本朝徒然噺

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御園座顔見世大歌舞伎

2007年10月30日 | 芝居随談
名古屋・御園座の顔見世興行の観劇日記です。

昼の部は「毛抜」「かさね」「権三と助十」、夜の部は「鳴神」「達陀(だったん)」「義経千本桜 川連法眼館の場」。

1泊2日で、1日目に夜の部、2日目に昼の部を観に行ったので、夜→昼の順で感想を書いていきたいと思います。

今回、山城屋さんもご出演されないのに(笑)なぜわざわざ名古屋まで遠征したかと言いますと、「達陀」目当てだったからでございます。
尾上松緑さんの襲名披露の時、京都の南座で初めて「達陀」を観たのですが、その時の印象が強烈だったので、もう一度じっくり観てみたいなと思い……(その後、一度歌舞伎座で上演されているのですが、その時は観に行かなかったのです……)。
「達陀」は、お水取りが行われている東大寺二月堂を舞台に、人間の煩悩や悟りを表現した舞踊劇。

南座で観た時になぜ印象が強烈だったかといいますと、坊さんの姿の尾上菊五郎丈がすっごくキビキビした動きで踊っていたからです
その前に「車引」に桜丸役で出ておられたのですが、その時の少し元気のない感じ(に見えた)とのギャップに、ただただ驚いたことを今でも覚えています(笑)。

南座の時は、「坊さんが跳んだりはねたりしている図」に度肝を抜かれてしまって、作品の全体像をいまいちつかめずに終わってしまったので、今度はそのへんのところをもっと味わいたいなと思い、名古屋まで追っかけていった次第です。
今回は冷静に観ていられたおかげで(笑)、唄の詞章などもよく耳に入ってきて、作品のテーマを少しは深く見つめられたように思います。

菊五郎丈の踊りも、南座の時は動きがあまりにもキビキビしていて、坊さんの姿とのギャップがありすぎて微妙に引いてしまったのですが(ゴメンナサイ……)、今回は、あれから5年の歳月が経ったせいか動きも若干まろやかになったのか、違和感なくごく自然に観ていられました。

最後は、菊五郎丈を中心に大勢の役者さんたちがそろって(もちろん坊さんの格好で)、一糸乱れぬ舞を舞うのですが、あれは何度観ても圧倒されますね……。
初めてごらんになる方は笑っちゃうんじゃないかと思いますが……(演技や踊りがどうこうという問題ではなく、単純に絵的なことで)、みなさん真剣にごらんになってました(←アタリマエ……)。


「義経千本桜 川連法眼館の場」(通称「四の切」)は、昨年11月の新橋演舞場での花形歌舞伎に続いて、市川海老蔵さんが忠信をつとめられました。

一年前に観た時と比べて、所作がすごくしっかりしていたので、驚きました
前半の、本物の忠信(佐藤忠信)の時は台詞もどっしりとしていて、一年でずいぶんと進歩したなあ……と感慨にふけりながら観ていたのですが……、後半、狐忠信になってからは、やはり台詞まわしがちょっと……。笑う場面でもないのに台詞まわしのせいでコミカルに見えてしまうのか、客席からやたらと「ムダな笑い」が起きてしまってました……。
狐忠信の所作も、一年前と比べてすごく丁寧になっていただけに、残念でした
市川猿之助丈の台詞まわしを意識しているんだと思うのですが、あまり意識しすぎなくてもいいんじゃないかなあ……と思ったり。

そうそう、私が観に行った日は、最後の「宙乗り」のところで手拍子が起きちゃいました……
宙乗りが始まってしばらくの間はそんな気配はなかったのですが、どこかで一生懸命手拍子をやりかけている人がいて、それにつられる形で場内が手拍子の渦に……。
まあ、ハクシュもせず盛り上がらない客席よりはいいと思いますが、やっぱり手拍子はビミョー……と思ってしまう、保守的なワタクシなのでありました。


