現場知略

株式会社自動車情報センター、白柳孝夫の取材メモです。

リプロの整備工場にとっての「恐怖」

2013年04月21日 13時17分26秒 | 自動車整備

リプロとは「リプログラム」である。

ウインドウズのXPを使っている、多くの庶民は、ご存知と思うが、
自動更新にしておくと、
「ええ加減にせんかああ」と怒鳴りたくなるぐらい、次々と更新する。

 

それで、大きな更新があると、コンピューターのインターフェースが変わったりする。
記憶させていたIDなどが消えており「あれれ」と思うこともあり、フリーソフトが使えなくなることも、たまにある。

実は自動車も、コンピューターの「塊」になりつつある。
そのプログラムは、いつまでも更新しないのか?

実は更新しているのである。
新車発売以降の初期不具合に対応して、プログラムを修正するのは、ままあること。これは新車保証期間、定期点検時に、リプログラムされる。

このレベルなら、それ程の「恐怖」ではない。
ドイツ車では、新車販売以降、かなり時間が経っても継続的にリプログラムがされるようである。

それも、ディーラーで「あ、この車、新しいプログラムが出ていたな?」とメカニックが気付いてリプロするのではなく、OBDに純正のスキャンツールと接続すると自動更新されるらしい。
ディーラーのスタッフも知らない内に自動更新。
これが、パソコンの自動更新と同じである。

これが、何故に整備業者に恐怖かというと、お客さんがディーラーのサービス工場に車両を持ち込むと、自動的にコンピューターがリプロされる。

その後、整備工場に入庫して、汎用スキャンツールを当てる。
ところが、新しいプログラムに対応してないので、故障コードが出ない。

そこで、メカニックが聞く?
「お客様、最近、ディーラーに行きませんでしたか?」
「先日、オイル交換に行ったよ」
「ギャー、行っちゃだめなのに・・・」
「何で?」

このようになるらしい。
まだ、日本のディーラーでは、ここまで進んでいないが、今後は、このようになる可能性が大きい。

米国ではリプロに対する規制があり、整備工場にも有料で公開されている。
日本でも、考えておく必要があるように思う。


手離れの悪い仕事の大切さ

2013年04月19日 00時24分58秒 | 自動車整備

いつごろだろうか?

仕事の「手離れ」が重視されるようになったのは?

「手離れ」が良いと褒められ、

「手離れ」が悪いと、無能、生産性低い、役立たず・・・と罵倒される。


その結果、誰もが「手離れの良い仕事」を好んでやり、

「手離れの悪い仕事」はやりたがらなくなった。


短時間車検は手離れが良い仕事である。

故障整備は手離れの悪い仕事である。


ワイパーブレード交換は手離れが良いが、

ディスクパッド交換は手離れが悪い。


その結果、手離れの良い仕事は競争が激化し、

手離れの悪い仕事は、顧客が対応してくれる整備工場を必死で探さないと見つからない時代になった。


そもそも「手離れ」が言われ始めたのは、

仕事を効率化させて、手離れを良くして、別の仕事をやろう・・と言う意味であった。

面倒な仕事をやるな・・・という意味ではなかったはずである。

面倒な仕事も、簡単な仕事も意識的に効率化しよう・・・との意味である。


しかし、実態として、面倒な仕事を減らすと、簡単に手離れが良くなるので、

誰もがこの方法に専念した。


でも、サービス業の仕事として、これは誤りである。

手離れの悪い仕事ほど、サービス業の腕の見せ所であるからだ。

 


ユーザーの拘りに対応できてますか

2013年04月18日 20時04分37秒 | 自動車整備

診断整備を実施している、ある整備工場を訪問した。
預かり車両の嵐である。
工場長の言葉で、一番、印象に残っているのは、「ユーザーは、クルマの調子に拘るものである」との台詞。

「今は、クルマは下駄代わりじゃないのですか」と私。
「100万円もする下駄がありますか?」と工場長。
確かに、その通りである。
「クルマは下駄代わり」の台詞は、業界側が売れない言い訳に作った言葉かも知れない。

確かに、私の妹などまだ10年前の旧型のイストに乗っているが、
その理由は「モデルチェンジしたスタイルが趣味に合わなくなったから代替できない」とのこと。
「軽は乗り心地が直ぐに悪くなるのでやーよ」とのことだ。
軽のユーザーも、コンパクトカーのユーザーも拘りはある。
でも営業マンは「クルマは下駄代わりで良いという層で、
このまま壊れるまで乗り続けると言ってました」と上司に報告するだろう。

クルマの乗り心地についても、ユーザーは拘る。
「その、拘りについて、言う場所がないのですね、今のユーザーは。ディーラーは調子が悪いならクルマを買い換えるように誘導する。一般の整備工場では短時間・格安車検ばかりに熱心で、話を聞いてくれない」

「とにかく、話を聞いて、スキャンツールや様々なテスタで診断する。そして、診断データをもとに説明する。
お客様が言っていたのは、これですね。
すると、ほぼ修理を受注できる。修理は、部品お手配から整備・調整まで掛かりますので、どうしても、お車を預かることになる」
外車ユーザーのみならず、国産車のユーザーにも拘りがある。
業界は、長くユーザーの拘りに背を向けて来たのではなかろうか?


