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Entrance for Studies in Finance

財務比率分析 

財務比率分析financial ratios analysis
Hiroshi Fukumitsu

 財務管理論は企業財務に関する経営者の意思決定を扱う学問だという言い方がある。その意思決定の主要分野としては、投資決定、資金調達(資金構成 具体的な資金調達方法)、配当政策(得られた利益の配分、処分方法の決定)の3つがあるともされる。
 ところで意思決定のさらに前提になるのが、過去および現在の企業の財務内容についての財務分析である。
 そしてこの財務分析の手法の伝統的な手法として財務比率分析がある。これは定量的分析(定量分析)(quantitative analysis)でもある。ここでは財務比率についてどのような数値があるか。その意味合いを述べ重視される指標の変遷(それをもたらしたガバナンス構造の変遷)を明らかにする。なお財務分析には、定量的分析のほかに、戦略や人や技術などについての定性的(qualitative)分析がある。
 時間的変化とともに同じ企業に生じている変化や変遷を明らかにするlongitudinal analysisと、競合相手など他社との比較cross sectional analysisとがある。

財務比率分析の枠組み
 財務比率分析で日本ではまず重視されるものとして収益性profitabilityがある。また収益性を補う視点として成長性さらに効率性efficiencyが強調されることがある。収益性と対比的に重視されるものとして(合わせて)安全性stability(あるいは債務弁済能力solvency)があり、、さらに安全性を補う視点として流動性liquidityが指摘される。 
 一般にみられる財務分析では、これらの関係は並列的である。たとえば「財務分析」(wikipedea)は分析の角度として、収益性、安全性、効率性、成長性をあげている。また「財務分析」(経営に役立つ財務分析)は、経営分析を定量分析と定性分析に分けた上で、定量分析の中を、収益性、成長性、生産性、安定性の各分析に分けている。「財務分析」(ITPro)は、収益性、安全性、生産性、成長性、株主関連指標に分けている。しかし論理的には、収益性と安全性を対比的にとらえ、そのほかの分析をこの対比を補完するものと位置付けるべきだろう。
 
Reference
1)辛磊 易兰华 主編 企業管理概論 第2版 上海財経大学出版社 2012
2)V.Lanjigian and others, The Forbes CFA Institute Investment Course, Wiley, 2011.
3)Wiilaiam G.Droms and Jay O.Wright, Finance and Accounting for Nonfinancial Managers 6th ed, Basic Books, 2010
4)Karen Berman and Joe Knight, Financial Intelligence for IT Professionals, Harvard Business Press, 2008.
5)葛正良編著 証券市場学 立信会計出版社 2008
6)John A.Tracy, J.K.Lasser's Financial Basic for Business Managers, John Wiley & Sons, 2002.
7)David Campbell and others, Business Studies, Butterworth-Heinemann:1999, pp.53-73

重視される指標の変化とその意義
 次に注目されるのは教科書的な分析では、時代とともに、重視される分析や指標に変遷があるということである。
 まず収益よりは成長が重視された時代というのは経済成長が早かった時期に対応する。右上がりの経済成長の時期には、ともかく売上高などの規模(あるいはその拡大)が重視された。それが成長の鈍化とともに、利益の重視や、その資産(自己資本)と対比した効率性に焦点が移り、最近では資本コスト、すなわち資本調達コストを超えてどれだけ新たな価値を生み出しているかが問題にされ、さらに最近は資金効率に議論が移っている。企業の業績改善で財務セクションが能動的に何ができるかが問われるなかで、資金効率の改善が問われるようになったといえるのではないか。
 売上高 ⇒ 経常利益 営業利益 ⇒ ROA ROE  ⇒ EVA(=NOPAT-資本コスト額) ⇒ cash conversion cycle
 量中心 ⇒ コスト(経費)意識 ⇒ 資本効率 ⇒ 資本コストとの比較 ⇒ 資金効率(運転資本回転期間)
NOPAT net operating profit after tax
 なお上記の指標のうちEVA(経済付加価値)については(キャッシュフロー計算書)で述べる。  

