歩かない旅人

牛乳を毎日飲む人よりも、牛乳を毎日配達している人の方が健康である。

この映像ほど今年をあらわしたものは無い

2010-12-31 11:48:25 | 国際・政治

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 この映像を何回も何回も見た事でしょう。海上保安庁の巡視艇です。海上自衛隊ではありません。どの程度の武器を持っているか解りませんが、殆ど丸腰と言っていいでしょう。ぶつかって来るチャイナの工作船とも見られる船に向かって、海上保安員が、敢然と真正面から写真撮影していて、それを後ろからきちんと記録しているのです。

 何と言う勇気ある行動でしょう。日本の誇りです。全国くまなく見せるべき映像だと、だれしも日本人だったら思う筈です。チャイナにとってはこの上なく恥ずかしい行為です。丸腰の抵抗しないと解って居ての行動ですから、人間の厭らしさがこれ以上表わされているものはありません。見せたくない代物です。

 恥ずべきはチャイナの意向をくんでこの映像を隠そうとした仙谷官房長官をはじめ日本の政府でした。それが今年を象徴する出来事だと云うのです。日本が日本の政府によって、国益と誇りと、根性をすべて失うような、許されざる行為でした。今年の終わりに当たって、肝に銘じて忘れてはならない映像です。

 この恥ずべき行為によって誰が損害を被ったでしょうか、ハッキリしていることは、チャイナの無法が世界に知れ渡り、日本のだらしない弱腰外交政策が白日のもとに晒されました。もう二度と彼らに政治を期待する人々は減少するでしょう。

 そしてこの映像を職を賭して発表した海上保安員の心情が痛いほど分かります。民族の正義を見を賭して実践しました。誰が何と言おうと彼は日本を救った英雄です、『英雄』です。

 今年の最もショッキングで、おぞましく、そして日本魂の表わされた消されたくない映像です。未だ続きの映像がある筈です。逮捕した場面の映像、これ等を何処の国にも遠慮なく発表出来る、キチンと腰の据わった政府が来年現れることを願おうではありませんか。


 平成23年の始まりがもうすぐだ。

2010-12-31 09:30:16 | 日記・エッセイ・コラム
 産経新聞恒例の今年の国内、国外の10大ニュースが発表されましたが、両方ともこのアジアでの事件がトップでした。世界のトップは延坪島砲撃事件でした。新聞的にはそうなるのでしょう。
 第二位も北朝鮮の正恩氏のデビューだそうです。訳の分からない、あの産経でさ得このありさまです。ゴロツキ国家のことなど、如何でも好いと思うのですが、ニュースとしては、メディアにとって格好の興味の対象なのでしょうか、懲りずに追いかけて大袈裟に取り上げます。そこにはお家騒動のような古風な、歌舞伎の世界の、跡取り騒動です。
 日本は何と言っても尖閣沖チャイナ漁船の不当な日本海保巡視船への体当たり事件です、これを巡って、日本の民主党の正体がみんなの前に晒されました。売国的政権だと云うことが明らかになった、しかもチャイナが日本を虎視眈々と狙っているのが、あからさまになりました。第二位は参院選民主党大敗、私としては、大敗というのは言い過ぎで、本当はもっと立ち直れない位の負け方をするべきでしたが、まだまだ日本は甘い所があります。
 第三位は鳩山一郎首相から菅首相に代わったと云うのが選ばれました。鳩山由紀夫氏という本当におかしな人が日本の首相を務めたと云う事はまさに奇跡です。この人のおかしさに、誰も気が付く人が居なかったなんて、このメディアが発達した現在に存在したことさえ信じられません。
 その他はいいニュースも悪いニュースもありましたが来年はどんな年になるのでしょう、楽しみにしたらいいのか、がっかりするのか今は解りません、いつも一寸先は闇なのですから。
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 今年も今日で終わります。今年は本当に日本にとっての厄年と言って言い年でした。日本自身とんでもない連中が政権を握り、危なっかしい、子供っぽい政治ごっこを繰り広げ、国民と日本の尊厳を思いっきり貶めてくれました。もういい加減にして貰いたいのですが、来年に持ち越しです。