自動車保険料率の変化と補修部品市場

2012年10月29日 23時34分26秒 | 補修部品市場

昔から自動車保険料率が変わると、補修部品市場に大きな変化があった。
今回の改訂は、かなり大きな改定であるから、補修部品市場に大きな変化をもたらすだろう。
ただし、今年10月の新規契約・更新から適用される新たな自動車保険制度なので、新契約の車輌が事故を起こしてから影響が出てくる。
具体的な影響時期は少し後ろにズレルと思われる。

 昨年の秋、自動車保険料率算出機構は金融庁に自動車保険参考純率の改正を届出、受領された。
それから1年、大手損害保険各社が、今年10月以降の自動車保険契約分(継続契約含む)からノンフリート等級別料率制度を改定した。ノンフリート等級というのは、大量に自動車を保有しない等級で、ごく一般ユーザーが対象だ。

基本的に自動車保険は、損保会社にとって赤字の部門であり、これを改善するために、やむなく今回の改訂を行なった。
内容は全体的な保険料水準を値上げするだけでなく、保険等級の運用見直しまで伴った大きな改定となる。

特に自動車事故を起こしたドライバーに対して自動車保険料を大幅に引き上げる。
その結果、事故を起こしても、保険で車を修理すると、懲罰的に保険料が上昇するので、保険を使わずに修理するケースが増えると思われる。

<制度改正の概要>

自動車保険の契約者には20段階の等級が割り当てられている。
毎月支払う保険料は、基本契約の内容や車種、契約者の条件、特約の内容などで変わるが、
事故リスクが等級で管理され、等級が高いほど保険料の割引率が高くなるという仕組みは各社共通している。
また、この等級は1年間無事故ならば1等級あがり、逆に事故を起こせば3等級下がって月々の保険料が高くなる。

今回の制度改定では、この「等級」を運用する仕組みが大きく変わる。
その中でも大きなポイントになるのが、“事故有係数”と呼ばれるペナルティーの新設だ。
従来の制度では、事故などで自動車保険を使った契約者は、これまで積み上げてきた等級が「3等級ダウン」して保険料が高くなった。
しかし新制度では、この3等級ダウンに加えて、事故後3年間は事故有係数という特別に割高な保険料体系が適用される

この事故有係数による値上げ率は、事故なし係数と比較して最大50%に達する。
また、この3年間の事故有係数の適用期間中に再び事故を起こして保険を使えば、
ペナルティー期間は最大6年間にまで延びてしまう。

その結果、自損事故を中心に軽微な損傷ならば保険を使わず、自腹を切ってクルマを修理した方がトータルでお得になる。
新制度では30〜40万円くらいまでの修理であれば3等級ダウンと事故有係数適用を避けるために自動車保険を使わない方が結果として安くつくだろう。
また、「等級据え置き事故の廃止」の決まった。これまで保険が使われていた飛び石によるフロントガラスの損傷なども、保険会社のペナルティーを避けるために自費修理をする人が増えそうだ。

修理で自腹を切るとなると、少しでも安く修理したいと考えるオーナーが増えるのは自明。
・・・となれば、その結果、考えられることは。
・中古・リビルト部品のさらなる普及
・中古・リビルト部品を使用し高く請求するのではなく、安く請求するようになる。
・新品イミテーション部品市場の拡大
・そして、考えられないが純正部品値下げ

さて、どうなるか?


