野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

薄紫の花が可憐なローズマリー(園芸種シリーズ02)

2019年09月23日 09時22分46秒 | 

強力な香辛料であるローズマリーが花をつけていた。春にもみた記憶があるが、一年に何度も咲くのだろうか。香りと違って、日本の風土に違和感のない薄紫の花が可憐だ。

(2019-09 川崎市 道端) 

ローズマリー(英:rosemary 仏:romarin)は、地中海沿岸地方原産で、シソ科に属する常緑性低木。和名マンネンロウの漢字表記は「迷迭香」であるが、これは中国語表記と同一である。生葉もしくは乾燥葉を香辛料、薬(ハーブ)として用いる。花も可食。水蒸気蒸留法で抽出した精油も、薬として利用される。

属名Rosmarinusは「海のしずく」を意味する。ヨーロッパでは、教会、死者、生者を悪魔から守る神秘的な力を持つといわれ、また記憶や友情を意味する。

キリスト教以前のヨーロッパで祝典や結婚式、葬儀に用いられたとされ、「変わらぬ愛」や「貞節」の象徴とされる。その生育はキリストの生涯を象徴し、多くの伝説で聖母マリアと結びついている。

生態
成長すると高さ1.8メートルに達する常緑灌木。暑く乾燥した気候を好むが、耐寒性も高い。縁が厚くなった細長い葉を付け、こするとマツに似た香りがする。冬から春にかけて青や紫がかった白い花が咲き、観賞用としても人気がある。

播種・挿し木のどちらでも繁殖させることができる。土壌はアルカリ性~弱酸性、また根腐れを起こしやすいため水分は与えすぎないほうが望ましい。

主な品種
様々な品種があり、立性と匍匐(ほふく)性種に分かれる。花の色は、青から紫色のものがほとんどだが、白や桃色のものもある。 野生のローズマリーには純正種は少なく、ほとんどは変種である。


吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ

2019年09月23日 07時36分33秒 | 

ワレモコウはつつましい秋の花だ。穂かと思うような暗い赤の花をつける。秋の花は派手なものが多いので、つい見逃してしまいそうだ。それでも日本では長く好まれてきた花である。旅を愛した若山牧水の有名な歌「吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ」は忘れ難い一首だ。上の写真の富士山麓の山では群生はしていなかったが、多くの高原で群れるように咲いているのをよく見かける。下はある高原で撮影した花のアップ画像である。五音節の名前のワレモコウは、さびを好む俳句の世界でも愛された花である。「さしそへて淋しき花の吾亦紅 三橋鷹女」。「山の陽を小さく集めて吾亦紅 中村苑子」も巧みだ。

(2019-08 山梨県 富士山麓 )



 

 

ワレモコウ(吾亦紅、吾木香、吾妹紅)は、バラ科・ワレモコウ属の植物。日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布しており、アラスカでは帰化植物として自生している。

特徴
草地に生える多年生草本。地下茎は太くて短い。根出葉は長い柄があり、羽状複葉、小葉は細長い楕円形、細かい鋸歯がある。秋に茎を伸ばし、その先に穂状の可憐な花をつける。穂は短く楕円形につまり、暗紅色に色づく。

名称
源氏物語にも見える古い名称である。漢字表記においては吾木香、我毛紅、我毛香、我妹紅など様々に書かれてきたが、「もまた」を意味する「亦」を「も」と読み、「吾亦紅」と書くのが現代では一般的である。

名の由来には諸説あるが、前川文夫によれば木瓜文(もっこうもん)を割ったように見えることからの命名という。ほか、「我もこうありたい」の意味であるなど、様々な俗説もある。

別名に酸赭、山棗参、黄瓜香、豬人參、血箭草、馬軟棗、山紅棗根などがある[要出典]。英語ではgreat burnet、garden burnet、中国語では地楡(ティーユー、diyu)と呼ぶ。

利用
根は地楡(ちゆ)という生薬でタンニンやサポニン多くを含み、天日乾燥すれば収斂薬になり、止血や火傷、湿疹の治療に用いられる。漢方では清肺湯(せいはいとう)、槐角丸(かいかくがん)などに配合されている。

