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研女!第1話。

2016-12-10 | 研女!
(フィクション!)


私。
中2の夏。


同じクラスの女子。
担任の先生。
親。


うまくいかないな、と思うことが多かった。



このモヤモヤした気持ちを、どうにかしてやりてぇと思った。

よくわからないけど。
いろんな人を見返してやりたかった。



そこで私は。

モーニング娘。オーディションに応募した!


しかし。
待っても待ってもなかなか連絡が来ず。


これは。
例のあれじゃん!
オーディション落ちた、日本シネ。じゃん!



なんて思ってるところへ、書類審査通過のお知らせが来た。
嬉しいというよりか。
ふーん、て思った。

とにかく、実感ゼロだった。




嬉しかったのは、東京へ行けるということ。


生まれ育った千葉県松戸市からほぼ出たことのない私が、赤羽橋っていうところにある事務所で面接とパフォーマンス審査を受けることになったのだ。


これまでも東京くらい行こうと思えば行けたんだけど、きっかけがなかったのだ。



当日。
駅に到着。


周辺はSEIYUとかダイエーとかあって、六本木の近くっつったってウチの地元とそう変わらなかった。
びびって損した。


こんなことなら、渋谷とか原宿とかもジャンジャン行くしかないでしょ。

なーんてこと考えながら歩いてるけど、駅のすぐ隣にあるはずの事務所がなかなか見つからない。



不安になったので交番に訊いたら。
「それってもしかしたら赤羽橋じゃないっすか。ここ赤羽だよ」と言われた。

ややこしい。
駅に似た名前を付けるな、鉄道会社よ。




ちなみに私の叔父さんは以前、酒を飲みながら
「昔、氷室京介っていう人のライブを観に有明コロシアムまで行くことになったんだけど、間違って有明海のほうまで行ってしまったよ」
と言っていた。

本当かどうか怪しい話だけど。
話しながら顔、ニヤけてたし。




まあ、そんなこんなで。

慌ててJRで新宿まで行って、そこから都営地下鉄に乗り換えて、なんとか遅刻ギリギリで事務所に到着することができた。




事務所前には思った以上にたくさんの人が来ていた。
この中から一人選ばれるって大変だなと思った。


たいていの子は、親と一緒に来ていた。


私は一人だった。

親とは絶賛「気まずい」中だし。




オーディション用紙の保護者同意のサインも、同じクラスの「ゲロミズ」っていう渾名の子にかわりに書いてもらった。

ゲロミズって名前はひどいけど、顔は広瀬すずみたいに可愛い子だ。
私とは中1の時から同じクラスだ。


ゲロミズの由来は、本名が「みすず」で。
顔が可愛くてモテる雰囲気なのに、初めての遠足でひどくバス酔いして。

まー、この話はやっぱいいか。




面接と審査のことはほとんど覚えてない。
緊張で頭が真っ白になってしまった。



オーディションは。
同じく書類審査受かった子と5人1チームになって、歌とダンスの披露。
あと、面接官の質問に答える感じ。



本当は、目立つために面接室に側転しながら入ってやろうかしらと思ったんだけど、そんな空気じゃなかった。



私の隣にいた子は、歌でミスって泣いていた。


終わってから、その子にやたらと話しかけられた。

「あなた可愛いから絶対受かると思うよ」とか。
「私とあなたはたぶん最終の合宿審査へ行ける」とか。
「せっかくだから連絡先交換しない?」とか。


私は、キモ! うざ! って思って
「どうせ合宿で会えるし、その時にしよう。連絡先交換」
と言って逃げようとした。



そんな私の背中へ向かって、その子は
「あたし、キセキ。貴重な石と書いて、貴石! 絶対、また会おうね」
と、安っいドラマのように名前を告げ、去っていった。



私、この子苦手だ。
初対面で悟った。




(つづく)


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