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糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第4版

2009-07-02 | 内分泌・代謝・腎臓
日本糖尿病学会より数年毎に改定されているガイドブック。糖尿病治療ガイドやガイドラインも同様に糖尿病学会より出版されているが、内容として最も詳細に記載されており実際の診療において困らないように作成されている。内科医、内科系研修医、内分泌内科研修医は必携の一冊である。 

病態
・初期の空腹時ではグリコーゲンがブドウ糖産生の主体
・絶食状態が長期になると初期にはFFA, その後はFFAとケトンを利用。ケトンは肝臓でのみ合成。脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源として利用するが、絶食状態が長期にわたると一部の脳ではケトン体を利用する。 
・食後血糖:内因性肝糖産生率(空腹時)+Splanchnic glucose output(SGO)(吸収の50%が肝を通らず大循環へ)。通常内因性肝糖産生率は食後は完全に抑制。
・2型糖尿病患者ではHGO抑制作用のために通常の2倍以上のインスリンが必要となる。又拮抗ホルモンの増加、糖毒性も増悪因子となる。 

疫学
・1型糖尿病は日本において少ないが、世界的に増加傾向にある。
・ソフトドリンクケトーシスには日本人に多く、白人では報告例がない。

診断基準
・変更なし
・境界型糖尿病も変更なし

治療
食事療法:摂取エネルギーの50-60%を炭水化物より摂取。タンパク質1.0-1.2g/kg/日。
脂質25%を超えない。不飽和脂肪酸の摂取。アルコールは1g7kcalだが利用効率は70%程度。ビタミン(特にビタミンD)、カルシウムの摂取。1単位80kcal.
脂肪組織1kg→7000kcal
肝疾患において窒素出納試験から肝硬変患者の体蛋白喪失を防ぎ、窒素出納を維持しうる蛋白質量は1.29g/kg.

運動療法:まずは1日1000歩増加させ1万歩を目指す。

薬物療法
インスリン分泌刺激薬:SU剤、非SU剤(ナテグリニド、ミチグリニド:即効型で短時間)
ピグアナイド薬;メトホルミン、ブホルミン(腎障害、心不全、呼吸不全では乳酸アシドーシスの頻度が上がるため禁忌)
αグルコシダーゼ阻害薬:アカルボース、ボグリボース、ミグリトール
インスリン抵抗性改善薬:ピオグリタゾン(女性、高齢者では少量から開始、心不全では禁忌) 
抗肥満薬:マジンドール(中枢性の食欲抑制薬)
末梢神経障害:アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12、メコバラミン 

インスリン療法 
1単位は約2kgの24時間絶食ウサギの血糖を3時間以内に痙攣レベル(45mg/dl以下)に下げうる量。
暁現象:早朝のインスリン需要の増加に伴う高血糖
ソモジー効果:夜間基礎分泌の増加による低血糖、それに伴う拮抗ホルモンの増加により高血糖。
インスリンリポハイパートロフィー:同じ部位への繰り返しの注射による皮下組織の炎症、脂肪組織の増大による吸収の不安定化。

臨床検査
・解糖阻止剤無添加の検体では採取後速やかに検体提出を行わないと血糖は低値となる、クエン酸やNaFは阻止(クエン酸が最も安定しているが溶血)
・空腹時の血糖は毛細血管では4mg/dl.動脈血では10mg/dl程高い。ブドウ糖利用が亢進している時は毛細血では10mg-20mg/dl, 動脈血では20mg/dl程高い。Htが30%を下回る場合には全血値は低値となる
・HOMA-R=空腹時IRI×空腹時血糖÷405 正常5-10 
・血中C-ペプチド:血中インスリンの2-3倍半減期が長く、内因性インスリンを反映。尿中CPRと同様に複数回の測定が望ましい。
・ICA(膵島細胞抗体):Ⅰ型発症時における陽性率は60-80%。発症後5年以内に陰性化する。
・GAD抗体:膵島細胞の分子量64000の蛋白に対する自己抗体として発見→グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)。1型糖尿病患者の発症の数年前より出現。
・インスリン自己抗体:40-90%で発現。5歳以下の1型では陽性率は90%以上に達する。
・尿中微量アルブミン→日を変えて3回中2回測定し陽性であれば早期腎症。微小血管障害により糸球体毛細血管係蹄の構造変化や陰性荷電の減少が生じ、それに糸球体内高血圧による過剰濾過が加わる。
・尿中NAG→腎の近位尿細管のリソソーム由来
・尿中Β2ミクログロブリン→殆どが近位尿細管で吸収、障害で検出。



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