スズキの低燃費化技術に注目

2012年08月10日 10時22分00秒 | エコ

スズキは、燃料消費を抑制し燃費向上に貢献する技術として、
減速時エネルギー回生機構ENE-CHARGE(エネチャージ)
蓄冷材を通した冷風を室内に送るECO-COOL(エコクール)を開発した。

9月に発売予定の「新型ワゴンR」に搭載する。

ENE-CHARGE
・既存のアイドリングストップ車専用の鉛バッテリーに加え、リチウムイオンバッテリーと高効率・高出カのオルタネーターを併用したスズキ独自の減速エネルギー回生機構。
・リチウムイオンバッテリーに蓄えた電気をメーターやストップランプ、燃料噴射装置など、車の走行に必要な電装品の電力に利用する。

・アイドリングストップ車専用の鉛バッテリーに加え、効率よく充電できるリチウムイオンバッテリーを搭載し、より多くの電気を蓄えることができる。
・従来の約2倍の発電能力を持つ高出カのオルタネーターを採用し、必要な電力の大部分を減速時に集中して発電し、2つのバッテリーに効率良く充電する。
・通常走行時は、2つのバッテリーに充電した電力を電装品に供給するため、オルタネーターの常時発電が最小限に抑えられ、発電させるためのエンジン負担を軽減し燃料消費量を抑制するとともに、加速も軽やかになる。

・リチウムイオンバッテリーは、助手席の下に収納できる軽量・コンパクトな設計とした。

 ECO-COOL
・エアコン空調ユニットの中に蓄冷材を採用し、アイドリングストップ中の車室内に蓄冷材を通した冷風を送る機構である。この冷風により室温の上昇を抑え快適性を保ちながら、エンジン再始動時間を遅らせることで燃料消費抑制に貢献する。
・アイドリングストップ中、エアコンが停止し送風状態になった時、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の温度上昇を抑制する機構を軽自動車で初めて搭載。
・エアコン空調ユニット内のエバポレーター(冷媒の気化によって冷却を行うエアコン部品)の中に短時間で凍る蓄冷材を採用。

・アイドリングストップ時の快適性を保つとともに、エンジン再始動時間を遅らせ、アイドリングストップ時間を長くすることで燃料消費を抑える。


水素供給・利用技術研究組合 2015年に向けて

2012年08月08日 07時36分45秒 | 燃料電池車

水素供給・利用技術研究組合は、水素供給事業と燃料電池自動車普及を目指す民間企業により2009年に設立された。
2015年での一般ユーザへの普及開始を目指し、 実証試験での水素供給を通じて水素供給ビジネス成立のための課題を検証し、解決することを目的に設立された技術研究組合である。

ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車に関する記事は多いが、燃料電池自動車については、殆ど情報が出てこない。
しかし、すでに今年は2012年。2015年は3年後である。

燃料電池自動車の情報が外部に出てこないのは、この技術がガソリン・軽油などを燃やす従来のエンジン技術の延長にあるからだ。
電気自動車の場合は自動車メーカーでなくても参入が可能だが、燃料電池自動車は自動車メーカーが競合他社の動向を推察しながら独自で研究・開発を推進している。そのため開発状況は極秘扱いなのである。

なお、水素供給・利用技術研究組合の加入企業は以下の通り。
こちらは共通事項である燃料電池車の発売後の水素ステーションの運用について研究している。

JX日鉱日石エネルギー株式会社
出光興産株式会社
岩谷産業株式会社
大阪ガス株式会社
川崎重工業株式会社
コスモ石油株式会社
西部ガス株式会社
昭和シェル石油株式会社
大陽日酸株式会社
東京ガス株式会社
東邦ガス株式会社
トヨタ自動車株式会社
日産自動車株式会社
日本エア・リキード株式会社
株式会社本田技術研究所
三菱化工機株式会社
一般財団法人エンジニアリング協会
一般財団法人石油エネルギー技術センター

産業技術に関する試験研究を共同して行うことを目的に、技術研究組合法(昭和36年5月6日法律第81号)に基づいて設立された法人。

平成21~22年度は、経済産業省による公募事業「平成21年度水素利用社会システム構築実証事業」を受託し、都心、成田空港周辺、羽田空港周辺に3か所の水素ステーションを配置し、燃料電池自動車・バスの定期運行を行う「水素ハイウェイプロジェクト」、北九州市に水素のパイプラインを敷設し、定置用燃料電池の面的実証を行う「水素タウンプロジェクト」の2つの実証事業を推進している。

 

 

 


日産セレナにハイブリッド車追加

2012年08月02日 10時36分05秒 | ハイブリッド車

日産自動車は「セレナ」にハイブリッド車を設定し、8月1日より発売した。

今回、「セレナ」に採用したS-HYBRID(スマートシンプルハイブリッド)は、
従来から搭載しているECOモーターの
エネルギー回生発電量と出力を高めて補助原動機化し、
蓄電容量を高めるためのサブバッテリーをエンジンルームに追加することで実現した
シンプルでコンパクトなハイブリッドシステム。
ハイブリッドシステムのすべてをエンジンルームに収めることで、
「セレナ」の特長であるクラス最大の室内空間や使い勝手の良いシートアレンジはそのままに
低燃費(15.2km/L:JC08モード燃費/2WD)を実現し、
自動車取得税と自動車重量税がクラスで唯一免税となる。