 なお今後もこうした関心の変化は生じるであろう。大事なことは、その変遷を引き起こす社会的な背景をよく理解することである。また私たちはそうした関心が変化してゆく社会に生きているのであるから、今何が問題にされているか、さらにこれから何を問題にすべきかを自身に常に問いかける必要がある。新たな分析の観点や指標の開発に私たち自身が参加する必要もある。
 なお投資分野としての収益率をみるときは、投資対象としての効率性を判断しなければならないのでたとえば1株当たり利益(EPS)、株価当たり配当率dividend yield、など投資指標を用いる(株式関連指標として後述)。

Ⅰ.いろいろある利益概念がまずは採算性profitability:profitability ratios:収益性:企业获利huoli能力分析fenxi 
 採算性も問わず? 規模(売上高など)を問題にしていた段階が最初にある。その次に採算性を議論するようになる。

 販売価格
 製造原価
 粗利益 gross profit
 輸送費・包装費など
 販売費
 overhead cost
FIFO
LIFO
売上高利益率 return on sales ratio

EBIT eanings before interest and tax :事業利益 と呼ばれることがある 営業利益とほぼ対応
 営業利益
 経常利益(営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を引く)
 純利益(経常利益に特別利益を加え、特別損失と税金費用を引く) have to satisfy the shareholders
 包括利益(長期保有の株式などの時価の変化、海外子会社への出資金など外貨建て資産の為替レート変動額などを純利益に反映させた数値)

●gross margin: be aware of rising costs or inappropriate discounting
       : shows basic profitability of the product or service (B&K, 146,150) 

 粗利益=売上額  ー 売上原価  
売掛債権↑  売上原価↑
粗利益gross margin=gross profit/ revenue
 債権の増加が利益の押し上げと認識される可能性がある。⇒CCC分析による補完(後述)

 在庫の増減が売上原価を通じて当期利益に影響する 
売上原価=期首在庫 + 当期仕入 ー 期末在庫
      仕入債務↓  棚卸資産↑
 在庫の増加が売上原価を押し下げ、利益を押し上げる可能性もある。⇒CCC分析による補完(後述)

 営業利益はでているか 販売管理費が利益を圧迫していないか* 
              
 経常利益はでているか 少ない→金利負担が大きいのではないか

●operating margin=operating profit/revenue
operating margin: how efficiency the business is operating
 return on sales(ROS)

销售xiao1shou4利润率li4run1lv
 売上高営業利益率 その高さは高採算企業である(採算のよい事業基盤、堅固な事業基盤をもつ企業である 高シェア企業で価格支配力がある)ことの証明 採算性の基本指標とされる

 2011年3月期売上高営業利益率ランキング(上位の数字であることに注意)
 1)国際石油開発帝石 56.2%(+1,2)
2)ファナック    42.5%(+20.8) 
 3)日本電気硝子   30.1%(+0.5)
 4)武田       25.9%(-2.8)
 5)SMC        25.2%(+13.6)
 6)JR東海      23.2%(+3.5)
 7)ソフトバンク   20.9%(+4.1)
 8)NTTドコモ     20.0%(+0.5)
 9)テルモ      19.1%(-1.0) 
 10)田辺三菱     18.7%(+3.5)
 こうした収益性分析では、同業種に属していても個々の企業の収益性に違いがなぜ生じているかを、説明できるようになる必要がある。
 営業利益はでているか(本業の収益を求める) 注目点:販売管理費が利益を圧迫していないか 
 経常利益はでているか(営業外損益 大きなものとしては金融収益・金融費用を考慮) 注目点:金利負担がどうなっているか。

●net margin: its highly variable from one industry to another
 net profit margin = (net income)/(sales)
 純利益

