Entrance for Studies in Finance

Research: 不動産投資信託(REIT) 再論 

不動産投資信託(real estate investment trust REIT)について

REITの仕組み
 投資法人は資産運用会社に資産運用を委託。
 他方で資産運用会社にはスポンサー企業が出資・人材派遣。
 実態として投資法人は資金プールの場所ともいえる。
 不動産の賃貸契約は2年が一般的。5年以上もあり、商業施設では20年以上のものも(長期間安定している)。
 多くは6ケ月決算。所得の90%超を分配することで法人税課税を受けない。
 低収益物件を売って資産入れ替えで収益力を改善することもできる。

REITの長所
 購入価格は1口10万ほどのものからある。分散投資効果がある。利回りが高い。 
 為替変動の影響は外人投資を通じてある。
投資法人が上場 株式のように売買できる 賃料が分配源であるから無配となるリスクが低い
 不動産投資の小口化を実現したもので高齢化社会を支えるインフラの一つともされる
(なお2010年秋から機関投資家を対象に非上場のREITの設定が始まっている)
 銀行借入 投資法人債の発行でレバレッジ効果を発揮して投資効率を高めている
 不動産より流動性があり 分散投資でリスクも低下しているはず
 現状はNAV倍率(株式のPBRにあたる)は1を下回った割安水準にある
 配当が大きいので配当を再投資した場合の総合収益(相場変動効果+再投資効果)では値下がりしにくいとされている。
 (もっとも配当を再投資するという計算そのものは、個人投資家には非現実的であるが)

REITの短所
 価格変動リスクが大きい。流動性リスクがある。価格変動が大きくなりやすいのは、金融機関や外国人に偏った保有構造に原因があると
 されている。(この考え方は株式についてもなぜ個人投資家が望ましいかという議論でよく用いられる。個人投資家については、相場とは
 逆の動きをするという意味でバッファーになるという考え方と、長期的観点からの長期的投資家になるという考え方とがある。これに対し  ていわゆる機関投資家は短期的観点からの短期的投資家になりやすいとか、行動が一方向に揺れやすいと議論されている。これらの「仮説」そのものがまだまだ実証的に検証される必要がある。)

  市場規模が小さく(2010年4月末で3兆円強) 海外投資家など多様な投資家の呼び込みに限界

  発行会社 不動産会社のほか 物流会社 事業会社に広がる 本体の資産 負債を増やさずに事業展開を加速できるメリットがある
  投資家の主体は国内金融機関 公務員共済組合 などで個人ではない(2004年には2割近くまで上昇 その後低下)
  2010年5月下旬の投資家構成 投信含む金融機関46.7% 外国人26.4% 個人投資家13.9% 事業法人13.0%
(みずほ證券調べ)
 主たる売り手 地方銀行
 主たる買い手 地方銀行 投信 外国人

  なお機関投資家向けに私募REITも発行されている(生保などではオフィスビルヤインフラに直接投資もしている)。私募REITは取引所の審査が不要であるため、機動性に優れている。年2回の決算時だけ価格をきめるため価格が安定している。流動性が低いデメリットがある。販売先は投資家数が50までは機関投資家に限定という規制がある。

購入するときの注目点 
 スポンサーはだれか(ノウハウ 信頼性 財務力) 有力不動産会社や名門企業がスポンサーとなっているかどうかで
スポンサーの規模や信用力が、REITの資金調達力(調達コスト)に大きな差
 また資産規模 時価総額の大小も資金調達力(調達コスト)に影響
 利回りの水準(高いの価格の低下の表れ? 低いのは賃料低下の表れ?)
 分配金が物件売却益でかさ上げされていないか。
 流動性の判断基準(年間売買の累計額が200億円以上 日本銀行がREIT買い入れの条件の一つとしたもの)
 時価総額(規模)は流動性確保の点で大事。
12末の値下がりについては投信の換金売りが原因とも。だとすると投信の存在は値動きがあれる一因となっている。