雑誌『正論』新連載に期待する・・・2

2010-12-30 14:19:00 | 本と雑誌
 昨日の続きを書きます。読めば読むほど今年の民主党政権は、日本に過ってないほどの情けない、弱腰の社会主義者の普段威勢がいいが、いざとなると頼りない芯のない、野党慣れした与党としての責任感が取れなくて、オロオロした、素人集団だと分からせてくれた、失われた一年でした。
 革新を標榜する政党の限界を世に知らしめた一年とも言えます。選挙は商売と同じ宣伝上手が、勝つようになっています。有権者はその甘言に、騙されないように。本来は自分たちのことですからもっと吟味をしなくてはならないのですが、メディアを巻き込んでお祭り騒ぎで人気投票みたいな、おだてられていい気分で投票します。
 とにかく昨日の続きを書きます。NHKの悪評高い「クローズアップ現代」の国谷裕子氏ほど評判の悪いキャスターはいません。彼女は悪くない、悪いのは製作者及び脚本家で、彼女はただ読んでいるだけだと言う人がいますが、到底見ているとそうでもなさそうです。
 結構確信犯的、自信を持って、誇らしげに語っています、彼女が温家宝にインタビュウをした記事を写してどんなものか書き写しながら探りたいと思います。
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「NHK殿 一筆啓誅」・・・・2
皇学館大学非常勤講師 本間一誠
★国谷、「三回目の今回の旅はどのような位置づけか。日中関係に何をもたらしたいと考えるか」。
◆温、「両国間には戦略的互恵関係が確立している。現在、両国間には切っても切れない経済関係がある。今後は文化的・人的交流を深めることが友好の基礎となる」。
★国谷、「2006年に合意した戦略的互恵関係にはこれまでに目立った成果は無い。東シナ海のガス田開発事業では、交渉開始について両国が合意している。」
◆温、「両国はこれまでの基本合意に基づいて、条役締結のための交渉開始に合意した。一歩前進だ。東シナ海の問題を解決するための原則は、対立点は脇に置いて共同開発を
進めることだ。この方針を堅持することが両国民の利益に最も合致する。そのためにはお互いが理解し合い、共通認識をを持ち、共同開発に向けたプロセスを徐々に推進していく必要がある。今回の合意によって、今後協力が一歩前進し、東シナ海を平和、友好、協力の海にすることが出来ると確信している。」
★国谷、「北東アジア全体の平和と安定が問われる事態が起きているが、中国の軍事力の増強、そして海軍力の非常な強化に日本国内では懸念が強まっているが。」
◆温、「中国の軍事力の発展には透明性がある。中国は近代史において多くの列強に侵略された。私たちは平和と独立が容易でないことが良く分かっている。中国は他国の領土を占領したことはない。我々は軍備を発展させる唯一の目的は防衛、自衛のためだ。この点からいえば中国はいかなる国に対しても脅威にはならない。今回、日本でのスピーチで何度も強調したが中国はこれからも平和な発展の道を堅持して行く。いかなる国に対しても永遠に脅威とはならない。中国が他国を支配し、派遣を取ることは永遠にない。」
★国谷、「政府間の関係はここ数年非常に改善しているが、課題は両国の若い世代間で相互理解の隔たりを改善していけると考えるか」
◆温、「歴史と現実の問題をいかに正しく認識するかが大切だ。我々が歴史を鑑として未来に目を向けようと強調しているのは、決して恨みを持ち続けたいからではない。現に戦後、日本の憲法には平和の道を歩まねばならない言うことが定められている。その通りに戦後、平和発展の道を歩んできたことが国民に利益をもたらした。日本経済は急速に発展を遂げ、生活レベルは大いに高まった。中国は改革開放の三十年間経済と社会で大きな変化が起きた。今中国は平和的な発展、調和ある発展、持続可能な発展を目指している。両国民が目前の課題を解決するには相互の理解、信頼協力が必要だ。」
★国谷、「韓国哨戒艦沈没事件で、韓国と北朝鮮に距離をとっている真意はどこにあるのか。」
◆温、「中国は正義を重んじる国だ。この問題に対処する上で我々になんの打算もない。中国の立場は第一に一貫して半島の平和と安定を主張し維持している。第二に最も重要な意義を持つ六カ国協議を通じて朝鮮半島の非核化を達成すると云う立場を堅持している。北東アジアの安全と安定を維持する重要な問題につき、今後日本の協力を強化したい。」
★国谷、「李明博大統領はこの問題を国連安保理に提訴したいとの事だが、中国はこれを支持するのか。」
◆温、「今後、中国は事実関係に基づいて立場を決める。関係各国の状況を真剣に分析し各国の反応を見極めたい。国連安保理で中国がどう行動するかについて、引き続いて見守って欲しい。中国はこれまで何度も一方を庇う事はしないと表明してきた。我々はこれからも公正な立場を堅持する。