次に 資産利益率そして自己資本利益率が問題になる
●ROA: return on assets, simply shows how effective the company is at using those assets to generate profit
 総資本利益率:资产zi1chan3报酬bao4chou2率lv 利益として用いるものはケースによって 経常利益 純利益など
ROA=(R/S)×(S/A)
なお厳密に考える場合は期初と期末の各資産価値を合計の平均値をこの場合の資産価値(=A)とする。
●ROE: return on equity, it tells us what percentage of profit we make for every dollar of equity invested in the company
 自己資本*純利益率:资本ziben収益率shouyilv ここでは利益として一般に純利益 を用いる
 なおすでに述べたように厳密には資産、負債、資本などストック項目は期首と期末の平均値を用いる。
 ROEは株主にとって株主重視経営が主張されるなか重要な指標とされることがある。
 DuPont system or DuPont equation
ROE=(R/S)×(S/A)×(A/E)
 自己資本利益率=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
         =採算性×資産効率×負債の活用度
 自己資本利益率は資本効率 株主から預かった資本を効率的に使っているかを示す指標
 採算性に加えて 資産効率 負債の活用度が 考慮されている。
 設問 自己資本利益率の3要素とはなにか。 

 株主の立場からは配当性向payput ratio=配当金/当期純利益
配当利回りdividend yield=配当/株価
 あるいはその逆の内部留保率=留保利益/当期純利益
 内部留保率が決まると自己資本の成長率は 内部留保率×自己資本利益率
なお1980年代後半のバブル期以降、日本の上場企業の間では配当性向や配当利回りdividend yieldの上昇傾向が知られています。
 例 野間幹晴 本多俊毅『コーポレートファイナンス入門』共立出版, 2005年, p.119(図5.11 1986-2004). 

Ⅱ.対極的な考え方がある負債:安全性についての理解 肯定的とらえ方と否定的とらえ方

安全性分析leverage(capital structure) ratios
 この項目の比率はcapital structure(leverage) ratiosと総称される。
 負債比率 debt ratio = debt / asset
 負債自己資本比率 debt equity ratio = debt / equity
equity multiplier = asset / equity

 負債についての考え方は、負債を拡大して自己資本を効率的に使う(少ない自己資本で借り入れで事業を拡大する 攻めの経営)という考え方と、負債を減らして財務内容の改善に努めるか(守りの経営)で、正反対である。 
 安全性の分析(アーク会計)は、健全性、流動性、固定性の3つに分けている。他方で安全性の分析(会計屋さんのメモ帳)は、短期的安全性、長期的安全性、金融支払い能力に分けている。一般的にこのような安全性分析は、内容としては、負債を抑える考え方。これに対して、負債が資産規模拡大(あるいは自己資本利益率拡大)に役に立つというのは、あるいは負債のレバレッジを活かしているといった表現では、負債は肯定的に捉えられる。
 どちらの立場に立つかは、企業が置かれている競争環境に加えて、今の段階で過大な負債の取り入れになっているかが判断基準の一つ。その判断基準の一つはデットエクイティレシオ(DE ratio)あるいは負債依存度である。DE ratioは理想的には1以下。しかし設備投資が多い業種では、伝統的に高い値になることもある。3を超えるのは行き過ぎとされる。

