本朝徒然噺

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国立劇場十二月歌舞伎公演(12/15)

2007年12月16日 | 芝居随談
国立劇場十二月歌舞伎公演の観劇日記です。

「忠臣蔵」にまつわる3つのお芝居が上演されました。
吉良邸に討ち入りした四十七士のうちの一人で、元・赤穂藩の江戸留守居役だった堀部彌兵衛と、その養子でともに討ち入りを果たした安兵衛にスポットを当てた「堀部彌兵衛」、吉良家の家臣・清水一角にスポットを当てた「清水一角」、そして、初代中村吉右衛門の当たり役とされ、吉良邸の隣に屋敷を構える平戸藩の殿様・松浦公にスポットを当てた「松浦の太鼓」。

大石内蔵助(「仮名手本忠臣蔵」では大星由良之助)ではなく、周辺の人々にスポットを当てることによって「忠臣蔵」の世界を広げている、いわゆる「外伝物」と呼ばれる作品です(今風に言うと「スピンオフ」といったところでしょうか)。
しかも、1つめは赤穂側の人間、2つめは吉良側の人間、3つめは赤穂浪士のことを心の中で応援する第三者と、異なる立場の視点で討ち入りが描かれているので、観る側もいろいろな角度で「忠臣蔵」をとらえることができました。
とはいえ、こういう「外伝物」もたいていが「赤穂寄り」の視点であることは否めないのですが……

「堀部彌兵衛」は、中村吉右衛門丈が堀部彌兵衛、中村吉之丞丈が彌兵衛の妻、中村歌昇丈が安兵衛という組み合わせ。
当代吉右衛門丈と夫婦役をやるのは初めてという吉之丞丈でしたが、全然違和感なく、すんなりと溶け込んでおられて、さすがという感じでした
むしろ、吉右衛門丈の老け役のほうがイマイチしっくりこなかった気が……
歌昇丈はいつもながら良かったです
途中、台詞が飛びそうになって微妙な間(ま)ができてしまっていた吉右衛門丈ですが、歌昇丈や吉之丞丈のおかげで芝居がダレずに済んだという感じでした

「清水一角」では、市川染五郎さんが華麗な立ち回りを披露してくださいました。
中村歌六丈演じる牧山丈左衛門の槍をかわしつつ袴をはくという、見事なものでした。
でもなにげに、歌六丈の槍の扱いも見事だったので、一瞬どっちを見ようか迷いました(笑)。
赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったと聞いて戦仕度をととのえた一角は、姉のお巻が渡してくれた女物の小袖を被って出かけていきます。これが、「仮名手本忠臣蔵」の立ち回りの場面にうまくつながっていく感じがして、こういうのもスピンオフならではの楽しみかな、と思いました。
ただ、立ち回りまでの間はぶっちゃけどうということのない話なので、ちょっと退屈でした……。

「松浦の太鼓」は、初代中村吉右衛門の家の芸「秀山十種」のうちの一つ。
先代の思いがこもった作品ですから、当代吉右衛門丈も大切に演じておられる感じがしました。
ここに気合いが入っていたから、「堀部彌兵衛」の台詞がイマイチ入らなかったのかな……
中村歌六丈の宝井其角は絶品でしたし、染五郎さんの大高源吾も良かったです。大高源吾の姉・お縫を演じる中村芝雀丈も、健気な感じが良く出ていました。
赤穂浪士たちの討ち入りを心待ちにしていた松浦公は、吉良邸のほうから聞こえてきた陣太鼓の音が自分と同じ山鹿流の打ち方であることに気づき、大石内蔵助率いる赤穂浪士たちが討ち入ったのだと無邪気に喜びます。この場面では松浦公の嬉しさがとてもよく伝わってきて、印象的でした。
播磨屋さんは、こんな「ちょっとワガママで無邪気な大の男」の役が妙にハマっている気がするのは、私だけでしょうか……

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