ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

親切なお医者さん(4)

2008-10-08 | 親切なお医者さん/ 5つの指摘
一週間後です。

次郎先生 「健康診断の結果、出てますよ。これが、その数値表です」

次郎先生は、いっぱい数字の書いてある紙を見せました。

次郎先生 「おおむね、平均の範囲なので、体調が悪いのは、過労が原因じゃないかと思うんですが」

次郎先生、そこまで言って、言葉を止めました。

患者さんは、次郎先生の言葉が止まったので、ちょっと緊張した顔になりました。


次郎先生は、本当は、その後、こう言うつもりだったのです。

「実は、ちょっと気になっている箇所がいくつかありましてね」

いつもならそう言いながら、数値表のいくつかの数字に丸をつけて、いくつか、精密検査をする必要があることを説明するところでした。


ところが、それを言おうとしたときに、ついこないだ、太郎先生から聞いた、困った話を思い出したのです。


次郎先生は思いました。俺は患者さんを怒らせるような、不親切な医者じゃないって。

それで、とっさに考えて、こう言いいました。

次郎先生 「体調が悪いと言っておられたので、ビタミン剤、出しときますね。これ飲まれて調子がよかったら、体質に合うということなので、ぜひ続けてください。合わないようでしたら、他の種類のものもありますから。しばらく様子を見ましょう。じゃあまた、2週間後に」

その患者さんは、自分の健康に異常がないと思って、喜んで帰りました。

次郎先生 「まあ、これで、定期的にあの患者さんと会えるわけだし。体調に以上が出たら、すぐわかるだろう。俺は親切な医者だな」

(つづく)