●負債自己資本比率debt-to-equity: weather a company will be able to pay back a loan
: bankers use it determine weather to offer a company a loan(B&K)
英語でdebt equity ratio 日本語では負債自己資本比率 負債純資産倍率 などさまざまな言い方があり注意が必要。
 debt equity ratio=debt/ equity=有利子負債/株主資本=負債純資産倍率
 負債純資産倍率は1倍以下が理想的とされる      1.36倍(上場企業2001年度)
Most industrial businesses stay below 1. They don't want to take on too much debt...Public utilities and financial institutions have much higher debt to equity ratio than 1 .(Tracey, p.104)
 しかし同時にgearing or leverageの比率すなわちレバレッジ効果leverage effectの比率でもある
 ROE=R0A×(A/E)=ROA×(E+D)/E=ROA(1+ D/E)
(E+D)/E あるいは D/E は財務レバレッジ(係数)と呼ばれることがある。この比率が大きいほど負債比率も高い。
 この式をleverage effect equationとよぶことがあります。
 例題 ROA:8% DEレシオ:120% なら ROE=8%(1+1.2)=17.6% これはRを区別しないとき
 ROAのRとROEのRを区別するときは
    仮に ROEのRは税引き後利子支払い後利益(純利益)
       ROAのRは税引き前利子支払い前利益(EBIT事業利益)とすると(表現に税金を入れて現実に近付けると)
    ROE=(1-t)×{ROA+(ROA-i)×(D/E)}
 例題 ROA:8% i:4% DEレシオ:120% t:40% なら
ROE=0.6×(8+4×1.2)=7.68%      
 (なお負債のコストは一般的に自己資本のコストより低いと考えられている。これは負債は自己資本に比べてリスクが抑えられているからで、したがって負債比率を高くした方が総資本コストは低下すると考えられる。資本コストを下げるためにも負債比率を増やすという考え方がここからでてくる。)
 負債には節税効果tax saving effectがある。これは利払い費用を経費とできることで、利払い額×税額の税金支払いが、企業の利益に役立つ支出に使われて、かつ節税になっているとみるものである。
 つまり負債を増やすことにはレバレッジ効果と節税効果という2つのプラスの効果(資本コストを入れると3つのプラスの効果)、あるいは企業経営者から見た誘因がある。
単純にdebt ratio 負債比率といったときはassetに占める比率を問題にしている。
 debt ratio = debt / asset 
 中国語では分母、分子の順に言うので言葉が逆転する。すなわち资产zi1chan3负债fu4zhai4比率

損益分岐点分析とscissors effect鋏効果
 負債比率が高い企業は、固定費である金利費用(負債費用)が高くなり、損益分岐点売上高が上昇して、金利費用が変化しないとしても景気の変動に耐えにくくなる(弱体化する)。このような負債比率の変化によるリスクは財務リスクfinancial riskと呼ばれることがある。
 なお金融費用を除外して(算入しない状態での)損益分岐点分析はoperating break-evenといいます。他方、金融費用まで考慮したものはtotal break-evenです。損益分岐点分析は昔の教科書では一つの章を与えるほど重視されていた項目です。
 損益分岐点は固定的なものでなく、景気循環の進行とともに可変費用(原料費用など)、固定費用の水準が変化して、変化してゆくものとして考察する必要があります。
 コストと収入との関係で、時間の経過とともにコストが上昇。粗利が減少する時の効果をsissors effectと呼ぶ。時間の経過とともにコストが上昇。販売価格を引き上げられないもとで企業は行き詰まります(企業が市場で価格支配力を持たない状況 そして費用を統制できない状況を示しています)。

 負債の増加は、金融機関や取引相手の対応に変化を生じさせ、取引条件の悪化。最悪の場合は事業継続の懸念から取引停止に至る。しかしそこに至る前に条件の変更や負債費用の上昇が生じるだろう。金利費用の上昇、あるいは借入条件の悪化(短期化 小額化 担保の追加の要求 さまざまな財務上の条件の追加など)が生じ拡大する。
 過度な負債を控えようとする意思は、この財務リスクへの考慮から生じるといえるだろう(この財務リスクは、債権者が企業経営のあり方について干渉する程度を高めてくる、経営の自立度が低下する、ということでもある)。
 逆にいえば、財務条件を改善することで、取引条件を改善してゆくこともできる。

●インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+金融収益)/金融費用  5.18倍(全産業平均 大きいほど良い)
interest coverage ratios: how easy it willbe for the company to pay its interest
             : gets too close to 1 is obviously a bad sign
times interest-earned ratio= EBIT / interest
 times interest earnedとも呼ばれる数字は、interest coverage ratioと呼ばれる数字とほぼ同じである。 

