
●「狙われた街」昭和42年11月19日放映 メトロン星人登場
制作第10話 放映第8話 脚本:金城哲夫 監督:実相寺昭雄
実相寺昭雄監督の映像美学が、良い形で近未来SFとしての『ウルトラセブン』を描出したエピソードだと思います。
まずは冒頭の材木置場での小学生たち。マスクをしていますが、公害が顕著になってきた当時の小学生の風俗が「記録」されています。遠くでは工場か杭打ち機の音が鳴っていて、非常に強く現実感が感じられるシーンです。
そしてメトロン星人が潜んでいた木造アパート周辺と、卓袱台を挟んでダンとメトロン星人が対峙するシーン。「日常の見慣れた風景の中に宇宙人が存在する」という、強い印象を残す名場面として語り継がれていますネ。
本来は作品の海外販売のために、「あまり日本的な風俗を採り入れたエピソードはつくらない」というコンセンサスがあったそうですが、それを敢えて無視し、作品世界を揺さぶったのが実相寺監督でした。前作『ウルトラマン』でも、科特隊本部で怪獣供養を行った際や野点のシーンでフジ隊員に着物を着せたりして、スタッフ内部にも物議を醸していたそうです。
しかし現実場面が描かれているからこそ、宇宙人の存在やメトロン星人の計略のリアリティーが増しているのだと感じられます。当時の薄汚れた木造アパートの中に存在する、極彩色の宇宙人の違和感が強烈です。劇伴も控えめな使用です。
また、ウルトラ警備隊の作戦司令室のシーンでは他のエピソードでは見られない照明設計で、ほとんど真っ暗です。これは『ウルトラマン』第22話「地上破壊工作」でも見られた演出でしたが、緊迫したムードが醸し出されています。私は子どもの時にこのエピソードを見て、作戦室が真っ暗でも違和感は感じませんでしたが、緊迫感は感じられました。それが照明によるものだと歳を重ねてから気付いて、大いに感心したものです。
メディカルセンター内でのダン、ソガ、キリヤマ、アマギによる会話は、逆光でしかも4人が横一列に並んでの不自然なシーンでした。このシーンでは何か不思議な、しかし胸にズキンと来るカッコよさが感じられました。『ウルトラセブン』のクールな世界観を感じさせる名シーンだと思います。また、ライフル魔の取調室でのシーンやヒロシから叔父のタバコの入手先を聞き出すシーンでは窓からの光で逆光になっていたり、アパートの外でダンを待つアンヌが夕日の逆光になっていたりと、このエピソードでは逆光が意図的に多用されています。
このエピソードには、穂積隆信さんが「第4分署」の刑事役で出演されているのが有名です。円谷作品では『ウルトラQ』の「燃えろ!栄光」にも興行師役で出演されています。この第4分署のロケには、先ごろ閉鎖された祖師谷の旧・円谷プロの社屋が使われているそうです。
同じく『ウルトラQ』で数多くのチョイ役を演じられていた、東宝所属の草間璋夫さん、坪野鎌之さんなどが、アンヌの叔父の葬儀シーンに登場されています。この葬儀シーンのロケは、世田谷の慶元寺だそうです。
宇宙芥子の実を分析する科学班の科学者役を、『ウルトラマン』第6話「沿岸警備命令」のダイヤモンドキック役や、第33話「禁じられた言葉」に出演されている伊藤久哉さんが演じられています。
そして、メトロン星人の声をあてていらっしゃるのは、昨年お亡くなりになった中江真司さん! 理知的な雰囲気があって、メトロン星人の計略を語らせるには最適なキャスティングだと思います。中江さんは『仮面ライダー』を初め、数多くのナレーションでお馴染みですネ。最近発見したものでは、『ワイルド7』の次回予告のナレーションが中江さんでした。
ロケ地としては、メトロン星人がタバコの自販機を設置していた北川町南駅(架空)として、向ヶ丘遊園駅で撮影が行われています。

ストーリーは、
1)タクシー暴走事件
2)航空機事故で亡くなったアンヌの叔父の葬儀
3)フルハシが北川町駅前でタバコ購入
4)北川町でのライフル魔事件
5)ウルトラ警備隊作戦司令室でのフルハシ、ソガの錯乱
6)宇宙芥子の実の発見
7)タバコの入手経路の特定・張り込み
8)謎のタバコ補充員の追跡
9)メトロン星人との対決
という流れです。
1)錯乱したタクシー運転手事件から、アンヌが従兄弟のヒロシと接触し、2)叔父の葬儀へ出席するアンヌにダンが同伴し、そこでダンが北川町の異変を知る流れにウマく繋がっています。
3)パトロール中のフルハシがタバコを購入するのが北川町南駅前で、そこで4)ライフル魔事件に遭遇します。射撃の名手ソガが、その腕前を披露した初めてのシーンでもあります。(第12話ではセリフとしては「射撃の腕は世界一」とありましたが、実際にそれが描かれた最初のシーンはこの第8話です。)