同属別種のオランダワレモコウ(サラダバーネット、学名S. minor Scop.)は、観賞用だけでなく若葉を食用とする。

ワレモコウの根を煎じて飲んで下痢止めとする伝統風習が、長野県阿智・喬木地域にある。

吾亦紅 の例句

あせり気味なりし紅吾亦紅 後藤比奈夫
いつまでを婚後といはむ吾亦紅 鷹羽狩行
いろいろに詠みて結局吾亦紅 後藤比奈夫
この山の土盗らるるよ吾亦紅 阿波野青畝
さしそへて淋しき花の吾亦紅 三橋鷹女
ついてくる人はと見れば吾亦紅 波多野爽波
つまむことこの世にいとし吾亦紅 森澄雄
ひとの子を濃霧にかへす吾亦紅 橋本多佳子
ほそみちに日のちらばつて吾亦紅 鷲谷七菜子 游影
ほんたうに紅くなりたる吾亦紅 後藤比奈夫
めでたさも乾漆さびの吾亦紅 岡井省二 鯨と犀
もらふ風あるにはありて吾亦紅 石田勝彦 秋興以後
リフトの眼馴れて見え来し吾亦紅 右城暮石 天水
一、二を生し二、三を生す我亦香 正岡子規 吾亦紅
二つめの吾亦紅見え来つるなり 岡井省二 前後
何一つ忘れはしない吾亦紅 佐藤鬼房
叢や吾亦紅咲く天気合ひ 飯田蛇笏 山廬集
吾亦紅すこしいこへば空の冷 森澄雄
吾亦紅つくりぼくろのかの人の 山口青邨
吾亦紅の力根さぐる春の土 松村蒼石 雪
吾亦紅はづみて霧のしづまらず 阿波野青畝
吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる 細見綾子 牡丹
吾亦紅オートヂャイ口が遊びにくる 中村草田男
吾亦紅信濃の夕日透きとほる 藤田湘子 途上
吾亦紅壮なる時過ぎて立つ 山口誓子
吾亦紅夕べは鵙のふくみ音に 三橋鷹女
吾亦紅夕日つめたくなりにけり 草間時彦 櫻山
吾亦紅夕雁も越え去りゆけり 百合山羽公 故園
吾亦紅山もここらは平らかに 上村占魚 球磨
吾亦紅山越す汽車のあふちかな 右城暮石 句集外 昭和二年
吾亦紅岐れのみちも水辺とり 上田五千石『天路』補遺
吾亦紅折らましものを霧こばむ 阿波野青畝
吾亦紅抽んづ谺あそぶ山 大野林火 飛花集 昭和四十八年
吾亦紅採れと女の甘え声 右城暮石 散歩圏
吾亦紅朝より山の名を知らず 古舘曹人 砂の音
吾亦紅村の祭の口火切る 百合山羽公 故園
吾亦紅枯れ朽ち人の黒子遺ゆ 山口青邨
吾亦紅枯首あげて霧に立つ 前田普羅 春寒浅間山
吾亦紅母にちかづくごとくなり 松村蒼石 雪
吾亦紅無きが如くに月の供華 高浜年尾
吾亦紅病歴すこし遠のけど 岡本眸
吾亦紅真紅なるとき銃の音 山口誓子
吾亦紅立つて野の川混濁す 山口誓子
吾亦紅笑ひごゑまたいでしなり 岡井省二 夏炉
吾亦紅紅の焦げたる山日和 森澄雄
吾亦紅縁起絵巻の野にか似し 右城暮石 句集外 昭和十九年
吾亦紅老いて焦茶を着こなせる 後藤比奈夫
吾亦紅落ちゆく水に顔失す 角川源義
吾亦紅降り出してすぐ見えずなり 岸田稚魚 紅葉山
吾亦紅黒ずみ定期検診日 岡本眸
四五人は妻歿きもゐて吾亦紅 能村登四郎
夕づつにいつ失せにけん吾亦紅 阿波野青畝
夕刊でざつとくるんで吾亦紅 岡井省二 猩々
天女より人女がよけれ吾亦紅 森澄雄
好色の血を引く吾と吾亦紅 上田五千石 風景
存在の吾亦紅より野の募色 稲畑汀子
山の日のしみじみさせば吾亦紅 鷲谷七菜子 天鼓
山の陽を小さく集めて吾亦紅 中村苑子
山裾のありなしの日や吾亦紅 飯田蛇笏 椿花集
山頂の吾亦紅風も日も止らず(六甲) 細見綾子
山風に朝はやさしき吾亦紅 松村蒼石 雪
岳北や荒れしあと日の吾亦紅 古沢太穂 捲かるる鴎以後
庭のものさびしくなりぬ吾亦紅 山口青邨
庭荒るる吾亦紅を点ず草の中 山口青邨
感嘆符の吾亦紅またここにまたここに 上田五千石『琥珀』補遺
慶弔の色のいづれや吾亦紅 鷹羽狩行
旅情とは吾亦紅また吾亦紅 岡本眸
既に戦友亡き村に来ぬ吾亦紅 松崎鉄之介
春か秋か何とも見えぬ我亦香 正岡子規 吾亦紅
晩秋の庭吾亦紅野のごとく 山口青邨
枯れつつもそれとしるしや吾亦紅 松本たかし
母坂を越えて伊勢みち吾亦紅 森澄雄
浅間越す人より高し吾亦紅 前田普羅 春寒浅間山
湖よりも山に峙ち吾亦紅 百合山羽公 故園
瀬しぶきにうつろふ霧や吾亦紅 飯田蛇笏 春蘭
照れば紅くもれば黒の吾亦紅 鷹羽狩行
玉鼓などといとしや吾亦紅 山口青邨
生きて秀野に逢ひたし風の吾亦紅 山田みづえ 忘
省略とは点と線との吾亦紅 山田みづえ 手甲
石山の割るる谺や吾亦紅 飴山實 花浴び
簡にして素とはこのこと吾亦紅 鷹羽狩行
籐椅子の脚にも媚びて吾亦紅 富安風生
純粋とは狂ひしことか吾亦紅 佐藤鬼房
芒の穂立ち吾亦紅点々と 細見綾子
花野抜け来し人が手の吾亦紅 高浜年尾
茎青きははじめてなりし吾亦紅 右城暮石 句集外 昭和十年
蜻蛉また紅翅赭眼や吾亦紅 水原秋櫻子 緑雲
行きすぎし赤は戻らず吾亦紅 後藤比奈夫
袖にふれ訴ふるごと吾亦紅 山口青邨
踏まれたり句碑の傍への吾亦紅 阿波野青畝
踏み入つて諏訪路は芒・吾亦紅 能村登四郎
近づけば紅遠のけば吾亦紅 後藤比奈夫
道のべの火山礫より吾亦紅 清崎敏郎
遠い日を手繰る瞳か 吾亦紅 伊丹三樹彦
遠山の晴間みじかし吾亦紅 上田五千石 森林
野の花にまじるさびしさ吾亦紅 細見綾子
野の面の枯るるとききて吾亦紅 松村蒼石 雪
鉄線の名は汝にこそ吾亦紅 鷹羽狩行
雨ほつほつまだ紅持たぬ吾亦紅 山田みづえ 手甲
霧ながら雨の筋見え吾亦紅 上田五千石『琥珀』補遺
霧の中おのが身細き吾亦紅 橋本多佳子
霧流れ日輪ながれ吾木香 藤田湘子 てんてん
青萱と丈をきそへり吾亦紅 松村蒼石 雪
高原の霧が梳き過ぎ吾亦紅 星野立子
高原の靄きゆる暾に吾亦紅 飯田蛇笏 心像

