ナベッチーのエンジョイライフ

他人様からすれば他愛もないことでも、記憶にとどめておきたい事、感動したスポーツ、本、映画などを思いつくままです。

今 読めない読みたい本(出久根達郎) 楽園にようこそ(高橋克彦)

2010-12-18 09:11:24 | ブック(記憶に残したい本、文章)
 今 読めない読みたい本(出久根達郎)2003年 ポプラ社 刊行 しばらく前に著者の「あらいざらい本の話し」には、紹介だけされていた、「つづりかた兄弟 野上丹治・洋子・房雄作品集」がこの本では、あとがきに作文の一部が紹介されていた。引用をすると、一番末の小学生房雄がモスクワの国際児童作文コンクールの一等になったのだが、その賞品が届く寸前に肺炎でなくなっている。兄弟の父は戦争から戻り、ブリキ屋さん、母は行商をし必死に働く。長男は母の供をして商売を手伝う。二人はどこかの別荘の石段に座って弁当を使う。弁当箱には『麦と、ジャガイモと、梅干しが入っていた。母は口うつしに梅干しの種をぼくに食べさせてくれた。ぼくは、梅干しの種をしゃぶることが何よりすきであった。(丹治の作品) 6月4日午前2時、私の3年生の弟、房雄ちゃんは死にました。““雨はいやだなあ”と言って、戸口に経って空をながめていた房雄ちゃんの破れた大人の雨合羽をひきずるように着たあのすがたが思い出されてなりません。(洋子の作品) 房雄は春休みごろから鉄くず拾いを始める。350円ためて雨傘を買うつもりだった。ちょうどその額になったとき、母親が醤油を買う金に困っている。「ぼくのお金で買ってあげるよ。いいんよ、いいんよ。かあちゃん」 房雄は町に走っていく。大きな醤油びんを両手で抱えて帰ってくる。4月末、洋子の遠足の日程が決まった。しかし父の仕事がないので、費用をいいだせない。房雄が「遠足は行こうね」 と鉄くず拾いでためた金を、いるだけくれた。 かさのお金はどうするの、と聞くと、新聞くばりを頼んであるよ「と言って、さびしそうな顔をして笑いました」 ある日、雨にびっしょりぬれて房雄が帰ってくる。その晩高熱を出す。医者を呼んだ。入院を勧められる。「でも、おうちに、今、そんなお金はありません。房雄ちゃんは、毎日午後がくると、「なにくそ、なにくそ」と言ってせめたててくるような病気の苦しさと戦っていました」 しかし、「その夜、房雄ちゃんはすこしらくになったのか、いろいろな話しをもつれた舌で、いつまでもし続けました。そして、ひみつにしていた大事な宝物や、おこずかいののこりを私達にわけてくれました。それから『暗くなった。お外へ行こう』と言って、手をのばしましたが、そのまま、息は絶えていました」 洋子の作文) 著者はこのような本こそ、「今 読めない読みたい本」だと書いた。

楽園にようこそ(高橋克彦) 2007年 NHK出版 93年大河ドラマ「炎立つ」 と2001年 「北条時宗」の作者で、たしか、時宗は、和泉元彌であった。来年は田淵久美子原作の“お江”である。