本朝徒然噺

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花街の節分

2006年02月04日 | 花街随談
花街では、節分になると芸者さんたちが仮装をしてお座敷を回ります。
この仮装のことを「お化け」といいます。

なぜ節分に仮装をするのかというと「厄払い」のためです。
普段とは違う仮装をして鬼を驚かせ、邪気を払うのです。
いわば「和製ハロウィーン」といった感じでしょうか。

花街の「お化け」は本来、お座敷に上がるお客さんの前で披露されるのですが、東京浅草組合(浅草見番)では数年前から、一般のお客さんに向けた会も開催しています。
会は浅草見番2階の大広間で行われ、松花堂弁当と飲み物付き。
今年は立春の2月4日が土曜日と重なったためか、節分の2月3日から2日間にわたって行われました。
土曜日なら仕事も休みなので、1日遅れの節分を楽しむために行ってきました。

会場に着くと、舞台を前にしてテーブルと座布団が並べられ、お座敷らしい雰囲気ができあがっていました。
テーブルの上には、浅草の老舗料亭「草津亭」の松花堂弁当。
お弁当をいただきながら、開演を待ちます。

開演時間が近づいたころ、芸者さんたちがお座敷に入ってきました。
いつもは白塗りに島田のカツラ、着物姿の芸者さんたちも、この日は思い思いの仮装をしています。
白塗りの状態だと「あ、○○さんだ」とわかるのですが、白塗りをしていないと意外にわかりにくいものです。
でもさすがに芸者さんだけあって、素の顔もきれいです。

いよいよ開演。
芸者さんたちはいくつかのグループにわかれて、それぞれ趣向をこらした出し物を披露してくださいます。

1組目は、若い芸者さんお二人。流行を取り入れた出し物を披露してくださいました。
「元禄花見踊」でおしとやかにスタートした後、早変わりでメイドカフェの店員さん、キューティーハニー、何とレイザーラモンHGまで!
普段はおしとやかな芸者さんのハジけぶりがおもしろくて、ウケてしまいました。
しかし、場内を見渡すと……あれれ!? 静まり返っています……。
どうやら、メイドカフェやキューティーハニー、レイザーラモンHGを知らない世代のお客さんが圧倒的に多かったようです……。
でも、メイドカフェの店員さんもキューティーハニーも、とてもよく似合っていてかわいらしかったです。

キューティーハニーに扮する芸者さん
↑キューティーハニーに扮する芸者さん


その後も、グループごとに楽しい出し物を次々と披露してくださいました。
抜粋してご紹介します。

花魁に扮する芸者さん
↑花魁に扮する芸者さん。きれいです!

花咲かじいさんの犬を人形振りで演じる芸者さん 花咲かじいさんを演じる芸者さん
↑「人形振り」で犬が登場。その後、犬に呼ばれておじいさんが登場。「花咲かじいさん」の一幕でした。桜の木の役は、何と花魁に扮していた芸者さんです。

歌舞伎舞踊「文屋」を演じる芸者さん
↑「文屋」を演じる芸者さん。「文屋」は歌舞伎の舞踊で、文屋康秀と女官の掛け合いが楽しい演目です。歌舞伎では女官がずらりと並ぶのですが、ここではそれを人形で表していておもしろかったです。「こい(恋)づくし」という台詞の掛け合いも、お芝居さながらで本格的でした。

雪ん子に扮する芸者さん
↑雪ん子に扮する芸者さん。とてもかわいらしいです。この芸者さんは、若かりし頃の坂田藤十郎丈(扇雀ブームの頃)にどことなく雰囲気が似ていて、とてもきれいなのです。

藤娘に扮する芸者さん
↑藤娘に扮する芸者さん。「藤娘」は長唄舞踊のなかでも特に有名な曲の一つで、日本人形のモチーフとしてもよく使われます。


芸者さんだけでなく、幇間(ほうかん)衆の「お化け」もありました。鬼に扮した幇間さんが「にわか」(和製ショートコントのようなもの)を披露して、客席を盛り上げてくださいました。

鬼に扮する幇間衆


また、出し物に参加しない芸者さんや半玉(はんぎょく)さんも、それぞれ仮装をして客席を回ってくださいました。
半玉さん(京都でいう「舞妓さん」にあたる人)に扮した芸者さんもいらっしゃいました。芸者さんが半玉さんの格好をするのも、節分の「お化け」の一つなのです。

「お化け」の会で楽しいひとときを過ごし、厄払いができました。

この日のキモノはこちら


<余談>

昔は、花街の女性だけでなく一般の女性も「お化け」をしていました。
といっても、大々的な仮装ではなく「髪型による仮装」です。
日本髪を結うのが当たり前だった時代には、年齢や身分によって髪型が決まっていました。
しかし節分の時だけは、年齢や身分を超えた髪型を結うことができたのです。
たとえば、町方の女性が芸者さんの髪型をしたり、おかみさんが娘の髪型をしたり。
明治以降、洋髪を結う女性が多くなってからも、節分には日本髪を結う女性がたくさん見られたそうです。
そうやって「いつもと違う自分」になり、気持ちを切り替えることこそが「厄を払う」ことだったのでしょう。

何かとストレスの多い現代だからこそ、先人の知恵に学ぶべきことは多いような気がします。



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