全国希望小売価格(消費税込み)238万円より


低年式車に課税?の前にやることがある

2012年08月01日 09時22分47秒 | 自動車整備

今日の日刊自動車新聞によると

国土交通省は、2013年度税制改正で自動車取得税・重量税の廃止に加え、電気自動車(EV)など次世代車に対する優遇措置の拡充を優先的に求める。
また、自動車取得税の廃止に伴う「見合い財源」として、低年式車に対する自動車税の割増税率や対象を拡大することも検討。
今後、関係業界からの意見聴取を経て、経済産業省や環境省などと正式な要望事項を月末までに詰める。

・・・とある。

自動車取得税を廃止するが、低年式車のユーザーには割増課税するという案。
これは酷いのではないか?

高価なハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車を購入する富裕層には補助金を付けて購入を支援。
一方、新車を買い換える余裕の無いが、自動車は生活に必要なので手放せない貧困・生活困窮層には重税を課す。
これを悪政と言わずして、何を悪政と言うのか?

何故、新車に買い換えないのかとアンケート調査すれば、
「まだ乗れるから」
「気に入った新車が無い」
「今の車を気に入ってるから}
等の意見がでる。

こういう人も居ない訳ではないが、大部分は「新車を買い換える余裕が無い」というのが本音である。
夫婦で月に14万円程度の年金しか入らない老夫婦が、どうやってプリウスのプラグインハイブリッドを買えるのか。

財務省から車体課税の年間税収約9千億円分(取得税約2千億円、重量税約7千億円)に相当する「見合い財源」の提示を求められる。
これは新車を買えない貧乏人への重税で解決・・・・と結論を出して、良いわけは無かろう。 

そしてもう1つの問題がある。
自動車整備の位置付けを無視している。

新車であってもメンテナンスを怠れば、その環境性能はダウンする。
古い車であっても適切に整備すれば、高い環境性能を維持する。
「古い車は環境に悪いから重税を掛けてやる」と言えるのか?

そもそも日本の車検時(継続検査)の排ガス検査は、相変わらずCOとHCだけである。
欧米ではCO、HC、CO2、O2、NOXの4ガス検査(O2、NOXの選択は国により差がある)が、かなり前から定着している。

さらに検査基準(ガソリン車)も、日本は全車種共通で2ランクしかないが、
ドイツでは、車種ごとに基準が異なり、それも各車種の工場出荷の状態から少し悪くなればアウトである。
環境への影響で重税を掛けるなら、ここまでやらないと説得力が無かろう。
当然、欧米で車検時に行なっているOBD検査を早く導入する必要がある。
ドイツではOBD検査を導入した時にアイドリング状態の排ガス検査は不要とした。

低年式車への課税の前に、やるべき事がある。


2012年1-6月の生産・輸出

2012年07月31日 10時12分55秒 | 自動車生産

日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は30日、2012年上期(1~6月)の国内生産・輸出実績を発表した。

<国内生産>
524万8004台 前年同期比53・0%増  
上期で500万台を突破したのは4年ぶりで、通年1000万台の大台に乗るのはほぼ確実。
乗用車から小型トラック、軽トラックまでオールラウンドで伸びている。

<輸出>
248万7975台 同35・2%増
リーマンショック(2009年秋)の影響で2010年、2011年とマイナスだが、2012年は2年ぶりに軽自動車を除くすべての車種でプラスとなった。ただし、地域別ではしEU(欧州連合)のみが同8・9%減と2年連続で落ち込んだ。


エコカー補助金の消化情況と財布の紐

2012年07月30日 09時13分54秒 | 新車販売

景況判断は数字より皮膚感覚に寄るものが多く、地域により差がある。
さしあたり今年のゴールデン・ウィークまでは、皆さん、黙っていたが「こんなことあるのかな」と思う程、景気が良かった。
しかし、GWが過ぎると・・・・あれ、おかしいな?と言う感じなんだが・・・そちらはどうかね?と地方から電話があった。

GW以降となると、考えられるのは消費税率アップを決める法案がが衆議院を通ったということだ。
あの法案は附則が着いていて、来年の秋に、その時の政権が景気を判断して実行するか延期するかを決めることになっているが、テレビや新聞は、その部分を伝えてない。そのため、消費者の財布の紐が急に固くなったのか?
新車販売ではエコカー補助金の申請ベースが7月から鈍化しているらしい。そのため8月末で打ち止めが予想されていたが、9月上旬にずれ込む・・かも知れない。
エコカー補助金・・打ち止め間近・・・の駆け込み需要も弱い。気分が暗いのだ。
これでは消費税率アップの駆け込み需要も期待できそうも無い。