1st.アルバム“PLEASE PLEASE ME”がまだイギリスのチャートで首位にいる頃、追い討ちをかけるような戦略で制作されました。そして、それら2枚が入れ替わるように首位を独占し続けました。
内容的には“PLEASE PLEASE ME”の延長上にありますが、独特のコード進行の‘It Won't Be Long’‘Not A Second Time’などが収録され、オリジナリティの萌芽が見られます。McCartneyも‘All My Loving’で輝き始めました。Harrisonも‘Don't Bother Me’で曲作りに参加しています。
楽器選択やアレンジでは、まだそれほどのバリエーションは見られません。Martinがピアノで参加する楽曲が増えた程度です。ただし、レコーディング技術ではダブル・トラッキングの大々的な採用が特筆されます。手間のかかるレコーディングが可能になったのは、“PLEASE PLEASE ME”の成功のお陰で制作に長い時間が使えたからです。
演奏は意識的にか、“PLEASE PLEASE ME”よりもルーズな印象があります。それ故に、荒削りの荒々しさが感じられます。
ジャケットは、元メンバーのStuart Sutcliffeがハンブルグで出会った写真家Astrid Kirchherrのスタイルに似た、ハーフ・シャドーの有名なものです。いくつものパロディを生んだ名ジャケットです。アメリカのキャピトルでのデビュー・アルバム“MEET THE BEATLES”や、日本の『ビートルズNo.1!』も同じデザインでした。
●It Won't Be Long
半音進行を採り入れ、凝った曲作りを目指しています。‘She Loves You’に続き“Yeah yeah”が効果的に使われていて、初期のイメージ作りに一役買っています。
●All I've Got To Do
Ringoが前作の‘Anna’、そして‘It's Only Love’‘In My Life’に通じるドラミングを展開しています。渋いヴォーカルとブルージーな楽曲は、新人離れした自信と余裕が感じられます。
●All My Loving
流れるような四分音符のベース、Lennonによる1拍3連のリズム・ギターのノリ、カントリー・タッチのHarrisonのギター・ソロ、ハツラツとしたシャッフルのドラムスと、勢いのあるアンサンブルが堪能できます。
メロディも自然で、初期の傑作の1曲です。最後のヴァースのハーモニー・ヴォーカルはMcCartneyのダブル・トラッキングですが、ステージでは主旋律をHarrison、ハーモニーをMcCartneyが歌っていました。
McCartneyの作品の中でLennonのお気に入りの1曲だそうです。
●Don't Bother Me
Harrisonの処女作。‘You Like Me Too Much’や‘Think For Yourself’に通じる、出だしがいきなり転調しているような不思議な味わいのある楽曲です。完璧にポップの王道的なMcCartney、変化球が新鮮なLennonの作風とも異なる、第3のメロディ・メーカーとしての萌芽が見られます。
●Little Child
初期のトレード・マークであるハーモニカがフィーチャーされています。‘Love Me Do’‘Please Please Me’‘There's A Place’‘From Me To You’‘Thank You Girl’‘I'll Get You’と多用されていましたが、この後は‘I Should Have Known Better’‘I'm A Loser’と急激に使用例が少なくなります。
●Till There Was You
ガット・ギターを大きくフィーチャした、ミュージカル“THE MUSIC MAN”からのカバー。こういう曲調もこなすレパートリーの広さから、のちの多彩な楽曲が生まれるための素地が養われたのでしょう。
●Please Mr. Postman
モータウンのMarvelletsのカバー曲。単純な循環コードながら、Lennonのヴォーカルが炸裂し、Beatlesらしい名曲に仕上がっています。のちにCarpentersがカバーした時とはバッキング・ヴォーカルの歌詞が違っています。
●Roll Over Beethoven
Chuck Berryのカバー。BeatlesのワシントンD.C.での最初のアメリカ公演の1曲目でした。ちょっとHarrisonのリード・ギターがたどたどしい‥‥。さすがにリード・ヴォーカルとソロを両立するのは難しいのでしょうか。
●Hold Me Tight
“PLEASE PLEASE ME”のセッションでレコーディングが試みられたものの、リリースされるには至りませんでしたが、このセッションでリメイクされました。ギターとベースのリフ、そしてサビの転調がキャッチーな佳曲です。オリジナルの楽曲とカバー曲が明らかに質の異なるものになってきたことが、この曲順でより鮮明になっています。
●You Really Got To Hold On Me
Smokey Robinson & The Miraclesのカバー曲。珍しくLennonとHarrisonのハーモニーになっていますが、この試みはこの後はありません。あまり良い効果が得られないと判断されたのでしょうか。
●I Wanna Be Your Man
