Entrance for Studies in Finance

時価総額 上場基準・廃止基準としての時価総額基準

時価総額market capitalization
 時価総額というのは株式の発行株数にその市場価格を掛け合わせたもの。企業価値の市場評価。市場価格にさまざまな評価が織り込まれている。ただしこのような国際比較は米ドルで表現するためドルへの換算レートが数値に別の歪みを与えている。
market capitalization ranking from wikipedia

rank2010/06末億ドルrank2009末億ドル
1ExxonMobil2,9161PetroChina3,531
2PetroChina2,6852ExxonMobil3,237
3Apple2,2893Microsoft2,706
4中国工商銀行2,1134中国工商銀行2,689
5Microsoft2,0165WalMart2,036
6ChinaMobile2,0106中国建設銀行2,014
7BerkshireHathaway1,9747BHP Billiton2,012
8中国建設銀行1,8928HSBC1,992
9WalmartStores1,7838Petrobras1,991
10P&G1,72710Apple1,898


rank2008末amountrank2007末amountrank2006末amount
1ExxonMobil4,0601PetroChina 7,2391ExxonMobil4,469
2PetroChina2,5982ExxonMobil 5,1182GE 3,835
3WalMart2,1983GE 3,7463Microsoft 2,935
4ChinaMobile2,0124ChinaMobile 3,5414Citi Group2,736
5Procter&Gamble1,8455中国工商銀行 3,3895Gazprom2,714
6中国工商銀行1,7396Microsoft 3,3306中国工商銀行 2,545
7Microsoft1,7297Gazprom 3,2957Toyota 2,411
8AT&T1,6798Royal Dutch Shell 2,6958Bank of America 2,397
9J&J1,6609AT&T 2,5209Royal Dutch Shell2,257
10GE1,61210Sinopec 2,49610BP2,186

amount:億ドル

日本企業の時価総額ランキング(08/03/31 終値)

1トヨタ自動車171,365億円-37.1%前年1トヨタ自動車272,554億円
2三菱UFJFG93,410-35.3前年2三菱UFJFG144,271
3任天堂72,10948.6前年3NTTドコモ102,045
4NTTドコモ69,278-32.1前年4NTT 98,067
5NTT67,687-31.0前年5みずほFG 90,109
6キヤノン61,213-27.5前年6キャノン 84,407
7松下電器産業52,985-9.1前年7三井住友FG 82,750
8ホンダ52,200-30.8前年8ホンダ 75,411
9三菱商事50,99510.4前年9武田薬品 68,740
10三井住友FG50,732-38.7前年10ソニー 60,062
比率は2007年3月末との比較

時価総額は上場基準や上場廃止時基準にも利用されている。
市場別上場基準(野村証券) 

上場対象となるのは一定以上の時価総額をもっているものだというこの考え方は、上場企業とは何かを考える上で大変示唆的である。上場基準にも上場廃止基準にも時価総額以外の数値基準がある。
まずは上場基準における時価総額基準(上場時見込み)は




直接東証一部500億円以上
東証ニ部から一部へ40億円以上(流通20億円以上)
東証二部20億円以上(流通10億円以上)
マザーズ ジャスダック10億円以上

東証内で東証一部に昇格するのは、学部から東証一部に直接上場することに比べてハードルが低くなっている。
参考 NYSE Amex Listing Standards

つぎに上場廃止基準における時価総額基準(9ヶ月間など長期にわたり月末時時価総額が以下の数値以下となった場合)は

東証一部二部10億円未満
マザーズ ジャスダック5億円未満


時価総額基準についてのお知らせ(東京証券取引所)
2009年1月13日に全国の6証券取引所は上場廃止基準を1月末から年内一杯緩和すると正式発表した。一部二部の上場廃止基準は6億円未満に、またマザーズの上場廃止基準も3億円未満に引き下げる(ジャスダックも同様の変更を行った)。なお一部から二部への指定換え基準は20億円未満から12億円未満に引下げ。09年12月末までの時限措置としてその時点で改めて検討する(その後2010年12月末まで延長)。
さらに2010年12月20日にはこの措置の2011年12月末までの延長を決めている(期限付き特例措置)。2011年12月13日には再度2012年12月末まで
この措置を延長することが決まっている。

