母

　私が高校生の頃、当時付き合っていた彼から
モデルガンをもらった。
彼はモデルガンを集めていて、
それを見て面白いね、と言ったらくれたのだ。誕生日に。
決して悪意を込めて書いているのではない。

ＢＢ弾の出るやつで、弾を込めたマガジンをセットして使う。
子供の頃に兄が遊んでいた物よりずっと難しい作りの、
重量のあるモデルガンだった。
私は早速弾を装填して、注意深く引き金を何度か引いてみたが
なぜか一向に弾が出ない。
そこへ通りすがった私の兄、どれと言って私からガンを取り上げると
銃口を私の腿につけ、引き金を引いた。


パン。


そういう時は出ると相場が決まっている。
妹は腿を押さえて声もなくのたうちまわり
側では兄がモデルガン片手に笑っている。
その光景を見た母親が兄に注意をした。
曰く

「やたらと何かを撃っちゃいけない。
　物を撃ったら動物、動物を撃ったら人を撃ちたくなるんだから」



それから大分経ったある日、私が学校から帰宅すると
母親が両手でモデルガンを構え、片膝までついて
ベランダで糞をしている鳩を狙っていた。
夕日に照らされ伸びる母の影、その先の糞をひる鳩。
親の対処に困ったある夏の日。