 日本のREITは、2001年9月10日上場の日本ビルファンド投資法人を含む2法人が日本初のREITで以来2011年9月で誕生15年を迎えた(16年9月2つが新たに上場。最初は住宅REITから始まる。上場銘柄数は56になった。総資産額14兆3000億円 投資口時価総額11兆7000億円 海外型が9兆円強 国内型は4兆円弱 )。時価総額では世界で2番目。2006年11月から一時は日本の不動産を割安とみた外資ファンドの流入でその価格は急騰した。時価総額は2007年5月末約6.8兆円のピークに達した。なお2012年3月末に33銘柄 時価総額約3.5兆円。

 投資対象はオフィスビル、ショッピングセンターなど商業施設、住宅、物流施設、ホテル、ヘルスケア(医療施設のほか、老人ホーム、高齢者用住宅など)などでそれぞれに特化したものが多いが。複合型、総合型もある。一般にマンションや物流施設は値動きが安定しているが、オフィスは景気や需給に連動して不安定とされる。また商業施設は賃料は安定しているが、景気回復には遅れがあるとされる。

2012年7月現在1000弱
 現在(2012年7月現在)指数は1000弱。利回りは5%台で国債金利との利回り差が5%もある状況が長く続いている(2012年年頭も同様だった)。2012年4月半ば 平均予想配当率5.54%(2012年初めは6%%を超えていた)。

2016年5月現在1800台

 その後 REIT指数の上昇とともに利回りは低下する。REIT指数は1800台(2016年3-5月 2016年8月末 なお2016年1月には1600台に下がる 2016年6月後半も1700台に下がるなど変動を繰り返している)。この利回りには、REITの負債比率、金利、地価の水準、建設費、各物件の需給、空室率、賃料など様々な要因が影響するが、REITの相場が上昇すると、利回りは低下するという関係が基本にある。なおREITは利回りとしては不動産株より有利。不動産株は配当利回りで1-2%。REITは2%-3%(3%前後)。背景には不動産株の配当性向の低さがあるとされる。不動産株の配当性向は10-20%とされる(2016年5-6月)。REITは配当可能利益の90%超を分配する仕組みのため、利回りが高くなる特性がある。

  ほかの金融商品に比べて利回りの高いREITだが、投資商品としての人気は安定していない。株式投資におけるPBRに相当するNAV倍率でなお1を切っている状況(REIT指数で1050超えない状況 2007年5月に2600台まで高騰 分配金利回りは2%台まで低下)が2012-2013年続いていた。

 REIT指数 42銘柄(2013年10月9日上場のSIA投資法人含めて42銘柄)の時価総額の加重平均。2003年3月末を1000。
 過去最高値 2007年5月の2612
 過去最安値 2008年10月の704 NAV倍率0.5程度まで低下

   日本銀行が2010年9月に買い入れ決定。2013年年300億円規模。2014年年900億円ペース。現在(2016年9月)日銀の保有は全体の3-4%とされる。2015年12月 保有の上限を5%から10%に引き上げ。この買い入れもあり、またREITの利回りへの注目からREIT価格は上場。しかし日本のREIT価格は投資口価格(純資産価値)にくらべ2-3割高いとされる。オセアニア地域で2割弱 アメリカは9%程度。

 2011年1月5日1148.89(peak)
 2011年11月28日805.64(bottom)

 2012年初あたりから上昇に転じる

 2012年4月2日1004.16(peak)
 2012年6月4日883.38(bottom)

 2013年3月27日1700 NAV倍率1.7程度まで急上昇

 2013年5月16日1397.02

 2013年9月27日 REIT指数1503.06 前日比1.58%高 8月比16%高 3大都市圏基準地価の上昇
  分配金利回り3.6%台 東証一部配当利回り1.7%台 1日の売買代金は416億円
  NAV倍率 8月下旬1.2倍 ⇔ 1.4程度(9月末) 