★国谷、「最近の温首相の発言からは、残りの任期で社会の公平、正義の実現に全力を尽くすとの姿勢が見える。やはり経済格差是正による社会の安定が最優先なのか。」
◆温、「経済発展を推し進めると同時に、より公平な社会の実現に力を注ぐ。公平な教育制度、農業税の廃止、収入不均衡是正のための処置など。公平な社会、正義ある社会こそ価値ある社会であり、国民の尊厳ある幸せな暮らしが出来る。」
★国谷、「中国社会の安定実現には政治改革も必要になる。また中国としてどういう民主化を進めて行こうかと考えるか。」
◆温、「目指しているのは経済、政治、社会の全面的な改革だ。政治改革が成功しなければ経済改革も成功しない。政治改革には①社会主義体制のもとでの民主政治の確立。②社会の公平と正義の実現、③人々の自由を拡大して全面的に発展させること。この三つの課題がある。
 概略上のような内容であった。国谷氏はこれで一体何を聞いたつもりなのか。何を国民に伝えたつもりなのか。「戦略的互恵関係」など一体どこに確立しているのか。日本側がこの言葉の詐術に嵌っているにすぎないことは、このインタビュー以前のガス田周辺で約十隻の海洋調査船が航行しており、尖閣事件の船長勾留を奇貨として一方的に共同開発交渉を中断した「白樺」には既に掘削用ドリルと見られる機材が搬入されたと報じている。
 現在も交渉は平行線のままで、海底の資源は一方的に抜き取られているのではないか。中国は尖閣事件を絶好の契機として、年来抱き続けた東シナ海から太平洋の獲得に乗り出したのである。
 明言はしていないが中国が尖閣のみならず沖縄も日本領ではないと考えていることを国谷氏も知らない訳ではないだろう。中国が陰に陽に北朝鮮を庇っていることは明らかなのに、勿論温家宝はそうは言はない。
 外交とはあらゆる権謀術数と駆け引きを酷使する戦争である。繰り返すが日本の公共放送NHKは自ら進んで利用されたのだ領海侵犯の上、違法操業をした船長を日本の海保が法に従って逮捕したとき、即時釈放を要求して九月二十一日、温家宝はニュウヨークで何と言ったか。「いかなる国に対しても永遠に脅威とはならない」「中国は正義を重んじる国だ」と、つい先日実に穏やかそうにNHKのカメラの前で日本の国民に語ったばかりの、
 温家宝氏が人質を取った上で「日本が独断専行するのであれば中国政府はさらなる行動をとる」と豹変。恫喝したではないか。これが油断も隙もない世界の現実なのである。
 中国のアキレス腱は人権問題と民族問題だ。残念ながら国谷氏からは、ノーベル平和賞受賞者劉暁波氏の扱いに象徴的に窺える恒常的な国内の思想及び宗教弾圧、チベット、内モンゴル、ウイグル等における民族浄化政策を直接糺す質問は無かった。
 仮に予想どうりの返答であったとしても、その返答からでさえ、何かは読み取れるだろうにと云うより、日本のメディアの存在価値を示せたであろうにその点を直撃しないで綺麗事ばかりを宣伝させて如何する。それともそこには踏み込まないと云う約束か黙契でもあるのか。
 中国中央電視台のオフィスはNHK本社の中にあると聞く。本当に大丈夫なのか?まさか庇を貸して母屋を取られるなどという事はあるまいが。
 一見報道の中立公平を装いつつ、実は放送法第一条に言う「放送による表現の自由」の確保という大切なものを、NHKは自ら捨てているとの感を禁じ得ない。それは明白に日本国民の利益に反する。受信料不払い問題の根本原因はそこにあることをNHKはしっかり自覚すべきだ。
 さて、十二月三日に再放送された「坂の上の雲」第一部において、本紙二十二年三月号誌上で筆者が指摘した、原作にはない日本軍人をことさら侵略者として登場させたり正岡子規の従軍場面が、またそのまま出てきた。
 再度言うが、あの場面は「脚色」などというものではない。司馬遼太郎の名前に隠れて行った極めて恣意的な反日の捏造である。第二部が始まったが、原作にはない妙なプロパカンダを混入させるだけは願い下げにしてほしい。
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 二日に渡って写しました。今テレビを中心に家庭にたやすく入って来る、大衆メディアには明らかに恣意的なある勢力の陰の力を感じます。特にNHKはしゃらっと、猫なで声で自分たちの意見が一番正しいのですよとばかりはいりこんで来ます。あの、小宮山洋子解説委員NHK子供ニュース担当で酷い反日歴史を語っていた池上氏は今モテモテで、相変わらず反日捏造を、公平公正せいだと云う顔で、売れています。
 今の日本は学校教育に芯がないから、心地よい甘言に、国自体のタガが緩んで来ています。本間一誠氏の、古武士のような風格が何となく感じられる新連載でした。 




