(フィクション!)
モーニング娘。オーディションの結果。
連絡が。
まったく来ない!
自分でもすっかり忘れかけてた二ヶ月後、公式サイトでこんな発表があった。
『オーディションでの該当者はなし。新メンバーはハロプロ研修生から選抜』
なんだか、ほっとした。
もし合格なんてしてしまったら、生活がガラっと変わってしまうだろうし。
なにより、今回のことを親に説明するのが面倒くさいなと思っていた。
公式サイトでの発表から二日後、自宅に事務所から封筒が届いた。
あ、そうそう。
ウチでは郵便物の仕分けは私が担当なので、親を介さずともこういった手紙を受け取ることができたのだ。
そうじゃなければオーディション自体、受けていなかったであろう。
年賀状の時期以外は比較的楽な仕事である。
事務所からの手紙に書いてあった内容は、公式サイトの発表とほぼ一緒だった。
違ったのは、最後の1行。
「なお、今回のオーディションにご参加いただいた方の中から弊社よりご連絡を差し上げる場合がございます」
いや待って。
電話されるのは困る。
連絡先、親のスマホ番号書いちゃったし。
連絡ってなんのため?
そういえば、落選者からハロプロ研修生に推薦されることもあるって2次オーディションの前に説明されたっけ?
ハロプロ研修生か。
なんだか大変そう。
そもそも人間関係のゴタゴタから逃げたくてオーデイション受けたのに、わざわざ今から女子の集団に入るのってしんどいでしょ。
断るにしても。
オーディションを受けたことを親に知られるのは嫌だ。
私は、しばらく母親のスマホを預かる手を考えることにした。
ウチの母親は天然で世間知らずな専業主婦である。
私でも知恵を絞ればどうにかなるはずだ。
たぶん。
「ねえお母さん」
「あら、そっちから話しかけてくるなんて珍しい」
「なんで財布を取り出してるの?」
「どうせお金をせびりに来たんでしょ、フン」
ここで怒りを出してしまっては一巻の終わりである。
「違うの」
「じゃあなに」
「しばらくスマホ貸してくれないかな」
「自分の使えばいいでしょ」
「私のは壊れちゃって」
ここで母親の、修理に無駄な出費がかかるという愚痴から始まり、学校の成績へのダメ出し、普段の私の態度など説教タイムが小一時間続いた。
それでも。
がまん、がまん。
「それで、スマホのことなんだけど」
「だめよ。お母さんだって大事な用事があるんだから」
彼女の言うスマホを使う大事な用事とは、パズルゲームのアプリのことである。
がまん、がまん。
「お母さんが使いたい時には返すから」
「なんでそんなに使いたいの。どうせ友達とくだらない話するためでしょ。今日のオナラは臭かった、とかさ」
はい。発表します。
ウチの母親、チョイ下品オバチャンでした。
がまん、がまん。
いや、もうがまんも限界。
これは、最終手段を使うしかない。
この手だけは使いたくなかったけど、下品オバチャン、アンタのせいだよ。
「実は、黒鷲高校から電話がくるかもしれなくって」
「黒鷲ってあの、偏差値高いとこ?」
「そう。あの偏差値の高いとこ」
「偏差値低いアンタと、偏差値高い黒鷲高校になんの関係があるの」
うわぁぁぁぁ。
いちいち腹立つわー。
「今、黒鷲高校が秘密のキャンペーンをやってて」
「はぁ?」
「全国の中2にランダムに電話をかけて、3コール以内に出られれば来年の入試をパスできるんですって」
母親の表情が固まった。
さすがにこんなわかりやすい嘘、ばれるか。
有名進学校が地方でやってるお昼の情報番組みたいなサービスして、なんのメリットがあるというのだ。
「マジ?」
「う、うん。マジ。間違ってお母さんの番号で登録しちゃったんだよね」
いとも簡単にスマホを貸してくれた。
さすが天然で世間知らずな専業主婦であるウチの母親、ちょろいもんだ。
(つづく)
モーニング娘。オーディションの結果。
連絡が。
まったく来ない!
