ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

酋長の真珠(3)

2008-01-09 | ビックリ・ホスピタル/ 酋長の真珠
島の人たちは、木を彫って作ったカヌーに乗って、海に漁に出かけます。網で魚を捕る人もあれば、海に潜って貝や海老を捕る人もいます。


酋長には、息子が一人いました。彼は、潜りがとても得意でした。あるとき、彼は、他の若者たちと一緒に、真珠貝を探して、海に潜っていました。真珠は、その島の人たちにとって、最も貴重なものなのです。

他の種類の貝はたくさん見つかりますが、真珠貝はなかなか見つかりません。やっと見つけたと思っても、真珠がなかったり、あっても小さなものがほとんどです。

貝は生きていますから、一度潜って真珠貝を見つけても、次に潜ったときにもその場所にいるとは、限りません。それで、見つけたときには、そのときに捕らないと、せっかくの真珠を逃すことになるのです。


酋長の息子と他の若者たちは、朝から、一生懸命、真珠貝を探して何度も潜っていました。それでも、見つけられたのは、ほんの少しでした。


だんだん夕方になってきました。波も高くなってきました。そろそろ帰ったほうがよさそうです。

「さあ、これを最後にしよう」

そう言って、酋長の息子は大きく息を吸い込むと、海に潜っていきました。他の若者たちもそれに続きました。

(つづく)