Rolling Stonesに提供された楽曲のセルフ・カバー。Stonesのメンバーとパブで会い、その場でつくられたと言われています。
Beatlesの方は軽いリズムで、ポップに仕上げられています。ステージでのRingoのヴォーカル曲として定番になりました。
●Devil In Her Heart
無名のThe Donaysの、しかもヒットしなかった曲の、なんとB面曲のカバー! こんなマニアックな楽曲を採り上げるとは‥‥。原曲はリード・ギターのフレーズが素敵なので、埋もれさせておくにはたしかに勿体ないのですが。
BeatlesのヴァージョンではRingoがキャッチーなドラムスで引き締めています。
●Not A Second Time
何とも自由奔放にコードが展開される楽曲です。理論に裏打ちされずに縛られない、自由な発想こそが彼らの楽曲の魅力でしょうが、それはほとんどがLennonの作品に顕著です。
低音を中心に組み立てられた、ミドルのMartinによるピアノ・ソロがイイ響きです。
●Money (That's What I Want)
Barrett Strongのカバー曲。モノラルとステレオではミキシングが異なり、ステレオver.は2つのモノラル・ミックスが左右のトラックに使われています。また、イントロのピアノに2小節目途中から絡むギターは、ステレオver.だけのものです。このステレオver.は、現在ではキャピトル盤のCDでしか聴くことができません。
“PLEASE PLEASE ME”での‘Twist And Shout’と同じように、迫力のあるLennonのヴォーカルでアルバムが閉じられます。
このアルバムのセッションの前後に、‘From Me To You / Thank You Girl’‘She Loves You / I'll Get You’‘I Want To Hold Your Hand / This Boy’のシングルもレコーディングされています。
●From Me To You
Helen Shapiroとのツアー中にバスの中でつくられたそうです。サビのマイナーへの転調を思い付いた時に、McCartneyはずいぶんと興奮したそうです。楽曲のクォリティが高くなって次の次元に上がったことを物語っています。
デビュー曲から続けてハーモニカがフィーチャーされています。しかしステレオver.ではイントロのハーモニカがありません。ステレオver.はCDでは長らく入手不能でしたが、現在ではリマスターCDで復活されました。私は“OLDIES”のステレオLPで初めて聴いて、その後は「赤盤」(“1962-1966”)で聴いてきたので、ステレオver.の方が馴染みがあります。
●Thank You Girl
A面にしてもおかしくないクォリティの楽曲だと思います。
当時はキャピトル盤の“SECOND ALBUM”に収録されているステレオver.でしか、サビの“Good to be true”の後とアウトロにもハーモニカ入っているものは聴けませんでしたが、リマスターCDの“PAST MASTERS”でステレオver.が世界標準となりました。
●She Loves You
彼らが初めてミリオン・セラーに達した楽曲です。‘All You Need Is Love’の中継中に突然Lennonが歌いだし、引用されています。
リリース用のマスターが制作されるとレコーディングのマスターは処分されてしまっていたそうで、この楽曲はモノラルのマスターしか現存しません。
タムタムのフィルインからいきなりサビで始まる、勢いのある楽曲です。騒々しいロック・バンドの魅力が詰まった1曲です。
●I'll Get You
いかにもB面用の小品です。アレンジもそれほど練られていませんが、McCartneyのコーラスは絶品です。
●I Want To Hold Your Hand
キャピトルでの最初のシングルです。この楽曲がヒットして、その影響で過去にマイナー・レーベルからリリースされていた楽曲もチャートを上がり、'63年4月4日のビルボード誌では1位~5位を独占するという快挙(珍事?)が起こりました。
イントロは、拍が裏返る錯覚が起こるようなイタズラが仕掛けられています。LennonとHarrisonのギターのアンサンブルがよく練られています。
この楽曲のレコーディングから、4チャンネルのレコーダーが使用されるようになりました。
●This Boy
レコードではモノラルver.ばかりがリリースされていましたが、現在CDで入手できるのは“PAST MASTERS”に収録されたステレオver.だけになりました。
映画“A HARD DAY'S NIGHT”ではMartinのオーケストラによるインストルメンタルで「Ringoのテーマ曲」として演奏されましたが、この楽曲の持つメロディの素晴らしさが際立っています。こんな名曲でさえもB面に収録されるほど、Beatlesは次々と名曲をつくるようになっています。
ステージでは、この見事な3声のハーモニーをLennonを中心にMcCartney、Harrisonの3人が1本のマイクを囲むパフォーマンスで聴かせていました。McCartneyが左利きであるためにベースのネックがぶつからない位置で立てたことが、このパフォーマンスを成立させた大きな鍵でしょう。左利きのMcCartneyがいることが、ステージでLennon、Harrison、McCartneyの3人が並んだ時にバランスがよく、カッコよく見える理由の1つです。
