデン王カール12世を打ち抜いたとき使われたと信じられている真鍮でメッキされた釦について、鉛の同位体調査が行われた。鉛は釦の中にしっかりと充填されており、殺傷性は十分にあった。別々の鉱山から産出された鉛は、異なった同位体構成であることが分かっているため、これを利用して鉛の同位体からそのルーツを探り、間接的に狙撃手の国籍(スウェーデン人かノルウェー人か)がどちらか、という大論争に対して幾分かの光を当てようと試みた。
鉛の同位体の構成は次の通り。206Pb/204Pb=18.3, 207Pb/204/Pb=15.6, and 208Pb/204Pb=38.25。
これは、スウェーデンのBergslagen鉱山地区から算出される鉛よりも高い放射線体(同位体比率が高い)であったが、スカンジナヴィアの鉱山、例えばノルウェーのRoros地区などでよく見られる鉛に比較的近いものであった。しかし、より一致するものは中央ヨーロッパ(ドイツ)産のものであった。そしてザクセンの歴史的な鉱山地区から産出される鉛はスウェーデンやノルウェーにも多く輸出されていた。
以上のことから、この結果から狙撃手の国籍を割り出すことは難しいと判断する。

【コメント】
当時カール12世は神秘的な力によって守られており、決して弾に当たって死ぬことはないと民衆の間では信じられていたと言われている。そして唯一、常に王の身近にあるものだけが王の命を奪うことが出来るとされていた。

伝説によると、そこでカールを暗殺する決意を固めた人間はカールが身につけていた軍服から釦を拝借し、それを用いてカールを撃ち殺したとされている。

カール12世が神秘的な加護を受けているという畏れは、今現在から考えると荒唐無稽であるが、当時にあっては、軍上層部にまでも信じる人間が多かったと言う。


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