屋上に着くと、デパートのビルは、すでにもうもうと立ち込める黒い煙で包まれていることがわかりました。
弟は、怖くなって、ついに泣き出しました。お兄さんも本当は、泣きたかったのですが、歯を食いしばってがまんしました。
目を開けているだけで、目が痛くなります。煙を吸うと、頭が痛くなって、吐き気がしてきます。だんだん頭がフラフラしてきて、気が遠くなるような感じです。
このまま、助けを待っていたら、三人とも煙にやられてしまうでしょう。
お父さんは、なんとか、助かる道はないかと、辺りを見回しました。
デパートのビルにくっついている隣のビルがありました。だいだい1メートルと少しくらいです。お父さんなら、飛び越えられますが、子どもたちは、お兄ちゃんでも無理でしょう。まして、弟は、絶対に飛び越えられません。
お父さんは、考えました。
そして、お兄ちゃんに言いました。
「いいかい、よく聞くんだよ。お父さんが、ここの手すりから向こうのビルに向かって、からだを伸ばして、橋になるから。まず、お兄ちゃんがお父さんの上を歩いて、向こうのビルに行きなさい。それから、弟を励まして、お父さんの上を歩いて、お兄ちゃんのほうに来るように言うんだよ。わかったね」
お兄ちゃんは、半べその顔で「うん」と言いました。
(つづく)
弟は、怖くなって、ついに泣き出しました。お兄さんも本当は、泣きたかったのですが、歯を食いしばってがまんしました。
目を開けているだけで、目が痛くなります。煙を吸うと、頭が痛くなって、吐き気がしてきます。だんだん頭がフラフラしてきて、気が遠くなるような感じです。
このまま、助けを待っていたら、三人とも煙にやられてしまうでしょう。
お父さんは、なんとか、助かる道はないかと、辺りを見回しました。
デパートのビルにくっついている隣のビルがありました。だいだい1メートルと少しくらいです。お父さんなら、飛び越えられますが、子どもたちは、お兄ちゃんでも無理でしょう。まして、弟は、絶対に飛び越えられません。
お父さんは、考えました。
そして、お兄ちゃんに言いました。
「いいかい、よく聞くんだよ。お父さんが、ここの手すりから向こうのビルに向かって、からだを伸ばして、橋になるから。まず、お兄ちゃんがお父さんの上を歩いて、向こうのビルに行きなさい。それから、弟を励まして、お父さんの上を歩いて、お兄ちゃんのほうに来るように言うんだよ。わかったね」
お兄ちゃんは、半べその顔で「うん」と言いました。
(つづく)