感染症内科への道標

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CKD診療ガイドライン2009 その2

2010-12-01 | 血液・膠原病・アレルギー
腎性貧血
・CKDでは比較的早期から、腎でのエリスロポエチン産生が低下し、腎性貧血が発症するため定期検査による早期発見が必要である。 Grade A Level 4
・腎性貧血のESAによる治療は、CKDに伴うさまざまな合併症予防・治療に有効であり、皮下注射にて早期に開始すべきである。Grade A Level 2
・保存期慢性腎臓病の腎性貧血目標Hb値は11g/dl以上とし、ESAの投与開始基準は複数回の検査でHb11g/dl未満となった時点とする。Grade B Level 1
・貧血の過剰な改善はESA高用量による弊害など、生命予後の悪化をもたらす可能性があるので、13g/dl超をESA減量・休薬基準とする。すでに心血管合併症を有する患者や、医学的に必要と考えられる患者の上限は12g/dlに留める。Grade A Level1
・鉄剤の補給:保存期CKD患者の鉄剤の補給は、原則経口投与とするが、不十分な場合には静注投与を行う。


CKDに伴うミネラル代謝異常
・CKD患者における骨ミネラル代謝異常は、腎性骨栄養症に加えて血管の合併症を含む、生命予後に影響する全身性疾患としてとらえる。Grade A
・CKD患者において、血清P濃度が高いと腎機能障害が進行し、生命予後は不良となる。ステージ5Dを除くCKD患者の血清Ca濃度やP濃度の至適管理目標値は明らかではない。Grade C Level 4
・ステージ3-5のCKD患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対し、活性化ビタミンD製剤を使用した際の腎機能障害の進行抑制効果は明らかではないが、生命予後を改善する可能性がある。Grade C Level 2


糖尿病性腎症
・すべての糖尿病患者では、定期的に検尿(微量アルブミン尿、蛋白尿)とe GFRを測定し、糖尿病性腎症の早期発見に努めるべきである。Grade A
・厳格な血糖コントロール(HbA1C 6.5%未満)は、糖尿病性腎症の発症及び進行を抑制する。Grade A level 2
・顕性腎症期後期以降(ステージ3-5に相当)では経口糖尿病薬・インスリン治療の際に低血糖に対する注意が必要となり、腎不全期(ステージ4.5に相当)ではインスリン治療が原則である。 Grade B
・血糖コントロール 高血圧を合併した糖尿病患者では,ACEI やARBを中心とした降圧療法により130/80mm Hg未満に管理する。 Grade A Level 1
・尿蛋白が1g/日以上では平均血圧92mm Hg未満を目標とする。(125/75mmHg)
・ACEIやARBは腎症の進行を抑制するため、正常血圧の患者でも血圧に注意しつつ投与する。Grade B Level 2
・食事療法:たんぱく制限食は、顕性腎症期以降(ステージ3-5に相当)の糖尿病性腎症の進行を抑制する。Grade C Level 2
・ステージに関わらず、高血圧を合併している症例には減塩食の指導を行う。Grade B
・多角的強化療法:2型糖尿病では厳格な血糖・血圧管理・ACEIやARBの投与、HMG-COA還元酵素阻害薬による脂質低下、低用量アスピリン、抗酸化薬、運動、禁煙指導のチーム医療による多角的強化治療により早期の腎障害の進行が抑制される。Grade B Level 2


IgA腎症
・IgA腎症は発症後20年以内に約40%が末期腎不全に至る疾患であり、予後不良因子(収縮期高血圧、高度蛋白尿、血清Cr高値、障害度の高い腎生検所見)を有する患者では、早期より積極的な治療が推奨される。Grade A
・RA阻害薬 ACEIは蛋白尿を減少させ、腎機能障害進行を抑制することから、高血圧を合併したIgA腎症に対する降圧療法の第一選択薬として推奨される。Grade A Level2
・経口ステロイド療法:経口ステロイド療法はステージ1.2のCKDに相当し、1g/日以上の蛋白尿を伴うIgA腎症に対して、腎機能障害の進行抑制効果が期待できる。 Grade B Level 1
・ステロイドパルス療法:ステージ1-3のCKDに相当し、尿蛋白1-3.5g/日を伴うIgA腎症では、ステロイドパルス療法が蛋白尿を減少させ、腎機能障害を抑制する。Grade B Level 2
・扁桃摘出(扁摘)+ステロイドパルス療法 Grade C Level 3
扁摘+ステロイドパルス療法は、IgA腎症の蛋白尿を減少させ、腎機能障害の進行を抑制する可能性がある。Grade C Level 3
・抗血小板薬は短期的には蛋白尿を減少させるが、長期投与による腎機能障害の進行抑制効果については明らかではない。Grade C Level 1