有利子負債対キャッシュフロー倍率(=債務償還年数)  8.0年(全産業平均)この数値はちいさいほどよい。
 この逆数 キャッシュフロー対有利子負債比率も使う この数字は高いほどよい。キャッシュフローにもさまざまな定義があるが とりあえず 
  CF=当期純利益+減価償却費ー配当金
  CF=当期純利益ー社外流出+減価償却費

 負債それ自体は悪いことではない。ただ、負債の支払いに見合うだけの売上がないと問題だ。負債の多少を知る目安になるのは、資本総額に対する長期負債の割合で、・・・これが20%以上なら多いといえる。(アーサーレビット『ウオール街の大罪』日本経済新聞出版社, 2003年, p.198)
 負債の問題はどの程度を自己資本でまかなうかという問題と裏表である。つぎのように自己資本でまかなうべきとの議論がある。

△固定比率:純資産(あるいは自己資本)に対する固定資産の比率で100%以下が望ましい。固定資産が純資産(自己資本)でどの程度賄われているか。低い数値がよい。
△固定長期適合比率:純資産(あるいは自己資本)と固定負債の合計に対する固定資産の比率で100%以下が望ましい。固定資産が純資産と固定負債でどこまで賄われているか。低い数値がよい。固定資産/(固定資産+自己資本)
 株主資本比率 株主資本÷総資産×100    32.8%(全産業平均2000年度)
 業種により数字のばらつき大きい。飲食業・小売業は低い。

 別の個所でもお話していると思いますが、不良債権が発生した場合、一つは償却(直接償却)といって切り捨てる(損失として計上する)ことをします。それだけ資産が減ることになります。そのとき、債務(負債)が資産を超過してしまうことを債務超過といいます。これは財務の破たんを意味しています。つまり資産が減るときに、資本(自己資本)の厚みが問題になるのです。不良債権に対処するもう一つの方法は、不良化(予想される損失)に見合った貸倒引当金の計上です。こちらは間接償却といいます。

なお債務返済能力solvencyという概念がある
英語ではdebt paying ability: solvencyである。
solvency:the ability of a business to pay its liabilities when they come due (Tracey, p.102)
debt to capital ratio
debt to equity ratio
financial leverage
solvencyの逆はinsolvency:inability to meet financial obligationsであり支払い不能状態を意味する。そしてそのことを裁判所が認めた状態が法律的な意味での破産である。なお企業が破産した後には清算するか再生に入るかの選択(債権者にとりどちらが有利かが問題になる)がある。

 金利費用の増加が企業財務を圧迫することのとらえ方としては、カバレッジレシオの低下というとらえ方があります。もう一つのとらえ方としては、損益分岐点分析における固定費用の増加(損益分岐点売上高の上昇 後述)です。

liquidity ratios 流動性分析(すでにみたように流動性は安全性の一部とも考えられる)
● current ratio = current assets / current lib.
current assets are those can be converted into cash in less than a year
less than 1 is too low, going to run short of cash (B&K, 160)
The general expectation is that the current ratio for a business should be 2 to 1 or higher. Most businesses find that creditors expect them to maintain this minimum current ratio. (Tracey, 102-103)
 流動比率=流動資産÷流動負債×100          111%(上場製造業2000年度)
中国語でも流动liu2dong4比率bilv
 理想的には200%以上(two to one rule) 100%以上が必要 100%-120%が目安という言い方がある 
 流動資産額>流動負債額 これが崩れる時 つまり分母が増えるのは短期運転資金のための借入が増えているのでは?
 このように短期負債の増加は危険のシグナルになる
 なお固定資産は資金の回収に時間がかかるから、固定資産<(純資産+固定負債)となるべき。これが崩れているのは固定設備資金を長期資金で賄えていない?としてやはり要注意のシグナルになる。 

