南側の周歩廊に移動する。この廊と内陣を隔てる内陣障壁には見事な群像彫刻が並んでいる。
この障壁にあるのは、大聖堂初代司教である聖フィルマンの物語。4つの場面に分けて造られている。その場面場面が実に精巧に作りこまれていて、じっくりと眺めてしまった。
順を追って見てみよう。一番左はフィルマンがアミアンに到着した場面。出迎える市民たちのっ興味深そうな表情が面白い。アップは冒頭の写真だが、中でも白い帽子のアミアン娘の美しい表情が印象的だ。
次にフィルマンが市民に洗礼を施している場面。こうして次第にキリスト教が市民たちの間に浸透して行く。
3番目は、状況が一変する。フィルマンの布教は4世紀のこと。当時はまだキリスト教は非公認の宗教。お上からは「邪教を広めた」との罪で、逮捕されてしまう。
最後は、フィルマンが首を斬られて殉教する。この場面は、見つめる市民たちの前で、枠から外れた外側に打ち首のシーンが設置されている。
この群像彫刻下には墓と遺体が納められており、すっかり聖フィルマンのものだと思っていたら、別の司教の墓だった。
これらの像は柔らかな彫り具合から木のように見えたが、実は石を彫って彩色を施したものだという。16世紀の職人の確かな技量が伝わってくる。まさに後期ゴシック彫刻を代表する傑作だ。
南側側廊には「黄金の聖母」と呼ばれる聖母像が置かれている。赤ん坊のイエスを左腕で抱き、かすかに微笑みを湛えた聖母はどこまでも麗しい。
完成当時は黄金色に彩色され、南扉口にあった。
しかし、保存の必要から今は扉口にはレプリカが置かれ、実物は堂内で保護されている。