雑誌『正論』新連載に期待して。・・1

2010-12-29 16:42:58 | 本と雑誌
 雑誌『正論』2月号より新連載された、今は亡き中村燦氏の後を継いだ、本間一誠氏の、いかに文を書き写します。今月号は10ページに渡る長編ですので今年あと3日残っていますが、何とか頑張って、読みつつ写していきたいと思っています。
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≫NHK殿 一筆啓誅 ≪
皇学館大学非常勤講師  本間一誠
●閉ざされた言語空間の延命装置
 東西の冷戦構造が崩壊した結果、占領政策によって形作られ、戦後の日本人の思考や感性を拘束し続けた牢固たる言語空間に綻びが生じて久しい。今やその言語空間は綻びどころかボロボロになって、その隙間から嫌でも油断のならない苛烈な世界に現実が見えてきた。とりわけ近年の北東アジアの状況は、日本国憲法の前文とそれを前提にした価値観や諸体系がとんでもないまやかしであることを証明している。
 このまま非現実的な友愛幻想の中にまどろんで居れば、間違いなく日本は物理的にも精神的にも亡国の淵に突き進むことを、強い危機感を持って予想せざるを得ない。
 実際、今の日本は羅針盤を喪失した難破船のようなものだ、現下の日本の殆どの政治家には、与野党を問わず独立国家としての自己決定力を強力に打ち出す経綸も責任感も胆力もない。もう過っての「ごっこの時代」(江藤淳)のように時間は悠長には流れてくれないと云うのに。
 今、この一瞬一瞬に日本国の存亡がかかっている。その意味で、正確な事実とそれに基ずく正しい情報を国民に伝えるべきメディアの責任は極めて重大である。
 とりわけNHKは、放送法32条を根拠に強制的に受信料をとる「公共放送」有って見れば、民放とは段違いにその報道の在り方と責任の問われ方は重いと云わねばならない。従って同法7条に謳う「公共の福祉のため」の「公共」の内実をNHKがどう捉えているのかも厳しく問われる必要が有ろう。
 この稿では公共放送の「公共」とは何かという議論はさておくが、ただ少なくとも昨今流行る「新しい公共」等とは言わせないと云う事だけは冒頭で述べておこう。
 既存メディアに対抗する情報手段としてインターネットの普及には端倪すべからざるものがあるが、それでもNHKというブランドは一般庶民の意識の中では、依然として今でも一つの権威である。「紅白歌合戦」の視聴率は昔に比べれば落ちたそうだが、今では例えば「鶴瓶の家族に乾杯」などといった人気番組のイメージから、「NHKならば」という茶の間の意識はまだ根強いものがあるだろう。
 そうであれば、この大変な危機の時代にあって、放送第一条(目的)、第三条の2が定めているように、当然その情報には偏りや歪み、ましてや意図的な隠蔽や価値中立を装う小狡い判断停止などがあってはならない。
 ところが実際のNHKはそうはなっていない。偏り、歪み、隠蔽、ある種の同調圧力への迎合という傾向はますます悪い方向に向かっているように思える。戦後の言語空間のボロボロになった裂け目から見えてきた現実を、隠蔽して無かった事にし、または変更歪曲して伝えようとする。
 最も分かり易い一例をあげれば(これはNHKに限ったことではないが)平成二十二年九月七日に起きた尖閣海域での事件を未だに「衝突事件」という。正しくは「中国の漁船による(悪質な)巡視船破壊事件」または「体当たり事件」というべきなのだ。それを「衝突」といってはどちらに非があるかわからないではないか。
 言葉が違えば実態も違うものになる。意図的に事実を曖昧にし、結果として事実を隠蔽する事になる。些細なことのようだが悪質な「体当たり」を「衝突」としか表現できない事実の中に、日本のメディアが未だに閉ざされた言語空間に呪縛されて、今、ありありと眼前に見えるものすらありのままに見ようとしない、見られないと云う以上差がある。その結果、悪意と奸計を持って何者かが仕掛けてくる情報・心理戦の罠に見事に嵌まって国民を欺き、国益を損ずる売国に手を貸すことになっている。
●問題点がぼかされた尖閣報道
