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CKD診療ガイドライン その1

2010-12-01 | 内分泌・代謝・腎臓
日本腎臓学会より2009年3月31日出版
2800円 

CKDの診断 Grade A
・CKDは下記の片方又は両方が3か月以上持続することにより診断する。
① 腎障害を示唆する所見(検尿異常、画像異常、血液異常、病理所見など)の存在
② GFR 60ml/分/1.73㎡未満
GFRの評価 Grade A
・GFRのゴールドスタンダードはイヌリンクリアランスである。
・日常診療において日本人のGFRは以下の計算式で算出する。(記載困難のため省略)
CKDのステージ分類と診療方針 Grade A
・CKDは腎機能と検査以上によってステージ分類され、ステージ毎に対策を講じて診療にあたる。 
アルブミン尿・蛋白尿 Grade A
・随時尿を用いた試験紙による定性試験・あるいは随時尿や畜尿(1日あるいは時間)を用いた定量試験を行う。随時尿における定量試験では、同時に尿中Crを測定してアルブミン・蛋白/Cr比を用いて評価する。(1gのCrあたりの量)。アルブミン/Cr比30-299mg/g Crであれば微量アルブミン尿と診断する。起立性蛋白尿が除外するためには随時尿では一度は早朝第一尿を用いる。
血尿
・血尿の検出は随時尿あるいは早朝尿の中間尿を採取し試験紙法にて行う。Grade A
・尿潜血反応陽性の場合には尿沈サにて赤血球の存在を確認し、赤血球形態や円柱により、血尿が糸球体由来かどうか鑑別する。Grade A
腎生検
・尿蛋白陽性である患者:1日尿蛋白が0.5g以上もしくは尿蛋白/Cr比が0.5g/g Cr以上が継続する場合は腎生検の適応がある。 Grade B
・尿蛋白・尿潜血共に陽性である患者:1日尿蛋白が0.5g以下もしくは0.5g/g Cr以下であっても腎生検を考慮する。
・尿潜血のみ陽性である患者:尿沈サに変形赤血球が多く存在する場合や、病的円柱を認めるなど糸球体疾患を積極的に疑う場合には腎生検の試行を考慮する。Grade C
糖尿病患者:腎障害の原因として糖尿病以外が疑われる場合に腎生検を考慮する。
Grade B
CKDの画像診断 
・CKD患者に対して、腎臓の画像評価(腎超音波検査、腹部CTなど)を行い、腎の形態変化と合併症(腫瘍や結石など)の有無を検討すべきである。 Grade A
・核医学的糸球体濾過(GFR)推定法として、採血、採尿を必要とする方法と、体外計測法(ガンマカメラ法)がある。体外計測法はGFRを推定するには不正確であるが、分腎機能計測と画像診断が同時に行えるという利点を有する。Grade B

注意
・尿細管からのCr分泌のため、GFRよりCCrは30%程大きい値をとる
eGFR= 0.719×Ccr
・Cockcroft-Gaultの式は投与量の設定などには簡便である。 
・血清シスタチンCは年齢、性別、筋肉量に影響を受けにくいが、試薬の種類により20%程度、測定値が異なる。保険診療では3か月に1度の測定のみ可能

CKD ステージ
1 腎障害(+)  ≧90(e GFR)
2 腎障害(+) GFR軽度低下 60-89
3 腎障害 中等度低下 30-59 (腎不全合併症を把握し治療する)
4 GFR高度低下 15-29 透析・移植を準備する。
5 腎不全 <15 透析または移植の導入 


CKDの意義
1) 腎機能低下と末期腎不全
① 進行した腎機能の低下(CKDステージ)は末期腎不全の危険因子である。 Grade A Level 4
② 日本人のGFRの低下速度は平均0.36ml/min/1.73㎡/年であり、40-69歳では50 ml/min/1.73㎡以下、70-79歳では、40 ml/min/1.73㎡以下の腎機能の場合、腎機能低下速度が有意に速まる。Grade A LeveL 4
2) 蛋白尿と末期腎不全 
① 蛋白尿およびアルブミン尿は末期腎不全の危険因子である。蛋白尿、アルブミン尿の程度が増すごとにリスクが高くなる。Grade A Level 1
② 治療介入による、蛋白尿、アルブミン尿の減少の程度は、腎機能悪化抑制と相関がある。 Grade A Level 2
3)血尿と末期腎不全 Grade A Level 4
血尿(試験紙法)は、男性において末期腎不全の危険因子であるが、その関与度は蛋白尿に比べると弱い。又、尿潜血と尿蛋白の両法が陽性の場合、末期腎不全のリスクが高い
4) CKDとCKD 
①腎機能の低下は心血管病の危険因子である。 Grade A Level 1
②蛋白尿及びアルブミン尿はCVDの危険因子である。蛋白尿、アルブミン尿の程度が増すことにCVDのリスクが高くなる。Grade A Level 1
③ 治療介入による蛋白尿・アルブミン尿の減少の程度は、CVDの発症の抑制と相関がある。Grade A Level 2
5) 日本人におけるCKDの頻度 Grade A Level 4
日本人成人におけるCKD患者の頻度はステージ1が0.6%、ステージ2が1.7%、ステージ3が10.4%, ステージ4+5が0.2%である。ステージ3-5の推定患者数は約1097万人にのぼり総合的なCKD対策が求められている。