 この特例措置と矛盾するが、東証は、東証マザーズの上場廃止基準を、上場後、一定期間たった(一定期間の年数は議論中)企業には本則(東証1部・2部)と同じルールを適用するとした(2010年12月21日 取締役会)。この結果、上場廃止基準における時価総額は該当企業については5億円未満から10億円未満(特例期間中は6億円未満)に強化するとした。これは上場後に成長がとまった企業に速やかな退場を促す措置。
 他方で上場審査において事実上2期連続増益が条件になっていることを改め、直近で減益であっても上場可能に変更する方針とのこと。時価総額基準がなお特例期間中であることもあり、東証のこの決定は、上場基準の緩和となるもののように見える。入口の敷居を低くして、他方で退場の基準は厳しくというメッセージは分かる。しかし入口の敷居が低いことに問題はないのだろうか。

 かつて大阪市立大学の鋤[林瑜さんは東証・大証、ジャスダック、その他新興市場に市場を3区分して、その他新興市場の新規公開企業の総資本営業利益率が、公開後、低下する特性があることを指摘して、その他新興企業では上場審査基準がゆるいために審査が果たすべき企業の選別機能が機能していない可能性を指摘した(日本経済新聞2009年5月15日)。
 この研究は興味深いのだが、ジャスダックについても、問題企業の指摘は複数あり、その他新興市場に比べて、審査における選別が異なる形で機能しているといえるのか、少し疑問が残る。鋤[林瑜さんに聞きたいのは、この3つの市場が独立していればよいいのだが、実際には市場間で企業が動くことをどう処理されたかだ。
 細かく言えば、重複上場企業や市場間を移動する企業をどうデータとして処理されたのか。
 2001年から2006年に新規公開した936社のうち2008年9月末まで継続して上場している853社が対象だとのこと。とすると重複については
 たとえば日本駐車場開発(2005年1月東証一部 2005年3月東証一部上場のままJASDAQにも上場)
     チムニー(2005年2月JASDAQ上場 2008年12月東証二部にも上場 MBOにより2010年4月上場廃止)
     ヤフー(1997年JASDAQ上場 2003年東証一部に上場 2007年2月東証一部上場のままJasdaq再上場)
 あたりはかからないだろうか。またジャスダックから東証に「昇格する」企業は、マザーズから東証に比べて数が多い。ヘラクレスから東証に昇格する企業は少ないとされる。このような市場間移動をこの場合、どう考えればいいのか。
 また3市場をみたとき、市場ごとに企業の特性が違うのではないか。とくにその他新興市場の企業は、格段に規模が小さく財務的にも不安定だという特徴があるのではないか。それが総資本営業利益率にも反映しているのではないか。
 
 公開企業の質の低さについて鋤[林瑜さんの以下の指摘は参考になる。原因は3つあるという。
「第一が、高い公開価格での新規公開を実現させようと、費用の繰り延べ計上や収益の繰り上げ計上で公開前の経営実績をかさ上げするという「公開前のお化粧」である。第二が、新規公開で調達した資金を寝かせたり、不必要な負債返済や無謀な事業拡大に使ったりする非効率的な資金使途である。第三は、新規公開後、創業者利益を手に入れ、持ち株比率が小さくなった経営者が経営努力を怠る方漫経営である。」
 そして複数の市場間の競争が「公開企業数の獲得合戦になっており、公開企業の開示した情報の真偽性を不問にしがち」また「主幹事証券会社間の上場審査の同質化と形式化」も「公開企業の質の低下に拍車をかけた」としている。

 2010年10月にヘラクレスとジャスダックが統合したとき、上場規則に「営業損益と営業キャッシュフローが4年連続赤字で、どちらかが1年以内に黒字化しない場合は上場廃止」という項目が追加されたとのこと。しかしこれも東証の時価総額基準の見直し同様に上場廃止基準の強化である。
 どうにも分からないのは、上場審査自体を厳正化しない取引所の姿勢である。問題は取引所が、審査基準をゆるめるばかりで取引所の上場審査の本来の役割(=企業の選別機能)を果たしていないことにあるのではないか。審査基準以外の問題として、取引所の上場審査が、公認会計士、弁護士など公的資格を背景にしていないことが指摘される。審査はマニュアルに沿って機械的、形式的に行われるとされ、書類や数値の確認に追われる様子が想像できる。必要とされる知識が、企業内部のことも含め高度化しているのにスタッフの養成は徒弟制で陣容は貧弱とされる、かつスタッフは異動が原則。不祥事の続発を防げない取引所上場審査部はその力量がかねて疑問視されており、専門知識で武装したもので人員の再構成を図るなど根本的な陣容の見直しが必要なのではないか。

参照
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Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in July 25, 2010
Corrected and reposted in January 3, 2011
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