★個別的自衛権と日米同盟集団的自衛権行使に必要なヒト・モノ・カネの安全保障体制整備加速か>
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2021.4.22 福井県立大学教授・島田洋一
<島田 洋一(しまだ よういち、1957年10月23日 - 63歳)は、日本の国際政治学者。福井県立大学学術教養センター教授、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会副会長、国家基本問題研究所評議員兼企画委員[1]
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E7%94%B0%E6%B4%8B%E4%B8%80>
≪政策は「カネの流れ追え」≫
推理小説で犯人を当てるコツとして「カネの流れを追え」という言葉がある。これは外国の政策を掴(つか)む上でも重要ポイントとなる。アメリカの大統領がいかに立派な演説を行い、同盟国と共同声明を発しても、「先立つもの」がなければ行動には繋(つな)がらない。そして中国共産党政権が常に見つめているのは言葉ではなく行動である。

4月9日、バイデン政権が来年度の「裁量的予算要求」の概要を発表した。公務員給与など支出が義務付けられた「義務的経費」以外の政策予算で、政権の基本姿勢を端的に読み取ることができる。
予想通り福祉や「脱炭素社会構築」関連が大幅増となっている。一方、国防については「国防総省の最大課題として中国の脅威に最優先で当たる」と強調されているものの、予算の伸び率は右肩上がりのトランプ時代から大きく後退して1・7%の微増とされた。
≪軍事費削減で大鉈の先は≫
しかしそのサンダース氏でさえ、ロッキード・マーチンが中心となって開発したステルス多用途戦闘機F-35ライトニングIIの部隊を地元バーモント州の空軍基地に誘致すべく熱心に運動し、大統領予備選で一時首位に立つ勢いを見せた昨年、首尾よく実現させた。おかげでバーモントには、航空機部品の一大工業団地が育ちつつある。地元は大いに潤った。「サンダース出馬の真の狙いはここにあったのか」と揶揄(やゆ)の声が上がったほどである。
反戦主義者のサンダース氏にして然(しか)り。後は推して知るべしである。この現在の政治力学に鑑みれば、軍事費削減を目指す限り、海外での作戦経費に大鉈(おおなた)を振るう以外なくなる。行政府、議会とも民主党が押さえた状況下、「海外緊急作戦」予算の廃止は必然の流れだったといえよう。
-中略ー
≪有事に持ちこたえる備えを≫
なおアメリカの安全に直結しない地域紛争には、米軍ではなく当該国ないしその地域の同盟国が一義的に責任を持つべきだという発想は、民主党左派だけでなく、共和党のトランプ派にも共通している。積極介入論者は今や影が薄い。米議会の予算審議は今後本格化し、夏場にピークを迎える。共和党は総じて、バラマキ福祉と無駄な脱炭素化を阻止し軍事費を積み増すとの立場だが、いかんせん少数派である。
日本としては、今年秋以降、アメリカの「海外緊急作戦」予算は消えるとの想定の下、尖閣有事への対応を考えねばならない。
もともとバイデン氏は、オバマ大統領が決行したウサマ・ビンラーディン殺害作戦に副大統領として最後まで慎重論を唱えるなど決断力を欠くことで知られる。米軍が来援するとしてもこれまでより即応性は落ち、しかも予算の制約上、作戦期間が短くなると見ておかねばならない。抑止力として米国の存在は大きい。しかし有事に際しては、基本的に日本単独で持ちこたえ、実効支配を維持していかねばならないだろう。(しまだ よういち)
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