ネフローゼ症候群
・特発性膜性腎症の治療原則:予後不良因子(男性、高齢発症60歳以上)、発症時の腎機能低下、糸球体硬化病変、尿細管間質病変、ネフローゼ症候群の遷延など)を有する患者には、寛解導入を目標とした免疫抑制療法が推奨される。Grade A
・特発性膜性腎症の免疫抑制療法 ステロイド単独療法は寛解導入に用いられる。Grade C
・シクロスポリンと少量ステロイドの併用療法は、寛解導入に用いられる。Grade A
・経口シクロフォスファミドとステロイドの併用療法は、寛解導入に有効である。Grade B Level1
・シクロフォスファミド抵抗例では、シクロスポリンと少量ステロイドの併用療法が寛解導入に有効である。Grade A Level2
・1次性巣状分節性糸球体硬化症のステロイド療法ならびに免疫抑制療法:初期治療として、寛解導入を目標として中等量以上のステロイド(PSL 0.5-2mg/kg/日)を投与し、治療反応例では、6か月以上の継続投与が推奨される。Grade B Level 4
・初期治療として、もしくはステロイド抵抗例及びステロイド不応例には、寛解導入もしくは腎機能障害の進行抑制を目的に、シクロスポリンと少量ステロイドの併用療法を6か月以上継続する。Grade B Level1


腎硬化症
・降圧の効果:腎硬化症における腎機能障害の進行は、適切な降圧療法により抑制される。Grade A Level2
・降圧による蛋白尿の減少の程度と腎硬化症の腎機能障害の進行抑制効果は相関する。Grade A Level2
・降圧目標と降圧薬の選択 顕性蛋白尿の有無に関わらず、腎硬化症の腎機能障害の進行抑制のためには、降圧目標として130/80mmHg未満が推奨される。顕性蛋白尿を伴う患者には、降圧薬としてACEIもしくはARBが推奨される。顕性蛋白尿を伴わない患者では、RA系阻害薬の優位性は証明されていない。 Grade A Level2


動脈硬化性腎動脈狭窄症
・腎動脈狭窄のスクリーニング CKD患者の中には虚血性腎症や腎血管性高血圧の症例が混在している。RA系阻害薬により急激な腎機能障害の進行を認める症例などには、腎動脈狭窄のスクリーニングが推奨される。Grade A
・CKD患者の腎動脈狭窄のスクリーニングにはDuplex 超音波法、magnetic resonance angiography もしくはCT血管造影が推奨される。Grade A Level1
・腎動脈狭窄の侵襲的検査 Grade A level1
臨床所見、非侵襲的検査で確定診断に至らない場合に、大動脈造影あるいは選択的腎動脈造影が推奨される。Grade A Level1
・高血圧を伴う動脈硬化性腎動脈狭窄症において、降圧療法は腎機能障害の進行抑制に有効である。Grade A Level1
・動脈硬化性腎動脈狭窄症に対する降圧薬単独治療と経皮的腎血管形成術の併用療法では、後者は降圧に関して優れているが、腎機能障害の進行抑制効果に関しては有意差がない。Grade A Level1


常染色体優性多発性嚢胞腎
・降圧療法:高血圧症は腎機能障害の進行因子である。目標血圧130/80mmHg未満への十分な降圧療法は、CKDステージ3-5に相当するADPKD患者にいて腎機能障害の進行を抑制する。Grade A Level2
・タンパク質制限による腎機能障害の進行抑制効果は、明らかではない。Grade C Level2
・起炎菌が不明な場合の初期治療として、嚢胞内への移行性とグラム陰性桿菌への感受性を考慮して、ニューキノロン系薬の投与が推奨される。Grade C
・腎機能障害の進行抑制効果は期待できないが、死亡原因の上位にあげられる脳動脈瘤のスクリーニングが考慮される。数々の嚢胞縮小術は、患者のQOLを改善するという観点から検討に値する。


CKDと脂質異常症
脂質異常症は、CKDの新規発症、CKDの進行だけではなく、CVD発症の危険因子である。Grade A Level 4
管理目標としてLDLコレステロール120mg/dl以下が推奨される。(可能であれば100mg/dl以下)生活習慣の改善により管理目標値に達しない場合、薬物療法を考慮する。Grade A
スタチンを用いた脂質管理により、CKD進行抑制及びCVD発症抑制が期待される。Grade A Level 4


肥満・メタボリックシンドローム
・肥満は蛋白尿や末期腎不全の危険因子である。Grade A Level 4
・腹部肥満はアルブミン尿の危険因子である。Grade A Level 4
・メタボリックシンドロームはアルブミン尿・蛋白尿及び腎機能障害の危険因子である。Grade A Level 4
・メタボリックシンドロームの治療の中心は、生活習慣の改善である。食事及び運動療法による肥満の改善は蛋白尿を減少させる。Grade A Level 2
・CKDによるメタボリックシンドロームが合併した場合、メタボリックシンドロームの構成因子である高血圧・脂質異常症・糖尿病の管理は各々のステートメントに沿って行う。Grade A