 


穂の形がユニークなシマスズメノヒエ(「雑草」シリーズ09)

2019年09月23日 06時42分31秒 | 

シマスズメノヒエとスズメノヒエは穂の大きさですぐに見分けることができる。最近ではほとんどがシマススメノヒエだという。名前の由来は牧野博士によるとスズメが食べるヒエだというが、この穂の形からスズメとヒエを想像した日本人の想像力の細やかさに、いつもながら感心する。穂の形がユニークなので、雑草としてはわりと目に付くほうだろう。

(2019-09 川崎市 道端) 

 

 

 

 

 

シマスズメノヒエ(島雀の稗、学名: Paspalum dilatatum)は、イネ科スズメノヒエ属の多年生の草本。南アメリカ原産であるが、現在の日本ではごく広く普通に見られる雑草。アルゼンチンではパンパの多年草として広く見られる。踏みつけに強く、芝生地にもよく侵入する。牧草としてもよく利用される。この類では大きくなる方で、穂も大きくてよく目立つ。穂に毛が多いのが特徴となっている。

和名は、日本では小笠原諸島で最初に発見されたためとの説と、果実に縞があるためとの説が流布している。ダリスグラスともいう。

形態・生態
株立ちになり、匍匐枝は持たない。草丈は50-150cm(-180cm)になる。茎は直立、またや斜めに伸びる。

葉身は長さ10-30cm、幅は3-12mm、緑色で草質。葉身は無毛だが、葉鞘の口部には毛があり、また、基部の葉鞘には開出した毛がある。葉舌は淡褐色を帯び、高さ2-4mm。

長い花茎の先の方に太い穂を少数つける。花期は7-11月。茎の先端近くから間をおいて3-6(7)個の総(小穂のついた花軸)をつける。総は長さ5-9cmで、花茎に対して大きく角度をつけて開出、またはやや垂れる。小穂は2-3列に並ぶ。小穂は卵形で先端がとがり、長さは3-3.5mm、緑色で縁に絹糸状の長い毛が多数出る。第1包穎は退化して無くなっており、第2包穎は小穂と同大、花軸側にあって背面にややふくらみ、3脈があり、縁には長毛がある。第1小花は不稔で、護穎は第2包穎と同大だが扁平、縁にはやはり長毛がある。稔性のある第2小花は小穂よりやや小さく、護穎は平滑で革質、縁が巻き込んで果実を包む。柱頭と葯はどちらも黒紫色でよく目立つ。

類似種との区別
日本産の種ではスズメノヒエにやや似るが、葉に毛が多いこと(本種はほぼ無毛)、小穂に細かい毛しかないこと(本種では長い毛が多い)などで区別できる。小穂に長い毛が多い点ではタチスズメノヒエがよく似ており、小穂の形も似ているが、長さ2-2.7mmと本種より小さく、また総の数が10-20本とずっと多く、また開出しないで束状になって立つ傾向が強いことではっきり区別できる。