 2014年に入って1500を挟む展開

 2015年に入り一度1800台

 2015年途中でも一度暴落1600台

 REIT指数は1800台(2016年3-5月 2016年8月末 なお2016年1月には1600台に下がる 2016年6月後半も1700台に下がっている) ところが新しいREITや小規模REITを中心に NAV倍率(純資産+含み益を投資口価格で割った数値)が1割れが多い(平均は1.3 2016年8月末)。このような小規模REITは流動性の面でも問題を抱えている・・・NAV倍率が1.5を超えると上がり過ぎとされる。

 なおREITは利回りとしては不動産株より有利。不動産株は配当利回りで1-2%。REITは2%-3%(3%前後)。背景には不動産株の配当性向の低さがあるとされる。10-20%しかない(2016年5-6月)。

2016年8月末 不動産投資 peakout説 つまり峠を越えたと警戒する議論がある

 2016年1-8月の不動産取引額は2兆6665億円前年同期比2割減少。2012年末の安倍政権登場後初めての減少

 オフィスビルの投資利回りは2009年の4.9%超をpeakに減少3.6%程度まで低下した・・・でもほかの物より高いけど(2016年5月末)

 マンション価格上昇の結果 首都圏のマンションの販売戸数は2016年1-6月期 前年同期比約2割減少(背景に在庫の増加) 消費税率引き上げの延期(2016年5月決定)で急いで購入する必要もなくなる 1億円以上の高額物件は順調であるため

 価格が下がる気配はない。ニーズは都心部に偏る。

 地方ではアパート投資が盛んだが 地方は人口減少が進み 空室リスク高い。

東京都心部は開発計画がありまだ大丈夫という見方もある

 日銀のマイナス金利導入(2016年1月29日)

 東京都心部のオフィス賃料は2013年末以降 上昇続く 千葉や横浜では空き室率低下がみられない

 都心部オフィス空室率は2010-2012年9%前後をpeakに減少 2015年7月5%割れ 16年2月4%割れ(2016年2月) 低下を続けている。

 人口増加続く 前年比0.89%増(2016年1月1日)

 開発計画いろいろ 山手線新駅 2020年 リニア新幹線 2027年開通予定

 人件費の高騰など建設費の高騰で発注遅れ出ている

2013年の展開 利回り差 NAVに着目
 2013年3月27日に1700のピークに達した(利回り差2.6%まで縮小 買われすぎ)。4月にはいってからは1500ポイント台(4月11日に1606.28 3%台前半 NAV(純資産価値)倍率は1.5倍前後)。5月14日に急落して1400割れとなった(終値は1383.64)。急落の契機は長期金利上昇。5月15日 10年国債利回り 壱時0.920%まで上昇 REIT買い控え広がる
 逆にNAV倍率 1倍を割ると売られすぎ。
 5月16日1397.02
 2013年4月半ば 3.71% REITの分配金利回りー長期金利 これが3%下回っていたことも資金流出の背景(2.9%) 地銀は3%が目安
 地方銀行は利益確定売りに走る。1200程度におちれば 分配金利回りは4.4%に上昇 スプレッドは3%台に
 日銀の買い入れ余地縮小も 2013年末までに残高1400億円のところ 14日時点で1360億円 13日以降は1日2億円 8銘柄について購入 購入比率はいずれも4%台
 4日続落後の5月24日のは1369.19。背景には長期金利上昇懸念 利回りの低い銘柄が下落 内外投資家が利益確定売りを出した
 2013年7月31日1312.77 前日比12.79安 31日の分配金利回りは4.03%に上昇
 2013年9月27日 REIT指数1503.06 前日比1.58%高 8月比16%高 3大都市圏基準地価の上昇
  分配金利回り3.6%台 東証一部配当利回り1.7%台 1日の売買代金は416億円
  NAV倍率 8月下旬1.2倍 ⇔ 1.4程度 
 10月以降 1400台半ばでのもみ合い続く
 10月17日 利回り差3.1% 分配金利回りマイナス長期金利 
 長期金利0.6%台 REIT予想分配金利回り3.8%程度
 1-7月の新規上場を除く増資は4409億円(2012年1年の増資調達額が2107億円 過去最高は2006年の4002億円)これは過去最高額。
1-11月のREITによる不動産取得額は2兆1000億円(2012年1年間では8000億円)。2006年の1億9500万円を上回り7年ぶりに最高額更新(2億円を超えそう)。2013年中の新規上場は6銘柄(2012年は4銘柄)。11月22日 イオンリート投資法人によるIPO 小売業を母体とする初のREIT
 REIT投信 11月下旬の残高は2兆円強で過去最高水準
 日本プロロジスリート 物流施設に特化
 星野リゾートリート 旅館など
 イオンリート 商業施設に投資 イオン系
 11月末までで2013年に入ってから3割上昇(43銘柄)。過去2年では7割上昇。
 11月末で3.7%分配金利回り平均 一部の配当利回り1.6%を上回る
 2013年12月26日時点東証REIT指数1452.2012年末比30高。