● acid test or quick ratio = ( current assets - inventories ) / current lib.
an indication of the customer's supply of ready cash compared with its current liabilities
quick ratio: shows how easy it would be for a company to pay off its short-term debt without waiting to sell off inventory or convert it into product (B&K, 160-161)
because only cash and assets quickly convertible into cash are included in the amount available for paying current liabilities (Tracey, 103)

●当座比率=当座資産÷流動負債×100  
 当座資産は英語ではacid testとかquick ratioと呼ばれる。
中国語では速动su4dong4资产zi1chan3比率
 80%以上が必要
 当座比率= 当座資産/流動資産
 当座資産= 現預金、受取手形、売掛金、一時保有有価証券
 100%を下回ったままでの当座比率の低下 → 危険
 一般的には100%以上とか 150%以上とされる
●cash ratio = ( quick assets - accounts receivables ) / current lib.
cash = cash + market securities
quick assets = cash + market securities + accounts receivables
△現金比率=現預金/流動負債 即時の支払能力 理想的には20%以上

 *1)自社株買いや2)有価証券など資産の評価換算差額、3)新株予約権(発行時の払い込み金額)さらに4)少数株主持分などがあり、自己資本概念は近年再定義されています。1)自社株買いで購入した自己株式を、資本金、資本剰余金、利益剰余金に加えたものが株主資本です。つまり自社株買いは市場に出回っている株数を減らしますが株主資本が減るわけではありません。この株主資本に評価換算差額を加えたものが自己資本です。保有している株式の時価変動が自己資本の変動につながるのは、この組み立てのゆえです。この自己資本に新株予約権(発行時の払い込み金額)と少数株主持分(50%以上出資の親会社が存在する場合に親会社以外の持分)を加えたものが、純資産になります。つまり親が存在するときは親から見た利益率を自己資本利益率などで測定することになります。鈴木芳徳「自己資本という問題」『証券市場と株式会社』白桃書房2007年3月, pp.44-59.
 ここでネット上の分析も参照すると、「企業の効率性・収益性」(N's Spirit投資学教室)や「収益性の分析」(アーク会計)は、利益率(収益性)と回転率(効率性)を組み合せている。また「収益性の分析」(会計屋さんのメモ帳)は、利益率等、回転率、損益分析に分けた上で、株式関連指標を別掲している。すなわち収益性の分析は、効率性の分析で補われるというのが一般的な認識だろう。
この効率性の数値が低下あるいは悪化していることは、企業の状況が悪化していることの判断に使うが、その点はあとで改めて述べる。

Ⅲ.効率性分析の時代 資産効率性から資金効率性へ
 現在の財務分析の主流は効率性分析である。積極的な設備投資に踏み切れないなか、企業は保有している資産の効率化を求められている。売上が伸びにくい中で、負債や在庫を削減(総資産を圧縮)して、資産回転率を上げることが財務の戦略として重視されるようになった。この点でサプライチェーンマネジメントシステムの意義が浮かびあがっている。それと同時に大震災などのリスク(日常的にも供給配給の途絶をもたらす、さまざまなリスク要因がある)への備えをどうするかも問われるようになっている。
 さらにその中でも、財務部門が戦略的に取り組める資金効率の改善が重視されるようになってきている。

●total asset turnover 総資産回転率
asset turnover ratio
it gauges efficiency in the use of all assets
 1に近い数値:relatively asset heavy
 年商と総資産との対比 中小企業 1.0(製造)-1.3(非製造)
 年商が総資産の何倍か
 数字が小さい:過剰な設備投資 資産(在庫)のかさ上げ
  ポイント:売上高(年商)とともに分母に注目する
 このほか固定資産回転率を用いることもある 総資産回転率や固定資産回転率は投下資本の長期効率性を評価している。この数値を改善するうえで、負債を削減したり資産の証券化(後述)を図ることで、資産の圧縮を図ることの意義が見えてくる。

