本朝徒然噺

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二代目中村錦之助襲名披露興行(昼の部)へ(4/7)

2007年04月08日 | 芝居随談
4月7日(土)、歌舞伎座の昼の部へ行ってきました。 >>当日のキモノはこちら

今月の歌舞伎座は、中村信二郎改め二代目中村錦之助襲名披露興行です。

中村錦之助は、映画スターとして一世を風靡した萬屋錦之介さんが歌舞伎役者時代に名乗っていたお名前です。
「中村錦之助」という名前を継いで大きくしていくことにより、萬屋錦之介さんのことを後世の人に伝えていきたいという、信二郎さんの思いが込められた今回の襲名です。

私はヨロキン(萬屋錦之介)さんの「子連れ狼」の大ファンなので、今回の襲名をとても嬉しく思っています。
もちろん、新・錦之助丈(中村信二郎丈)には独自のよさがあると思いますし、その持ち味を発揮して新しい錦之助像を作りあげていただくのが一番だと思いますが、新・錦之助丈のおっしゃるとおり今回の襲名で萬屋錦之介さんの存在もあらためて人々の心に刻まれるのが嬉しいですし、故・錦之介さんにとってよい供養になるのではないかと思います。

私の両親などは、まさにヨロキンブームの時代とともに生きてきたので、今回の襲名の話をしたらとても嬉しそうにしていました。
地方では大歌舞伎を観られる機会などめったになかった時代、歌舞伎界を出て映画の世界に行った錦之介さんの功績はとても大きかったと思うのです。住んでいる地域や老若男女を問わず楽しめるのが映画の利点ですから。

新・錦之助さんが歌舞伎の世界でがんばることによって、映画スターだった錦之介さんの存在も後世に伝えられる……歌舞伎と映画という二つの世界の橋渡しになるような、とても素敵なことだと思います。
(余談ですが、信二郎丈改め二代目中村錦之助丈は、お顔はどちらかというとヨロキンさんの弟・中村嘉葎雄(かつお)さんのほうに似てる……と思うのは、私だけでしょうか?)

今回の襲名披露興行には、新・錦之助丈のお兄さんである中村時蔵丈をはじめ、新・錦之助丈のいとこで故・錦之介さんの甥である中村歌六丈、中村歌昇丈、中村獅童丈と、萬屋一門が勢ぞろいします。
それに、新・錦之助丈の師匠である中村富十郎丈のほか、中村芝翫丈、中村吉右衛門丈、片岡仁左衛門丈、中村梅玉丈、中村勘三郎丈をはじめとする幹部俳優が華を添えるという、襲名披露にふさわしい豪華な興行です。

襲名披露の「口上」が行われるのは夜の部ですが、昼の部のキリ狂言「菊畑」のなかでも、劇中口上が行われます。

この「菊畑」に登場する「虎蔵実は牛若丸」は、故・錦之介さんが映画の世界に移る前、最後につとめた役なのだそうです。
当時まだ若かった錦之介(当時・錦之助)さんは本興行でこの役を演じることができなかったため、本興行の前に上演されていた「子ども歌舞伎」でつとめたそうですが、これは初代中村吉右衛門丈が「はなむけに演らせてやれ」と言って実現したのだそうです。

今回の襲名披露興行でその「菊畑」が上演され、二代目錦之助丈が虎蔵を演じ、初代中村吉衛門丈の血を引く二代目吉右衛門丈、新・錦之助丈のお兄さんである中村時蔵丈、そして新・錦之助丈の師匠である中村富十郎丈が共に舞台に立つというのは、とても素敵なことだと思いませんか? なんだかそれだけでも、人のつながりとか縁といったものを感じる気がして、感動してしまいます。
きっとあの世で、ヨロキンさんも喜んでいると思います……


話が前後してしまいますが、昼の部の幕開きは、曽我物の舞踊「當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」。
中村獅童さん、中村勘太郎さん、中村七之助さん、中村種太郎さんといった若手が揃う華やかですがすがしい一幕です。そこにベテランの中村歌六丈が混じって、舞台を引き締めてくれます。

若い人が揃う舞台というのは、舞台の上の空気もなんだか爽やかな感じがして、いいですね(笑)。
襲名披露興行という大切な舞台で、緊張感をもって一生懸命に舞台をつとめている感じが伝わってくるから、なお見ていて心地よい感じがします。
特に獅童さんは、尊敬する叔父さまの名跡が復活する舞台ですから、とりわけ一生懸命に臨んでおられるのがよく伝わってきました。すごくよかったと思います。

二幕目の「頼朝の死」には、中村歌六丈・歌昇丈の萬屋ご兄弟に、中村芝翫丈、中村梅玉丈、中村東蔵丈、中村福助丈が華を添えるという、重厚な一幕です。
真山青果作の新歌舞伎なので、演じるほうはきっとさまざまな点で難しいところがあると思うのですが、このメンバーが演るとちゃんと「歌舞伎」に見えるからすごいなあ……と思います。新歌舞伎を観ている時に往々にして感じる「ある種の気持ち悪さ」をまったく感じさせないのです。
高砂屋さん(中村梅玉丈)がやや力が入りすぎかな……とも思ったのですが、それでも嫌味にならないところが、さすがは「貴公子」高砂屋さんです……。

三幕目の「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」は、片岡仁左衛門丈・中村勘三郎丈という豪華な顔合わせはもちろん、獅童さん、勘太郎さん、七之助さんなど花形が所化(しょけ)の役として登場するという、ごちそうの一幕です。
「京鹿子娘道成寺」は白拍子花子が一人でさまざまな踊りを舞い分けるのですが、「男女道成寺」は、狂言師左近(仁左衛門丈)と白拍子花子(勘三郎丈)が交互に踊る趣向になっているので、男踊りと女踊りの両方を楽しめます。音楽も、長唄と常磐津の掛け合いになっていて、華やかさが増します。
仁左衛門丈は、いつもながらカッコイイです……。黒地に松の縫い取りが施された粋な衣装に身を包んだ仁左衛門丈が出てきた時、客席から「おおお」とどよめきが上がっていました。


今回の襲名披露興行の期間中、歌舞伎座の2階ロビーでは襲名記念展示が開催されています。
故・萬屋錦之介さんが歌舞伎座の舞台に立った時の貴重な写真も展示されていますので、ぜひ幕間にごらんになってみてください。

あと、1階ロビー売店では襲名披露グッズが販売されているのですが、そこで売られていたカレンダーに感動して、ついつい買ってしまいました。
表紙が、中村信二郎初舞台のお披露目写真で、幼い信二郎さん(新・錦之助丈)の隣に若かりし初代中村錦之助丈(故・萬屋錦之介さん)が並んでいるんです!
なんて貴重なショットなんでしょう……と感涙にむせびつつ、実家の両親のぶんとあわせて2つも買ってしまったのでした。表紙の写真を見て、うちの親もきっと喜ぶだろうなあ……。
あ、ちなみにこのカレンダーは、4月から来年3月までになっていますので、今買っても十分使えますよ!


<追伸>
大変遅ればせながら……
3月26日 三月大歌舞伎千穐楽
3月31日 林家染丸師匠の会
の記事をアップしました。こちらもごらんいただければ幸いです。

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