2014年に入って以降の様子
 2014年に入って1500を挟む展開。長期金利が2013年末の0.7%台から2014年に入り0.6%台に低下するなか、東証上場REITの予想分配金利回りは加重平均で3.7%。市場では長期金利+3%が分配金の目安とされるが、まさにそれを地で行く展開。
 2014年には入って始まったNISA.その投資の受け口としても、株式よりREITの方が値動きが荒くなく、分配金も高いのでより適切との意見がある。しかし借入に依存する収益構造で、賃料値上げでコスト上昇を吸収できない場合、金利上昇で利益が直撃される可能性がある。
 国際的な投資家が求める利回りは10%前後 日本ではせいぜい5%前後

 地方には波及しにくい(多くの地方が人口減)

 不動産投資との比較 投資金額小さい 値上がり益期待できる 流動性高い 利回りは不動産投資(一桁台後半)より低い 税率低い

 日銀の金融緩和 いずれ住宅金利上昇 消費税引き上げ 来年4月に8%(今年9月末までに契約完了すれば 引き渡しが4月以降でも5%の税率適用の経過措置 住宅ローン減税の延長拡大(最大控除額400万 それまでの2倍) 人件費上昇 円安による鋼材など資材価格上昇


 時価総額は2007年5月末約6.8兆円のピーク REIT指数2600台
2008年3月17日1285.34(bottom)
2008年5月7日1575.5(peak) 
 2008年9月リーマンショック
 2008年10月末 約2.1兆円ボトム
 2008年10月 ニューシテシィレジデンス投資法人が初めて破たん(民事再生法の適用申請)。
 2008年10月24日 時価総額2.3兆円 2007年5月末比で66%減少 平均配当利回り8.25%
2008年10月27日 東証REIT指数740.3(bottom)
2009年春 落ち着き始める
 2009年7月 銀行等保有株式取得機構の買い取り開始(対象は高格付け銘柄のみ)⇒相場への効果は限定的
 2009年8月 アドバンスレジデンス投資法人と日本レジデンシャル投資法人 合併に合意
 2009年9月 不動産市場安定化ファンド設立 融資対象 財務内容健全なREITに限定 金利も市中より高い
 2009年11月 公募増資再開 1年4ケ月ぶり
 2010年1月 投資法人債発行再開 1年8ケ月ぶり
 2010年4月30日 東証REIT指数999
 2010年4月末 時価総額3兆円強(世界で5番目 アメリカの9分の1)
 2010年10月 日銀がREIT等を購入する資産買入基金の創設発表
 2010年10月5日 東証REIT 966.02
法人数は2010年 多数の合併が実現 7組14法人 42法人から35法人に減少
 スポンサーの変更や再編で 財務内容や信用力の向上が期待される
2011年年初 東証REIT指数 1100台
 2011年5月末 約3.5兆円 回復途上
 2012年4月27日 日銀追加金融緩和策でETFとREITの買入増額打ち出す
不動産証券化協会
Bloomberg REIT chartに入る
Reuters REIT銘柄比較