内容的には“PLEASE PLEASE ME”の延長上にありますが、独特のコード進行の‘It Won't Be Long’‘Not A Second Time’などが収録され、オリジナリティの萌芽が見られます。McCartneyも‘All My Loving’で輝き始めました。Harrisonも‘Don't Bother Me’で曲作りに参加しています。
楽器選択やアレンジでは、まだそれほどのバリエーションは見られません。Martinがピアノで参加する楽曲が増えた程度です。ただし、レコーディング技術ではダブル・トラッキングの大々的な採用が特筆されます。手間のかかるレコーディングが可能になったのは、“PLEASE PLEASE ME”の成功のお陰で制作に長い時間が使えたからです。
演奏は意識的にか、“PLEASE PLEASE ME”よりもルーズな印象があります。それ故に、荒削りの荒々しさが感じられます。
ジャケットは、元メンバーのStuart Sutcliffeがハンブルグで出会った写真家Astrid Kirchherrのスタイルに似た、ハーフ・シャドーの有名なものです。いくつものパロディを生んだ名ジャケットです。アメリカのキャピトルでのデビュー・アルバム“MEET THE BEATLES”や、日本の『ビートルズNo.1!』も同じデザインでした。
●It Won't Be Long
半音進行を採り入れ、凝った曲作りを目指しています。‘She Loves You’に続き“Yeah yeah”が効果的に使われていて、初期のイメージ作りに一役買っています。
●All I've Got To Do
Ringoが前作の‘Anna’、そして‘It's Only Love’‘In My Life’に通じるドラミングを展開しています。渋いヴォーカルとブルージーな楽曲は、新人離れした自信と余裕が感じられます。
●All My Loving
流れるような四分音符のベース、Lennonによる1拍3連のリズム・ギターのノリ、カントリー・タッチのHarrisonのギター・ソロ、ハツラツとしたシャッフルのドラムスと、勢いのあるアンサンブルが堪能できます。
メロディも自然で、初期の傑作の1曲です。最後のヴァースのハーモニー・ヴォーカルはMcCartneyのダブル・トラッキングですが、ステージでは主旋律をHarrison、ハーモニーをMcCartneyが歌っていました。
McCartneyの作品の中でLennonのお気に入りの1曲だそうです。
●Don't Bother Me
Harrisonの処女作。‘You Like Me Too Much’や‘Think For Yourself’に通じる、出だしがいきなり転調しているような不思議な味わいのある楽曲です。完璧にポップの王道的なMcCartney、変化球が新鮮なLennonの作風とも異なる、第3のメロディ・メーカーとしての萌芽が見られます。
●Little Child
初期のトレード・マークであるハーモニカがフィーチャーされています。‘Love Me Do’‘Please Please Me’‘There's A Place’‘From Me To You’‘Thank You Girl’‘I'll Get You’と多用されていましたが、この後は‘I Should Have Known Better’‘I'm A Loser’と急激に使用例が少なくなります。
●Till There Was You
ガット・ギターを大きくフィーチャした、ミュージカル“THE MUSIC MAN”からのカバー。こういう曲調もこなすレパートリーの広さから、のちの多彩な楽曲が生まれるための素地が養われたのでしょう。
●Please Mr. Postman
モータウンのMarvelletsのカバー曲。単純な循環コードながら、Lennonのヴォーカルが炸裂し、Beatlesらしい名曲に仕上がっています。のちにCarpentersがカバーした時とはバッキング・ヴォーカルの歌詞が違っています。
●Roll Over Beethoven
Chuck Berryのカバー。BeatlesのワシントンD.C.での最初のアメリカ公演の1曲目でした。ちょっとHarrisonのリード・ギターがたどたどしい‥‥。さすがにリード・ヴォーカルとソロを両立するのは難しいのでしょうか。
●Hold Me Tight
“PLEASE PLEASE ME”のセッションでレコーディングが試みられたものの、リリースされるには至りませんでしたが、このセッションでリメイクされました。ギターとベースのリフ、そしてサビの転調がキャッチーな佳曲です。オリジナルの楽曲とカバー曲が明らかに質の異なるものになってきたことが、この曲順でより鮮明になっています。
●You Really Got To Hold On Me
Smokey Robinson & The Miraclesのカバー曲。珍しくLennonとHarrisonのハーモニーになっていますが、この試みはこの後はありません。あまり良い効果が得られないと判断されたのでしょうか。
●I Wanna Be Your Man
Rolling Stonesに提供された楽曲のセルフ・カバー。Stonesのメンバーとパブで会い、その場でつくられたと言われています。
