日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

やっぱり落ちてこなかったトリクルダウン

2024年05月23日 07時58分36秒 | 政治
 ワイングラスを三角状に積み重ねてその一番高い位置の豪華グラスにコンコンとワインを注ぐ・・・と、やがてそこから溢れ出たワインはその下の複数のグラスに滴り落ちる。そこでもすべてのワイングラスが満杯になるや、あふれた紫の液体はその下のより多くのグラス群を満たしてなお下のグラス群へ・・・、と。
こうして山のように積まれたワイングラスの下の方にもオトナシク待っていればおいしいワインが滴り落ちていきますよ!、だから我慢して待っていてください!・・浜田宏一米エール大学名誉教授と安倍晋三内閣総理大臣が語る(騙る)「アベノミクス理論」の実に分かり易い説得的説明を国民は喉を鳴らしながら待った。その預言が実現する頃には日本の国民総生産は600兆円に達するであろうとも故人は語っていた。その政策を総称して「新3本の矢」。
その600兆円がついに実現しそうだという。「内閣府が16日発表した国内総生産(GDP)をみると、物価を反映した名目GDPは拡大している。1~3月期は直前の四半期より0.1%増え、2四半期連続のプラス成長となった。年率換算では0.4%増え、過去最大の約599兆円を記録。2015年に自民党の安倍晋三首相(当時)が掲げた<<600兆円>の目標にあと一歩に迫った」(2024/05/16朝日新聞)。
安倍元首相は「戦後最大の経済と国民生活の豊かさ」を旗印に、この目標をアベノミクス「新3本の矢」の一つに据えた。その後の菅首相もアベノミクスの中核だった異次元の金融緩和を続け、経済成長を追い求めてきた。結果はGDP600兆円と聞けばさぞや国民生活は豊かになったはず、貧しいのは自分だけなのだと、「楽」にならざる我が手の平を改めてみるのだが、貧しいのは筆者だけでもないらしい。大げさに言えば大企業と政治資金でうるおう政治家諸氏を除く全国民らしく、一向に好い話を聞かない。ワイングラスを三角錐状に積み重ねたそのごくごく一番高い頂上付近のグラスにはおいしいワインが滴り落ちたのだろうが、それより下のワイングラスは相も変わらず干からびた空疎のグラスが並んでいるだけのよう。
かくてこの五月の連休はゴールデンウィークとは言えない鈍い色を発しただけで、かつて円高をいいことに猫も杓子も飛び出した外国旅行は影を潜め、替わって今では海の向こうの国々の人々が日本の旅を楽しんでいる姿を見せつけられるところとなった。
財布に一枚だけ残っていた福沢諭吉翁をしみじみ眺めてみると、なにやら精彩を欠き、くたびれた顔に見える。はやく渋沢栄一殿にかわってくれと言っているように見えるのは筆者だけではあるまい。