2011年大震災前後の東証REIT指数の動き
2011年の動き
 2011年1月5日1148.89(peak)
2011年3月8日1094.95
2011年3月11日1081.25
2011年3月15日926.83(bottom)
2011年5月6日1079.89(peak)
 2011年11月28日805.64(bottom)
 REIT相場は大震災の後小康を保ったが6月以降11月末にかけて下落(結果として日経平均が大震災直前に比べて2割さげたのにほぼ25%下げた。つまり株よりも下げ率は大きかった)(2011年11月下旬に800近くまで下げる REITを対象とする商品から資金流出があるとREITの換金売りが増えるとされる)。
2012年の動き
 この2011年11月末を底に2012年1月下旬から再び上昇し3月末にかけて上昇した(3月29日には981.49)。日銀の追加緩和の効果が大きかった。4月の2日に節目の1000を回復した。
 その後ヨーロッパ情勢の悪化と続く空き室率上昇もあり5月末にかけて下落した(5月上旬で950前後。5月下旬900近くまで下落。個人が外国人が売り日銀が買い支えたとも 外人は空売りもかけたもよう)。5月都心5区の空き室率は過去最悪(懸念されていた2012年問題の表面化)。
6月に入るとヨーロッパ情勢で最悪の事態が避けられたという認識から地銀のREIT投資が回復。6月はREAT相場の復調が見られた。
 6月末から7月末 ヨーロッパ情勢から日経平均が下げる(6%)中、REITの値下がり率が小さかった(2%)。高い利回り5%台(4%台後半から5%)を背景に地銀 個人資金の流入が回復したとされる。NAV倍率も1倍程度まで戻した。(7月上旬970前後 7月下旬950前後)。
 NAVの低い銘柄が買われている。空室率も8月の大型ビル開業(ビル供給一巡)で天井を打つという見方。
 強気によめば賃料の上昇も見込める。もっとも賃料の回復には1年程度かかり賃料の上昇は来年(2013年)後半以降との読みが多い。
円高が進むと海外投資家は利益確定売りで流出する懸念がある。 
 2012年3月29日981.49
 2012年4月2日1004.16(peak)
2012年6月4日883.38(bottom)
 2012年8月16日957.33

日本のREITの問題点
 分散投資先として人気があったがサブプライム問題以降 相場長期間低迷した。金融危機では、ほかの国でも6-7割りの時価総額減少がみられたが日本でも 2007年5月末ー2008年10月20日 時価総額の減少65% 配当利回りは急上昇(8.25% 08/10/20)
逆に2005年から2007年前半までは地銀が外国人の資金流入で急騰したものであった。そしていわゆる金融危機後は資金流出により急落。
 相場としては2007年3月頃がtop(2007年5月2600台 配当利回りは2%台) 2009年3月頃がbottom(正確には5月)。
 その後 回復基調にあったが大震災を経て2011年6月以降下落11月下旬に再度ボトムに陥っている。
 そこから2012年に入って再び回復。2012年5月に少し下げたが6月に入り再び回復を続けている。
 以上のように相場変動性が極めて大きくそのリスクが高い(例 東証reit指数でみると、大震災直前1000を超えていたところから、2011年11月下旬800前後のボトム 2012年4月2日1000超え しかし今度は2012年5月下旬には900近くまで低下 2ケ月ほどで10%近く下げる)、このように変動が極めて大きく、年5-6%の程度の配当利回りではカバーできない。
 カバーできるという計算はいわゆる再投資という個人投資家では実現しにくい仕組みを前提にしていたり、観察時期を限定したもの。これに加えて株式と同様に、希薄化リスクもあり、投資リスクはかなり高いといえる。
 商品として小型。流動性にも問題がある。投資口価格が低迷したままだと、増資ができず負債の比率があがりREIIの信用力低下する懸念もある。なお2010年10月 日本銀行が買い取り開始は明るい材料。
 2011年9月末 時価総額 1000億を超えるもの10本 1000億円 14法人 
 2011年10月現在 35法人(35銘柄) アメリカなら130ほどある 米国に比べて市場に厚みがない。
 商品の種類が少なく、首都圏のオフィス物件に集中。分散投資効果に限界がある。海外投資は解禁されたがノウハウ不足、物件選定や鑑定ノコストが懸念されて手が出せない状況。

