2021/6/30 08:00兼原 信克
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兼原 信克(かねはら のぶかつ、1959年(昭和34年)1月22日 - 62歳)は、日本の外交官。外務省国際法局長を経て、2012年(平成24年)から安倍内閣(第2次安倍内閣~第4次安倍内閣 (第2次改造))で内閣官房副長官補。2014年(平成26年)から国家安全保障局次長兼務。2019年退任。
山口県阿武町出身[1]。東京大学在学中の1980年(昭和55年)外務公務員採用上級試験に合格する。1981年(昭和56年)東京大学法学部第二類を卒業して、外務省に入省する。 フランス語研修員として、フランス国立行政学院などで学ぶ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%BC%E5%8E%9F%E4%BF%A1%E5%85%8B
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元内閣官房副長官補、同志社大特別客員教授
≪安全の花壇あって繁栄の花≫
経済安全保障という言葉がようやく人口に膾炙(かいしゃ)するようになった。安全という花壇の上に繁栄という花が咲く。切り花のような繁栄はあり得ない。しかし敗戦国となった日本では米国の庇護(ひご)の下で軍事的野心をもたず経済発展にさえ邁進(まいしん)していればよいという歪(ゆが)んだ幻想が長い間はびこっていた。
日本が1960年代に英仏独の経済規模を抜き、80年代に米国を猛追するほど国力を上げたとき、東芝機械ココム違反事件が起きた。現代戦における最重要作戦は核搭載大陸間弾道弾を積んだ敵戦略原潜の破壊である。光の届かない漆黒の深海で敵潜水艦を探知するにはスクリュー音だけが頼りだ。そのソ連潜水艦のスクリュー音を同盟国日本の民間企業が消してしまった。米国は今でも年間80兆円の国防予算を使い自国だけでなく同盟国の安全を守っている。世界のGDP(国内総生産)の1%に相当する金額である。米国の怒りは爆発した。
同じ80年代、日本の半導体産業は世界市場を席巻していた。当時、安全保障担当の上司が「米軍の核兵器も日本の半導体を使っているんじゃないか。対米経済戦争なんて言ってはしゃいでいて大丈夫か」と不安そうに述べていた。案の定、対決姿勢を強める日本の戦略的方向性を危惧した米国は、しゃにむに日米半導体協定を押し付けてきた。その後、日本の半導体産業は衰退の一途をたどった。
経済と安全保障は表裏一体である。市場と国家は、各々(おのおの)独立した論理で動く。ビジネスの世界だけが独立して存在していると考えるのは誤りである。日本が、敗戦後、3四半世紀にわたって経済と安全保障を切り離した代償は、安全保障に係る産業政策が存在しなくなったことである。それは狭い意味での防衛産業政策ではない。
≪優れた技術がスピンオフ≫

例えば米国では、政府研究開発予算が20兆円ある。その内の6割程度が国防総省、エネルギー省などの安全保障関係の部局に流れていく。彼らは狭い意味での軍事技術だけを担当しているわけではない。人工知能、先進コンピューティングはもとより量子科学、遺伝子工学、脳科学等の非常に幅広い分野において最先端の基礎研究から応用研究、そして社会実装のための開発まで手掛けている。その巨額の予算は、幾多の輝かしい業績を持つ研究所に流れていくだけではない。委託研究という形で民間企業の研究所にも流れていく。
安全保障に係る技術開発は「安かろう悪かろう」では困る。国家の命運と兵士の命がかかった技術である。一歩でも世界の先を行く最先端の技術開発が必要である。高いリスクが付きまとうが、巨額リスクも安全保障のためなら国家が負担せねばならない。そこから優れた技術がスピンオフして出てくる。厳しい競争が前提になることは同じだが、WTO(世界貿易機関)の規律する一般入札とは無縁の世界である。
日本では、それは防衛省の業務ではない。産業を所掌する経済産業省、電気通信を所掌する総務省等の担うべき業務である。問題は、日本の経済関係官庁に、長い経済と安保の遮断の結果、「町人国家」(天谷直弘・元通商産業審議官)とも呼ぶべきマインドが沁(し)みついていることである。中国の台頭を前にして令和の戦略環境は厳しいものとなる。
冷戦期、外務省、防衛庁・自衛隊等の安全保障担当官庁は、極東ソ連軍の重圧、国内冷戦の厳しい政治的分断を耐え日本の安全保障政策を支えてきた。令和の経済関係官庁には、市場経済至上主義を卒業して、自らも国家安全保障を担う主力官庁であるというアイデンティティーを持ってほしいと願う。国家安全保障局に経済班もできた。それは時代の要請である。
≪安全保障支える研究拠点を≫
日本に欠落しているのは安全保障産業政策だけではない。安全保障科学技術政策もない。こちらの問題の根はより深い。国内冷戦による日本社会分断の傷痕が、依然としてぱっくりと口を開けているからである。日本の科学技術政策予算は、年間4兆円を血税で賄っている。防衛費の5兆円に匹敵する金額である。しかし、日本の学術界は強い平和主義に固執して、民生技術であっても安全保障が絡んだ研究をすべからく「軍事研究」とレッテルを貼って拒否している。安全保障を志す研究者への隠微な妨害や、自衛官の国立大理工系大学院入学拒否などは未(いま)だにある。特に政府の一機関であるにもかかわらず日本学術会議は、反自衛隊・親西大陸中共国の立場を鮮明にしている。(注1)
日本に欠落しているのは安全保障産業政策だけではない。安全保障科学技術政策もない。こちらの問題の根はより深い。国内冷戦による日本社会分断の傷痕が、依然としてぱっくりと口を開けているからである。日本の科学技術政策予算は、年間4兆円を血税で賄っている。防衛費の5兆円に匹敵する金額である。しかし、日本の学術界は強い平和主義に固執して、民生技術であっても安全保障が絡んだ研究をすべからく「軍事研究」とレッテルを貼って拒否している。安全保障を志す研究者への隠微な妨害や、自衛官の国立大理工系大学院入学拒否などは未(いま)だにある。特に政府の一機関であるにもかかわらず日本学術会議は、反自衛隊・親西大陸中共国の立場を鮮明にしている。(注1)
日本政府も最近、意欲的にハイリスクの研究開発の促進に取り組むようになったが、このような学術界に予算を付けても安全保障に貢献することはない。むしろ半導体育成のような産業政策にこそ予算を回すべきである。国家が巨額のリスクを予算で負担して、日本国中の優れた技術者を、産官学を貫いて選抜し、さらに自衛隊員も加え、国家安全保障のために邁進する研究開発拠点を作ることが必要な時にきているのではないか。(かねはら のぶかつ)
(注1)<2015年9月7日、日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書、c) 科学情報の共有、国民の科学への理解の促進 等 両機関は、本覚書の範囲内で推薦された研究者を、通常の慣行に従って受入れ、研究プ ログラムの調整や、現地サポートの対応を行う。
日本学術会議代表 大西 隆 会長中国科学技術協会代表 会長Qide Han>
http://www.scj.go.jp/ja/int/workshop/abstract.pdfQide Han
日本学術会議代表 大西 隆 会長中国科学技術協会代表 会長Qide Han>
http://www.scj.go.jp/ja/int/workshop/abstract.pdfQide Han
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