CKDと生活習慣
1) 喫煙 Grade A Level 4
喫煙はCKDの発症及び進行に関連する独立した危険因子である、CVDの発症リスクを増加させることから、CKD患者は禁煙すべきである。 
2)飲酒 Grade B Level 4
中等量の飲酒(エタノール20-40g/日)はCKDのリスクとはならず、むしろ進行を抑制し、CVDの発症も抑制する。一方、大量飲酒(エタノール60g/日以上)はCKDのリスクとなり、CVDの発症も増加させるため、避けるべきである。 
運動・身体活動度
身体活動度の維持 Grade A
CKD患者に安静・運動制限を一律に行うべきでなく、肥満の是正・糖尿病新規発症の予防・高血圧の治療,CVD予防のために身体活動度を維持すべきである。 
運動強度 Grade B Level 3
運動疲労を起こさない程度の運動(5METs 前後)が安定したCKDを悪化させるという根拠はなく、合併症などの身体状況が許す限り、定期的施行が推奨される。
ワクチン接種 Grade B Level 4
CKD患者には、インフルエンザワクチンの接種が推奨される。
癌スクリーニング Grade B
CKD患者の癌スクリーニングは、一般人と同様の対応が推奨される。腫瘍マーカーの評価に際しては、偽陽性などに注意が必要である。 


CKDと栄養
・食事療法 Grade A
個々の患者の生活習慣を尊重した個別の食事療法が、スムーズな治療開始と持続のために必要である。栄養障害を防ぎ食事療法を継続させるため、管理栄養士とともに食事指導を行う。 
・推定エネルギー必要量の決定 Grade A
CKD患者の体重維持に必要なエネルギー量は、日本人の平均的な基礎代謝量を 参考とし、さらに身体活動レベルや栄養状態を考慮して決定し、経時的に評価しつつ調整を加える。
・蛋白制限 Grade B Level 1
ステージ3-5のCKD患者では、腎機能障害の 進行抑制のため、病態に応じたたんぱく質制限を考慮する。 
・食塩制限 Grade A Level 2
CKD患者では、6g/日未満の食塩制限が推奨される。 
→CKDステージ3以降で0.6-0.8g/kg標準体重/日
→1日の蛋白摂取 Maroniの識(1日の尿中尿素窒素排泄量+0.031×体重)×6.25 +尿蛋白量


CKDと高血圧・心血管合併症
・CKDにおける高血圧 Grade A Level 1
CKDでは高血圧を合併する頻度が高く、高血圧はCKDの 進行やCVDの発症リスクとなる。CKDにおける降圧療法はCKDの 進行を抑制し、CVDの発症や死亡のリスクを軽減する。
・CKD患者の血圧測定 Grade A Level 4
外来血圧のみならず、起床時と就寝時の家庭血圧を測定し評価することが望ましい。 
・CKDの降圧目標 Grade A Level1
降圧目標として、尿蛋白1g/日未満の場合には130/80mmHg未満が、1g/日以上の場合には125/75mmHg未満が推奨されている。 
・降圧薬の選択 
原則としてRA系阻害薬(ACEI もしくはARB)を第一選択薬とする。Grade1 Level 1
降圧目標の達成には、第2選択薬(利尿薬やCa拮抗薬)との併用療法を考慮する。 
Grade A Level 2
・CKDとCVD
CKDは脳卒中を含むCVDの独立した危険因子である。Grade A Level 2
蛋白尿は微量アルブミン尿の段階からCVDの危険因子であり、積極的に減少を目指す。Grade A level 2
→RA系阻害薬はいかなるステージの糖尿病性腎症でもその進行を抑制する。 血清Crが投与前値の2倍に達してからもARB投与を継続すると末期腎不全への進行が30%抑制される。




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