時価総額順REIT例(2011年9月末現在 東証上場35法人中 時価総額1000億円以上のもの)

REAT名称 2011/09末 2011/12末 12末利回り 主要スポンサー
日本ビルファンド 4,622 3,644(-21.1%) 4.79% 三井不動産、住友生命
ジャパンリアルエステート 3,688 2,935(-20.4%) 5.23% 三菱地所、第一生命
森トラスト総合リート 1,725 1,519(-11.9%) 6.08% 森トラスト
ユナイテッドアーバン 1,714 1,836(+7.1%) 6.30% 丸紅、クレデイスイス
野村不動産オフィスファンド 1,440 1,206(-16.2%) 6.27% 野村不動産
日本プライムリアルティ 1,420 1,296(-8.7%) 6.40% 東京建物、大成建設
アドバンスレジデンス 1,378 1,455(+5.5%) 6.06% 伊藤忠商事
フロンテイア不動産 1,325 1,210(-8.6%) 5.91% 三井不動産
日本アコモデーションファンド 1,061 1,008(-4.9%) 5.44% 三井不動産
オリックス不動産 1,009 903(-10.5%) 7.18% オリックス

資料:「日本経済新聞」2011年10月18日 金額単位は億円
不動産投信情報ポータル2011年12月30日を採用

高い利回りにかかわらずREIT投資が回避された理由。
1.価格変動リスク(値下がりリスク)が高い(値下がりリスク)
2011年9月末と同12月末を比較してみると、欧州債務危機で揺れたために、ほとんどの銘柄で時価総額は大きく下げている。これだけ価格変動が激しいと、投資資金を引きつけるのはかなり困難。なおこの3け月について下落を免れたものに、ユナイテッドアーバンと、アドバンスレジデンスがある。株式に比べてもういわゆる金融危機以降の下落幅は、大きかったとされている(この点統計的に検討する必要あり)。
以下は東証REIT指数の各年の最安値・再高値の比較である。2008年は半値以下への暴落。その2008年を除外しても年間の変動幅は20-40%に達している。5-8%程度の利回りがあったとしても、このリスクをカバーするのに十分とは言えないのではないか。
2008 (1)704.46(10/28)(2)1815.65(01/04)(2)/(1)257.74(1)/(2)38.80 
2009 (1)720.96(02/25)(2)1011.64(08/14)(2)/(1)140.32(1)/(2)71.27
 2010 (1)875.18(06/09)(2)1130.70(12/30)(2)/(1)129.20(1)/(2)77.40
2011 (1)823.92(11/24)(2)1147.18(01/13)(2)/(1)139.23(1)/(2)71.82
 2012/08/17まで
    (1)819.42(01/18)(2)1004.16(04/02)(2)/(1)122.54(1)/(2)81.60 
参考 日経平均株価
2010 (1)8,824.06(08/31)(2)11,286.09(04/02)(2)/(1)127.90(1)/(2)78.19
2011 (1)8,160.01(11/25)(2)10,857.53(02/21)(2)/(1)133.06(1)/(2)75.16
 2012/08/17
(1)8,295.63(06/04)(2)10,255.15(03/27)(2)/(1)123.62(1)/(2)80.89

2.安全神話の崩壊
 2008年9月 リーマンショック
 2008年10月 ニューシティレジデンス投資法人が初めて破たんしている(民事再生法の適用申請)。
  大型物件の購入資金調達できず。
  不動産流動化のカギは新規ローンの供給(ローンの借り換えが順調かどうかにかかっている)
  ノンリコースローンを受けてるいるがこのノンリコースで貸し手が強権発動する(返済期限を待たずに早期回収を始める)ことに問題があるとも
上場後初のREITの破たん Oct.13, 2008
REITの破綻と再建への動きAug.14, 2009