 九月の事件後、十一月五日に海上保安庁撮影の現場映像が流出してから、NHKは尖閣事件をどのように解説論評してきたか。それは十一月二十四日付き産経新聞「正論」欄における小堀圭一郎東大名誉教授の指摘「(流出のために)事件最大の論点である、中国の国家意思を体して行動した疑いの濃い漁船(むしろ工作船か)による我が国の主権侵害という大問題が、作為的に影を薄められ、乃至は掏り替えが生じている』に尽きる。
 十一月以降に私が見たNHKの関連番組を拾えば、十一月十日「時論・公〈検証 映像流出問題〉」、同日「視点・論点〈映像流出情報管理〉」、同十五日「クローズアップ現代〈尖閣映像流出の衝撃〉」、同十八日「時論・公論〈情報流出・管理強化と情報管理〉」などがある。いづれも解説の重点は、国家の情報管理の在り方と国民の知る権利にどう折り合いをつけるかということにあった。
 情報の公開、非公開の難しい議論は必要であるにせよ、多くの国民は今回の漁船追突事件から映像流出、さらにはその後の政府の対応に、直感的にただならぬ危うさを感じている。本来NHKが公共放送としての健全なセンサーを持っていれば、これは日本の全国民に覚醒を迫っている一大事件であり、平和ボケを脱するには絶好の機会と捉えなければウソでそこをずばりと解説論評してこそ日本国の公益に資する筈だった。
 ところが相手が中国となるととてもそうはいかないらしい。特に真意不明だったのが十一月十五日の「クローズアップ現代」だった。〈“尖閣映像”流出の衝撃〉がテーマであるなら、何よりしの「衝撃」とは、これほどまであからさまに、且つ日常的にわが国の主権と領域が侵犯され、漁民や保安官が非常な危険に曝されつつ仕事をしていた事実そのものでなければならない。
 番組では国谷裕子キャスターがゲストに元外交官田中均氏と評論家立花隆氏を招き、国家の危機管理と国民の知る権利、情報の非公開と公開を何処で線引きするかということについてあれこれと考えるのだが、中国による悪質な主権の侵害という重大事は最初からどこかへ飛んでいる。重大なのはあくまで「情報の流出」というスタンスである。
 ゲストに対して国谷氏はこのような問いかけをする。「非常に極端なナショナリズムの台頭をうまく調整しながら、より正しい外交的な認識に、国民のコンセンサスをうまく持っていく方法としての情報公開の判断というのもありませんか」
 また「今は知る権利の意識も高まっているし、日中関係への配慮ということもあると、両方充足させると云う事はなかなか厳しい判断もあるでしょうね」と。これに対して田中氏は、最終的には国益に基づいた政府の責任による判断で、今回の尖閣映像のように客観的な事実関係を伝えるものは、原則公開して然るべきだと述べ、立花氏は、公開、非公開の判断基準は公共の利益であり、あの映像を見た人は皆「好いことを知った」と思っていると述べた。結局、話は主権が侵害されたという事件の本質に触れて深まることなく、途中から話題は告発サイト「ウィキリークス」に移ってしまっう。
●屈服を偽善にまぶした自己欺瞞
 問題なのは上の引用した国谷氏の言葉に端なくも窺える一種の傾向である。番組冒頭の映像で仙谷官房長官は「何よりも重要なのは、日本も中国も他の国も、余り偏狭で極端なナショナリズムをっ刺激しないと言うことを、政府の担当者としては心すべきだろう」と述べる。
 この官房長官の頭脳の赤い刷り込みが、世間を渡る必要上ピンクになったところで、国家=悪という反体制の情緒までは変わらない。「自衛隊は暴力装置」発言も別に不思議ではない。こうゆう人にとっては国を憂うるが故の真っ当な主張や正当な怒りでも「偏狭で極端なナショナリズム」に見え、危険に映るのだろう。何かというと危険だ危険だと言いたがる人種は戦後の進歩的文化人以降、今に至るも後を絶たない。
 よくまあ飽きないで同じことばかり言うよと思う。国谷氏も多分に仙谷氏と同じメンタリティーなのではないかと思う。尖閣沖での中国漁船の体当たり映像を見れば、彼の国及び漁船の無法に憤りが込み上げるのは誠に正常な反応ではないか。
 映像をすべて公開して、早く世界に日本の正当なることを訴えよと云うことも至極真っ当な国民感情ではないか。しかも、あろうことか中国は海保が船をぶつけてきたと主張しているのである。国谷氏はどのような状況を指して「非常に極端なナショナリズムの台頭」というのだろうか。
