Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
 11/20 月と火星が接近

ゆりかごから墓場まで

2010-01-14 12:00:00 | 夜空のコラム

どこぞの国の社会福祉の話題ではなく、遥か彼方にある星の世界のお話です。

冬の星座として真っ先に思い浮かぶのがオリオン座。

その主要部を長時間露出でとらえた写真がこちら↓

【オリオン座】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 28-75mmズームレンズ(42mmに設定) ISO800 F4
 総露出時間48分(6分×8コマ加算合成) 赤道儀使用
 [長野県小海町にて2008年10月撮影]

中央に三ツ星があって、それを囲むような四角形の星の配列でお馴染みの星座ですが、

上の写真は実際の空に見える姿とは全く様相が違うので、驚かれる方も多いでしょうね。

一見して赤い星雲が目立ちますが、それはこの辺りに漂っている電離した水素ガスが

近くの星からの紫外線を受けて発する波長656nmの光で輝いているものです。その光は

人間の目では感じにくい波長帯域である上に光量が十分でないため、肉眼ではもちろん

双眼鏡や望遠鏡を使ってもほとんど見ることができません。写真でも通常のカメラでは

描出が難しいのですが、天体撮影用に特化した改造デジカメで撮ると、上のような写り

になります。

さて、ほぼ中央の三ツ星の下には明るいピンク色に輝いている部分が認められますが、

これが有名なオリオン大星雲になります。オリオン大星雲は星間ガスや塵が凝集した

ところで、新しい恒星が誕生する場としてよく知られています。実際に望遠鏡で覗くと、

モヤモヤした星雲の中心に、大宇宙の時間スケールで言えばまだ生まれて間もない4つの

赤ちゃん星(トラペジウムと呼ばれる)が見えます。星雲の広がりの中にはそれ以外にも

幼い星がいくつも認められるので、この星雲を「星のゆりかご」と呼ぶことがあります。

三ツ星とオリオン大星雲を左側(西側)から囲うような恰好で半円形に広がった赤い星雲は

バーナードループと呼ばれている天体です。アメリカの天文学者バーナード博士が写真で

初めて発見した天体であるため、その人名を冠した天体になっています。これは以前に

紹介したはくちょう座の「網状星雲」と同じ「超新星残骸(ちょうしんせいざんがい)」と

いう類の星雲で、ずーっと昔にこの辺りで起きた「超新星爆発」の名残りではないかと

考えられています。つまり、壮絶な死を遂げた星の墓場とも言えるのです。

生まれたばかりの星もあれば、死んだ星の残骸もあり、そのような星の輪廻転生の様が

オリオン座という狭いエリアに垣間見られるという訳です。

そして、もうすぐ生涯を閉じようとしている星がこの中に写っています。

それは左上方に写っている橙色をした一等星ベテルギウスです。

直径が太陽の千倍という、とてつもない大きさを誇るとされてきた赤色超巨星なのですが、

ここ数十年の間ずっと収縮し続けていることが分かり、近い将来、重力崩壊に伴う超新星

爆発を起こすのは必至の状況にあると考えられています。つい先日もNASAによる観測から

その表面が凸凹で不安定になってきていることが判明したとの新聞記事がありました↓

http://www.asahi.com/science/update/0109/TKY201001090278.html

その様子から、いつ大爆発が起きてもおかしくないと考える研究者が多いようです。

ベテルギウスまでの距離は640光年ですから、今見えているのは640年前の姿になります。

なので、今爆発してもそれが地球から光学的に観測できるのは27世紀半ばになってから

ということになります。あるいは既に大爆発してしまって、その強力な光がまだ地球に

届いてないことも考えられるのです。

ところで、その距離で超新星爆発が起こった場合、地球からは満月と同等のマイナス12等級

程度の明るさで見えるだろうと推定されてます。もしそうなったら、しばらくの間、冬の星空は

明るすぎて、暗い天体の観望・撮影ができないなんてことになる可能性もありますね。

個人的にはマイナス12等星(点光源)って、どんな風に見えるのか興味津々ですが・・・

地球環境への影響は無いとみられてはいるものの、超新星爆発によって発生するガンマ線が

指向性の高いビームとなって運悪く地球を直撃するようなことがあれば、人類滅亡の危機に

晒されるとの予測もあるようです。ベテルギウスが明るく見えた瞬間に何が起こったのか

さえわからないままあの世行きになったりして? まあ、ありえないと思いますけどねぇ。



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