ライフル魔に撃たれケガをしたフルハシは、メディカルセンターではタバコが吸えず、作戦司令室に来てタバコに火を点けて錯乱します。地球防衛軍極東基地きっての怪力の持ち主が暴れ、作戦室が混乱します。フルハシがわざわざ作戦室でタバコを吸う必然が生まれています。
やっとの思いでフルハシを取り押さえ、そのひと仕事のあとに今度はソガがタバコに火を点けます。ここでも、ひと仕事を終えたソガが自然にタバコに手を伸ばす流れが生まれています。射撃の名手・ソガがウルトラガンに手をかけ、発射しようとする緊迫感! 寸前にダンがヘルメットでウルトラガンを払い、事無きを得ます。
2人ともタバコに火を点けた直後に錯乱していることから、6)タバコの中の宇宙芥子の実の存在に気付く流れがスムーズです。3)北川町南駅前でフルハシにタバコを買わせておいたことで、ウルトラ警備隊内にメトロン星人の計略を暴くきっかけが生まれています。逆算的にウマくストーリーが紡がれていると感心します。
ところで、フルハシが錯乱している時に、だれか1人が「ソガ隊員、気でも狂ったんですか!」と言っているのが聞こえます^^; 声は何だか森次さんのように聞こえるのですが‥‥。
昏睡状態のフルハシ、ソガからはタバコの入手先を聞き出すことができませんでしたが、アンヌの叔父のタバコの入手先をヒロシから聞くことができました。死んでしまった叔父のタバコの入手経路を、ヒロシを通して違和感無く語らせるセリフが絶妙です。
そのヒロシの言葉から、取調室でのライフル魔の話を思い出して北川町南駅前の自販機を張り込むダンの推理力と行動力にワクワク! よく練られたストーリーです。
張り込んでいるダンとアンヌの眼前に、ワーゲンのワゴンに乗ってやって来たタバコの補充員。このクルマを尾行し、1軒の木造アパートを突き止め、潜入するダン。外で待たされているアンヌの映像には、ラジオからの野球の実況中継の音声が被り、何も知らない一般人の生活と宇宙人の侵略拠点が隣り合わせで存在していることを感じさせられます。このあとの卓袱台のシーンとともに、宇宙人の存在する空間のリアリティーを増す効果があります。
アパートでダンと対峙するまで、メトロン星人は一切登場しません。それだけに、アパートの一室に存在する異形の宇宙人の姿にインパクトがあります。また、薄暗い室内なので、極彩色のデザインが現実世界の中にウマく溶け込んでいると感じられます。このシーンは特撮班ではなく本編班による撮影なので、実相寺監督がメトロン星人のデザインを見て、原色の宇宙人をどうにかしようと考えて設計した演出プランなのでしょうか。
私は脚本を目にしたことが無いのであくまで推測ですが、この仮定に従えば、メトロン星人が潜んでいたのが古い木造アパートだったというのは、薄暗い室内からの逆算で導かれた設定である可能性があります。また、同じ理由で、巨大化したメトロン星人とセブンの戦闘シーンが夕景の中で行われたのも、赤が目立つ原色の宇宙人を、現実世界の風景と馴染ませるためのプランだったのかもしれません。それほどメトロン星人の派手な3原色を使ったデザインは、スタッフの目には強烈に映ったのかもしれません。あくまでも推測ですが‥‥(^^ゞ
しかし、メトロン星人とセブンの決戦シーンは、夕日を背景にした逆光により印象的なシーンとなっています。ここでも逆光の効果があり、本編と特撮の一体感が感じられます。
「我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目を付けたのだ。地球を壊滅させるのに、暴力を振るう必要はない。人間同士の信頼感を無くすればいい。人間たちは互いに敵視し、傷つけあい、やがて自滅していく。」金城哲夫氏が謳い上げた、人間の信頼感。これを無にしようとするメトロン星人を撃破するセブンの活躍に、爽快感があるハズでした。しかし、実相寺監督は脚本には無いナレーションを追加し、皮肉を込めてこのエピソードの幕を下ろしています。
曰く
「メトロン星人の地球侵略計画は、こうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは、恐るべき宇宙人です。でもご安心ください。このお話は遠い遠い、未来の物語なのです。え?なぜですって? 我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから‥‥。」
