歩かない旅人

牛乳を毎日飲む人よりも、牛乳を毎日配達している人の方が健康である。

 半可通の世界は興味深い。

2012-07-21 13:14:00 | 産経新聞を読んで
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 昨日の新聞一面の左側のスペースは様々な業界からのエッセイというのでしょうか、あるいはコラムじみたものもありますが、千住真理子さんの、これはエッセイというのでしょうかある楽器の紹介文でした。名前はよく聞きますがこの楽器について知っている事といったら、やたらに値段が高いということぐらいでした。
 面白い話しだなと読み捨てるにはもったいない気がして、今日にとって置きました。それは私にとってあまり縁のない世界の話ですが嫌いな世界ではありません。この楽器にとってはクラシック音楽が全てでしょうか。楽器の女王といわれているヴァイオリンの話です。千住真理子さん自身2歳ちょっとでヴァイオリンを習い始めたといいますから、芸の世界は子供の頃から始めないと如何にもならないのでしょう。
 先ほどやたら高い楽器、それもヴァイオリンの話ですが、高いヴァイオリンといえば、「ストラディヴァリウス」と天下に響いています、一流の交響楽団には第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリンの集団が三十人近くいますが、その中にもこのストラディヴァリウスを持っている人達もいるのでしょうか。千住さんは「ストラド」とこの世界で呼ぶ言い方をしていますが、ストラド以外のヴァイオリンもあるのでしょうが、私は知りません。
 18世紀ごろに生まれたこの楽器の話題は、その高額さにだけ集中しています。かって2011年6月21日日本音楽財団が手持ちの、ストラディバリウス、1721年作レディ・ブラントを英国でオークションに掛け、12億7420万円の価格がついたそうです、私はこれをウイクペディアで調べてその価格の高さに驚きました。
 ヴァイオリンは道具です。メンテナンスだけでも大変なことです。商売道具としてはこんなに高い道具を使って元が取れるのかと心配しますが、多分商売抜きの趣味の世界、あるいわ投機の目的かもしれません。余程の金持ちでなければ買えないし、ウイクペディアで調べた限りでは日本でもこのストラドを持っている人は数えるほどしかいません。
 千住真理子さんが、手にすることができた、1716年製ストラディヴァリウス、「デュランティ」は、幻の名器として世界に知られているといいます。ストラディヴァリが製作し、すぐにローマ教皇に献上され、その後フランスのデュランティ家に200年間所蔵され、次いでスイスの富豪の手に渡ったが、その後80年後の、2002年にその富豪が演奏家のみを対象に売り出した為、千住家が数億円で購入したとあります。
 千住家とウイクペディアにでていますが兄二人と父母家族ぐるみで金策に駆け回ったと書いてあります。数億とはっきりした金額は出ていませんが、千住家とは大変なものです。真理子さんにとっては商売道具ですが、それ以上に好奇心旺盛な向こう見ずさを覚えます、何ともいえない粋な気風といいますか、爽やかさを感じてしまいます。
 先ほど幻の名器と書きましたが。300年間誰にも弾かれずに眠っていたという驚きもあります。そんな楽器がちゃんと弾けるのでしょうか。その経緯が書かれています。
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 ・・・《 音に 命 あり 》・・・
  【 ストラドという「魂」 】
        バイオリニスト   千住 真理子
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 ストラディバリウス(バイオリン)との運命的な出会いから、この夏で10年になる。いまだ夢のようだ。「起こるはずがないこと」が人生、起こる。一寸前まで考えていなかったようなハプニング、想像の限界を超えた事柄は突然起こるのだ。
 
 ストラディバリウスという名器をわれわれは、「ストラド」と呼び、幼い頃からの憧れの楽器だった。その楽器を手にしたものは、「ある運命」に支配されるといわれたり、ストラドは強い意志を持っていて人間の思い通りにはならない、とも言われてきた。だから弾き手が望んでも望まなくても、お金があってもなくても、ストラドのほうから自ら弾き手を選んでやってくるのだ、と。
 
 そんな楽器を手にすることなど一生あり得ないと長い間思っていた。私がストラドに選ばれるはずがないからである。しかし、ある日突然、その話は舞い込んできた。考える余地もないまま事態は引力の如く動いた。気がついたとき私はストラドが納まっているバイオリンケースの前に立っていた。
 高鳴る鼓動を体全体で感じながらケースを開けた私は、その物体が放つ威圧感ともいえる強い、「気」に圧倒された。
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 手に取り、弓の毛が玄に触れた瞬間、私の知りえない世界が始まった。全てが想像の限界を超え、「地球外生物と出会ってしまったような驚き」、としか表現できない。不可思議な物体が今確かに目の前にある、という恐怖にも似た驚愕。とてつもないエネルギーを放ちながら確実に、ひそやかに、息づく物体。心の奥底を見透かされているような恐ろしさから、真摯にストライドに向き合う日々が始まった。
 夜中に弾きつづけるときには、時折聴いたことのない、「声」のような、「音」がうごめきながら発せられ、ゾクッとする。アントニオ・ストラディバリはイタリアのクレモナに生まれた天才楽器製作者。私のストラドはデュランティという称号がついている、1716年製のものだ。
 製作されてから約300年間、プロのバイオリン奏者の手に渡った形跡がない。一人目の所有者は当時のローマ法王、次なる所有者であるデュランティ家に約200年間、隠されるように眠っていた為、この楽器は後にデュランティと呼ばれるようになった。
 ほとんど真新しい為にコントロールが難しく、手にした当初は数年間、何時間引もひたすら弾き続けなければ音が開かなかった。しかし開き始めた音色は日々変化し、その都度私が今までかって聴いたことのない不思議な、「声」を所々で発する。拝みたくなる想いである。
 ストラドの秘密を解明しようと多くの研究家が調べたがいまだに完全なる解明はできていないという。材質、ニスの原料、制作方法、テクニック・・・あらゆる角度でストラドは研究され分析されている。しかし、それがどれも次なるストラド誕生に繋がらないのは、科学では解明されない大事な要素があるからだろうか。
 楽器製作者はその思いを楽器に込める。製作者の魂は時間も空間も越え、強いエネルギーがそこに残る。ストラディバリウスという名器は芸術作品として強烈なメッセージが込められている、「生々しい楽器」なのだと、手にして10年目の今、確信する。
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 どこの世界でもものづくりにかけた魂のような職人というものはあるとしみじみ思いました。千住さんもよくその作品とも言える楽器に、敬意を払って、数年に渡って苦闘したと書かれていますが、彼女も同じ職人魂を持っていると改めて感心しました。それだけ「生々しいまだ生きている楽器」だったのだと分かりました。
 私がまず思うのが、あのヨーロッパに生まれた、あの楽器の種類の多さと、音の組み合わせに対するセンスの独特さに感心します。あのバイオリンの性能の素晴らしさは楽器の女王と称されていますが、誰も反論できないでしょう。そのバイオリンの頂点にあるストラドは自らの意思で弾き手を選んでいて、千住さんが選ばれたという神秘的な世界はまだこの世に存在するのでしょう。
 ストラドを越えるバイオリンが生まれないというのも分かる気がします。モーツアルト、シューベルト、ベートーベンらあの頃のクラシック音楽の作品を超える作品が、いまだに表れているとは思えません。素晴らしい作品が生まれる時期が人間の世界にもあるのでしょう。