koshiのお部屋2

万年三歳児koshiの駄文のコーナーです。

大河視聴断念に際して・・・

2012年05月19日 22時28分34秒 | TV&エンターティメント

いつもお読みくださる方々にはお気づきと思いますが,「平清盛」の視聴を断念して,そして番組の感想を書かなくなって一ヶ月以上経ちます。
昨年の「江」を断念したのが夏場,4年前の「篤姫」も同時期・・・と記憶しているので,それよりも随分早く見切りを付けてしまいました。
近年の大河視聴は,「風林火山」,「天地人」,「龍馬伝」の三作は,作品のできばえはともかくとして,何とか最後まで見たのですが(後2つはかなりしんどかった),10月に止めて,数回分HDDで眠っている「功名が辻」は日の目を見ることは無いでしょう・・・。


さて,では何故今年の大河は面白くなかったのでしょう・・・(毎回楽しんでおられる方々には申し訳ないのですが・・・)。
昨年のどたばた喜劇のような「江」に比べると,時代背景はよく描かれていると思います。制作側は,平安朝末期の雅やかな感じを醸し出したいとの意図だったそうですが,キャストを云々しなければ,そのあたりはよく頑張っていると思います。
加えて,鳥羽院-後白河帝と崇徳院といった朝廷と忠通と頼長といった摂関家の確執も丁寧に描かれていると思います。
役者達も三上博史や山本耕史といった力のある俳優(ベンジャミン伊東の白河院も)の演技が光ります。
特に「陽炎の辻」では主役だった山本が,暗黒面に陥ったようにダーク極まりない悪左府を演じるのは絶妙で,思わずにやりとさせられます。
にもかかわらず面白くないのは,やはり主役が魅力的でないから・・・ということでしょう。
薄汚い清盛が武芸では義朝に敵わず,やがてそれを凌駕していく・・・という設定はともかく,海賊に身を投じるかと思えば義清(のりきよ)とつるんでいるし,武芸を磨くわけでもなし,さらには弟との確執もあっさり切り抜け,何とはなしに頭領となってしまう・・・。
「天地人」のかねたんや「龍馬伝」の龍馬のように,最初からやたらポテンシャルが高く,何で人望があるのか分からないのも問題ですが,薄汚いけどさして無頼でもなく変な矛を振り回すだけの主人公に魅力が感じられません・・・。


これは飽くまでも私の推測でしかないのですが,清盛という人物は言わば良家のぼんぼんで,父祖の活躍によって栄達は約束されたものであり,父と共に瀬戸内海の海賊討伐をして(手際が良すぎるのでやらせがあったかもしれません-決して揶揄しているのではなく,そういう才覚の働く男だったのでしょう),さらに決定的なものとなる・・・という感じではなかったのでしょうか。
我々が一般に描く暴君としての清盛像は,鎌倉期の「平家物語」や「吾妻鏡」といったもの(つまり源氏寄りに)によって,形成されていったのではないでしょうか・・・。
ですから,清盛は良い意味での名家のぼんぼんらしく,大人の風格のある穏やかな人物であったのではないでしょうか。
決して冷酷非道な人物ではなく,頼朝や希義,全成・義円・義経といった義朝の遺児達の命を奪わなかったのですから,むしろ慈悲深い性格だったと思われます。
義朝の愛妾だった常磐御前を奪ったではないか・・・という批判もあるでしょうが,絶世の美女をいただきたいのは男たる者,誰もがそうでしょう(私だけだったりして・・・)。司馬遼太郎の「義経」冒頭にもありましたが,ライバルたる義朝の愛妾をいただいてこそ初めて,
「俺は勝ったわ」
と思ったことでしょうし・・・。


ですから,いっそのこと清盛をワイルドではなく茫洋とした感じに描いて,持ち前の先見性と要領の良さで出世していく・・・というふうに描けば良かったのでは・・・とも思ったりします。
でも,それではドラマにならんのでしょう・・・。
貧困の中から独力でのし上がっていく・・・という清盛像は,国民文学の第一人者とも言うべき吉川英治の「新平家物語」に負うことが大きいと思いますが(これは美麗な文体で綴られた名作だと思いますが,72年の同原作の大河は,平岩弓枝の脚本が今二つだったからか,個人的には??でした・・・),延久の荘園整理令によって寄進地系荘園を経済的基盤とする摂関家とそれに臣従する源家の凋落と,院に近侍し源家討伐(対馬守義親を討ったという清盛祖父正盛-このあたりも要領が良すぎて極めて怪しい・・・),瀬戸内海賊討伐によって進境著しい平氏・・・という時代(12世紀前半)だったと思われますので,ドラマ仕立てには相応しくなかったのかも知れません・・・。


清盛の優れた資質を示すエピソードは,私の知っているだけでも幾つかあります。
音戸ノ瀬戸や大輪田泊の築港や平治の合戦での京都市中の戦災被害を最低限にとどめた確かな戦略眼,そして瀬戸内海の舟運を握っての日宋貿易の推進等がそれですが,特に大輪田築港の際に人柱を許可せず,経文を埋めたという(経ヶ島)エピソードなど,因習や先例にとらわれず,人の命を第一義とした(それが人心収攬の手であったにせよ)点で評価されるべきだと思いますし,神戸の人々にとってヒーローたり得るとも思います・・・。


・・・ということで,簡単に書くつもりが,軽くワープロ2ページ・・・。
病気ですね・・・(汗)


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