ところで、宇宙芥子の実を分析した科学班員の口から「恐ろしいことを考えたもんです。人類の半分くらいはタバコを吸っているんですからネ。」というセリフが。ということは、未成年者を除くとして、成人の2/3ほどはタバコを吸っているということ? それはいくら何でも多過ぎとしても、これだけ禁煙がヒステリックに叫ばれているご時世では、メトロン星人の計略は失敗に終わるかもしれませんネ。今なら「遠い昔の物語」というナレーションがあった方が、信憑性が高いかも‥‥。今は昔ほど、日本人はお互いを信頼してはいませんから‥‥(^^ゞ
●メトロン星人

腕はタバコ、目はフジツボをモチーフにしてデザインされたようです。これまでの怪獣・宇宙人にはない、三原色を大胆にあしらった体色が異色です。
飛行能力以外、特殊能力は描写されていません。
薄暗いアパートの室内や夕景の逆光での、リレー点滅の機電が美しいです。
アイスラッガーで身体を縦に真っ二つにされ、エメリウム光線(腕水平ver.)で爆発しました。
制作第10話 放映第8話 脚本:金城哲夫 監督:実相寺昭雄
実相寺昭雄監督の映像美学が、良い形で近未来SFとしての『ウルトラセブン』を描出したエピソードだと思います。
まずは冒頭の材木置場での小学生たち。マスクをしていますが、公害が顕著になってきた当時の小学生の風俗が「記録」されています。遠くでは工場か杭打ち機の音が鳴っていて、非常に強く現実感が感じられるシーンです。
そしてメトロン星人が潜んでいた木造アパート周辺と、卓袱台を挟んでダンとメトロン星人が対峙するシーン。「日常の見慣れた風景の中に宇宙人が存在する」という、強い印象を残す名場面として語り継がれていますネ。
本来は作品の海外販売のために、「あまり日本的な風俗を採り入れたエピソードはつくらない」というコンセンサスがあったそうですが、それを敢えて無視し、作品世界を揺さぶったのが実相寺監督でした。前作『ウルトラマン』でも、科特隊本部で怪獣供養を行った際や野点のシーンでフジ隊員に着物を着せたりして、スタッフ内部にも物議を醸していたそうです。
しかし現実場面が描かれているからこそ、宇宙人の存在やメトロン星人の計略のリアリティーが増しているのだと感じられます。当時の薄汚れた木造アパートの中に存在する、極彩色の宇宙人の違和感が強烈です。劇伴も控えめな使用です。
また、ウルトラ警備隊の作戦司令室のシーンでは他のエピソードでは見られない照明設計で、ほとんど真っ暗です。これは『ウルトラマン』第22話「地上破壊工作」でも見られた演出でしたが、緊迫したムードが醸し出されています。私は子どもの時にこのエピソードを見て、作戦室が真っ暗でも違和感は感じませんでしたが、緊迫感は感じられました。それが照明によるものだと歳を重ねてから気付いて、大いに感心したものです。
メディカルセンター内でのダン、ソガ、キリヤマ、アマギによる会話は、逆光でしかも4人が横一列に並んでの不自然なシーンでした。このシーンでは何か不思議な、しかし胸にズキンと来るカッコよさが感じられました。『ウルトラセブン』のクールな世界観を感じさせる名シーンだと思います。また、ライフル魔の取調室でのシーンやヒロシから叔父のタバコの入手先を聞き出すシーンでは窓からの光で逆光になっていたり、アパートの外でダンを待つアンヌが夕日の逆光になっていたりと、このエピソードでは逆光が意図的に多用されています。
このエピソードには、穂積隆信さんが「第4分署」の刑事役で出演されているのが有名です。円谷作品では『ウルトラQ』の「燃えろ!栄光」にも興行師役で出演されています。この第4分署のロケには、先ごろ閉鎖された祖師谷の旧・円谷プロの社屋が使われているそうです。
同じく『ウルトラQ』で数多くのチョイ役を演じられていた、東宝所属の草間璋夫さん、坪野鎌之さんなどが、アンヌの叔父の葬儀シーンに登場されています。この葬儀シーンのロケは、世田谷の慶元寺だそうです。
宇宙芥子の実を分析する科学班の科学者役を、『ウルトラマン』第6話「沿岸警備命令」のダイヤモンドキック役や、第33話「禁じられた言葉」に出演されている伊藤久哉さんが演じられています。
そして、メトロン星人の声をあてていらっしゃるのは、昨年お亡くなりになった中江真司さん! 理知的な雰囲気があって、メトロン星人の計略を語らせるには最適なキャスティングだと思います。中江さんは『仮面ライダー』を初め、数多くのナレーションでお馴染みですネ。最近発見したものでは、『ワイルド7』の次回予告のナレーションが中江さんでした。