3.賃料の低下傾向の持続 リーマン直前に比べ3-5割低下
  賃料(不動産価格)の低下リスク
 現状は
  空室率高止まり8-9%
 (空室率が関係 空室率高いとそれを下げようと賃料低下 現状は空室率高止まりのまま)
  空き室率は2009年4%台。これが上昇して2010年に入ると8%台。2010年後半から2011年前半8%程度。
  賃料も低下が続いている。
 2012年以降 大型ビル完工による大量供給の効果
たとえば森ヒルズリートは森ヒルズなど高級ビル(耐震性 電源対策:非常用自家発電 防災体制:備蓄、災害時情報体制など)を中心に保有。賃料下落により利回りが低下した。加えて2010年3月には
 公募増資を行い、後述する希薄化も。市場で厳しい評価。2006年上場以来7期連続の減配。
 8-9%空き室率はなお高いという指摘 5%程度に下がる必要
 
4.増資による希薄化リスクの増加
 増資による投資口価値 希薄化懸念
 とくにNAV(PBR)で1を下回るREITの増資
 また大型物件の取得と無関係な増資 などは希薄化となりやすい
 分配金の減額リスクあり

REIT投資回復の兆候
1.環境は最悪期を脱した
 2009年春 落ち着き始める
 2009年9月 不動産市場安定化ファンド設立(官民共同出資) 優良なリートに融資先限定 金利も市中に比べ高い
 2009年11月 REAT公募増資再開 1年4ケ月ぶり
 2010年1月 REAT投資法人債新規発行再開 1年8ケ月ぶり
 2010年秋 日本銀行による買い取り開始を決定して回復傾向顕著
 
2.ITビル化 事務所の統合ニーズに加え 震災後 新たなオフィスニーズが生まれている
 賃料の下げ止まり傾向(2011年後半より指摘あり)
 湾岸含む都心部が条件 既存ビルの建て替え高層化 災害に強い大型複合ビル 
 収益力の高いオフィス(物件)を取得したオフィス系REITは評価上がるのでは
賃料の低下により需要拡大の面 
 震災後
 耐震性能 災害時の事業継続 非常用電源 地盤 高台
 免震構造 防災設備倉庫 地震保険をつけているか
 住宅地から徒歩圏

3.人口減少だが世帯数は増加で都市部の住宅需要は堅調
  人口減少はオフィスの面積需要は低下させるが
  世帯人員減少により首都圏の住宅需要は堅調ともされる
  オフィス系に比べ住宅系REATの価格指数は安定している
  オフィスに比べ景気変動をうけにくい

海外不動産を投資対象に加えるべきとの議論
  2008 東証解禁するも 為替リスク 物件選定コストの高さがネックになり進んでいない

データの探し方
  三鬼商事(東京 中央) 都心5区の空き室率(月末値)と平均募集賃料
  ビルデイング企画 都心5区の空室率 平均募集賃料
  三幸エステート(東京 中央) 都心5区の月末空室率 平均募集賃料
          三鬼商事
    2012年2月末 9.15%(-0.08) 16,846円/3.3平方メートル(+74)
          ビルデイング企画
           8.19%(+0.04)  18,569円(-5)
三幸エステート
           6%(-0.39) 19,910(+203)
空室率6-9% 賃料17,000円から20,000円/3.3平方メートル
賃料下落傾向が続いている。 
    空室率は2009年から2010年にかけて5%前後から9%近くにまで上昇。
    2011年は9%前後で高止まり。2012年は新規供給の増加で上昇予測
    (2012年3月上旬段階)
    なお大手不動産は2011年11月時点で下げ止まり、底入れを宣言している。
    これは新築の高機能ビルの状況であるか  
貸店舗は銀座で46,262円 大阪梅田で3万強 心斎橋で2万5000円強。
    2008年のピーク時の半額程度とのこと。
    2012年5月末の三鬼商事の空き室率は9.40%(+0.17)で上昇傾向。
    平均賃料は16,729円(+18) オフィス需要は今後引き締まる
    2012年6月末の三鬼商事の空き室率は9.43%(+0.03)で上昇傾向。
    平均賃料は16,763円(+34)
大阪の空き室は10.08%(-0.11)
名古屋の空き室率は11.57%(+0.18)
  シービーリチャードエリス(東京 港) 東京の大型ビル賃貸料 オフィスビル景況(取引DI)
  東京カンテイ 新築および中古のマンション価格