 内容の定義のない全く無意味な雰囲気語に過ぎない。また「日中関係への配慮」と日本人の「知る権利」を両方充足させる必要は毛頭ない。この場合に限って言えば、中国への配慮よりも日本人の「知る権利」が優先する事は理の当然ではないか。
 国谷氏のそうゆう発想やそうゆう言葉それ自体に、すでに屈服を偽善にまぶした自己欺瞞が潜んでいる。早い話が、日本が配慮を示せば相手も日本に配慮を示すのか、示して来たのか。むしろ確固たる国家観を欠いたまま「日中関係への配慮」をし過ぎて足下を見られたから、遂にこんな始末になってしまったのではないか見終わった後の一種の不得要領感は、結局何だか大事なことが「掏り替え」られたというところに生じた気分だろう。
 話の成り行きで記しておく。今回の尖閣の危機で、ようやく「国家」を構成するするものは国家主権と領土領域だと云うことが人々の意識に上がったようだ。主権と領土については国会のメディアでも多くの時間を費やして議論がなされた。だが不思議なことに、根本的に大事なことが殆ど忘れられている。云うまでもなく国家を成立させるもう一つの要素は「国民」である。日本に生まれただけでは「国民」にはならない。
 日本という共同体の歴史的連続性のかけがえのなさを教えるのが本来の公教育の役割で、その教育を通して初めて人は「国民」になる。そこに国を愛する心も祖先を誇りに思う心も、自然に湧いてくる。これはどこの国でも同じだろう。
 ところがその反対をやったのが日本の戦後教育であり、公教育の場で日本人一人一人の問題として領土を考えさせる教育など、皆無であったと言っていい。それは日本の教科書の領土に関する記述を見れば分かる。歴史を垂直に貫く国家観がないから、結局何を護るべきかが分からない。
 ルーピー前首相や国歌嫌いの現首相、暴力装置発言官房長官や中国へ大朝貢団を引率して国民の顔に泥を塗った、剛腕氏などは、この国家観不在の戦後教育のなれの果てである。
 今回の事態を招いた遠因は真の国民教育の不在にある。無理な注文だがあえて言えば、そのことをこそ本来メディアは取り上げるべきなのだ。国家百年の計に立ってこの事を真剣に議論し、真剣に反省しなければ日本の将来は無く、我々の子孫に重大な災厄を負わせることになるだろう。
 このままであれば「中共日本自治区」の悪夢は現実になる。
●中国のプロパカンダを垂れ流した「クローズアップ現代」
 これに関連して、いささか旧聞に属するがどうしても言及し、此処に記録しておきたいことがある。それは平成二十二年六月一日放送の「クローズアップ現代」のことである。
 「クローズアップ現代」は開始以来、放送回数すでに三千回に迫るNHKの看板番組の一つだが、私は未だにこの日の同番組を見た時の、何とも言えない屈辱感と苦々しさを思い出す。タイトルは『中国 温家宝首相が語る』で、国谷裕子キャスターだった。当然事前に質問項目を中国側に提出し、チェックを受け、摺り合せをした上でのことだろう。結論からいえば温家宝首相の用意周到な美辞麗句に何の突っ込みもなく、ただうやうやしく拝跪し、鞠躬如として仕えただけのインタビューだった。
 この時の温家宝の言葉と、インタビュー以前及び以後における現実の展開とのあまりの乖離を考えると、これこそNHKが、すでに情報・心理戦において中国にのも込まれていることを証明する好個の材料である。
 つまり、夕飯時に流れるNHKのこの看板報道番組は、いいように中国による日本国民へのプロパカンダに利用されたのである。尖閣事件以降に一段と露骨になった中国の嵩にかかった力づく路線、一連の対日圧力を考えればそのことは明白であろう。しかし残念だが、当のNHKには恐らく利用されたことについての自覚と反省は毛筋程もあるまい。些か長くなるがインタビューと温家宝の回答要点は適記すれば、概略以下の様に進んだ。
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 続きは明日写します、本文は旧かな使いで書かれていますが、大変読みやすいまるで山本夏彦翁を彷彿させ懐かしい気持ちですが
新仮名使いで写します。