ロケ地としては、メトロン星人がタバコの自販機を設置していた北川町南駅(架空)として、向ヶ丘遊園駅で撮影が行われています。

ストーリーは、
1)タクシー暴走事件
2)航空機事故で亡くなったアンヌの叔父の葬儀
3)フルハシが北川町駅前でタバコ購入
4)北川町でのライフル魔事件
5)ウルトラ警備隊作戦司令室でのフルハシ、ソガの錯乱
6)宇宙芥子の実の発見
7)タバコの入手経路の特定・張り込み
8)謎のタバコ補充員の追跡
9)メトロン星人との対決
という流れです。
1)錯乱したタクシー運転手事件から、アンヌが従兄弟のヒロシと接触し、2)叔父の葬儀へ出席するアンヌにダンが同伴し、そこでダンが北川町の異変を知る流れにウマく繋がっています。
3)パトロール中のフルハシがタバコを購入するのが北川町南駅前で、そこで4)ライフル魔事件に遭遇します。射撃の名手ソガが、その腕前を披露した初めてのシーンでもあります。(第12話ではセリフとしては「射撃の腕は世界一」とありましたが、実際にそれが描かれた最初のシーンはこの第8話です。)
ライフル魔に撃たれケガをしたフルハシは、メディカルセンターではタバコが吸えず、作戦司令室に来てタバコに火を点けて錯乱します。地球防衛軍極東基地きっての怪力の持ち主が暴れ、作戦室が混乱します。フルハシがわざわざ作戦室でタバコを吸う必然が生まれています。
やっとの思いでフルハシを取り押さえ、そのひと仕事のあとに今度はソガがタバコに火を点けます。ここでも、ひと仕事を終えたソガが自然にタバコに手を伸ばす流れが生まれています。射撃の名手・ソガがウルトラガンに手をかけ、発射しようとする緊迫感! 寸前にダンがヘルメットでウルトラガンを払い、事無きを得ます。
2人ともタバコに火を点けた直後に錯乱していることから、6)タバコの中の宇宙芥子の実の存在に気付く流れがスムーズです。3)北川町南駅前でフルハシにタバコを買わせておいたことで、ウルトラ警備隊内にメトロン星人の計略を暴くきっかけが生まれています。逆算的にウマくストーリーが紡がれていると感心します。
ところで、フルハシが錯乱している時に、だれか1人が「ソガ隊員、気でも狂ったんですか!」と言っているのが聞こえます^^; 声は何だか森次さんのように聞こえるのですが‥‥。
昏睡状態のフルハシ、ソガからはタバコの入手先を聞き出すことができませんでしたが、アンヌの叔父のタバコの入手先をヒロシから聞くことができました。死んでしまった叔父のタバコの入手経路を、ヒロシを通して違和感無く語らせるセリフが絶妙です。
そのヒロシの言葉から、取調室でのライフル魔の話を思い出して北川町南駅前の自販機を張り込むダンの推理力と行動力にワクワク! よく練られたストーリーです。
張り込んでいるダンとアンヌの眼前に、ワーゲンのワゴンに乗ってやって来たタバコの補充員。このクルマを尾行し、1軒の木造アパートを突き止め、潜入するダン。外で待たされているアンヌの映像には、ラジオからの野球の実況中継の音声が被り、何も知らない一般人の生活と宇宙人の侵略拠点が隣り合わせで存在していることを感じさせられます。このあとの卓袱台のシーンとともに、宇宙人の存在する空間のリアリティーを増す効果があります。
アパートでダンと対峙するまで、メトロン星人は一切登場しません。それだけに、アパートの一室に存在する異形の宇宙人の姿にインパクトがあります。また、薄暗い室内なので、極彩色のデザインが現実世界の中にウマく溶け込んでいると感じられます。このシーンは特撮班ではなく本編班による撮影なので、実相寺監督がメトロン星人のデザインを見て、原色の宇宙人をどうにかしようと考えて設計した演出プランなのでしょうか。
私は脚本を目にしたことが無いのであくまで推測ですが、この仮定に従えば、メトロン星人が潜んでいたのが古い木造アパートだったというのは、薄暗い室内からの逆算で導かれた設定である可能性があります。また、同じ理由で、巨大化したメトロン星人とセブンの戦闘シーンが夕景の中で行われたのも、赤が目立つ原色の宇宙人を、現実世界の風景と馴染ませるためのプランだったのかもしれません。それほどメトロン星人の派手な3原色を使ったデザインは、スタッフの目には強烈に映ったのかもしれません。あくまでも推測ですが‥‥(^^ゞ
しかし、メトロン星人とセブンの決戦シーンは、夕日を背景にした逆光により印象的なシーンとなっています。ここでも逆光の効果があり、本編と特撮の一体感が感じられます。
