感染症内科への道標

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糖尿病治療ガイド2010 

2010-10-13 | 内分泌・代謝・腎臓
日本糖尿病学会より出版、700円
内科診療には必携の一冊です。

日本糖尿病学会編集による治療ガイドライン 一般医向けで非常にわかりやすい。初期研修医、一般医外来診療に必携のガイドライン

重要な変更点
・HbA1C:国際標準値に直すと0.4%増加。糖尿病の診断基準におけるHbA1cがJDSでは6.1%となる。当面JDS, 国際標準を併記すること。国際標準の記載はHbA1c(NGSP)とする。
・空腹時血糖126mg/dl以上、随時血糖200mg/dl以上、75g OGTTで2時間値200mg/dl以上でHbA1Cが6.1%の時は糖尿病と診断してよいとなる。
・DPP-4阻害薬が臨床応用。

平均血糖値を反映する指標 
1)HbA1C 1-2か月の平均血糖値を反映 JDS 4.3-5.8% (国際標準 4.7-6.2%)
・HbA1cが低め:急激に発症・増悪した糖尿病、鉄欠乏性貧血の回復期、溶血、失血後、輸血、エリスロポエチンで治療中の腎性貧血、肝硬変
2)グルコアルブミン:基準値11-16%。過去2週間の平均血糖値を反映
3)1.5-AG: 基準値14.0μg/ml以上。尿糖の排泄量と相関して低下する。 

インスリン分泌能:
①インスリン分泌指数 血中インスリン(30分値-0分値)/血糖値(30分値-0分値)
⇒糖尿病患者では0.4、境界型でも0.4未満のものは、糖尿病への伸展率が高い。
②空腹時血中Cペプチド、24時間尿中Cペプチド排泄量
⇒前者は0.5ng/ml以下、後者が20μg/日以下であればインスリン依存状態と考えられる。

インスリン抵抗性
①早朝空腹時インスリン値15μU/ml以上
②HOMA指数 
空腹時血糖140mg/dl以下の場合では他のより正確な方法で求めたインスリン抵抗性の値とよく相関する。
空腹時インスリン値×空腹時血糖値/405
1.6以下で正常 2.5以上でインスリン抵抗性が高い 


糖尿病の成因分類
I 1型:膵Β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る(自己免疫性、特発性)
II 2型:インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある。
III その他の特定の機序、疾患によるもの
A 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
B 膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤や化学物質によるもの、感染症、免疫機序によるまれな病態、その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
IV 妊娠糖尿病 

糖尿病の診断において
・尿糖検査は、腎のブドウ糖排泄イキ値や内服中の薬剤によって影響を受けるため、糖尿病の診断には用いない。確定診断には血糖検査が 必須である。


日本におけるメタボリックシンドロームの基準:
必須条件:ウェスト男性85cm, 女性90cm 
3項目中2項目: TG150以上且又は低HDL40
血圧収縮期130且又は拡張期85
空腹時血糖110以上

初診時の食事指導のポイント
・腹八分目とする。
・食品の種類はできるだけ多くする。
・脂肪は控えめに。
・食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる。
・朝食、昼食、夕食を規則正しく
・ゆっくりかんで食べる。

標準体重 身長×身長×22
身体活動量の目安 軽労作 25-30kcal/kg/ 標準体重 
普通労作 30-35kcal/kg/ 標準体重
重い労作 35- kcal /kg / 標準体重 
タンパク質は1.0-1.2g /kg(1日50-80g)

運動は1回15-30分間、1日2回、1日の運動量として歩行は一万歩。消費エネルギーとしてほど160-240kcal程度が適当とされる。
ほぼ毎日、少なくても1週間に3日以上

SU剤
現在使用されているのは第2世代、第3世代
グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール) 半減期2.7時間 作用時間12-24時間
グリウラジド(グリミクロン)         半減期6-12時間 作用時間6-24時間
グリメピリド(アマリール)第3世代      半減期1.5時間 作用時間6-12時間
速効型インスリン分泌薬
⇒SU剤に比較し作用が早く消失も早い。食後高血糖向け
ナテグリニド(スターシス)          半減期0.8時間 作用時間3時間
ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト) 半減期1.2時間 作用時間3時間
α-グルコシダーゼ
食後高血糖に有効。腹部膨満感、放屁、下痢が認められる。
アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)が一般的 
ビグアナイド薬
⇒肥満例に使用される。脱水の恐れがある時は休薬、ヨード造影剤使用の2日前に休薬する。
塩酸メトホルミン(メルビン)が一般的
チアイゾリイン薬
⇒水分貯留傾向があり、心不全患者には使用しない。体重が増加しやすい。
塩酸ピオグリタゾン(アクトス)         半減期5時間 作用時間 20時間
DPP-4阻害薬
・小腸粘膜に局在する細胞から栄養素の刺激によって分泌され、膵Β細胞からのインスリン分泌を促進するホルモン(インクレチン)にはGLP-1とGIPがある。インクレチンは分泌後、DPP-4によって分解・不活性化されるが、DPP-4阻害薬が開発され糖尿病の治療に用いられるようになる。
シタグリプチンリン酸塩水和物 グラクティブ/ジャヌビア 半減期12 作用時間24時間
ビルダグリプチン エクア 半減期2時間 作用時間 12-24時間 
アログリプチン安息香酸塩 ネシーナ 半減期17.1±2.0 作用時間24
シタグリプチンリン酸塩水和物は単独投与か、SU 薬、チアゾリジン薬、あるいはビグアナイド薬と併用できる


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