米軍のB-52爆撃機がこのほど、中国が人工島を作っている南沙諸島のクアテロン礁上空を通過した。
間違いか故意か?
中国側はクアテロン礁を埋め立てて人工島をつくり、「中国の領土である」と主張している。そのため、米軍の「領空侵犯」に対して中国外務省は、B-52の飛行は「深刻な軍事的挑発である」と、激しく抗議している。
アメリカ側は、B-52が「間違えて」クアテロン礁上空を飛行したと主張している。GPSで常に自分の位置を把握できる時代に、どうすればこのような「間違い」が起きるのかは疑問だが、そもそもアメリカ側の主張には矛盾がある。
アメリカは、中国が人工島を建設しているクアテロン礁を、中国領土と認めていない。国際空域を飛行中であったため、「間違いだった」などと言う必要はないのだ。
実際、南沙諸島は中国、台湾、ブルネイ、フィリピン、そしてベトナムが領有権を主張しており、クアテロン礁は中国とフィリピンが所有権を巡って対立してい る。中国は人工島を建設することによって、これらの諸島が「中国のものである」という既成事実をつくろうとしているのだ。
外交音痴が平和を脅かす
アメリカ側が外交的な発言で間違いを犯したのは今回が初めてではない。去る10月、「中国の人工島は中国領土ではない」と主張するために、米海軍は人工島の12海里以内を航行する「航行の自由作戦」を行った。
しかし、米USNI誌によると、米軍高官はこれを「無害通航」と呼んでいるという。「無害通航」とは、相手国の平和や秩序を害さないことを条件として、相手領土の12海里以内を通航する権利を指す。
つまり、「航行の自由作戦」を「無害通航」と呼んだ時点で、中国側の領土主張を認めているようなものなのだ。
米ブルームバーグ紙のジョッシュ・ロージン氏よると、米軍艦は、「無害」であることを強調するために、センサーを作動させたり、ヘリコプターを飛ばす許可を、オバマ政権から与えられていなかったという。
中国の軍拡は着実に進んでおり、とどまる気配がない。オバマ政権は、中国を刺激しないために言葉を和らげたつもりなのかもしれないが、それが中国の軍拡を増長させる可能性があることを認識しているのだろうか。
大川隆法・幸福の科学総裁は、近著『正義の法』で、「オバマ大統領になって、アメリカ軍が警察的機能を捨てたあと、世界で混乱が増え、死ぬ人の数が増えてきている」と指摘。現在のところ、これが最も顕著に現れている地域は中東だが、アジア・太平洋地域でも今後、覇権政策を推し進める中国を中心に、混乱や紛争が起きるかもしれない。
米軍の抑止力が弱まる中、日本は自分の国は自分で守れるようにならなければならない。その力は、地域の平和と安定を守るためにも役立つものになるだろう。(中)
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