<脱 中国依存 ゆでガエルか>
<東大陸と太平洋・インド洋連携か>
2020年03月24日 13時30分 公開
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
新型コロナウイルス(COVID-19)に関するパンデミック(世界的な大流行)が表明され、世界のサプライチェーンが崩壊した。これを受け、新興企業向けに資本へのアクセスを拡大することによって米国の製造能力を復活させようという、非常に困難な上に膨大なコストを要するプロセスに着手すべく、取り組みが復活している。
サプライチェーンの専門家たちは、製造業を活性化するための法的措置については歓迎しているが、「こうした取り組みを拡大していくには、この先何年間にも及ぶ忍耐強い投資と、人的資源が必要だ。中国がこれまで40年間にわたり、製造分野で優位性を確立してきたことから、欧米諸国では現在、人的資源が不足している状況にある」と指摘する。
米国上院議員Cory Booker氏(民主党/ニュージャージー州)は2020年3月12日(米国時間)に、製造イニシアチブの再開を提案した。米国の中小企業庁(SBA:Small Business Administration)が監視役を務める投資資金を設立する予定だとしている。同氏が提案する「Scale-Up Manufacturing Investment Company Act」では、米国内の高度な製造関連の新興企業をサポートする投資家向けに、連邦政府のローン保証を用意するという。
同氏は、「新型コロナウイルスの拡大により、米国経済が供給関連で中国に過剰に依存しているという問題が浮き彫りになった。このような米国サプライチェーンの弱点を目の当たりにすると、自国の競争力向上のために行った投資が、国として失敗だったことが分かる」と述べる。
さらに同氏は、「連邦政府は、米国の競争力を確保し、革新的技術および能力を維持していくためには、民間企業と協業することで、資本へのアクセスを拡大する必要がある。今回の提案により、新興企業の規模拡大と、高度な製造技術の商用化をサポートできるようになる」と述べている。
革新的な新興企業が事業活動の拠点を海外に移転する主な原因は、資本へのアクセスが不十分であるからだ。海外の方が、事業規模を拡大する上で資金調達が容易なためである。
もう一つの問題は、人的資源の不足だ。米国経済は、設計/サービスへの極度な移行を進めてきたことから、製品の製造能力を大幅に低下させてしまった。
カナダのUniversity of Torontoのイノベーション学部Munk ChairであるDan Breznitz氏は、「今回のパンデミックにより、世界金融システムや、それを支える供給ネットワークが、かつてないほどの衝撃を受けている。しかし今後、中国以外で製造能力を再構築するための取り組みを進めていくには、最終的に、これまで何年間にもわたり、ただスピードだけを求めて数十億米ドル規模の投資をしてきたさまざまな企業が、足並みをそろえる必要がある」と述べる。
Breznitz氏は、「必要なのは、中国が40年間をかけて開発してきた、一連の補完的な制度や、人的資源、知識などである。今の米国には、これら全てが欠けている」と指摘する。
同氏は、中国製造業への依存(注1)を断ち切るための方法として、
例えば北米向けに、地域の製造拠点を中心とした供給ネットワークを再構築することを提唱している。
(注1)中国依存のドイツが味わう「ゆでガエル」の恐怖
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