自分でもすっかり忘れかけてた二ヶ月後、公式サイトでこんな発表があった。
『オーディションでの該当者はなし。新メンバーはハロプロ研修生から選抜』
なんだか、ほっとした。
もし合格なんてしてしまったら、生活がガラっと変わってしまうだろうし。
なにより、今回のことを親に説明するのが面倒くさいなと思っていた。
公式サイトでの発表から二日後、自宅に事務所から封筒が届いた。
あ、そうそう。
ウチでは郵便物の仕分けは私が担当なので、親を介さずともこういった手紙を受け取ることができたのだ。
そうじゃなければオーディション自体、受けていなかったであろう。
年賀状の時期以外は比較的楽な仕事である。
事務所からの手紙に書いてあった内容は、公式サイトの発表とほぼ一緒だった。
違ったのは、最後の1行。
「なお、今回のオーディションにご参加いただいた方の中から弊社よりご連絡を差し上げる場合がございます」
いや待って。
電話されるのは困る。
連絡先、親のスマホ番号書いちゃったし。
連絡ってなんのため?
そういえば、落選者からハロプロ研修生に推薦されることもあるって2次オーディションの前に説明されたっけ?
ハロプロ研修生か。
なんだか大変そう。
そもそも人間関係のゴタゴタから逃げたくてオーデイション受けたのに、わざわざ今から女子の集団に入るのってしんどいでしょ。
断るにしても。
オーディションを受けたことを親に知られるのは嫌だ。
私は、しばらく母親のスマホを預かる手を考えることにした。
ウチの母親は天然で世間知らずな専業主婦である。
私でも知恵を絞ればどうにかなるはずだ。
たぶん。
「ねえお母さん」
「あら、そっちから話しかけてくるなんて珍しい」
「なんで財布を取り出してるの?」
「どうせお金をせびりに来たんでしょ、フン」
ここで怒りを出してしまっては一巻の終わりである。
「違うの」
「じゃあなに」
「しばらくスマホ貸してくれないかな」
「自分の使えばいいでしょ」
「私のは壊れちゃって」
ここで母親の、修理に無駄な出費がかかるという愚痴から始まり、学校の成績へのダメ出し、普段の私の態度など説教タイムが小一時間続いた。
それでも。
がまん、がまん。
「それで、スマホのことなんだけど」
「だめよ。お母さんだって大事な用事があるんだから」
彼女の言うスマホを使う大事な用事とは、パズルゲームのアプリのことである。
がまん、がまん。
「お母さんが使いたい時には返すから」
「なんでそんなに使いたいの。どうせ友達とくだらない話するためでしょ。今日のオナラは臭かった、とかさ」
はい。発表します。
ウチの母親、チョイ下品オバチャンでした。
がまん、がまん。
いや、もうがまんも限界。
これは、最終手段を使うしかない。
この手だけは使いたくなかったけど、下品オバチャン、アンタのせいだよ。
「実は、黒鷲高校から電話がくるかもしれなくって」
「黒鷲ってあの、偏差値高いとこ?」
「そう。あの偏差値の高いとこ」
「偏差値低いアンタと、偏差値高い黒鷲高校になんの関係があるの」
うわぁぁぁぁ。
いちいち腹立つわー。
「今、黒鷲高校が秘密のキャンペーンをやってて」
「はぁ?」
「全国の中2にランダムに電話をかけて、3コール以内に出られれば来年の入試をパスできるんですって」
母親の表情が固まった。
さすがにこんなわかりやすい嘘、ばれるか。
有名進学校が地方でやってるお昼の情報番組みたいなサービスして、なんのメリットがあるというのだ。
「マジ?」
「う、うん。マジ。間違ってお母さんの番号で登録しちゃったんだよね」
いとも簡単にスマホを貸してくれた。
さすが天然で世間知らずな専業主婦であるウチの母親、ちょろいもんだ。
(つづく)