全くをもって迂闊極まりないことに知らなかったが,本日国会においてアイヌ民族を先住民族として認め,関連する政策を一層推進するよう政府に求める決議が衆参両院本会議に於いて全会一致で可決。
官房長官は,アイヌが先住民族であることを正式に表明した。
我が国は,決して単一民族ではない。
勿論中国のように,民族単位の政権交代が古来行われてきた訳ではないので,○△系といった分化はされないが,古来渡来人・帰化人系の人々の子孫と思われる姓も少なからず存在するので,単純に大和民族の国,という考え方・言い方は避けねばなるまい。
我が国が,一応統一国家としての体裁を持ったのが4~5世紀頃の大和朝廷であったとされている。
奈良盆地に散在した豪族たちの集合体とも言うべきもので,古来関西を中心とした政権や文化が営まれてきた。
例えば,古代に於いて畿内以外は異国であり,そこに棲むのは異民族に思われた。
「古事記」には大国主命や素戔嗚尊,日本武尊による冒険譚が書かれており,八岐大蛇をはじめとする敵は,すべてその地方の豪族たちであったことだろう。
熊襲にせよ隼人にせよ出雲族にせよ安曇族にせよ,大和から見れば,皆異民族だったことだろう。
律令時代以降,政府は度々東北地方を侵した。
蝦夷征伐,と書くと,如何にも蝦夷が悪いことをしたので正義の政府軍が鎮定に向かったようにとられがちだが,それは飽くまでも政府側だけの視点である。
平和に暮らしていた(と思われる)辺境(これ自体が差別だが)の民を一方的な範疇に取り込もうとした-つまり,辺境の住民にとっては迷惑極まりないことだったのである。
だから,そうした意味でも,坂上田村麻呂も源頼義・義家父子も,勿論源頼朝も,私たち蝦夷の先祖にとっては迷惑極まりない闖入者だった。
征夷大将軍の征夷とは,夷を征する-つまり東方の野蛮人を退治するという意味である。極めて差別的な言葉と言っても良かろう。
蝦夷地と呼ばれた北海道に倭人が住んだのは中世以降だろうか・・・。
幕藩体制の元,松前藩はアイヌの土地を簒奪する。
つまり,米国政府がかつてインディアンに対してやったことと同種のことを行ったのである。
大陸や朝鮮半島を占領した時代よりはるか以前に,同様の事実があるのだ。
そして,今回の決議は,先住民族の独自の文化体系を尊重し,民族の尊厳を改めて認識する意味でも価値のあるものと思う(今更,とも思うが・・・)。
ただ,問題点もあることを認識せねばなるまい。
先住民族の権利を認めるということは,土地の所有に混乱が生じる怖れがある。
そのあたりを,どうクリアしていくかが問題となろう。
現在の歴史教科書には,松前藩に対して一斉に蜂起したアイヌの酋長シャクシャインのことが記されている。
北海道民ならずとも,こうした史実を重く受け止めるべきであろう。
尤も,戦前・戦中の七生報国・滅私奉公の理念への反動からか,南北朝時代の記述が極めて薄っぺらなのも気になるが・・・。
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