「我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目を付けたのだ。地球を壊滅させるのに、暴力を振るう必要はない。人間同士の信頼感を無くすればいい。人間たちは互いに敵視し、傷つけあい、やがて自滅していく。」金城哲夫氏が謳い上げた、人間の信頼感。これを無にしようとするメトロン星人を撃破するセブンの活躍に、爽快感があるハズでした。しかし、実相寺監督は脚本には無いナレーションを追加し、皮肉を込めてこのエピソードの幕を下ろしています。
曰く
「メトロン星人の地球侵略計画は、こうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは、恐るべき宇宙人です。でもご安心ください。このお話は遠い遠い、未来の物語なのです。え?なぜですって? 我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから‥‥。」
ところで、宇宙芥子の実を分析した科学班員の口から「恐ろしいことを考えたもんです。人類の半分くらいはタバコを吸っているんですからネ。」というセリフが。ということは、未成年者を除くとして、成人の2/3ほどはタバコを吸っているということ? それはいくら何でも多過ぎとしても、これだけ禁煙がヒステリックに叫ばれているご時世では、メトロン星人の計略は失敗に終わるかもしれませんネ。今なら「遠い昔の物語」というナレーションがあった方が、信憑性が高いかも‥‥。今は昔ほど、日本人はお互いを信頼してはいませんから‥‥(^^ゞ
●メトロン星人

腕はタバコ、目はフジツボをモチーフにしてデザインされたようです。これまでの怪獣・宇宙人にはない、三原色を大胆にあしらった体色が異色です。
飛行能力以外、特殊能力は描写されていません。
薄暗いアパートの室内や夕景の逆光での、リレー点滅の機電が美しいです。
アイスラッガーで身体を縦に真っ二つにされ、エメリウム光線(腕水平ver.)で爆発しました。
また、夕景のオレンジ色の光の中の、どちらも赤いメトロン星人とセブンが、やはり風景に馴染んでいるように感じられます。極彩色なので色をつぶす映像プランがあったのかもしれませんネ。
上記のことを踏まえて、少し本記事を書き換えました。
更には体の一部をアップで撮る方法など実相寺演出全開という感じですね。
夕陽の中の戦いはウルトラシリーズ史上初ですが、
特撮を担当した大木淳作品では‘帰ってきたウルトラマン’で多用されてます。
また対メトロンの冒頭で対峙する川に姿が映る演出も、すぐにセブン対キングジョーに流用されてます。
そうそう、メトロン星人は脚本では腕から光線を発射してましたよ。
しかも赤い結晶体を空気や水道に混入するような事を言ってましたし。
それが本編ではカットされてましたから、ウルトラマンマックスで実相寺監督がメトロンを`決して悪い奴には見えない’と言わせた伏線があるのかもしれません。
監督が亡くなった今、それは永遠の謎になってしまいました。
>そうそう、メトロン星人は脚本では腕から光線を発射してましたよ。
それは見てみたかったです。
詳細な記事を拝読して、うろ覚えだったストーリーが甦りました。
それにしても、秋葉原や八王子や平塚での事件を聞いて、この名作を思い出すのも、悲しいものですね。
現在は海外にお住まいなのでしょうか? あちらこちらで無差別に人の命を奪うヤツがいて、ホントにこの国はどうしちゃったのか心配になります‥‥。「宇宙芥子の実」なんて冗談でも言えない雰囲気です。
海外でしばらく暮らしていると、日本と言う国こそ、フィクションの中の架空の国のように思えてきますね。地震もあるし、火山もあるし、台風まで来る。ヨーロッパ人にしてみると、本当に不思議な島国です。
ウルトラセブンのカテゴリーは素晴らしいですね。全部読んじゃいました。日本に置いてきたDVDボックスが観たくなりました。
素晴らしい論説を展開されたり、詳細なストーリーをキャプチャー画像とともに解説しているサイト、ブログもありますが、これが私にできる精一杯のスタンスです。他とは違う切り口のものがあってもイイかな‥‥と、何とか私の知っている情報と気付いたことを書き連ねた駄文です。お気に召していただいて幸いです。
パパが「あ あれはメトロ星人なのだ」
と遊園地のジェットコースターで お面被ってる子のことを説明すんだよね
パパ詳しいって バカボンに尊敬されてたな