2011年3月期 総資産回転率ランキング(上位の数字であることに注意)
1) トヨタ車体 3.49
2) 関東自動車工業 3.19
3) カルソカンセ 2.38
4) 日産車体 2.05
5) トヨタ紡織 1.95
6) コスモ石油 1.75
7) JT     1.73
8) 雪印メグ  1.73
9) 日野自動車 1.72
10) 日本ハム 1.67

活動の効率性 operating efficiency or activity ratiosの重要性
在庫 売掛債権 買掛債務 いずれも分母にするときは期首期末平均残高を用いる。サプライチェーンマネジメント(ジャストインタイム)の徹底で在庫を圧縮する意義が浮かびあがる。このような手法は、お金の面では運転資金の圧縮につながる。必要な資金の圧縮は、見方を変えれば資金を生み出している=資金の内製化ともいえる。
 他方でこの効率性分析は、売上が増えても資金回収が進まない現象(資金回収に遅れ)、在庫が増えて売上原価が改善して見かけ上は利益が増える現象、などを分析するのにも有効だ。

●inventory days(days in inventory:DII)
inventory turnover ratio(stock turnover)
inventory turnover days
在庫回転期間=(平均在庫×360)/仕入高
 在庫回転期間=(在庫×12)/仕入高     (何カ月分の在庫があるか)
 在庫回転期間の伸び → 売れ行き不振?

●days sales outstanding(average collection period, debtor days)
平均回収期間average collection period
accounts receivebale turnover ratio
accounts receivables turnover days
(期末の売掛債権×360)/売上高
 売掛債権回転期間=(売掛債権×12)/売上高 (何カ月分の売上債権があるか)
 売上債権回転期間の伸び → 資金回収の遅れ?
the lower the better
the person responsible for cash mangement likes to see debtors days much lower than creditor days

●days payable outstanding(creditor days)
 平均支払期間average payment period
accounts payable turnover days
(期末の買掛債務×360)/仕入高
買掛債務回転期間=(買掛債務×12)/仕入高 (何カ月分の買掛債務があるか)
 買掛債務回転期間の短縮 → 業務不振?

 売掛債権回転期間<買掛債務回転期間 となると資金的には余裕(回転差資金)が生まれるとされる。 

運転資本回転期間CCC(cash conversion cycle or working capital turnover)=在庫回転期間+売掛債権回転期間ー買掛債務回転期間 この日数が少ないほど現金を早く取り戻すこと(資金繰りが楽であること)を示します。財務セクションとしては在庫の圧縮を各事業部門に指示するとともに、売掛金の早期回収、買掛金の支払い延長(支払条件の変更)に取り組むことを意味しています。

利益管理 損益分岐点分析 break-even analysis
財務管理と重ねて理解されるのが利益管理という言葉である。損益の管理の問題、目標とする利益に向けて費用、現実の費用や売上はどうなっているか。そこから費用をどのように管理するか、売上目標をどのように設定するか。などが議論される。かつての教科書では、損益分岐点分析だけで一つの章が立てられるほど、重視されいた。
 よく考えてみれば、経費を賄える売上高を上げられるかは、どれだけの金利負担(負債)に耐えられるかという問題にとり大きな制約である。

損益分岐点分析(Office HIMI) 総計と個別費用とに分けて説明している。
損益分岐点分析(ITpro)固定費水準の違いが与える影響
 固定費を上回る売上高の大きさ
 総費用を上回る売上高の大きさ
 線形は成立するか 割引がない 規模の経済 規模による固定費の違い