順番が前後しましたが、夜の部の幕開き「鳴神」は、市川團十郎丈の鳴神上人に尾上菊之助さんの雲の絶間姫という顔合わせ。
團十郎丈の鳴神上人はさすがの貫禄でしたし、菊之助さんの雲の絶間姫もすごくキレイでした
雲の絶間姫が鳴神上人に迫るところは、そこはかとないお色気があって、女性から見てもドキドキしてしまいました
どうでもいいんですが……、鳴神上人が雲の絶間姫にそそのかされて破戒しお酒を飲んでしまうところで、鳴神上人が何だか落語の「変わり目」に出てくる酔っ払いみたいになってました……(笑)。
9月の秀山祭で「身替座禅」をなさった時にもちょっとそんな感じだったんですよね……。うーむ……。


明けて翌日の昼の部。
幕開きは、尾上松緑さんの若々しく元気のよい「毛抜」で、よいウォーミングアップになりました。

続く「かさね」は、市川海老蔵さんと尾上菊之助さんのコンビ。
これ、すっごく良かったです!
前日の夜の、狐忠信の台詞まわしを聴いていささか不安になっていたのですが、ここでの海老蔵さんの台詞まわしはすごくしっかりとしていて、口跡も良かったので、正直驚きました
それに何より、この二人が並ぶととにかく一幅の絵のようにキレイで、良い目の保養になりました
この興行の昼の部・夜の部通して、私はこの「かさね」がいちばん印象に残りました

昼の部のおしまいは「権三と助十」。
駕篭かきのコンビの、ぐうたらな権三を團十郎丈、世話焼きの助十を菊五郎丈が演じるという、新鮮味のある組み合わせでした。
團十郎丈がコミカルな役どころを演じているのが新鮮でよかったのですが、お芝居全体の感じでいうと、昨年の團菊祭で上演された時のほうが、長屋の活気というか、市井の人々の生き生きとした雰囲気が出ていたんじゃないかなあ……と思いました。

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2 コメント

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ありがとうございます! (JoanneKathleen)
2007-12-06 09:36:06
色んな所にコメントのお返事をありがとうございます!!!
JKはほんとになーんだか右から左にとすぐに忘れてしまうのですが、藤娘さんの観劇記では色々思い出せるのです~
新橋の海老蔵はホント、無駄に可笑しかったです・・・猿之助丈に習われたとは伺っていましたが、猿之助丈があんな風だったのかどうか???と、思いつつ。。。
ご自分が「いい」と思う型に傾倒してしまわれるのかしら~?ある意味器用な方なのかな、とも思います。
その意味でも、御園座でかかるんだわ~、と、ちらっと思っていたのでここで出会えてうれしいです。
宙乗り、若いし、体も大きいし、ホントに空を泳ぐようで迫力はあったけど・・・手拍子が来るとJKもちょっといやかな~笑ってしまうかも。。。
一月の新橋も楽しみです
菊之助丈、大和屋さんと道成寺をなさってから磨きがかかったような気がします・・・美しい~!
権三と助十、歌舞伎座は菊五郎丈三津五郎丈でしたっけ、威勢良くテンポ良く、江戸ってこんな感じ?と楽しく観たのを思い出しましたがこう考えると配役ってすごいですね、地方では歌舞伎座でなかなかないような取り合わせになるし・・・奥が深いです。
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JoanneKathleenさま (藤娘)
2007-12-09 20:19:40
こちらこそ、ご丁寧なコメントをたくさんいただき本当にありがとうございます

どんなお稽古でも初めは真似から入るのでしょうし、猿之助さんを意識して演じること自体は全然悪いことではないのでしょうけれど、「猿之助さんがなさるからこそ良い」という部分もありますよね……。
あまり意識しすぎずのびのびとやったほうが、却っていいんじゃないかなあ……と思ったり……

歌舞伎座での、菊五郎丈と三津五郎丈のコンビでの「権三と助十」、良かったですよね
私も、すごく気持ち良く観たのを覚えています
團十郎丈の権三も、味わいがあって楽しかったです
地方公演での配役は、東京ではなかなか見られないようなものもあって、ある意味貴重ですよね。それもあって、ついつい遠征を企ててしまいます……
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