小児CKDの診断・治療
省略


腎移植
腎移植は生命予後を改善する可能性があり、CKDステージ4.5で医学的に腎移植手術が可能と考えられるすべての患者及びその家族に、腎移植というオプション提示を行う必要がある。Grade A Level 4
透析導入前でも腎移植は可能であり、これを先行的腎移植とよぶ。PETは従来の透析導入後の腎移植に比べて患者生存率や移植腎生着率に優れている。 
腎移植レシピエントと腎移植ドナーは、どちらも移植後にCKDステージ3-5の腎機能障害を示すことが多く、非移植CKD患者と同様に長期的かつ定期的なCKDケアが重要である。


高齢者のCKD診療
・加齢に伴う腎機能低下により、高齢者ではステージ3-5のCKD患者の占める割合が増加するため腎機能の定期的な評価が推奨される。Grade A Level 2
・高齢者の血尿は尿路悪性腫瘍による可能性が高く、必要に応じて尿細胞診、腎膀胱部超音波、膀胱鏡等の精査が推奨される。Grade A Level1
・高齢者CKDでは喫煙がCKDの進行リスクとなり、禁煙が推奨される。Grade B level2
・ステージ3-5の高齢者CKD患者においても、蛋白制限食が推奨される。Grade B Level1
・高齢者CKD患者では食塩感受性が亢進しており、降圧には6g/日未満の食塩制限が推奨されるが、循環血漿量減少などにより腎機能の低下には注意する。Grade A
・高齢者CKDにおける降圧療法により、CKD進行及びCVD発症が抑制される。その際には、臓器循環不全に注意し、緩徐に降圧させる。Grade A Level1
・高齢者CVDにおける確立された至適降圧目標値はないが、120/60mmHg未満への過度の降圧は生命予後を悪化させる。Grade B Level 1
・降圧薬としてはRA系阻害薬、利尿薬、Ca拮抗薬の単独もしくは併用療法が推奨される。Grade A Level2
・高齢者CKD患者の5-22%が動脈硬化性腎動脈狭窄症を合併する。Grade b level4
・高齢者においても、高血糖は糖尿病による大血管症、糖尿病性腎症の危険因子となる。したがって高齢者の糖尿病性腎症患者においても血糖・血圧・脂質の適切な管理が推奨される。Grade B Level 4
・高齢者CKDにおいても、スタチンによる脂質異常症の治療は腎機能障害の進行抑制に有効である。Grade B level 1
・高齢者では、過体重(BMI 25-29)は生命予後に影響しないが、肥満(30以上)は死亡危険率を1.1倍に上昇させる。Grade B Level1
・高齢者では、BMIよりウエスト/ヒップ比のほうが、CKDやCVDの発症予測に有用である。 Grade B Level 4
・高齢者ではメタボリックシンドロームとCKDやCVDの発症との関連は明らかではない。Grade B Level 4
・高齢者CKD患者の骨ソしょう症に対するビスフォスフォネート製剤の使用は、ステージ1-3では 慎重投与として、ステージ4.5では 使用を避ける。Grade B
・高齢者CKD患者への活性型ビタミンD製剤の使用は、高Ca血症の危険性が高く、注意を要する。Grade A
・高齢者であっても、腎移植は生命予後を改善する。 Grade A Level4
・高齢者であっても、移植腎の提供は禁忌ではない。しかし、術後腎機能に対する術前の十分なインフォームドコンセントと術後の適切な経過観察が必要である。Grade A Level 4
・75歳以上の高齢者CKDでは、経皮的冠動脈インターベンション後の造影剤腎症の頻度が高い。 Grade A Level 4
・高齢者において、Cox-2 選択性と非選択性NSAIDsは同等に腎障害を進行させる危険性があり、できるだけ少量短期間の投与とする。Grade A Level 2


薬物投与
・造影剤の使用頻度と使用量が増えることにより、腎機能障害のリスクが増大する。Grade A Level 4
・造影剤腎症の予防のため、造影剤の使用量は必要最小限とする。Grade A Level 4
・造影剤腎症の予防のため、造影剤使用前後の輸液療法が推奨される。Grade A Level 2
・造影剤使用後の血液浄化 療法は造影剤腎症の発症を予防しない。Grade A level1
・CKD患者にガドリニウム含有MRI造影剤を用いた場合、腎性全身性線維症を発症する危険性がある。ステージ4.5のCKD患者には原則としてガドリニウム含有造影剤の投与は避ける。Grade A
・CKD患者の腎機能障害の進行に関しては、安全性が確立された消炎鎮痛薬はなく、いずれの薬剤もできるだけ少量短期間の投与とする。Grade B
・CKD患者において抗菌薬を使用する際には、腎機能を評価して投与量の調節を行う。アミノグリコシドやグリコペプチドなどの投与に関しては、血中濃度のモニタリングが推奨される。Grade A
・尿毒素治療薬:経口吸着薬(AST-120:商品名クレメジン)はCKD患者の透析導入までの期間を延長させる可能性がある。Grade A level 2
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