鷲野健次さんの本から財務分析を拾う。財務分析を用いて、取引先企業の異常を検知、判断することがあるとのこと。 

 売上高の大幅な減少傾向⇒重大な事態の可能性 (減少要因の速やかな把握)
 売上高の大幅な増加(運転資金借り入れができているか)
 営業利益の赤字(=利息を支払えない状態にある 企業の存続条件を満たしていない 新規融資 新規取引は停止が必要)
(鷲野健次『与信管理の達人』きんざい, 2011年, pp.70-71)
 経常収支比率が100%割れしている場合(⇒粉飾の可能性 100%越えている場合も回転期間が業界平均より高くないか確認)
 キャッシュフロー比率(運転資金を除く借入金を返済するの何年必要か)が10年を超える場合
 支払手形の増加 そして急減
 当座比率が80%を切る場合
 インタレストカバレッジレシオ(利払い能力)が1を切る場合
 デットカバレッジレシオ(資金調達力)の100%越え
 回転期間分析
 売上債権回転期間(業界平均に比べて長い:不良債権の内包の可能性 長期化:資金の固定化あるいは不良債権累積の可能性、無理な売上計上の可能性)
 棚卸資産回転期間(長期化:不良品、仕損じ品の資産への混入 仕掛品の過大計上 不良棚卸資産の増加 販売不振に対する生産調整の遅れ 返品の増加 逆に:期末の大型受注、来期の売上のための仕入れなど良い兆候のケースもある)
 買入債務回転期間(売上債権回転期間とほぼ同時に長期化したときは融通手形*操作の可能性あり 棚卸資産回転期間と同時に長期化する場合は棚卸回転期間の長期化は期末の大型受注、来期の売上のための仕入れなど良い兆候のケースと判断される)
 (鷲野健次『与信管理の達人』きんざい, 2011年, pp.151-160)

 企業の健全性を知りたい、という場合は棚卸資産と売掛金をみるのが一番だ。どちらかが売上高の伸び率より急カーブで増えていれば、何か問題が起きている。在庫が増えるということは、製造した製品がうれていないということだ。・・・売掛金の増え方が大きい場合には、顧客に商品を押し付けている可能性がある。(アーサーレビット『ウオール街の大罪』日本経済新聞出版社, 2003年, p.197)

収益性
profitability analysis
 消費者 経営者 投資家

 消費者にとっての価値
  ↓ 消費者余剰consumer surplus
 市場価格
  ↓   profit 
 生産費用


定性的分析の事例 SWOT分析
定性分析では、企業が置かれている環境 企業が採用している経営戦略 さらには企業がもっている人や技術など潜在的成長力に属する問題等を分析する。企業がとっている戦略、環境変化への対応力など、を総合的客観的に分析判断する必要がある。
思考の枠組みとして、よく使われるのはSWOT分析である。
SWOT analysis (valuebasedmanagementnet.com) SWOT分析は強みを生かす戦略、弱みを減らす戦略という次の手段の基礎になる。
inside-out戦略とoutside-in戦略とに分かれる。
定性的分析の事例 コアコンピタンスの分析:発見・強化

株式市場関連指標
 単純に発行済み株式数で計算した数値と潜在株式による希薄化効果を調整した数値 とがある。株式市場関連指標は、財務の数値に現れた企業業績と、株価との関係をみている。その意味で、財務分析の応用としての側面が強いのではないだろうか。

earnigns per share:EPS 1株あたり利益 
basic EPS
diluted EPS or fully diluted EPS 潜在株式調整後EPS
dividend yield:配当利回り:股息gu3xi1収益率shou1yi4lv
総合利回り:持有期chiyouqi1収益率shou1yi4lv
price-earnings ratio 株価収益率 PERの逆数は益回り:股东gudong权益quanyi报酬率baochoulvという
wether a company valued high or low in comparison with other stocks
 株価純資産倍率PBR
 株価キャッシュフロー倍率
 株価売上高比率
なお1980年代後半のバブル期以降、日本の上場企業の間ではPERやPBRの低下傾向が知られています。
 例 野間幹晴 本多俊毅『コーポレートファイナンス入門』共立出版, 2005年, pp.160-161(図7.2 図7.3 ともに1986-2004). 
 
参考

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. 
originally appeared in April 14, 2009
corrected and reposted in Feb.23, 2012 and February 2, 2013.

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4 Critical points for Critical Reasoning Questions for MBA CET Exams

https://www.mbarendezvous.com/di-lr/critical-reasoning-in-mba-entrance-exams/
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