Entrance for Studies in Finance

ニューシティレジデンス投資法人の経営破たん

ニューシティレジデンス投資法人は2008年10月9日に民事再生法適用を東京地裁に申請し受理されたことを発表した。負債総額1123億6500万円。これは日本のREITとして初めての破綻のケースとして注目された。運用資産は1900億円で住宅REITでは業界2位。

なお2008年11月10日に同投資法人の東京証券取引所での上場は廃止日されている。

同法人の破綻によりすでに始まったいたREITの資金調達環境が一層悪化する余波もあった。
REITへの資金供給が悪化することで、REITによる不動産取得がとまり不動産市況の悪化が続く結果になっている。
借入により投資規模を拡大する手法も使えない。

2008年12月15日には政府は日本政策投資銀行を窓口にREIT向けに新たな融資制度を設けて運転資金の供給することを決めた。また不動産開発業者向けには住宅金融支援機構が新たな融資制度を設けることになった。開発計画を審査、政府保証をつけて1社20億円まで融資するとのこと。
このような特定業種向けの融資制度は異例である。背景にはREIT自体の破綻がこうして生じたほか、REITのスポンサー企業の破綻が連続したことがある。リプラス(2008年9月下旬破綻)、モリモト(2008年11月末破綻)、クリード(2009年1月上旬破綻)と続いた。それにあわせるようにREITの価格も暴落した。

2009年3月にはスポンサーのパシフィックホールディングスが経営破たん。理屈の上ではスポンサーの破綻は影響しないが、実際にはREITの資金調達力や調達条件にスポンサーの信用力が影響している。なおパシフィックをめぐっては、中国の不動産会社10社から合わせて470億円の出資を受けるという話が流れたこともあった。この資本参加の話は、その後、債務超過に陥る見込みが判明して09年1月末に白紙になったとされている。

背景にある問題は市場環境の悪化である。
オフィス賃貸料 東京・大阪とも1990年ピークに下落 その後 東京は2000年ころより上昇  大阪は2005年から上昇 2008年7月をピークに下落
オフィス空き室率 上昇中  大阪9% 東京7%(いずれも09年6月頃 07年末に2.5%まで低下後上昇) 大阪5% 東京2%(いずれも08円1月)
なお新築(築1年未満)は東京 大阪とも空き室率は3割超える(09年3月末 09年6月末)東京5%弱 大阪10%弱(08年1月末)

2009年8月6日にパシフィック傘下にあった日本レジデンシャル投資法人は、新たなスポンサーとして伊藤忠商事と同系列のREIT運用会社の選定を発表した。また伊藤忠系REITのアドバンスレジデンス投資法人と9月中にも合併すること、運用会社についても合併することを発表した。合併後の資産規模は3900億円。上場41本のうち4番目の規模になり国内最大規模の住宅系REITになる。
また8月20日には同じくパシフィック傘下にあった日本コマーシャル投資法人のスポンサー候補が国内勢3社(オリックス 丸紅 日本管財)に絞り込まれたことが明らかになった。オリックスと丸紅がそれぞれ自社系REITとの合併を提案している模様。

これに対してREIT最初倒産であったニューシティについては4月に米ローンスターがスポンサー契約を結んで入ったものの、2009年7月15日に開かれた債権者集会でローンスターをスポンサーとする再建計画が否決された。詳細は明らかでないものの、再建計画の内容において銀行を中心とする債権団(あおぞら、中央三井信託、農林中央金庫など)と新スポンサーの利害がぶつかっていることが伺える。ニューシティは運用資産規模で約1900億円。全国に105棟。負債は約1000億円。住宅型REITとしては2位。2008年8月末の純資産価値は1口あたり約46万円。これに対して4月7日に明らかになったローンスターの計画は1口1万5000円で約60億円を第三者割当増資で引き受けて7割弱の持ち分確保。その後1口3万5000円でTOBで買取り負債は5年かけて均等に100%弁済するというもの(金利は0.65%)。全国に投資主は3062人。ローンスターの再建計画は5月13日の投資主総会では可決されたが、7月15日の債権者集会で否決される異例の展開になった。
銀行側はその後、大和ハウス系REITのビ・ライフ投資法人と合併する対抗案を提出した。これによるとまず大和ハウスが1口3万5000円ないし5万円で約60億円の第三者割当増資を引く受けたあと、投資口を1口4万5000円から5万5000円の評価で合併。返済は3年後4年後5年後に3分の1ずつをTIBOR+0.9%から1.1%上乗せする。これはすべての条件でローンスター側の条件を上回っており、ローンスターの反応が注目される。ただそもそもローンスターをスポンサーに選んだこと自体に間違いがあったのではないかとも考えられる。ローンスターと競った側の条件が開示されていないが検証が望まれる。

 2008年6月10日に大和ハウス工業は6月19日に迫っていた系列REITの上場見送りを発表し話題をよんだ。その後も上場の機会をうかがっていたが2008年10月に09年3月期中の上場を断念している。REIT市場の混乱から見送りを決めたのだが、付随して同社の売上見通しが変更された。これは自社開発物件の販売先としてREITを考えていたことを示している。こうした同社の姿勢に疑問がないわけではない。しかしそれは不動産デベロッパー系REITに共通する問題で、大和ハウスだけを批判することは正しくないだろう。文中登場したビ・ライフ投資法人は2006年3月22日にすでに上場している大和ハウス系REITである。

 いずれにせよREITやスポンサーの破綻は業界の再編、REITの規模拡大につながっているようだ。

 政府は「不動産市場安定化ファンド」を2009年9月に立ち上げる方針。3000-5000億円の資産規模。投資法人債の償還用資金の資金需要に対応。融資期間は2012年3月末まで。(資金は日本政策投資銀行からの劣後ローン13% 不動産会社からの出資金7% 銀行からの借入金が80% 国策的救済との批判もなくはない 不振REITの延命につながるなど)

REITについては投機資金が大量に入り、値動きで利益が出る商品に変質したことに大きな問題との指摘がある(2007年5月がピーク。09年3月末には7割下落。)。しかしそうした資金流入を排除できるかはそもそも疑問が残る。

不動産ファンドの市場規模(2009年半ば) 2008年末ころより減少 20兆6000億円 2008年6月比1%減少 公募の不動産投資信託REITが7兆4000億円(2008年後半から2009年前半は横ばい) 私募ファンドは13兆2000億円(08年6月比2%減少)

Written by Hiroshi Fukumitsu.You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Aug.14, 2009.

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