Beatlesの方は軽いリズムで、ポップに仕上げられています。ステージでのRingoのヴォーカル曲として定番になりました。
●Devil In Her Heart
無名のThe Donaysの、しかもヒットしなかった曲の、なんとB面曲のカバー! こんなマニアックな楽曲を採り上げるとは‥‥。原曲はリード・ギターのフレーズが素敵なので、埋もれさせておくにはたしかに勿体ないのですが。
BeatlesのヴァージョンではRingoがキャッチーなドラムスで引き締めています。
●Not A Second Time
何とも自由奔放にコードが展開される楽曲です。理論に裏打ちされずに縛られない、自由な発想こそが彼らの楽曲の魅力でしょうが、それはほとんどがLennonの作品に顕著です。
低音を中心に組み立てられた、ミドルのMartinによるピアノ・ソロがイイ響きです。
●Money (That's What I Want)
Barrett Strongのカバー曲。モノラルとステレオではミキシングが異なり、ステレオver.は2つのモノラル・ミックスが左右のトラックに使われています。また、イントロのピアノに2小節目途中から絡むギターは、ステレオver.だけのものです。このステレオver.は、現在ではキャピトル盤のCDでしか聴くことができません。
“PLEASE PLEASE ME”での‘Twist And Shout’と同じように、迫力のあるLennonのヴォーカルでアルバムが閉じられます。
このアルバムのセッションの前後に、‘From Me To You / Thank You Girl’‘She Loves You / I'll Get You’‘I Want To Hold Your Hand / This Boy’のシングルもレコーディングされています。
●From Me To You
Helen Shapiroとのツアー中にバスの中でつくられたそうです。サビのマイナーへの転調を思い付いた時に、McCartneyはずいぶんと興奮したそうです。楽曲のクォリティが高くなって次の次元に上がったことを物語っています。
デビュー曲から続けてハーモニカがフィーチャーされています。しかしステレオver.ではイントロのハーモニカがありません。ステレオver.はCDでは長らく入手不能でしたが、現在ではリマスターCDで復活されました。私は“OLDIES”のステレオLPで初めて聴いて、その後は「赤盤」(“1962-1966”)で聴いてきたので、ステレオver.の方が馴染みがあります。
●Thank You Girl
A面にしてもおかしくないクォリティの楽曲だと思います。
当時はキャピトル盤の“SECOND ALBUM”に収録されているステレオver.でしか、サビの“Good to be true”の後とアウトロにもハーモニカ入っているものは聴けませんでしたが、リマスターCDの“PAST MASTERS”でステレオver.が世界標準となりました。
●She Loves You
彼らが初めてミリオン・セラーに達した楽曲です。‘All You Need Is Love’の中継中に突然Lennonが歌いだし、引用されています。
リリース用のマスターが制作されるとレコーディングのマスターは処分されてしまっていたそうで、この楽曲はモノラルのマスターしか現存しません。
タムタムのフィルインからいきなりサビで始まる、勢いのある楽曲です。騒々しいロック・バンドの魅力が詰まった1曲です。
●I'll Get You
いかにもB面用の小品です。アレンジもそれほど練られていませんが、McCartneyのコーラスは絶品です。
●I Want To Hold Your Hand
キャピトルでの最初のシングルです。この楽曲がヒットして、その影響で過去にマイナー・レーベルからリリースされていた楽曲もチャートを上がり、'63年4月4日のビルボード誌では1位~5位を独占するという快挙(珍事?)が起こりました。
イントロは、拍が裏返る錯覚が起こるようなイタズラが仕掛けられています。LennonとHarrisonのギターのアンサンブルがよく練られています。
この楽曲のレコーディングから、4チャンネルのレコーダーが使用されるようになりました。
●This Boy
レコードではモノラルver.ばかりがリリースされていましたが、現在CDで入手できるのは“PAST MASTERS”に収録されたステレオver.だけになりました。
映画“A HARD DAY'S NIGHT”ではMartinのオーケストラによるインストルメンタルで「Ringoのテーマ曲」として演奏されましたが、この楽曲の持つメロディの素晴らしさが際立っています。こんな名曲でさえもB面に収録されるほど、Beatlesは次々と名曲をつくるようになっています。
ステージでは、この見事な3声のハーモニーをLennonを中心にMcCartney、Harrisonの3人が1本のマイクを囲むパフォーマンスで聴かせていました。McCartneyが左利きであるためにベースのネックがぶつからない位置で立てたことが、このパフォーマンスを成立させた大きな鍵でしょう。左利きのMcCartneyがいることが、ステージでLennon、Harrison、McCartneyの3人が並んだ時にバランスがよく、カッコよく見える理由の1つです。
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