政府の2015年度補正予算案の詳細がこのほど、明らかになった。安倍首相が「新3本の矢」を掲げて、初めての予算案だ。
同案は12月中旬の閣議決定を経て、来年1月4日の通常国会に提出される見通しだ。
今回、総額3.3兆円程度が、「1億総活躍社会」の実現や環太平洋経済連携協定(TPP)などの国内対策に充てられる。
補正予算案はバラマキによる選挙対策
その内容を見て気がかりなのは、バラマキのための予算が目立つことだ。
特に顕著なのが、低所得者の年金受給者に1人あたり3万円の臨時給付金を支給する計画。これには、3400億円程度が計上される。その他、地方創生のための交付金にも、1000億円が計上される。
また、「1億総活躍社会」の実現を掲げ、保育所の整備、介護施設の整備や人材確保のための予算を計上している。
こうした予算に対して、選挙対策だという批判の声も多い。
消費税10%へ向け経済環境を整える
今回の補正予算案は、安倍政権が消費税10%に向けて確実に布石を打つためのものでもある。
甘利経済財政相は今回の補正編成について、「消費税の再引き上げに向けて経済環境をしっかりする必要があるというのが総理の考え」と述べている(11月27日付ロイター)。
政府は他にも、消費税の再引き上げへの準備を進めている。
閣僚や経済界トップによる「官民対話」では、景気を底上げするために、金の値上げや設備投資を要求。また、経済財政諮問会議ではパートやアルバイトの最低賃金について「年3%引き上げ」を指示し、将来的に1000円になるよう、初めて具体的な水準に言及した。
国家が賃上げや就労支援などを通して国民へ資金を供給し、それを増税によって吸い上げるという構造ができつつある。
しかし、経済は「神の見えざる手」というように、自然の調整機能を持っている。国家が介入すると、経済の構造が歪み、停滞してしまう。
日本経済を活性化させるには、消費税を5%へ減税し、国民の消費に刺激を与えることである。国家が減税の推進とともに、未来産業への大胆な投資を目指すべきである。(HS政経塾 油井哲史)
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