不動産證券化のREIT以外の手法について
さまざまな不動産証券化の手法(国土交通省)

非上場REIT
上場しないことで価格変動避ける。国内では2010年秋 野村不動産HDが初めて運用開始
 機関投資家対象 生保 地銀 年金基金 など とくに年金基金などの資金流入に期待集まる
 安定した利回りを長期間確保する 年金基金が求める年4%程度の利回りが目標
 兆機関安定した運用で年金マネーなどの取り込み図る
 
 三井不動産 三菱地所(2011年3月から) 等が追随 東京建物も検討中

私募の不動産ファンド
 内外のものがある。不動産證券化の主体は実績金額からはむしろこちら。
 運用期間3-5年が中心
 不動産ファンドに公募型と私募型があり、公募上場型が不動産投資信託だといえなくはない。
公募不動産ファンドとしての不動産投資信託 Aug.23, 2008
 しかし実態は私募ファンドともされるものが多い。投資対象を不動産にしぼり、機関投資家相手に資金を募集する。
 外資系がノンリコースローンを提供。他方はこのローンは証券化される。⇒CMBS
 借入金比率が高い。物件価格の上昇(賃料の引き上げ)に期待しているが、そこが破たんすると
 借入期間が到来したローンの借り換えができず、破たんへ。
 破たん(損失を表面化)させることを銀行側もきらってローンが延長されることも。
 金融機関に所有権を渡すか、金融機関から追加出資を得るか。
 ローンは売却される場合もある。
 またローンを買い取った側は、担保不動産の所有権を確定後、処分することも。

不動産開発の手法としては開発型SPC
 特別目的会社SPC方式が普及している(2000年の資産流動化法の施行により普及)
 開発型SPC 出資金を資産に 配当を売上高に バランスシートを膨らませずに利益を出す手法。
 ⇒なお2013年3月期(2012年4月)より不動産開発目的のSPCを連結対象にする方針(公開草案)であったが
 実施時期は1年延期され2014年3月期(2013年4月)からとなった。
 特別目的会社の連結について 

 不動産は毎月の賃料があるため証券化に向いている
 不動産の証券化は企業の資金調達方法にもなっている 
 (セールスアンドリースバック)
 保有不動産の流動化
 金融機関はノンリコースローンを行っている。

参考1
REIT投信
 REITで運用する投信、REIT投信がある。ファンドオブファンズ。REITに比べさらに小口。数千円台から投資可能。
 かつ利回りが高い。問題は価格変動の大きさ。収益率は分配金と基準価格騰落率から算定。
 高い分配金から2010年後半から一時は人気集めるが2011年後半に失速。
 純資産額順REIT投信例(2011年1月末時点)(収益率は過去1年と過去3年)
 フィデリティUSリートファンドB 6,251億円(24.5% -6.5%)
 ラサールグローバルREITファンド 4,767億円(15.6% -14.1%)
ダイワグローバルREITオープン 4,354億円(12.0% -9.2%)

参考2
ETF
各国の不動産指数との連動を目指すもの。信託報酬がREIT投信に比べ安いとのこと。

Originally appeared in December 27, 2011
Corrected and reposted in Sept.24, 2016

不動産投資信託について 現状 Nov.4, 2010
証券市場論 前期 証券市場論 後期 現代の証券市場 

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Securities Markets」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事